娘のたまは、今日で2歳6か月。朝起きてトイレで用を足し、今日が誕生日のわたしの母に電話口で「ハッピーバースデー ディア おおさかばあば〜」と歌ったあと、子ども椅子をひっくり返した「電車」に乗り込んで車掌さんごっこを始めた。「つぎは〜せんごく〜せんごく〜」などと言いながら、リズミカルに左右に揺れ、一人で機嫌良く遊ぶ傍らで、わたしは、朝食の支度。この一か月でトイレと一人遊びがずいぶんうまくなって、だいぶラクさせてもらっている。おむつはまだ外れないけれど、トイレでの成功率が上がったので、保育園から持ち帰るおむつが減るにつれて、おむつを買いに行く回数も減った。
一人遊びがうまくなったのは、自分を遊び相手にできるようになったということ。一人で車掌と乗客を演じたり、ぬいぐるみたちのお世話ごっこをしたり(保育園に持って行くタオルを掛け布団と敷き布団にして、ぬいぐるみをねかしつけたりする)、想像力を働かせて遊べるようになった。アンパンマンばかりかトントン(おっぱい)まで友だちに加えてしまう頭の柔らかさは、さすが子どもだなあと思う。1月末に大阪に帰ったとき、わたしの実家に着いて、「トントンもおおさかきたんだね」と歓声を上げたのには、「来てないと困るがな」と突っ込んでしまった。おっぱいをねだられるたびにわたしが「いまでかけてます」「まだ保育園から帰ってません」などとはぐらかしてからかっていたのが膨らんで、たまの頭の中でトントンは自在に動き回れる生き物になったらしい。
「たまちゃんじゃないよ。あかりちゃんよ」と別な女の子になりすます遊びも始まった。あかりちゃんの出所はいまだに不明だけど、いつも洋服をくれる「みなみちゃん」になりすますこともある。たまちゃんでもあかりちゃんでもみなみちゃんでも、変わるのは名前だけで性格までは演じ分けられていないところがご愛嬌。「じゃああかりちゃん、たまちゃんのパパとおふろ入る?」と聞くと、「あかりちゃんのパパだよ」と親まで変身を求められる。
このところのお風呂遊びは「ほいくえんごっこ」。わたしの誘導にしたがって、登園してからの生活を演じる。「おはよう。みんないるよ、まず手を洗ってね」と言うと、手を洗い、タオルで手を拭く。朝のおやつを食べ終えて、ブロック遊び。隣で遊んでいるのは誰というのも、ちゃんとたまの頭にある。「○○ちゃんはブロックあそびしないよ」とお友だちの性格もよくわかっている様子。「じゃあ散歩にいきますよ」と声をかけると、お友だちや先生の分の帽子や上着を出してきて、着せて回る。帽子のゴムをかけたり、上着の前を留めたりと芸が細かい。出かける前に胸を張ってトイレへ行進。わたしをトイレに見立てて腰掛け、用を足すふりをする。この表現力は『ガラスの仮面』北島マヤばり顔負け、コメディエンヌの才能もあるぞと親バカぶりも成長(増長)中。
朝食の後、わたしが仕事する間、たまはパパと公園に行き、帰りにケーキを買ってきた。誕生日の記念にお皿に字を描こうと思い、冷蔵庫を開けてペンになるものを探す。いつのものかわからないチョコレートは古すぎたのかうまく溶けず、黒みつでは色が薄すぎ、チューブのバジルペーストで「たま2.5」と描いた。2歳5か月にも見えるが、まあ誤差だ。子育ては小さなことにこだわらないことが大事。たまは割り箸を筆にして黒みつお絵描きを楽しんだ。
わたしがパソコンに向かっていると一人で遊んでくれる物わかりの良さに甘えて、ずいぶん仕事をさせてもらっている。でも、我慢をさせていることもわかっている。原稿をひとつ片付けられたので、夜は一緒に布団に入り、好きなだけ子守話を聞かせることに。「カンガルーする」と言って、おなかの上にぺたっとのっかってきたので、最初は「カンガルーさん ぴょん」のお話。「カンガルーちゃん、ママの袋から飛び出さないように、しっかりつかまりなさいよ」。ぴょんぴょんはねながら動物園を探険。お友だちの動物たちを訪ね歩いた。続いて、「ぞうさん パオーンのおはなして」のリクエスト。お誕生日にちなんだお話にしてみた。
このところ定番の「きりんさん とべないの」のお話や「ちょうちょさん とべないの」のお話が続き、最後はいまいちばんのお気に入りの「パパひとりぼっち」のお話。パパが家に帰ったらママもたまちゃんもいなくて、パパが一人でお留守番しながらカレーを作る。いいにおいがしてきたところでピンポーンと鳴り、ママとたまちゃんが帰ってきて、みんなでカレーを食べるというお話。話すたびにピンポーンでやってくる人が増えて、じいじやばあばや保育園のお友だちもやってくる。たまちゃんが帰ってくる前に郵便屋さんがパパあてのラブレター手紙を届けて、パパがはりきるあまりにカレーが辛くなったところにバナナや豆腐を届けてくれるお客さんが現れたり、おばけが来たり、ピンポンダッシュで逃げて行く人も。「あ、ぎゅうにゅうがないよ。かいにいこう。コンビニちかくにあるよ」。カレーを食べる前、日付が変わる頃に寝ついた。
子守話47 ゾウさんパオーン
あるひ パパゾウとママゾウとタマゾウが もりへあそびにでかけました。 「パパはおしごと ママはおせんたくをしてくるから タマはここであそんでいてね。 なにかあったら、あいことばはパオーンよ パオーンとないたら あつまりましょう」 ママがそういって パパゾウとママゾウは もりのあっちとこっちへいってしまいました。 タマゾウはしばらく ひとりであそんでいました。 おともだちのこどもゾウたちは パパやママといっしょで おおきなプレゼントまでもらっているのに タマゾウだけひとりぼっちでした。 「パパもママも いそがしいんだ。タマゾウのこと すきじゃないんだ。 きょうが タマゾウのたんじょうびだってこと わすれているんだ」 タマゾウは かなしくて さびしくて パオーンとなきました。 すると、パオーン、パオーン。 パパとママのこえが もりのおくのほうからきこえました。 タマゾウがこえのするほうへ むかってみると そこは いちめんのおはなばたけでした。 おはなのかおりにまじって ごちそうのいいにおいがしました。 「パパとママだけ こんなたのしいところにいて ずるい」 タマゾウが はなをまるめて すねていると あたまのうえから はなびらがふってきました。 ながいはなで はなびらのシャワーをふらせているのは パパゾウとママゾウです。 「おたんじょうび おめでとう」とパパゾウ。 「タマゾウにないしょで パーティのじゅんびをしていたのよ」とママゾウ。 みると タマゾウのおともだちのゾウたちが パパやママといっしょに ぞろぞろとあつまってきました。 みんながもっていたおおきなプレゼントは タマゾウにあげるたんじょうびのおいわいだったのです。 タマゾウは びっくりして うれしくて なみだがでてきました。 はなびらのシャワーが なみだをかくしてくれて よかったとおもいました。
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