2009年02月22日(日)  なりきり芝居で女優開眼!?たま2歳6か月

娘のたまは、今日で2歳6か月。朝起きてトイレで用を足し、今日が誕生日のわたしの母に電話口で「ハッピーバースデー ディア おおさかばあば〜」と歌ったあと、子ども椅子をひっくり返した「電車」に乗り込んで車掌さんごっこを始めた。「つぎは〜せんごく〜せんごく〜」などと言いながら、リズミカルに左右に揺れ、一人で機嫌良く遊ぶ傍らで、わたしは、朝食の支度。この一か月でトイレと一人遊びがずいぶんうまくなって、だいぶラクさせてもらっている。おむつはまだ外れないけれど、トイレでの成功率が上がったので、保育園から持ち帰るおむつが減るにつれて、おむつを買いに行く回数も減った。

一人遊びがうまくなったのは、自分を遊び相手にできるようになったということ。一人で車掌と乗客を演じたり、ぬいぐるみたちのお世話ごっこをしたり(保育園に持って行くタオルを掛け布団と敷き布団にして、ぬいぐるみをねかしつけたりする)、想像力を働かせて遊べるようになった。アンパンマンばかりかトントン(おっぱい)まで友だちに加えてしまう頭の柔らかさは、さすが子どもだなあと思う。1月末に大阪に帰ったとき、わたしの実家に着いて、「トントンもおおさかきたんだね」と歓声を上げたのには、「来てないと困るがな」と突っ込んでしまった。おっぱいをねだられるたびにわたしが「いまでかけてます」「まだ保育園から帰ってません」などとはぐらかしてからかっていたのが膨らんで、たまの頭の中でトントンは自在に動き回れる生き物になったらしい。

「たまちゃんじゃないよ。あかりちゃんよ」と別な女の子になりすます遊びも始まった。あかりちゃんの出所はいまだに不明だけど、いつも洋服をくれる「みなみちゃん」になりすますこともある。たまちゃんでもあかりちゃんでもみなみちゃんでも、変わるのは名前だけで性格までは演じ分けられていないところがご愛嬌。「じゃああかりちゃん、たまちゃんのパパとおふろ入る?」と聞くと、「あかりちゃんのパパだよ」と親まで変身を求められる。

このところのお風呂遊びは「ほいくえんごっこ」。わたしの誘導にしたがって、登園してからの生活を演じる。「おはよう。みんないるよ、まず手を洗ってね」と言うと、手を洗い、タオルで手を拭く。朝のおやつを食べ終えて、ブロック遊び。隣で遊んでいるのは誰というのも、ちゃんとたまの頭にある。「○○ちゃんはブロックあそびしないよ」とお友だちの性格もよくわかっている様子。「じゃあ散歩にいきますよ」と声をかけると、お友だちや先生の分の帽子や上着を出してきて、着せて回る。帽子のゴムをかけたり、上着の前を留めたりと芸が細かい。出かける前に胸を張ってトイレへ行進。わたしをトイレに見立てて腰掛け、用を足すふりをする。この表現力は『ガラスの仮面』北島マヤばり顔負け、コメディエンヌの才能もあるぞと親バカぶりも成長(増長)中。


朝食の後、わたしが仕事する間、たまはパパと公園に行き、帰りにケーキを買ってきた。誕生日の記念にお皿に字を描こうと思い、冷蔵庫を開けてペンになるものを探す。いつのものかわからないチョコレートは古すぎたのかうまく溶けず、黒みつでは色が薄すぎ、チューブのバジルペーストで「たま2.5」と描いた。2歳5か月にも見えるが、まあ誤差だ。子育ては小さなことにこだわらないことが大事。たまは割り箸を筆にして黒みつお絵描きを楽しんだ。

わたしがパソコンに向かっていると一人で遊んでくれる物わかりの良さに甘えて、ずいぶん仕事をさせてもらっている。でも、我慢をさせていることもわかっている。原稿をひとつ片付けられたので、夜は一緒に布団に入り、好きなだけ子守話を聞かせることに。「カンガルーする」と言って、おなかの上にぺたっとのっかってきたので、最初は「カンガルーさん ぴょん」のお話。「カンガルーちゃん、ママの袋から飛び出さないように、しっかりつかまりなさいよ」。ぴょんぴょんはねながら動物園を探険。お友だちの動物たちを訪ね歩いた。続いて、「ぞうさん パオーンのおはなして」のリクエスト。お誕生日にちなんだお話にしてみた。

このところ定番の「きりんさん とべないの」のお話や「ちょうちょさん とべないの」のお話が続き、最後はいまいちばんのお気に入りの「パパひとりぼっち」のお話。パパが家に帰ったらママもたまちゃんもいなくて、パパが一人でお留守番しながらカレーを作る。いいにおいがしてきたところでピンポーンと鳴り、ママとたまちゃんが帰ってきて、みんなでカレーを食べるというお話。話すたびにピンポーンでやってくる人が増えて、じいじやばあばや保育園のお友だちもやってくる。たまちゃんが帰ってくる前に郵便屋さんがパパあてのラブレター手紙を届けて、パパがはりきるあまりにカレーが辛くなったところにバナナや豆腐を届けてくれるお客さんが現れたり、おばけが来たり、ピンポンダッシュで逃げて行く人も。「あ、ぎゅうにゅうがないよ。かいにいこう。コンビニちかくにあるよ」。カレーを食べる前、日付が変わる頃に寝ついた。

子守話47 ゾウさんパオーン

あるひ パパゾウとママゾウとタマゾウが もりへあそびにでかけました。
「パパはおしごと ママはおせんたくをしてくるから
 タマはここであそんでいてね。
 なにかあったら、あいことばはパオーンよ
 パオーンとないたら あつまりましょう」
ママがそういって パパゾウとママゾウは
もりのあっちとこっちへいってしまいました。
タマゾウはしばらく ひとりであそんでいました。
おともだちのこどもゾウたちは パパやママといっしょで
おおきなプレゼントまでもらっているのに
タマゾウだけひとりぼっちでした。
「パパもママも いそがしいんだ。タマゾウのこと すきじゃないんだ。
 きょうが タマゾウのたんじょうびだってこと わすれているんだ」
タマゾウは かなしくて さびしくて パオーンとなきました。
すると、パオーン、パオーン。
パパとママのこえが もりのおくのほうからきこえました。
タマゾウがこえのするほうへ むかってみると
そこは いちめんのおはなばたけでした。
おはなのかおりにまじって ごちそうのいいにおいがしました。
「パパとママだけ こんなたのしいところにいて ずるい」
タマゾウが はなをまるめて すねていると
あたまのうえから はなびらがふってきました。
ながいはなで はなびらのシャワーをふらせているのは
パパゾウとママゾウです。
「おたんじょうび おめでとう」とパパゾウ。
「タマゾウにないしょで パーティのじゅんびをしていたのよ」とママゾウ。
みると タマゾウのおともだちのゾウたちが
パパやママといっしょに ぞろぞろとあつまってきました。
みんながもっていたおおきなプレゼントは 
タマゾウにあげるたんじょうびのおいわいだったのです。
タマゾウは びっくりして うれしくて なみだがでてきました。
はなびらのシャワーが なみだをかくしてくれて よかったとおもいました。

2008年02月22日(金)  アンチエイジングディナーで合同誕生会
2007年02月22日(木)  マタニティオレンジ81 母になっても女心はある
2006年02月22日(水)  史実の63年後に観る映画『白バラの祈り』
2002年02月22日(金)  生みっぱなしじゃなくて


2009年02月21日(土)  電話でタイムスリップ

電話でタイムスリップ。先日放送したラジオドラマみたいだけど、過去を分かち合った人からのひさしぶり電話は、ほんとうに時間をポーンと飛び越えさせてくれる。大阪の高校の体操部で一緒だったミホから「今みんなで飲んでるねん」と電話があり、そこに集まっている5人の同期とかわるがわる話した。高校を卒業して以来に声を聞く子もいたのだけど、「ひさしぶりー。わかる?」と言われる間に記憶再生装置が起動し、彼女の顔を映し出してくれた。映像は高校生当時のもので、彼女と話しているわたしも高校生に戻っていた。

あの頃の年齢の2倍以上の歳月を生きてきたのに、中身は何にも変わってない気がする。だけど、外側はずいぶん変化を遂げた。それでも、顔を合わせれば、「変わってへんなあ」と言い合うのだろう。声を聞くと、無性に懐かしくなって、顔を見たくなった。

2008年02月21日(木)  バレンタイン月間&確定申告週間
2007年02月21日(水)  三島由紀夫レター教室
2006年02月21日(火)  何かとツボにはまった映画『燃ゆるとき』
2005年02月21日(月)  『逃亡者の掟』(人見安雄)
2002年02月21日(木)  映画祭


2009年02月19日(木)  生まれる前の記憶

娘のたまを産んだとき、助産院の畳の部屋にはヘンデルの『私を泣かせてください』を奏でるオーボエの荘厳な音色が満ちていた。もちろんCDからではあるが、名作『フランダースの犬』の教会を彷彿とさせるような神々しさを感じさせ、誕生の場面にふさわしい曲だ、と極限状況の中でわが選曲センスに満足した覚えがある。そのメロディを鼻歌で口ずさんでいると、「なんのうた?」とたまが聞いてきた。「たまちゃんが生まれた日の歌よ」と答え、「た〜ま〜ちゃんが〜う〜ま〜れた〜ひ〜」と即興で歌詞をつけて歌ったところ、「たまちゃんがうまれたひのうた、うたって」とせがまれるようになった。行き当たりばったりの作詞なので毎回微妙に歌詞は違うのだけど、子どもながらに自分のことが歌になっていて、しかも自分を歓迎する内容であることがうれしいらしく、いい顔をして聴いている。

おなかの中にいたときのこと、生まれたときのことを子どもは覚えているという。それを聞き出すのは、子どもが記憶を言葉で語れるようになった後で、最初の頃の記憶が上書きされる前が良いらしい。「チャンスは一度きり。二度は聞けないのよ」とも言われた気がするけれど、2歳を過ぎた頃から何度か、お風呂に入ったときに「覚えてる?」と聞いてみた。母親学級で聞いたような「ふわふわしたおはなばたけみたいなところにいた」「そらのうえからママをえらんだ」のような神話のような記憶を期待したのだけど、「おぼえてない」「わかんない」と肩すかしを食らってきた。

それが、「たまちゃんが生まれた日」の歌の成果なのかどうか、「覚えてる?」と聞くと、「おぼえてる」と返事が返ってきた。そして、頭の上に両手を万歳し、「たまちゃん パカってうまれたよ」と続けた。頭から生まれたのは事実だし、安産だと言われたのも確かだけど、本人に「パカって」と言われると、「いやいやそれなりに大変だったのだよ」と言いたくもなる。でも、2歳児相手にむきになってもしょうがない。人生で最初の記憶がラクチンであるということが、この子の楽天的な性格に貢献しているのかもしれない、と喜ぶことにした。

「トントンもたまちゃんといっしょにでてきたの」とたまは言う。トントンとはおっぱいの愛称。たまにとってはいい遊び相手で、きょうだいのような存在になっている。「トントンは最初からママのとこにいたよ」と反論しつつ、「いや待てよ。おっぱいという栄養飲料貯蔵庫として機能し始めたのは、たまが生まれてからだから、たまが言っていることは事実の暗喩だ」と思ったりもする。何気ない言葉の中にものすごい真理が潜んでいる気がして、さらなる金言に期待が膨らむ。「たまちゃんうまれたとき パパがいたの」「そうよ、覚えてるの? パパは仕事を抜け出してきたのよ」。いいぞ、その調子。すると、たまは続けて、「ゾウさんもキリンさんもいたの。シマウマさんもいたの。アンパンマンもいたの」。そこでわたしは思い出した。「子どもが作り話をできるようになってから聞き出しては、遅い」と言われていたことを。残念。

でも、ゾウやキリンやシマウマやアンパンマンがあの畳の部屋にひしめきあっているところを想像したら、楽しくなったので、子守話にしてみた。

子守話46 たまちゃんがうまれたひ

たまちゃんがうまれたひ
どうぶつたちが どうぶつえんをぬけだして やってきました。

キリンさんもは ながいくびに みんなからのプレゼントを
いっぱいつるして とどけてくれました。
ゾウさんは ながいおはなのシャワーで 
たまちゃんのからだをあらってくれました。
ことりたちは おいわいのうたを うたってくれました。
シマウマさんは ふかふかのおふとんに なってくれました。

どうぶつたちは たまちゃんの さいしょのおともだちでした。
ママのおなかにいたとき ゆめのなかで たまちゃんは
どうぶつえんにあそびにいって どうぶつたちとあそんでいたのです。
どうぶつえんにつれてってと たまちゃんが
パパやママにおねがいするのは そういうわけなのです。

2008年02月19日(火)  マタニティオレンジ237 赤ちゃんのときに生まれてきたんだよ
2007年02月19日(月)  近くて遠いアカデミー賞
2005年02月19日(土)  青春京都映画『パッチギ!』
2004年02月19日(木)  ツマガリのアップルパイ
2002年02月19日(火)  償い


2009年02月18日(水)  クッキーになった、ひばば102歳。

1月17日にダンナのおばあちゃんが亡くなって、ひと月経った。娘のたまと百歳違いだから、102歳。最後に会ったのは昨春のことで、耳が不自由なほかは、ゆっくりだけれど自分で歩き、ちょこっとケーキを食べ、紅茶を飲み、百歳を超えているようには見えないほどしっかりしていて、お茶目でかわいらしいおばあちゃんだった。「なかなかお迎えが来なくて」とおどけるように言うのが口癖だった。「長生きしてくださいね」と返しつつ、親しい友人もほとんど先に逝ってしまい、長い余生を持て余しているようにも思われて、フクザツな気持ちになった。だから、訃報を聞いたとき、もう会えないんだなという思いとともに、おばあちゃんはほっとしたかもしれない、と想像した。天国には懐かしい人たちがたくさん待ち受けているから、淋しい思いはしないだろう。

2006年11月26日 マタニティオレンジ33 百年前の赤ちゃん
2008年5月10日 ひばちゃま、あーちゃまと「平和」な休日


たまは、生まれてから2度おばあちゃんに会いに行き、だっこしてもらった。一緒に撮った写真を見ると、「ひばば」と指差していたけれど、最後に会って半年以上経っているので、「ひばば覚えてる?」と聞くと、首を傾げた。けれど、おばあちゃんが大好きだったという鎌倉五郎本店の『鎌倉半月』というお菓子を「ひばば、クッキーになったのよ」と言ってすすめると、「ひばばのクッキー」と神妙な顔をして食べ、何かを感じ取ったようだった。

おばあちゃんが亡くなって一週間後、大阪へ帰ったときのJALの機内誌に、新潟の大家族の写真が載っていた。「お父さん、お母さん、子ども、じいじ、ばあば、ひばばね」とわたしが写真を解説すると、「たまちゃん ひばば いたね」とたまが言った。「いるね」ではなく「いたね」と過去形になっていて、ひばばが遠くへ行ったことを2歳児ながら理解したんだなと思った。

そのことを子守話にしてみた。

子守話45 ひばばのクッキー

あるひ テーブルのうえに ちいさなはこがありました。
「これはなに?」とたまちゃんがママにきくと
「ひばばのクッキーよ」とママがいいました。
「たまちゃん、ひばばおぼえてる?」とママにきかれて
「うーん わかんない」とたまちゃんはこたえました。
ひばばは じいじのママで パパのおばあちゃん。
たまちゃんは ひばばに なんどかあいにいきましたが
それは2さいになるまえのことで よくおぼえていなかったのです。
「ひばば とおくにいっちゃったの。 もうあえないの。
 ひばば クッキーになったのよ」とママがいいました。
たまちゃんとママは ひばばのクッキーを はんぶんこしてたべました。
ほんのりあまいにおいを かいだとたん
たまちゃんは ひばばにだっこされたひのことを おもいだしました。
「かわいこちゃんですねえ」そういって ひばばがわらうと 
しわくちゃのかおが いっそうしわくちゃになりました。 
「ママ たまちゃん ひばば おぼえてる」とたまちゃんはいいました。
「ひばば やさしかったよ。ひばばのクッキーみたいに やさしかったよ」
「そう。ひばばのこと おぼえていようね」
「うん。たまちゃん ひばばのこと おぼえてる」
ひばばのやさしいかおをおもいうかべて
たまちゃんとママは ひばばのクッキーをたべました。
とてもおいしいクッキーでした。

2008年02月18日(月)  イタリアン風味の塩せんべい
2007年02月18日(日)  東京マラソン2007
2004年02月18日(水)  父&ダブルまさこでディズニーシー
2002年02月18日(月)  函館ラ・サールニュース


2009年02月17日(火)  桜えび×すりおろし野菜のやきやき料理

このところ、すごい勢いで桜えびを消費している。サラダにスープに大活躍で、いい味が出てカルシウムも取れて重宝しているのだけど、いちばん出番が多いのが「やきやき料理」。お好み焼きの亜流のようなこのジャンルが誕生したきっかけは、冷蔵庫に山芋と卵しかなかったある日のこと。卵を割り、山芋をすり下ろし、なけなしの桜えびと青のりを混ぜて焼いたら、なんとまあおいしいこと。以来、作るたびに具を変えたりして、やきやきを楽しんでいる。桜えびと並んで、青のり消費寮もふえた。

ほうれん草や小松菜を細かくして加えると(冷凍しておくと、すりおろせる)、緑色のやきやきになる。葉っぱぎらいの娘もだまされて、ほくほくと頬張る。人参のすりおろしも合う。干しえびに干しイカや粉がつおを加えると、磯の風味が豊かに。鮭のほぐし身を入れたことがあったけど、あまり合わなかった。しっかり味を蓄えた具でないと、埋没してしまうらしい。

山芋の代わりにダイコンをすりおろした大根やきやきは、醤油が合うおいしさ。大根だけだとしゃばしゃばしていて固まらないので、小麦粉を加える。もちもちした食感は、中華の大根餅。片栗粉のほうが合うかもしれないし、米粉もよく合いそう。大根やきやきのときは、天かすを入れると食感も味も良くなる。ベーコンも合うんじゃないかと思う。

やきやきが続いて、ひさしぶりに本家お好み焼きを食べたくなり、作ってみたら、キャベツをみじん切りする作業に疲れた。フードプロセッサーを使っても、何度も入れ替えないと終わらない。それに比べて、すりおろしの何とラクチンなこと。次はレンコンで行ってみようと思う。

2008年02月17日(日)  東京マラソン2008当日
2007年02月17日(土)  マタニティオレンジ80 はじめての風邪
2006年02月17日(金)  学生新聞「キャンパス・スコープ(campus scope)」取材
2005年02月17日(木)  魔女田さんの新作『平成職人の挑戦』
2004年02月17日(火)  オーマイフィッシュ!


2009年02月16日(月)  ロシアの首相みたいなドコモフケイキー氏

リーマンショックや円高のしわ寄せが脚本家にもやって来た。企画が飛んだは元々よくある話だけど、飛んだ飛んだがふえた気がする。準備する企画も減っているのか、去年の秋あたりから、バッタリと仕事が舞い込まなくなった。月に一件は「初めまして」と見知らぬプロデューサーから電話がかかってきて、スケジュールの打診をされたものだけど。脚本家が足りない、誰でもいいから誰かつかまえろというほど景気のいい時代ではなくなっているらしい。

知り合いの映画関係車は「どこも不景気だね」とぼやく。テレビ局の人も「どこも不景気だねえ」。わたしが務めていた広告会社も大変で、元同僚は「どこも不景気」と口をそろえる。会社を辞めても再就職先探しに難航して、「どこも不景気」を肌で感じるという。誰に会ってもドコモフケイキーの合唱。ドフトFスキーにも似て、ロシアの首相みたいだなと思っていたら、頭の中でイメージが膨らみ、ドフトエフスキー氏が動き出した。ちょっぴり赤ら顔の大柄の白人で、髪の毛も表情も淋しそうで、大きな背中を丸めて不景気そうに歩いている。

ドコモフケイキー氏が幅をきかせている今日この頃、なんとか途切れずに書くことを仕事にできているのはありがたいこと。選考委員を務めた毎日映画コンクールのスタッフ部門2次選考会の模様を、今年最初の連載エッセー、池袋シネマ振興会のフリーペーパーbukuに連載中の「出張いまいまさこカフェ」に綴る。次回で11杯目。3月下旬配布予定のbuku20号に掲載。

2008年02月16日(土)  東京マラソン2008前日
2007年02月16日(金)  マタニティオレンジ79 旅行気分の谷中界隈 
2006年02月16日(木)  『WEL-COME to パラダイス』と少年山賊団
2005年02月16日(水)  不思議なピンクの水、「ナーガ」水。
2002年02月16日(土)  パコダテ人@スガイシネプレックス


2009年02月15日(日)  あおいちゃん元気元気!『その夜明け、嘘』

青山円形劇場にて『その夜明け、嘘』を観る。宮崎あおいちゃん、吉本菜穂子さん、六角精児さんの三人芝居。同じ場所で『パコダテ人』を上映したのが2002年のキンダーフィルムフェスティバル。あれから6年半、あおいちゃんは朝ドラヒロインと大河ドラマ主演を務め、すっかり国民的女優になった。『篤姫』の余韻さめやらぬうちに舞台に立ち、映画『少年メリケンサック』公開。どちらもはじけまくって、いい意味で『篤姫』を裏切ってくれて、親戚のおばちゃん的親近感で見守る身としては、ますます目が離せない。

『相棒』シリーズの鑑識役の印象が強い六角精児さん、吉本菜穂子さんともに舞台で観るのは初めて。あおいちゃんは『星の王子様』ぶり。作・演出の福原充則さんの作品を観るのも初めて。新鮮な顔ぶれが見せてくれた『その夜明け、嘘』は、夜を駆けるママチャリの疾走感そのままにスピード感あふれる展開で、気持ちよく楽しめた。スランプで逃げる漫画家(あおいちゃん)と一緒に逃げるアシスタント(吉本さん)、追いかける編集(六角さん)という三人の話を主軸に、漫画家とアシスタントが立ち寄ったファミレスの人間模様や、漫画家の作品に登場するカップルの物語が絡み、さらに別れたカップルがそれぞれの田舎に帰った後の展開まで描いたかと思うと、編集の妻と幼子の話も加わり、ファミレス店主がろう城した模様を伝えるリポーターとキャスターが登場する。それらの話がチャンネルを切り替えるように入れ替わり立ち替わり現れる。

感心したのは、観ていて一度も「今はどのモードなのか」と迷子にならなかったこと。演じ分けた役者さんも達者ぞろいだったけれど、脚本もよく練られている。大胆なシーンのジャンプがうまく決まるたびに、「あそこからここへよく飛べたなあ」と離れ業を見るような心地よさがあった。初日を含めて今日が3度目という人によると、ずいぶんテンポが上がったというから、観客の反応を見た上で映画でいう編集作業をして、つなぎを改良しているのかもしれない。

舞台を横切って客席の外に飛び出し、違うドアから駆け戻って来る(外でも全力で走っているので大変らしい)あおいちゃんが元気いっぱい。全身をめいっぱい使ったオーバーな動きも楽しくて、本人もノリノリで演じているのが伝わってきて、観ているこちらもハツラツとした気持ちになってくる。少年メリケンサックのはじけっぷりもかなりのものらしく、早く観てみたい。

観劇に誘ってくれたのは、『パコダテ人』で大泉洋さん演じる古田はるおの娘、まゆ役を演じた前原星良(まえはらせら)ちゃんとせらまま。パコのときは幼稚園児だったせらちゃんも、もう中学生。パコをビデオで観た人がせらちゃんを見たら、メリケンサック状態だねえと話す。一緒に楽屋にお邪魔して、あおいちゃんにご挨拶。舞台が終わっても元気元気で、充実がにじみ出ていた。

【今日のおやつ】スパイラルカフェのシフォンケーキ

お芝居の前に、中国家庭料理希須林でお昼。今日も行列の大人気で、食後のお茶はスパイラルホール1階のカフェに移動。日替わりシフォンケーキはキャラメルとプラリネ。プラリネという言葉に弱いので、これをチョイス。甘すぎず、軽やかで、ペロリ。テーブルから企画展を眺められるアートな雰囲気気は、このカフェならでは。

2008年02月15日(金)  対岸の火事の後日談
2007年02月15日(木)  マタニティオレンジ78 遅速を愛す哉 
2002年02月15日(金)  ゆうばり映画祭3日目


2009年02月14日(土)  駅から歩いて湯沢高原スキー場

雪を見たい、と娘のたまが言う。今年の東京はなかなか雪が降らない。1月に大阪の実家へ帰ったとき、風に舞う雪をほんの数分見ただけだ。タイミング良く「駅から歩いて行ける湯沢高原スキー場」の話を聞いた。子どもが遊べるファミリー用ゲレンデもあるという。今朝起きて、「今日行ってみよう」と思い立ち、10時38分に上野を出たら、12時前に越後湯沢に着いた。

トンネルを抜けるたびに雪国が待ち受けているのを期待したけれど、越後湯沢に降り立っても、風景は茶色まじりで一面の銀世界ではなかった。駅で買った笹だんごを食べながら、歩いてゲレンデを目指す。道路の雪は解けていて、すべる心配はない。路肩に積もった雪も今朝の小雨で解けたせいか、固まって氷のようになっている。雪を触ったたまの感想は「かたい」。絵本で読んでいるふわふわの雪と違うのが不満な様子。


下調べなしに来たので、ファミリーゲレンデの場所もわからず、ロープウェイで上ってみる。ウィンドブレーカーをソリ代わりにしてたまを乗せて引っ張ると、「こわい」。雪だるまを作ろうと呼びかけると、「さむい」「おなかすいた」。ロープウェイの駅から歩いてすぐのところにある「Alpina(アルピナ)」というイタリアンレストランへ行ってみると大正解。本店は湯沢町の岩原スキー場にあるラ・ロカンダ・デル・ピットーレというピッツェリアで、雰囲気といい接客といい味といい、ゲレンデでこんな食事ができるとはと驚くレベル。大きな窓から銀世界をのぞみながら、焼きたての石釜ピザと釜焼きラザニアを楽しむ。大満足で店を出たのだけど、後で「絶景と極上イタリアンコース」なるもののチラシを発見。前菜・サラダ、スープ、ピザ、パスタ、肉料理、デザート、コーヒー又は紅茶がロープウェイ往復料金込みで3500円。ロープウェイが1500円だから、これはお値打ち。知っておれば……と予習不足を悔やむ。年中無休とのことで、緑の季節に来ても良さそう。越後湯沢へはお得な日帰りパックもあるようだし、次回はもう少し予習して行ってみよう。

ロープウェイで麓に下りると、その目の前がファミリーゲレンデだった。ソリを借り、歩いて坂を上って滑る。すべり台みたいで喜ぶかと思ったら、「こわい」「つめたい」「べちょべちょ」。たまがいちばん喜んだのは、大きなお風呂。風呂上がりに濡れた靴下を履くのをいやがり、わが子のひ弱さを思い知らされた。

越後湯沢で感心したのは、土産屋といい飲食店といい、どこもおいしそうな雰囲気を醸し出していること。駅とゲレンデを結ぶ道を歩く間に立ち寄ってみたいお店がそこかしこにあった。名物「もちぶた」を食べてみたかったけれど、たまが寝てしまったので夕食を食べずに帰る。新潟県中越地震を忘れないために地元の青年部が雪で作ったオブフェにろうそくの明かりを灯すところをちょうど見ることができた。東京とはまったく違う風景と空気に触れて、日帰り旅行なのに、ずいぶん遠くへ行ってきたような気分を味わった。

2008年02月14日(木)  火事と水回りクリーニングの木曜日
2007年02月14日(水)  松井久子監督の第三作を応援する会
2006年02月14日(火)  一度泊まってみたいチョコレートのホテル
2005年02月14日(月)  5年ぶりにケーキを焼く
2002年02月14日(木)  ゆうばり映画祭2日目


2009年02月13日(金)  Philaeのクッキーネックレス

「ハリーウィンストンって知ってる?」と先日ダンナに聞かれた。ウィンストン・セーラムなら知ってる。昔コピーを書いていたタバコのSalemを作っているR.J.レイノルズの本社があるところ。でも、ハリーウィンストンは知らない。答えはジュエリーブランドで、「ティファニーより憧れらしいよ」と知ったばかりのくせにダンナはイバった。贈ってくれる人がいないから、縁がないのである。

言われてみれば、ジュエリーブランドには相当疎い。宝飾欲が低いのだ。宝石を見ても憧れのため息が出ない。その代わり、ケーキの形のピアスにはときめく。ブランドでいえば、アーロンバシャ(Aaron Basha)のBaby Shoesにはハートを鷲づかみされた。宝飾欲が低い代わりに雑貨欲が高いから、かわいいカタチや面白いモチーフに惚れる。

雑貨欲を満たしつつお値段もかわいいジュエリーになかなか巡り会えずにいたのだけど、先日ネットで見つけたPhilae(フィラエ)というフランスのブランドのネックレスに一目惚れした。その名も「クッキーネックレス」と「ドーナツネックレス」。本物みたいなクッキーやドーナツが誘惑していて、思わず食いついた。クッキーがいいかドーナツがいいか、迷った末にクッキーを選んだ。

今日届いた包みを開けると、画像で見る以上に実物はクッキー感があり、ドーナツも欲しくなってしまった。誰に会うわけでもないのに早速つけて、鏡の前でニマニマしている。Philaeは1999年にイブ・サンローランがスポンサーとなり、ナタリーとオーシリーというデザイナー姉妹が立ち上げたブランドだそう。

クッキーネックレスに出会ったのは、ナルミヤインターナショナル会長だった成宮俊雄さんが手がける雑貨小物のネットショップMarizza(マリッツァ)。何年か前に辰巳琢郎さんの誕生パーティーにお邪魔する機会があったとき、知らない人だらけでオロオロしていたわたしに居場所を作ってくださったお茶目なおじさまが成宮さん。マリッツァが仕入れる雑貨にも、チャーミングな人柄がうかがえる。色使いが楽しいFanny fouks、童話の世界をモチーフにしたデザインがユニークなN2など、雑貨感覚で集めたくなるアクセサリーの宝庫。sold outになっているものも多いけれど、ちょくちょく再入荷、新作入荷しているので、こまめにのぞきたくなる。行くと、見たい商品がありすぎて、ついつい長居をしてしまう。仕事にならなくて困っている。

2008年02月13日(水)  マタニティオレンジ236 保護者会で問題解決 
2007年02月13日(火)  マタニティオレンジ77 一年先を想像する 一年前を振り返る 
2004年02月13日(金)  ウィーリー・ウォンカのチョコレート工場
2002年02月13日(水)  ゆうばり国際ファンタスティック映画祭 1日目


2009年02月12日(木)  ハンブルク・バレエ×ジョン・ノイマイヤー『人魚姫』

「ハンブルク・バレエの『人魚姫』観ない? 振付はノイマイヤーよ」と友人カヨちゃんよりお誘い。ハンブルク・バレエもノイマイヤーも知らないけれど、人魚姫には思い入れがある。市村正親さんが『BARアンデルセン』のマスターとアンデルセンの世界の一人芝居を演じる『真夜中のアンデルセン』という実験的な音楽劇ドラマを作ったことがあり、劇中で取り上げたのがこの物語だった。深夜番組にしては高視聴率だったけれど、シリーズ化はされず、次は『雪の女王』をやりたいという目論みは叶わなかった。でも、最初で最後の一本が人魚姫だったのは正解だったと、今日のバレエを観て、あらためて思った。

アンデルセンだと思われる「詩人」が第一幕冒頭から登場し、彼が語り部の役割を担って物語を運んでいく。上下する曲線で海底と地上を表現するなどシンプルだけど明快な美術は洗練された現代アートを見ているよう。衣装も気合いの入ったクラシックバレエと比べると、エコか、というほど軽量。王子に至ってはメインの衣装が水着で、これまでに見たどんな王子の衣装よりもロイヤル感がない。ヒマさえあればゴルフの練習をしている王子という描き方も画期的。

魔法をかけられて人間の足を手に入れる前の人魚姫をどう表現するのか興味があったが、空気が海水に見えるほど、人魚姫の「泳ぎ」はすばらしかった。男性ダンサーにリフトされて伸びやかに泳ぎ回るときはもちろん、二本の足を地につけているときさえ、海底を泳いでいるように見える。しなやかにくねる動きはまさに魚を思わせた。足を得た人魚姫が陸に上がると、一歩を踏み出す痛みが、ちゃんと見える。人間の体をうまく使いこなせないもどかしさも、手に取るようにわかる。人間の体がどれだけ雄弁に語ることができるかを見せられているようだった。

跳躍の高さや回転数よりもストーリーを表現することに身体を駆使した振付は、ラストにもよく表れていた。悲しみに沈む人魚姫の動きは静かになっていくが、伝わって来る感情が観客の心を動かしていく。それが膨らみきったところで、泡になって天に召される場面が訪れる。シンプルに徹した舞台装置はここからの逆算だったかと思えるほど、星くずのようなきらめきの静謐な美しさが際立った。

しばしの余韻を割って湧き起こった拍手と「ブラボー」の声が鳴り止まず、カーテンコールが繰り返された。手を取り合ってお辞儀を繰り返す出演者たちの手応えも伝わって来て、舞台と客席が心地よい興奮を分かち合った。振付のノイマイヤー氏が登場すると、拍手はいっそう大きくなった。

巨匠ノイマイヤーの名をバレエに疎いわたしは知らず、コピーライター時代に仕事をしたイラストレーターと同じ名前だ、いやあれはルーマイヤーだというお粗末な知識だったが、作品を観て、「女心がわかる」「胸が締めつけられる」という評判に納得した。あらすじをよく知っているせいもあるけれど、バレエのヒロインにこれほど感情移入したのは初めてだった。身体の動きのひとつひとつに感情が宿り、人魚姫の海よりも深い悲しみが胸を刺す痛みとなって伝わってくる。バレエは踊るのではなく演じるのだ。バレエダンサーの表現力の豊かさに目を見開かせてくれたジョン・ノイマイヤーの名は、今日の舞台とともにわたしの脳裏に刻まれた。名前にイマイが入っているのも親近感。

劇場を出て、並びの席で鑑賞した元同僚のヤマムロ嬢、タカトモ嬢と東急百貨店本店前のビストロVIRONで夕食。ここのパンが好きだけど、食事をしたのは初めて。シャンパンで乾杯し、ワインを飲み、パンをちぎり、カスレを食べ、バレエを語る。「今井が飲みかけの日本酒を手土産にうちに遊びに来たのを思い出して、こないだ爆笑したよ」とヤマムロ嬢に言われ、「ああ、ありましたね。ハーフボトル事件」と笑う。こういう時間が書き続ける力をくれる気がする。ちょうど仕事が空いた谷間の晩に、いい栄養を蓄えられた。

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