■朝日新聞土曜日版のBeを楽しみに読んでいる。とくに1面と2面の「フロントランナー」が面白い。各界の第一線で活躍する人物に毎週一人ずつ光を当てていくのだけど、「世の中にはこんな人がいるのか」「名前だけ知っていたこの人に、こんな転機があったとは」などと毎回感心しながら記事を切り抜いている。それぞれが歩まれてきた道は山あり谷あり。その起伏に試される中で培われた信念が、成功を引き寄せる力になっているようで興味深い。■「フロントランナー」で取り上げられた人物にはアンテナを張るようになる。先日、近所に住むK夫妻から「神戸の洋菓子店のアップルパイが送られてきたんですけど」とお裾分けの連絡をもらったとき、1月24日号で取り上げられた津曲孝社長の顔が思い浮かんだ。記事からはお菓子を心から愛している人柄が伝わってきて、そんな人が作るお菓子はどんな味がするのか興味をそそられた。でも、支店は神戸と大阪の百貨店の三軒にとどめ、生ケーキは西宮の本店でしか売らない。東京などから出店の引き合いがあっても応じない理由は、「店が出ていくと、菓子が旅をしなくなる」から……。そうなると、なおのこと、秘蔵っ子を味わってみたくなるのだった。お裾分けの受け渡し場所に現れたK夫妻が抱えてきたケーキの箱を見て、「あ、ツマガリだ!」。実はとても食べたかったのよ−と興奮して言うと、K夫妻もそれは何よりと喜んでくれる。食べたいと願ったものに出会わせてくれる、お菓子の神様っているのかもしれない。念願かなって対面したその味は、やさしい甘みがじんわり。嬉しさも手伝って、何重にもおいしく感じられた。
2002年02月19日(火) 償い