■今年のバレンタイデーはひさしぶりにケーキを焼こう、と思い立ったのは、先週会社で席が近所のY君とバナナを分け合いながら「昔よくバナナケーキを作ったんだよね」と話したら、「今度持ってきてくださいよ」と言われたから。かつては週末ごとに焼いては月曜日に会社に持って行って配っていた。それしか作れないのだけど、チョコレート味、ラムレーズン味、バナナ丸ごと一本入りなどバリエーションも生まれ、イマイのバナナケーキはなかなか人気があった。シナリオを書くようになって真っ先に削られたのが、ケーキを焼く時間だった。だから少なくとも5年は部屋にあの甘い香りが立ち込めることはなかった。さて、作ると決めたものの、パソコンに向かって締め切り前の原稿を打っていたら日付が変わりバレンタインデー当日になった。レシピは体で覚えていたので存在しないが、今は忘れてしまっているので勘が頼り。粉とバナナと無塩バターと卵と砂糖と牛乳少しを適当な配分で混ぜて焼くと、懐かしい香りがオーブンからこぼれてきた。今日の午前中に健康診断が入っていたため、無謀にも味見はせずに会社で配る。不思議なことに、受け取るときは大喜びされたのに、食べた後の反応が見事にない。夜中に残業中のデザイナーE君から電話があった。「今食べたよ。ありがとう。歯ごたえがあって、固さがええ感じ」。歯ごたえ? 固さ? パウンドケーキなんだけど……。
2002年02月14日(木) ゆうばり映画祭2日目