出産したことと関係あるのかどうか、このところ新聞で紹介されている短歌や詩に心を打たれることがふえた。五七五七七なり五七五に込められた思いを以前より感じ取りやすくなった気がする。何日か前に見かけた「二もとの梅の遅速を愛す哉」という与謝蕪村の俳句にはとくに感心して、何度も口に出してつぶやいている。二本の梅の木があり、日当たりか何かの違いで、咲くタイミングに微妙な差が生まれる、そのことを愛でている。そのようなことが解説には書かれていた。
早く咲くのもよし、遅く咲くのもまたよし。わたしにはこれが子育てにも通じるように思える。だからこそ、この句に惹かれるのかもしれない。首すわり、おすわり、寝返り、ハイハイ……同じ頃に生まれても、早い遅いの差が生じる。月齢が遅い子のほうに先を越されることもある。髪が伸びるスピードも、おっぱいを飲むのにかかる時間も、おむつのサイズが変わる時期も、言葉をしゃべりだすタイミングも、みんな違う。それでも、自分の子ができたときはうれしいし、人の子ができたときもうれしい。自分の子の分と、人の子の分と、成長を確かめられる機会が何度もあることを喜びたいと思う。いくたりの子らの遅速を愛す哉。
2002年02月15日(金) ゆうばり映画祭3日目