2009年08月18日(火)  シリアスな題材をコミカルに『命美わし』(1951年)

今度お仕事することになった監督さんを紹介され、会食していた昨夜のこと。「何十年も真面目に勤め上げてきた人が、ある日突然とんでもない悪さをしてしまうのは、魔が差すとしか言えないんですかねえ」などと話していると、監督が「ためにためた数十年の我慢を解放させる、スカートをめくる一瞬を描きたい」と真面目に語り、大笑いした後で、「その一瞬のために映画一本を撮るところにカタルシスがあるのかもしれない」と思い、監督というのは面白い発想をするなあと感心した。

深刻なことを深刻に描かず、むしろ笑いにまぶすというのは朝ドラ「つばさ」にもある傾向で、人生いろいろあるけど、だからこそ背負い込むより笑い飛ばそうという精神は、わたし自身が「くよくよしない」ことが身上なので、大いに共感できる。そんなわけで、今日神保町シアターで観た『命美わし』(大庭秀雄監督)は、そのタイトルと「自殺の名所で自殺しかけた娘二人が拾われてきて、その家の兄弟と恋に落ちる」というあらすじから、しっとり、ねっとりした作品なのだと想像していたところ、爆笑の連続で、いい意味で裏切られ、気に入った。

旗を持ったガイドが観光客相手に「こちらが自殺のメッカでございます」とうぐいすのような美声で語る冒頭からおかしみがあるのだが、その沼の近くに住む一家の主(笠智衆)が妻(杉村春子)と三味線と琴の手合わせをしている最中に、突然尿意を催すがごとくヌッと立ち上がる。それが、誰かが死のうとしているのを察知したサインで、袴を重ね履きし、長棹を構えて意気揚々と助けに向かうのだが、その張り切りぶりが笑いを誘う。

死ぬところを邪魔された娘たちは嘆いたりなじったりするが、迎える杉村春子の慣れた様子がおかしい。かつて命を救われた者同士がその家で意気投合して結婚し、子どもを連れて里帰り(?)してくると、「こちらが先輩。こちらは新米」と自殺未遂者同士を紹介し合う。この辺りのからっとした描き方が、なんともわたし好み。重くなろうと思えば、いくらでも重くなれるテーマと内容なのに、軽やかに爽やかに描き、それが命を軽んじるのではなく人生を謳歌しているように映るところがお見事。

ラスト近く、「息子たちの結婚相手には過去のない娘をと願っていた」のようなことを杉村春子が笠智衆にぽつりと言うが、苦労を知った分、優しさを備えた娘たちであることも理解していて、表情は晴れやか。それに対し、笠智衆は、「自分はお嫁さん探しに棹を担いで沼へ行っていたようなものだ」といったことを言って笑い、客席も和やかな笑いに包まれる。二人には息子二人の下に妹がおり、「今度は婿を探しに行かねば」のようにおどける笠智衆がさらなる笑いを呼ぶ。自殺の話なのに、なんとも微笑ましく、そのギャップを大いに楽しんだ。

2008年08月18日(月)  『SEX AND THE CITY』とアラフォー
2007年08月18日(土)  マタニティオレンジ159 三世代合同誕生会でたま1才
2004年08月18日(水)  スチームボーイと津嘉山正種さん
2002年08月18日(日)  24時間テレビ


2009年08月17日(月)  成瀬巳喜男の『女が階段を上る時』『乱れる』『妻よ薔薇のやうに』

神保町シアターの企画上映「没後四十年 成瀬巳喜男の世界」が7月4日から8月14日までの42日間の会期を終えた。上映される42作品をわたしがほとんど観ていないことを見越したご近所仲間で映画通のT氏からは事前に資料が送り届けられた。「しっかりお勉強なさってください」と便箋3枚にわたる熱い激励文が添えられ、一本でも多く観るようにとのお達しがあったが、なんだかんだと仕事が立て込み、なかなか神保町へ足を運べないまま二週間が過ぎた。すると、「成瀬の作品の中で個人的にかなり好きな『妻の心』と『乙女ごころ三人娘』をお忙しかったとは存じますがたぶんご覧いただけなかったのは、四年越しで推奨し続けてきただけにとても残念でした」とT氏より嘆き節のメールが届き、あわてて『妻』を観に行ったのが7月26日(>>>日記)。その後、『女が階段を上る時』『乱れる』『妻よ薔薇のやうに』と立て続けに観たが、結局この4作品止まりになったので、T氏としては「勉強が足らん」ということになろうか。

『女が階段を上る時』と『乱れる』は高峰秀子が対照的な役を好演。ともに戦争で亡くした夫を慕うところは共通していて、その一途さは彼女によく似合う。『女が階段を上る時』では、したたかなバーのママを演じたが、どんな役でも分別と良識のある人に見え,汚れないのが彼女のすごいところ。戦争未亡人という人物の肉付けも効いている。モノローグで語られる本音に哀感があった。

『乱れる』では、「加山雄三って、こんなにいい男だったの!」と目を見開いた。見た目だけでなく「ちょっとワルだけど、亡くなった兄の嫁(=高峰秀子)を想う純粋な弟」という役柄もカッコいい。家に居辛くなった兄嫁が故郷へ帰る夜行列車に乗り込み、ボディガードのように付き添う終盤。列車が北へ北へと向かい、客が入れ替わるにつれ、少しずつ座席の距離を詰めていく二人の描写が心に残った。ラストには唐突感があり、「こんな幕切れって……」と面食らったけれど、あえて引っかかりを作ったのだろうか。「これはいかに?」と突っ込みを入れながら巨匠の作品を鑑賞するのは、たいへん勉強になる。

突っ込みと言えば、『妻よ薔薇のやうに』には、いくつかもの申したいところがあった。まず、タイトル。原作の「二人妻」だとそのまますぎるという判断で変えたのかもしれないが、登場する妻も愛人も「薔薇」のイメージはなく、あえて言えば本妻に「トゲ」はあるのだけれど、「薔薇のやうに」ではない。「薔薇のやう」な妻を求めているとすれば、野暮ったい田舎の愛人に心を寄せる内容と矛盾する。謎の深いタイトルだ。

この作品でもったいないと感じたのは、本妻が新聞に夫を想う歌を投稿しているという設定。一緒に暮らしていたときはさほど愛情を示さなかったのに、夫に逃げられてから切々と女心を訴える本妻の怖さと執念深さが出ていて面白いのだけど、劇中では本妻の性格を示すエピソードとして描かれて終わっている。新聞に載るのなら、離れて暮らす愛人の目に触れ、それによって愛人が本妻の気持ちを知るという描き方ができたのでは。愛人宅を訪ねた娘が、新聞の切り抜きを見つける場面などあれば、ドキドキしたのに、などと考えてしまった。この意見をT氏に進言すると、「うむ、なるほど」と一応は感心してもらえた様子だった。

同じ監督の作品を続けて観ると、癖や趣向のようなものがうかがえて、「成瀬らしい」などと通ぶったことを感じるようになる。小ネタがなかなか面白く、女が手にしているものを弄ぶ場面が多いとか、鳥が好きなんだろうかとか。脚本家になりたての頃、シナリオ作家協会が新人ばかりを集めた親睦会を開いたことがあり、どの輪に加わろうかとキョロキョロしていたら、「ナルセ、いいよねー」「今日も観ちゃった」と熱く語る一団があった。その輪の外側に突っ立って聞きながら、「知らない俳優だなあ」と思っていたのだが、今だったら少しは知ったかぶりができそうだ。

【お知らせ】『ぼくとママの黄色い自転車』公開まであと5日!

あと5日で公開ということは、娘のたまはあと5日で3歳。いい誕生日になりますかどうか、皆様の応援よろしくお願いします。初日舞台挨拶上映分は無事完売した様子。

現時点での上映劇場は、こちら。少しずつふえているので、公式サイトbokumama.jpをチェックしてくださいね。ニュースページにて、キャリアマム試写会での今井雅子のトークの模様もご覧いただけます。

8.22 【北海道】札幌シネマフロンティア 011-209-5400
10.3 【青森】 シネマディクト 017-722-2068
9.26 【青森】 八戸フォーラム 0178-44-4411
8.22 【宮城】 MOVIX利府 022-767-7400
8.22 【宮城】 チネ・ラヴィータ 022-299-5555
10.3 【山形】 山形フォーラム 023-632-3220
8.22 【東京】 新宿バルト9 03-5369-4955
8.22 【東京】 T・ジョイ大泉 03-5933-0147
8.22 【東京】 立川シネマシティ 042-525-1251
近日公開 【東京】 船堀シネパル 03-5658-3230
8.22 【東京】 ワーナー・マイカル・シネマズむさし野ミュー 042-567-8717
8.22 【東京】 品川プリンスシネマ 03-5421-1113
8.22 【神奈川】TOHOシネマズららぽーと横浜 045-929-1040
8.22 【神奈川】川崎チネチッタ 044-223-3190
8.29 【神奈川】ワーナー・マイカル・シネマズ港北ニュータウン 045-914-7677
8.22 【千葉】 エクスワイジー・シネマズ蘇我 043-209-3377
8.29 【埼玉】 MOVIX三郷 048-949-2300
8.29 【埼玉】 ワーナー・マイカル・シネマズ浦和美園 048-812-2055
8.22 【茨城】 ワーナー・マイカル・シネマズ守谷 0297-47-0101
8.29 【群馬】 MOVIX伊勢崎 0270-30-1700
8.22 【新潟】 T・ジョイ新潟万代 025-242-1840
8.22 【新潟】 T・ジョイ長岡 0258-21-3190
8.22 【長野】 長野千石劇場 026-226-7665
8.22 【長野】 松本エンギザ 0263-32-0396
10/3〜23【長野】i city cinema 0263-97-3892
9/12〜25【静岡】静岡シネギャラリー 054-250-0283
8.22 【愛知】 ゴールド劇場 052-451-0815
8.22 【愛知】 ユナイテッド・シネマ豊橋18 0532-38-0888
8.22 【愛知】 イオンシネマ岡崎 0564-72-3020
9.5   【愛知】 イオンシネマ・ワンダー 052-509-1414
8.22 【岐阜】 TOHOシネマズモレラ岐阜 058-320-5770
8.22 【大阪】 梅田ブルク7 06-4795-7602
8.22 【大阪】 ワーナー・マイカル・シネマズ茨木 072-621-0807
8.29 【京都】 京都シネマ 075-353-4723
8.22 【広島】 T・ジョイ東広島 082-493-6781
8.22 【広島】 広島バルト11 082-561-0600
近日公開 【広島】 エーガル8シネマズ 084-960-0084
8.22 【島根】 T・ジョイ出雲 0853-24-6000
近日公開 【愛媛】 シネマサンシャイン大街道 089-933-6677
8.22 【岡山】 TOHOシネマズ岡南 086-261-9051
8.22 【香川】 ワーナー・マイカル・シネマズ綾川 087-870-8787
8.22 【香川】 ワーナー・マイカル・シネマズ高松 087-822-0505
8.22 【福岡】 T・ジョイリバーウォーク北九州 093-573-1566
8.22 【福岡】 T・ジョイ久留米 0942-41-8250
8.22 【福岡】 TOHOシネマズトリアス久山 092-957-5555
8.29 【長崎】 TOHOシネマズ長崎 095-848-1400
10.3 【佐賀】 シアター シエマ 0952-27-5116
8.22 【大分】 T・ジョイパークプレイス大分 097-528-7678
8.22 【鹿児島】鹿児島ミッテ10 099-812-6662

2008年08月17日(日)  マタニティオレンジ322 イヤイヤしたり、モーモー鳴いたり。
2007年08月17日(金)  年に一度だけ思い出されても
2004年08月17日(火)  サービスって?
2002年08月17日(土)  浴衣・花火・箏・まが玉


2009年08月16日(日)  朝ドラ「つばさ」第21週は「しあわせの分岐点」

くよくよしないことが取り柄だと心得ているので、「あのとき、あっちの道を選んでいれば」と後悔したり、選ばなかった人生と選んだ人生を比べたりということは滅多にしない。でも、「つばさ」の打ち上げの最中に、「もし、この仕事を受けていなかったら、今ここにはいなかったんだなあ」としみじみとなった。脚本家であるからには脚本として作品に関わりたいし、結果的に脚本協力となった映画『子猫の涙』と『犬と私の10の約束』も、当初は自分の脚本でというつもりだった。自分の脚本でない仕事に一年あまりの時間と労力を注げるだろうか。その間に他の大きな仕事が来たら、チャンスをみすみす逃すことになってしまう。でも、朝ドラの制作に関われるチャンスなんて、最初で最後かもしれない……。数日間考えて、答えを出した。その結論が正しかったと自分に胸を張れるように仕事をしたい。そう願って、力を尽くした。

他の朝ドラの現場は知らないけれど、一生に一度の朝ドラが「つばさ」でよかった、とつくづく思う。「手を抜いている人を見たことがない」と打ち上げの挨拶でチーフディレクターの西谷真一さんが語ったが、ひたむきで熱い人たちがそろっていた。「こんなに人があったかい現場も珍しい」という声もよく聞かれた。そのあったかさは人恋しさの現れでもあり、キャストもスタッフも、淋しがりやで人なつこい、気遣いの人が集まっていた。人と人はわかりあえる、そのことを諦めたくない人たちが、「つばさ」ワールドを作り上げた。

明日からの第21週のタイトルは、「しあわせの分岐点」。分岐点といえば、「つばさ」は、いわゆる朝ドラの定番らしいトーンで作ることもできたし、そうしたほうが安定した視聴率を取れたかもしれないけれど、あえてチャレンジを選んだ。家を守る母ではなく家を捨てた母。夢を追うヒロインではなく、夢を封じてきたヒロイン。その逆転母娘が再会し、26週かけてお互いや周囲に起こす化学変化が絆に昇華していく、というエネルギーの要ることをあえてやっている。わたしが打ち合わせに参加するようになったときには、すでに世界観もテーマもできていたけれど、そのときから、放送が始まって以来も、制作チームがやろうとしていることは一貫している。「思い残すことはありません!」とも西谷Dは爽やかに言い切った。選んだ人生を肯定し、真っすぐに前を向いていく、「つばさ」チームの潔さと強さを今あらためて思っている。

打ち上げ前の撮りきりセレモニーで、玉木竹雄役の中村梅雀さんは、「家族の絆を諦めちゃいけないってことが最後まで描かれている」と語った。「起きてしまったことは変えられないけれど、物語の続きは自分たちの手の中にある」「選ばなかった人生を悔やんではいけない」「人生は元取るようにできている」など、言葉は違っても、「つばさ」は、今自分が立っている場所を受け入れ、そこから次へ踏み出すエールを送ろうとしている。玉木家最大の危機につばさは、家族は、どう立ち向かうのか。どうぞご注目ください。演出は、4、5、7、11、18週の大橋守さん。

そして、続く第22週「信じる力」は「脚本協力 今井雅子」のクレジットが毎日出る増量週間。つばさの幼なじみのお隣の万里(吉田桂子)の成長と友情をお楽しみに。

【お知らせ】『子ぎつねヘレンの10のおくりもの』ラジオ初登場

『ぼくとママの黄色い自転車』の紹介でなにかと引き合いに出される『子ぎつねヘレン』。映画から生まれたいまいまさこの絵本も頑張っています。 『子ぎつねヘレンの10のおくりもの』がNHK新潟放送局のアナウンサーによるラジオの朗読コーナー「絵本の庭」(朝ドラ「つばさ」の「おはなしのへや」みたいな番組のよう)に登場。 8月13日に新潟地区限定で放送されました。こちらで朗読を聴けます。 Macでは再生できませんでしたが……聴かれた方、感想をお知らせくださいね。

2008年08月16日(土)  谷中のうどん屋で雨宿り
2007年08月16日(木)  円周率は音楽だった
2006年08月16日(水)  売れ行き好調『子ぎつねヘレン』DVD
2005年08月16日(火)  いいにおいのお芝居『おじいちゃんの夏』
2004年08月16日(月)  伊豆高原のアンダティバリゾート
2003年08月16日(土)  6人で400才
2002年08月16日(金)  持ち込み企画


2009年08月15日(土)  見つけた!vynilの葉っぱ身長計

朝ドラ「つばさ」打ち上げでひさしぶりに朝帰り。仕事で朝帰りはちょくちょくあるけど、飲んで朝帰りは会社員時代以来かもしれない。ということは、3年余りぶり。昼に起床し、前から約束していた元同僚ゲッシー嬢のイトウ家へ一家で遊びに行く。ダンナ同士も今では妻抜きで会う仲で、娘同士はひとつ違い。うちの娘のたまより10か月後に生まれたタマキちゃんも愛称は「たまちゃん」で、会うときは「おおたま」「ちいたま」と区別している。

イトウ家訪問のお楽しみのひとつが、センスのいいインテリアや雑貨。「これ、どこで買うの?」と片っ端から質問したくなるほど、わたし好みの、だけどカラフルというよりはシンプルで落ち着いた趣味でダンナにも受け入れられそうな物がそろえられている。一か所を留めて、三脚でふんばる壁かけ(壁立ち?)キャンドルホルダーや、背面が鏡になっていてキャンドルが延々と続く箱型キャンドルスタンドなど、キャンドル雑貨がとくに充実。

壁にシルエットのように貼られた黒地のキャラクターを見て、「これ面白いね」と言うと、ゲッシー嬢との共通の友人、元同僚のミユキちゃんちで見つけて、早速真似したとのこと。シール式の壁紙飾りで、壁紙を張り替えずに部屋をイメチェンできる。デザインがとても洒落ていて、アートの匂い。パリ発のvynilという商品だった。

調べてみると、いろんなパターンがあり、その中に、探し求めていたものを見つけた。家具ショップのアクタス(ACTUS)のカタログに植物が身長計になっている壁紙が写っていて、商品の家具よりもそちらが気になっていた。「身長計つき壁紙」なのだと思っていたら、「壁紙に貼り付ける身長計」だったのだ。アクタスのお店にはなく、いっそアクリル絵の具で壁に描いてみるかとも考えていたので、思いがけない形で見つかり、バンザイ。早速購入をと「measuring plants」の値段を見ると12800円也。壁紙を替えると思えば安いが、引っ越しても次の家には持っていけないとなると、「あと何年、この賃貸マンションに住むか?」と計算が働いてしまう。悩ましいところ。

【お知らせ】 『ぼくとママの黄色い自転車』公開一週間前

まだまだ先と思っていたら、あっという間。今井雅子にとっては3年ぶりの映画なので、ドキドキもワクワクも大きく、口コミに励む今日この頃。知り合いのお店にチラシを置かせてもらったり、行く先々でチラシを手渡したり。

以前「でか!あんぱん」を購入(>>>日記)した縁でメール交換している巣鴨の創造パン屋「アルル」のパンG(爺?)さんは、サイトとレジカウンターに今井雅子コーナー(?)を設けて「つばさ」と『ぼくママ』を応援。先日チラシを渡しに行ったら、「チラシ代」と試作品のクッキーをどっさりくださり、恐縮。ファンというのはありがたいものです。今井雅子の顔と名前が一致していなかったパンGさん、わたしを見て、「たくさん仕事なさっているから、もっと年配で怖そうな人かと思っていました」と想像とのギャップに驚かれたよう。


お礼にアルルのパンをご紹介。しょっぱさが甘さを引き立てる塩メロンパンと、ずっしり重いかぼちゃパン。かぼちゃパンは娘のたまが片時も離さず食べ尽くしたので味はわかりませんが、アルルのパンは体にやさしい天然の材料にこだわっているので、子どもも安心。

2008年08月15日(金)  マタニティオレンジ321 ケェコ、またくる?
2007年08月15日(水)  人の名前が出てこない
2004年08月15日(日)  ハリケーン・チャーリーさん
2002年08月15日(木)  川喜多記念映画文化財団


2009年08月14日(金)  半径5メートルの幸せ。朝ドラ「つばさ」撮りきり&打ち上げ

脚本協力として関わっている朝ドラ「つばさ」の撮影終了を祝う「撮りきりセレモニー」と打ち上げの案内をいただき、「一生に一度あるかないかの機会!」とばかり、打ち合わせの予定を急遽早めてもらって馳せ参じた。

5分遅れで渋谷NHKの105スタジオに到着すると、ちょうど最後の撮影を終え、セレモニーが始まったところ。報道陣と関係者でごった返す後ろから伸び上がって拝見。「全156回、撮りきりました。全182日、我々はつばさと共にありました」(リハーサル51日、本番81日、ロケ50日のような内訳だった記憶が……未確認)と後藤高久チーフプロデューサーが挨拶し、万雷の拍手。天井からするすると下ろされたくす玉(「美術部、割れても多部さんに当たりませんよね? ま、当たったら縁起物と言うことで」と後藤P)をヒロインつばさ役の多部未華子ちゃんが割り、クラッカーが鳴らされ、紙吹雪と煙と歓声がスタジオを包んだ。



「ヒロインから一言」と後藤Pがマイクを向けるものの多部ちゃんは「まだ実感が湧かなくて……」と涙で言葉にならず、花束贈呈を務める間にコメントを考えてもらうことに。

大谷翔太(小柳友)→大谷佐知江(手塚理美)→斎藤浩徳(西城秀樹)→篠田麻子(井上和香)→真瀬昌彦(宅間孝行)→丸山伸子(松本明子)→ロナウ二郎(脇知弘)→浪岡正太郎(ROLLY)→真瀬優花(畠山彩奈)→丸山隼人(下山葵)→宇津木泰典(金田明夫)→宇津木佑子(広岡由里子)→宇津木万里(吉田桂子)→鈴本宏夫(佐戸井けん太)→鈴本俊輔(三浦アキフミ)→玉木知秋(冨浦智嗣)→玉木千代(吉行和子)→玉木竹雄(中村梅雀)→玉木加乃子(高畑淳子)の主な共演者19名に、多部ちゃんが一言とともに花束を手渡し、挨拶をもらっていく。セレモニー感とあたたかみのあるコメントリレーに聴き入った。

「私がヒロインだった頃よりずっとしっかりしていて大人だった」と手塚さん。「高校の後輩なんだけど、(仕事ぶりは)先輩で」と井上さん。「メイク室でもぎりぎりまで台詞を覚えている姿を陰から見守っていました」と松本さん。多部ちゃんが「尊敬しています」と言葉をかけた金田さんと広岡さんは「こっちこそ尊敬しています」などと、多部ちゃんへの賞賛の声が続々。「若い人というのは、一年でこんなに変わるのか、と『伸びしろ』をうらやましく思った」と佐戸井さんは多部ちゃんだけでなく若手キャスト一同を褒め讃えた。

「変な大人に囲まれて大変だったね」と多部ちゃんに声をかけられた彩奈ちゃんは、「また撮影があると思います」とコメント。後で聞くと、「また一緒に撮影できるように頑張りたいと思います」と言いたかったのだけど緊張していたとのこと。

「台本もらう役は初めてで、みんなの足を引っ張るんじゃないか不安で……」と涙ぐんだ吉田さんは、多部ちゃんと何でも話せる親友になったそう。

キャスト発表のときの挨拶で「朝ドラに怪奇な風を吹かせます」と宣言したROLLYさんは「わたくしは未来永劫浪岡正太郎であり続けます!」と高らかに。朝ドラ出演で、大阪のお母様もようやくご近所に息子を自慢できるようになったとお茶目なコメントも。

玉木家への花束贈呈は、笑いと涙。「この子、ほんとにアホなんじゃないかって思うこともあって……。不思議な子でした」と多部ちゃんに言われた富浦くんは、多部ちゃんのことを「ほんとにかわいくて大好きでした」。「玉木家でいちばんお茶目な人」と後藤Pに紹介された吉行さんは、「私がいちばん好きな台詞は、つばさを抱きしめて、はばたきなさいと言うところ。初めて千代が素直になれた場面で……」とひとしきり話したところで、思い出したように「お疲れさまでした」。場内は爆笑とともに、「ほんと、天然なんだなあ」とあらためて納得。

梅雀さんには「目を見ているだけで気持ちをわかってくれた」と多部ちゃん。梅雀さんは「振れ幅の大きい役は好きですが、この役は大きいなんてものじゃなかった。迷うこともあったが、そんなときに多部ちゃんを見ると、的確にゆるぎなく存在していて、自分も自信を持ってやっていこうと思えた」と語り、「あんた、ほんとすごいよ。自慢の娘だ」と絶賛。

最後の高畑さんには「これ以上言うと泣きそうなので何も言いません」と多部ちゃん。「スタジオの壁の色、皆さん一人一人の顔、あの時計が今日は違って見えます」と高畑さん。放浪の母という難しい役を負い、「早く終わらないかなあと思ってあの時計を見ていたこともあった」という。「今夜は酔っぱらいが渋谷に二体(加乃子とつばさ?)転がることになると思います!」。この正直さ、潔さが高畑さんの魅力。「今、気になる女優はと聞かれたら、多部未華子と答えます。なりたい女優はと聞かれたら吉行和子と答えます」。どんな現場でも愚痴をこぼさず役に徹する吉行さんの姿に、こんな女優がいるのかと感服したそう。

多部ちゃんにはチーフディレクターの西谷真一さんと脚本の戸田山雅司さんから花束贈呈。このときだったか、打ち上げのときだったか、「皆さんにはとんでもないことをやらせてしまいまして」のようなことを戸田山さんがコメント。

NHK側からの挨拶の後、フォトセッションがあり、つばさ以外の玉木家と翔太を残して、他のキャストはレッドカーペットを歩んで退場。玉木家+翔太が今後の見どころや作品の魅力を紹介。「これまでにまいた種が刈り取られていくのでますます見逃せません」と高畑さん。「家族の絆を諦めちゃいけないってことが最後まで描かれている」と梅雀さん。「総集編でも話は進みます」と後藤P。「女の一生をきちんと描かれている。女として言われたいことが書かれている」と吉行さん。添え物的なおばあちゃんではなく玉木千代という一人の女性として描かれたことをとても喜び、面白がってくださっている。「どんでん返しを楽しんで欲しい。大きくなった大谷翔太を見て欲しい」と小柳くん。撮影の10か月でいちばん変化したのは「やせて10キロ太ってまたやせた知秋」と梅雀さんは言い、「未華子ちゃんは慈悲深い顔になっていった」。

そこに戻ってきた多部ちゃんもインタビューに加わる。「今いちばんやりたいことは?」の質問に、「この後の打ち上げでいかに盛り上がれるか。この日を笑顔で迎えられるためにみんな頑張ってきたと思うので」と多部ちゃん。「投げ出したくなったこともあったけど、みんなに励まされて今日まで来られた」と正直。つばさというキャラクターに対して一言かけるとしたら、「つばさはとてもいい子なので……もうちょっと休んだらと言ってあげたい」。「10か月頑張ったご褒美に何が欲しいですか」という質問の答えは、「もう台詞を覚えなくていい」こと。「川越で一番印象に残った場所は?」の答えは「グラウンド」。翔太との別れや、これから放送の22週など、グラウンドでのロケは何度もあって思い出深く、「なんてことのない場所だけど、そこで季節を感じた」という。「つばさ」での一番の収穫は、「お芝居を楽しんでいる、お芝居が好き、と恥ずかしげもなく堂々と言い切る役者たちに出会って刺激を受けた」ことだとか。そう語る多部ちゃんの目も生き生き、キラキラしていて、こんなにキレイな子だったっけと吸い込まれた。

取材が終了し、104スタジオに移動して、スタッフとキャストの記念撮影。最前列の戸田山さんと後藤Pの間から顔を出すという好位置に入れていただく。宅間さんがぽてと君を、3番手のディレクターの福井充広さんがあまたま君をかぶっている。一枚目は真面目に、あとは「つばさー!」のかけ声とともにガッツポーズで。この写真は家宝になりますな。

2番手のディレクターの大橋守さんが、近くにいた方々に紹介してくださる。今日が初対面の方、一方的に存じ上げている方がほとんど。万里役の吉田桂子さんに、初めましての挨拶。彼女のブログの立ち上げを大学時代の友人、松本拓也君が偶然手伝っていたご縁があり、その話をした。

優花ちゃん役の畠山彩奈ちゃんとお母さんにご挨拶し、「うちの娘が優花ちゃんのファンです」と伝える。その近くにいた西城秀樹さんにも思いきってご挨拶。「YMCAって踊った世代です」と自己紹介し、お子さんの話などをする。西城さん、カッコ良くて、優しくて、惚れ惚れ。顔合わせでご挨拶した松本明子さんはあいかわらず丁寧で、こちらが恐縮するほど腰の低い方だった。

19時から打ち上げ(撮影終了を祝う会)。おお、なんと広い会場! 間もなくここを人が埋め尽くすことに。

撮影現場にはほとんどお邪魔していないし、右も左も知らない人だらけ。キョロキョロ、オドオドしながら会場をさまよっていると、プロデューサーが気をきかせてくれ、テーブルに席を用意してくれたので、何とか居場所ができた。お隣は、鈴本スーパー社長の妻の役で、声のみ出演の加藤みどりさん。とても気さくで明るい方で、話も弾み、おかげで時間を忘れるほど楽しい一次会となった。「つばさ」の台本が届くたび、大笑いされていたそう。キャスト挨拶では、映像では見られなかった鈴本家一家三人集合の図が実現。挨拶する佐戸井さんの後ろから、「あんたー! しっかりしなさい!」と加藤さんが喝を入れる一幕に、場内が沸き返った。

開会の少し前には、中村梅雀さんと吉行和子さんにご挨拶できた。梅雀さんとはディズニー話が弾んだ。コピーライター時代に東京ディズニーランドと東京ディズニーシーの広告を作っていたので、梅雀さんがディズニー好きと知ってうれしかったです、と話す。梅雀さんは、にこやかで、優しさがあふれていて、本当に素敵な人。

同じテーブルには、斎藤興業社員・水村役の市山貴章さん、横矢みちる役の山本未来さん、城之内房子役の冨士眞奈美さんも。市山さんはとらえどころのない不思議な人で、登壇しての挨拶では意味不明なインチキ(?)中国語トークを延々と。誰か止めて〜という会場の心の叫びを代表して、ボス・斎藤役の西城さんが「やめろ」。市山さんの付き添いで顔合わせのときに来ていたのが、『子ぎつねヘレン』のときに大沢たかおさんのマネージャーだった植木さん。

富士さんは、今井雅子の最初で最後のサスペンスドラマ「ドクター・ヨシカの犯罪カルテ〜診察室に犯人が来た」(坂上かつえさんと共同脚本)で、バットを振り回すお茶目なお手伝いさん役を演じてくれた。その話をすると、歌うような美声で「あの役、とっても楽しかったわ〜」。第25週で房子が玉木家に乱入する場面を同じテーブルの方々に紹介して、「わたくしが、もう、とんでもないことをするの。あれも楽しかったわ〜」。素顔もとてもチャーミングな人。玉木千代の天敵役に指名されたのは、仲良しの吉行さんとの共演を見たいという制作陣の意向もあったので、挨拶では「そのことについては、吉行和子に感謝しています」と語り、会場の笑いを誘っていた。

放送中の第20週「かなしい秘密」に谷村鉄次役で出演の及川いぞうさんともお話できた。とても気さくで、愛嬌のある人。「あまたまのモデルは私です」と坊主頭を撫でながら、渋〜いお声で。9/2(水)〜9(水)新宿スペース107にて昭和芸能舎(新宿芸能社 改め)第14回公演「長ぐつのロミオ」に出演とのこと。作・演出は『パッチギ!』『フラガール』の羽原大介さん。これは観てみたい。


出演者、スタッフの挨拶の締めは制作陣。プロデューサーとディレクターを合わせて、この大所帯。大橋さん、後藤さん、西谷さんと記念撮影。どことなく似ている3人。仲も良く、チームワークはバツグン。お世話になりました。

高畑淳子さんとも写真を撮らせていただいた。ダンナ父がわたしと出会うはるか昔から高畑さんと交流があり、今でも「アツコ、アツコ」と自慢の妹のように言っているので、「巣鴨の父に見せます」と記念撮影をお願いした。でも、他の方々には怖れ多くて……。「ブレスト〜女子高生、10億円の賭け!」のときは、小林涼子ちゃんがいたこともあって、写真を撮りやすかったけど、白いミニのワンピースが眩しい今日の多部ちゃんは、眺めるだけだった。ブレストの頃からずいぶん大人っぽくなったけど、「つばさ」の出演者発表のときと今日とでも顔つきは違っていて、女優のオーラもケタ違い。「今日ここに皆さんがこうして集まれたことを、とてもうれしく思います。人と人をつなぐのが、わたしの仕事ですから!」と壇上で言い切った多部ちゃんは、自信にあふれた実にいい顔をしていた。

多部ちゃんは、二次会の店を出たときに「今井さん、これを」と呼び止め、リボンに「つばさ 2009」と手描きしたストラップを差し出してくれた。共演者とスタッフ全員の分を用意したそう。撮影が続くなか、時間を作ったんだなあ。ほんとうに優しくて気配りのできる人で、年上の役者さんたちが「尊敬しています」と言うのもうなずける。「またご一緒できてうれしいです」と言ってくれたので、「二度あることは、きっと三度あるよ」と答えた。マネージャーの小山理子さんは、宮崎あおいちゃん主演の『パコダテ人』が縁で『風の絨毯』の話を持ってきてくれ、『ブレスト』『つばさ』でもご一緒することになった。

話は戻って、二次会会場はライブハウスのようなところ。最初、後藤さん、戸田山さん、西谷さんと同じテーブルで「打ち合わせが始まりそうですねえ」。戸田山さんには一次会でほとんどお話しできなかったので、あらためてありがとうございましたとお礼を言う。手伝っているんだか足を引っ張っているんだかわからないこともあったけれど、わたしの意見を尊重してくれ、いいところは褒め、悪いところは正し、戸田山師匠の門下で学ばせてもらったような16か月だった(わたしは「つばさ留学」と呼んでいる)。

原宿クエストホールで二人芝居の初日を終えたイッセー尾形さんと小松政夫さんが二次会から登場し、拍手喝采。「遺影の役をやりました小松です」と挨拶された小松さんは、300カットほど撮ったという遺影撮影を百面相で再現。これが異様におかしかった。さらに小松さんの音頭で、一同「つばさ、イエーイ」。Vサインでこんなに盛り上げてしまうとは、やはりタダ者ではない。

NG集の上映に大爆笑し、出演者による一夜限りの豪華ドリームメンバーのバンドの生演奏で「あなたが好き」や「愛の季節」を大合唱したり。出演者と戸田山さんからのプレゼントの抽選大会があったり、打ち上げもサービス精神満点。最後は再びバンドの熱演。なんて贅沢な時間でしょう。ROLLYさんをつかまえて「ファンです。ロッキーホラーショー3回観ました!」と話しかけると、「今でも覚えております」と台詞をすらすらと暗唱してくれ、感激。普段の会話は大阪弁だそうで、この人にあて書きで大阪弁の台詞を書きたいと思った。宅間孝行さん、井上和香さんともお話しできて、思い残すことはございません。

二次会で帰るつもりが、宅間さんのマネージャーさんと話が弾んで三次会に流れ込み、知らない人たちがとても楽しそうに盛り上がるのをまぶしい思いで見ながら、つばさチームの結束の強さと作品への愛をあらためて知った。隣の席に座った女の子から、撮影が始まる前に植え込みなどを仕込む「造園」という仕事があることを教えられる。この人たちは大道具で、あの人はデザイナーで……と紹介されながら、なんとたくさんの人たちが、力を合わせてあの世界を作り上げていることかと感嘆。「半径5キロの幸せ」を描く「つばさ」ワールドにちなんで、今日の打ち上げのテーマは「半径5キロの幸せ」探しだと一次会の開会の辞にあった。その言葉通りの一夜となった。

2008年08月14日(木)  マタニティオレンジ320 ちぇらちゃん、みじゅ、ちぇらまま、きー!
2007年08月14日(火)  マタニティオレンジ158 おおたま ちいたま
2004年08月14日(土)  シナリオ合宿は体育会ノリ


2009年08月13日(木)  脚本作品がカタチになる喜び

今井雅子が第1回から審査を務めている「ドラマ万葉ラブストーリー」脚本募集(ただ今第4回を募集中。9/9必着)の第1回受賞者、藤井香織さんと第2回受賞者、宮埜美智さんがわが家を訪ねて来てくれる。このところの大掃除で、駆け出し脚本家の頃に役に立ったものの眠っている資料が大量に発見され、捨てられない性分のため、「もし使っていただけるのなら、引き取ってもらえませんか」と相談したところ、勉強熱心な二人が駆けつけてくれたのだった。呼びつけた上に手土産まで持たせてしまい恐縮する。NHK奈良で万葉ラブを立ち上げ、今はNHK千葉にいるわたしの大学時代の同級生の高田君に電話をして、「万葉ラブ同窓会やってるよ〜」とうらやましがらせたが、授賞式のその後も交流が続くのが、万葉ラブの特長。第3回の受賞者ともちょくちょく連絡を取り合っているし、審査員と受賞者というよりは脚本家仲間という感じ。

藤井さんと宮埜さんはシナリオスクールで共に学び、今でも刺激し合う仲。わたしのシナリオ講座にも一緒に聞きに来てくれたことがある。先月は2週続けて二人のラジオドラマが放送され(7月14日放送 藤井香織作「幸福再利用研究所」と21日放送 宮埜美智作「エコロ爺」。放送の録音を聴けるので、ぜひ)、わたしも楽しませてもらった。二人ともプロとしてやっていく資質も情熱も十分持ち合わせている。万葉ラブの受賞作品のレベルの高さを見ても、脚本家として一本立ちしているわたしと彼女たちの差は、運だけではないかという気がする。運をモノにするには、もちろん心がけが必要で、「まとめ上手になるのではなく、引っかかりを残すことが大事」というアドバイスをした。

娘のたまが保育園を休んでいたために要所要所で邪魔が入ったが、保育園へのお迎えの時間を気にせず、ゆっくり話すことができた。独学だったせいで脚本家仲間のいないわたしにとっては、年の近い女の子たちと脚本の話をできるのが新鮮。「こんな無理な注文がありました」や「こんなこと言われてボツになりました」などのトホホ話は脚本家にはつきものだけど、三人で笑い合えば、楽しくなってくる。

『子ぎつねヘレン』以降、ヘレンが名刺替わりになって、仕事が来やすくなったけれど、それまでは興味を持って会ってもらったりプロットを提出したりしても梨のつぶてということが多かった。やる気を見せるために「一晩であなたのために脚本一本書きました」みたいなこともしたけれど、今思えば、粗製濫造だったなあと苦笑してしまう。でも、書くことが好きで好きで続けていれば道は拓けるということを身をもって感じているし、藤井さんと宮埜さんの道もそうあって欲しいと願う。

脚本家の仕事の醍醐味のひとつは、自分が手がけた脚本がカタチになり、それをたくさんの人と共有できること。折しも脚本協力で関わった朝ドラ「つばさ」のDVD-BOX第一弾が届いた。21日発売で、ただいま予約受付中。ドラマのDVD化は「快感職人」「アテンションプリーズ〜オーストラリア・シドニースペシャル」に続いて、3度目。どんな作品もDVDになって家に届くと、「おかえり」と声をかけたくなる。

mixiの今井雅子コミュニティでは、管理人のナルセさんが、「『ブレスト』のDVD化運動に皆さん協力してください!」と書き込み。 「テレビドラマデータベース」というサイトの「ブレスト〜女子高生、10億円の賭け!」のページに、「このドラマのDVDが欲しいですか?」の投票欄がある。何票がDVD化の目安なんだろう。テレビ朝日が以前視聴者のリクエストでシナリオ大賞受賞作品をDVD化したという話を聞いたので、ブレストのDVDも人気が集まれば実現するかもしれない。他に「彼女たちの獣医学入門」「真夜中のアンデルセン」「ドクター・ヨシカの犯罪カルテ 診察室に犯人が来た」(坂上かつえさんと共同脚本)、DVD化済みの「快感職人」と「アテンションプリーズ〜オーストラリア・シドニースペシャル」のページもあるけど、いずれもDVD化リクエスト投票は一桁で、ブレストの3桁はケタ違い。多部未華子ファンのパワーかも。

2008年08月13日(水)  言葉という窓
2007年08月13日(月)  『絶後の記録』映画化めざして来日
2005年08月13日(土)  西村由紀江さんの『ふんわりぴあの vol.7』


2009年08月12日(水)  『ぼくとママの黄色い自転車』浴衣舞台挨拶つき試写会

新宿明治安田生命ホールにて、『ぼくとママの黄色い自転車』舞台挨拶つき試写会。場所は「新宿駅前」だと頭に入っていたはずなのに、無意識のうちに新宿三丁目で下り、バルト9へ向かっていた。完成披露試写会も先日のキャリアマム限定試写会もここだったし、「バルト9にて初日舞台挨拶!」と家を出る直線に書き込んだりしていたものだから、体と頭に刷り込まれてしまったらしい。一階のエレベーターホールにごった返す人たちを見て、「この人たち、みんな、ぼくママ試写に来てくれた人なのかな」とほくほくした瞬間、「ちゃうやん!」と脳内信号が警告を発し、あわてて外に飛び出した。

その時点で13時24分。走っても13時半開演に間に合わない!とタクシーをつかまえると、運転手さんが目指したのは、西新宿の裾が広がったビル。「安田生命って、あそこですよね?」「違います! 安田生命ホールです!」。しかも、あのビル、安田生命じゃなくて、安田火災(現「損保ジャパン」)の本社ビルではないか! これでは安田生命ホールを知らなくても無理はないかもしれない。

タクシーを降り、息せき切って走り込むと、お客さんが続々と入っている最中で、のんびりした雰囲気。13時半開演ではなく開場だった。勘違いが重なったおかげで、舞台挨拶には十分間に合った。開演30分前で、客席にはすでに半分以上埋まっていて、出足は好調。

ロビーに飾られた黄色い自転車を撮影したり、プロデューサーに挨拶したり。昨日の夜の九段下での試写会も盛況で、とてもいい雰囲気だったそう。アンケートを読ませていただいたが、あたたかい言葉で綴られたものが多く、ほっとする。とくに子どもたちからの反応が良く、大志に共感して観てくれたのだなあとうれしくなった。母国語の関西弁でノリノリで書いた明石の女の子の場面が人気で、これもうれしい。

開演時間となり、会場はほぼ満席に。最後列の後ろに立って舞台挨拶を見る。司会の八雲ふみねさんが浴衣姿で登場。「小学生のお友だち、入口で配ったうちわを振ってください」の声に、会場の半数近くの客席で、うちわが揺れた。

うちわの歓迎に迎えられ、武井証くん(&犬のアン)、阿部サダヲさん、鈴木京香さんの沖田家一家三人が浴衣姿で登壇。浴衣のポイントとともに来場の皆さんにご挨拶。証君はタイトルにちなんだ自転車柄。白い浴衣の阿部さんは「僕は設計士の役なんで、製図しやすい感じで」。京香さんは浴衣にあしらわれた花を「母が育てていた花で」と紹介。クレマチスとおっしゃっていたような。

夏休みの思い出や、「この夏にしたいこと」といった八雲さんの質問の切り口が新鮮で、初めて聞く話が多く、充実した舞台挨拶だった。阿部さんが子どもの頃に空き地に基地を作っていた話が面白い。誰にも内緒のはずだったのに、親はお見通しで、こっそり持ち出して基地の備品にしていた目覚まし時計がいつの間にか家に戻っていたという。証君は小柄な体を活かして、かくれんぼが得意。阿部さんが「自転車がないので、欲しい。風を切って走ると気持ち良さそう」と話すと、京香さんは自分が飼っている犬を乗せてあげたいと話し、「元気がいいほうをカゴに乗せて……」と言いかけてから、「弱っているおばあちゃん犬をかごに乗せて、元気なほうを走らせるといいかもしれませんね」。京香さんのしっとりと落ち着いた声と話し方には、安らぎをかきたてるものがあり、声に母性が宿っている。子どもと離れて暮らすことを選択する母という難しい役どころについて、その苦渋よりも子どもへの愛情を感じさせることを大切にされたという。

作品の見どころについて、証君が「いろんな人に出会って、大志が成長していく物語。家族で見て、夏休みの思い出にしてほしい」と美しくまとめ、阿部さんは「全部言われちゃった」と困った顔をしつつ、「観た跡に親子でずっと話しあっていける作品」と語り、京香さんも「武井君が全部言ってくれたし」と言ってから、「犬を飼いたいと言い出すお子さんが出てきて、ご両親が焦ってしまうかも」と犬好きらしいコメント。

フォトセッションの後、本編上映。子どもが多いと、反応がヴィヴィッドで、「こんなところで笑うの』と驚くようなところで受けてくれる。犬のアンの動きにひとつひとつがくすくす笑いを誘い、明石の女の子のシーンでは何度か爆笑が起こった。そして、終盤は鼻をすすりあげる音が合唱に。大勢で映画を観る楽しさは、まわりの反応が笑いや涙を増幅させるところ。上映時間は、『子ぎつねヘレン』の110分より15分短い95分。幼稚園へ行っているという小さな子どもたちも最後までぐずらず、集中して観てくれていた。試写会ならではの終映後の拍手もあたたかかく、立ち会えてよかった。『子ぎつねヘレン』でもご一緒したドッグトレーナーの宮忠臣さんやプロデューサーの井口喜一さんや椛澤節子さんとミニ同窓会立ち話をして、会場を後にした。

公開まで、あと10日。前売り券をまとめて購入し、持ち帰ってみると、「さだまさし特製チケット」とある。よく見ると、写真に白抜きで「抱きしめて がんばれ大志 さだまさし」とサインが入っていた。持ち歩いていますので、ご入り用の方はお申し付けくださいませ。


2009年08月11日(火)  本は事件だ!『装幀思案』(菊池信義)

わたしが本を選ぶ場所は大きく二つあり、ひとつは新聞の書評欄、もうひとつは図書館。その二つでアンテナを張り、引っかかったものを手に取る。書評欄で気になったものは、ネットか図書館で取り寄せることが多い。最近読んだ『装幀思案』は、書評で知って図書館で受け取った一冊。書評の言葉の何に引っかかったのか、取り寄せた頃には記憶が飛んでしまったが、裏表紙には、「一万数千冊の本をデザインしてきた装幀家が、書店で心引かれた装幀にはじめて言葉をそえた」とある。

装幀家である著者、菊池信義氏が目に留めた装幀について綴った短いエッセイがまとめられている。共感できるところが多く、「平台で装幀と出会う、一瞬の劇を楽しみたい」という精神にうなずきつつ、取り寄せてレジで受け取る本とは「一瞬の劇がはじけたためしがない。(中略)すでに良くも悪くも私の本として在るということか」という鋭い指摘に膝を打った。

「チリ」という表題のエッセイには、自らが装幀を手がけた蜂飼耳の『孔雀の羽の目がみてる』について綴られている。「蜂飼耳の文は、読むという行為が、一つの事件であり、対象に当事者として向きあうことを要求してある。情報の容器ではなく、読むという事件、その現場としての本の形が問われる」とある。そうか、本は事件の現場なのか。だからこそ、本との出会いは、書店で目と目が合って恋に落ちるような衝撃的な出会いでなければならないのだな、と思う。

表題の「チリ」とは、本文を印刷したページよりひとまわり大きな上製本の表紙がはみ出した部分のことを指すらしい。「チリは、人を読むことへ誘い、読むことで生まれた新たな心の秩序を縁どる、一人一人の罫なき罫ではないか。版面の余白を、さらに表紙のチリへ広げる。深いチリは読むことが一つの事件である文を支えてくれるはずだ」とある。本文の先の余白、その深さが、余韻を受け止める懐の深さということか。菊池氏は、『孔雀の羽の目がみてる』に通常の倍以上のチリを設けることを発案、実行したのだった。タイトルの二つ目の「の」の右側の丸みに沿わせるように作者名の蜂飼耳を配したデザインは「蜂」を連想させて、さすが。

「包む」の項では、「紙は破れる、切れる、千切れる。紙は折れる、曲がる、まるまる。紙は濡れる、溶ける、乾く。紙は日に焼け、黴が生え、虫に食われる。紙は燃える」とある。紙というものの本質を知り尽くした上で、装幀という営みは行われる。レイ・ブラッドベリ原作、フランソワ・トリュフォー監督の映画『華氏451』を思い出した。変質するからこそ印刷された本には電子図書にはない生々しさがあるのかもしれない。

「火種」の項には、「読むとは、書かれてあることを知ることではない。情報化されてあることや物の裸形を知ることだ。一語、一語の意味と印象を主体的に掴み直すことだ。読むという強い思いを人にもたらすのは、得体の知れぬ欠落感であって、装幀にできることは、そんな感覚に火を放つことだと思う」とある。火種になれるのも、紙だからこそ、などと思ったりする。

「予兆としての装幀」には、「作品とは、それを読んだ一人一人の印象が意味に育つ温床。真の作品とは、作者の手によって完成するのではない。読むという行為によって、一人一人の内へ一作一作、誕生する。その予兆としての装幀」とあり、「真に書かざるを得ない心の出口であり、読む事を必要とする心の入口である装幀は静まる」と締めくくられる。この言葉にも深々とうなずいた。「静まる」という表現は「裸形」と並んで本書に何度か登場したが、しっくりとあるべき形に納まった装幀は、雑音を立てず、澄み切った佇まいをしているのだろう。

「あとがき」には「言葉で紡がれた事件としての作品、その装幀も、書店の平台で事件としてありたい」とあらためて装幀家としての心構えが語られ、この一冊もまた、わたしが装幀を見る目を大いに見開かせる事件になったと確信した。本のタイトルに添えられた「その深遠へ」の副題をしっかり味わえる一冊。読み終えると、本はやはり書店の平台で出会うべし、という気持ちにさせられる。「すぐれた文章家は、すぐれた読書家でもある」とよく言われるが、菊池氏の文章自体もデザインされたかのように的確かつ美しい。「すぐれた装幀家は、すぐれた読書家でもある」のだった。

2008年08月11日(月)  マタニティオレンジ319 お姉さんに憧れて成長する
2007年08月11日(土)  マタニティオレンジ156 誰に似ているのか「顔ちぇき!」
2005年08月11日(木)  『子ぎつねヘレン』チラシ第1号
2003年08月11日(月)  伊豆高原
2002年08月11日(日)  ヤクルトVS横浜


2009年08月10日(月)  『ぼくとママの黄色い自転車』原作者・新堂冬樹さんと白黒対面

公開まで2週間を切った今井雅子脚本の長編6本目『ぼくとママの黄色い自転車』。その原作『僕の行く道』を書かれた新堂冬樹さんが映画を気に入ってくださり、ぜひご挨拶をとありがたいお申し出をいただいて、今日お会いすることになった。

約束の時間の前に別件で打ち合わせしていたプロデューサーに「これから新堂冬樹さんに会うんですよ」と言うと、「あの人は働き者ですよー」という反応。作家として書きまくっている一方で、芸能プロダクションの新堂プロを経営し、女の子の撮影に立ち会いつつノートパソコンに原稿を打ち込み、売り込みにも余念がないのだとか。「え、自分で動いちゃうんですか」と驚いたら、「経営努力と行動の人ですよ」。「日焼けにサングラスの怖そうな人」というイメージからは意外で、ご本人との対面がますます楽しみになった。

待ち合わせ場所に20分前に着くと、新堂さんもちょうど同じタイミングで到着。『ぼくママ』の撮影でご挨拶したハツラツマネージャーの成田嬢と新堂プロ所属の女の子3人とともに現れた。初号試写のときにお見かけしたときは畏れ多くて声をかけられなかったけれど、とてもにこやかでフレンドリー。「いやー、脚本読んで、ほんと、感動しましたよー。試写でも泣いちゃいましたよー」と褒めてくださる。もっと年上かと思ったら、3才違いで、「なんだ、同世代じゃないですかー」と親しみが湧いた。小説を出すたびに表紙を入れ込んだ名刺を作っているそうで、今日持ち合わせていなかった『僕の行く道』バージョンは、今度お会いしたときに。

働き者の新堂さん、ご自身のお仕事の紹介をしつつ、3人娘の売り込みもしっかり。写真中央の「篠原楓」クンは、先日試写で見た『引き出しの中のラブレター』(>>>日記)の函館高校生4人組の一人。函館での撮影に立ち会った際に、新堂さんはノベライズ執筆の話を取りつけ、超特急で書き上げたとか。ちゃきちゃきと明るく元気よくノリよく話す楓クン、ブログのタイトルはおしゃべり九官鳥。「あたしの良さは、現場でないとわかりません」と言い切るB型の16才。本番でハッとする演技を見せるタイプだそうで、ひらめきと集中力型の人と見た。

写真左の「朝丘マミ」クンは、昨日うちに来た前原星良ちゃんと同い年の13才の中学2年生ながら、堂々たる落ち着きと存在感。お嬢様風の品の良い微笑みをたたえつつ、「オーラを出して歩いていると、みんなが振り返るんです」などと遠慮のない大物発言を連発し、新堂さん曰く「上から目線の天才少女」。オーディションでもこの自信たっぷりな振る舞いで、大役を射止めているとか。マリー・アントワネットならぬ「マミー・アントワネット」というあだ名がぴったり。ぜひマミー語を開発して欲しい。言葉の最後に「シルヴプレ」とつけるとか。

写真右の「ゆき」クンは、これまた大物感があり、170センチはあろうかというサイズだけでなく、終始涼しい顔で、スマイルの安売りなどするものか、なスタイル。それがかえって気になって、ときどき一瞬笑ってくれると、「笑ったぁ」とうれしくなってしまう。その時点で、こちらは彼女のペースに巻き込まれているということ。自分の売りは「緊張しないこと」とクールなキャラクターは一貫している。時代劇で殺陣なんかやると似合いそうだけど、「どんな役でもやれます」と静かな自信ものぞかせる。

そして、わたしがゆきクンや楓クンと話している間、向かいの席のマミー・アントワネットは、「私を見なさい」のオーラを発し続けるのだった。

三者三様の女の子たちを観察させてもらうのは刺激的で、想像力をかきたてられた。「この3人を姉妹にしてオリジナルのドラマ作ったら面白いかも」と話すと、「ぜひまたなんか一緒にやりましょう」と新堂さん。もちろん女の子たちと作品を出会わせたいという気持ちもあるだろうけど、この情熱が次の作品につながるのだなあ。ほんとにまた何か一緒にやれそうだし、やれたら面白そうだという予感がしてくる。小説を書くときに「ただ書くだけじゃつまんないから、どう転がせるかを考える」と言う新堂さん。その攻めの姿勢も見習いたい。

一緒に写真を撮ると、地黒のわたしも色白に見えて、新堂さんの作品の両極端なカラーと同じく「白と黒」な感じ。同タイトルのブログにお邪魔すると、わたしが日記に書くよりずっと早く書いてくださっていた。やっぱり働き者!

【お知らせ】『ぼくママ』初日舞台挨拶決定!

8月22日公開『ぼくとママの黄色い自転車』の初日舞台挨拶が決定!
◆新宿バルト9 11:45の回 上映前に舞台挨拶 >>> 詳細
◆品川プリンスシネマ 12:15の回 上映後に舞台挨拶 >>> 詳細
◆川崎チネチッタ 13:50の回 上映後に舞台挨拶 >>> 詳細
武井証くん、阿部サダヲさん、鈴木京香さん、河野圭太監督が登壇予定。 新宿は、原作者の新堂冬樹さんも登壇予定とのこと。

2008年08月10日(日)  マタニティオレンジ318 キンダーフィルムフェスティバルで初めての映画
2007年08月10日(金)  あの流行語の生みの親
2004年08月10日(火)  六本木ヒルズクラブでUFOディナー
2003年08月10日(日)  伊豆 is nice!
2002年08月10日(土)  こどもが選んだNO.1


2009年08月09日(日)  星良ちゃんインタビュー&朝ドラ「つばさ」第20週は「かなしい秘密」

今井雅子の映画脚本デビュー作『パコダテ人』で、しっぽが生える大泉洋さんの娘役を演じた前原星良ちゃんの母、せらママから「いつかこんな日が来るとは」という意味深な書き出しのメールが届いたのは、先週のこと。何事かと思ったら、「せらが今井さんを取材したいそう。夏休みの宿題で職業についてインタビューしなくちゃいけないの」というありがたいお話で、今日わが家に来てもらうことになった。

「私が行くと口出ししちゃうから」とせらママは遅れて到着することになり、二人きりでインタビュー開始。「ぴまわりぽいくえんぴよこぐみ ぷるたまゆ」だった星良ちゃんも、はや中学2年生。たくさんある職業の中から「脚本家」を選んでもらって光栄だけど、大人相手のインタビューよりある意味責任重大で、緊張する。星良ちゃんも緊張気味で、「えっと、えっと、どうしよう、何聞こう」と質問を投げるまでに逡巡するのが初々しい。

最初の質問は「コピーライターから脚本家になられましたが、何が変わりましたか」。前の職業から切り込んでくるとは、目のつけどころがいい。「コピーライターと脚本家の仕事は似ている部分が多いけれど、会社員からフリーランスになった違いは大きかった」と答え、「フリーは仕事を選べるし、自由が大きい分、成功するのも失敗するのも自分次第。自分で自分をプロデュースし、売り込む努力も必要」とつけ足した。チョコレート名刺で覚えてもらうのもそう、サイトを充実させるのもそう。

「コピーライターになったときの試験がユニークだったそうですが」と下調べも万全な星良ちゃん。せらママからの情報だそうで、元は日記に書いてあったのだっけ。「10色の地下足袋のネーミングとコピーを考えよ」「紙コップの使い方を思いつく限り考えよ」「馬の耳に念仏の新しい解釈を考えよ」の全3問に3時間。想像力を働かせることが苦手な人は時間を持て余し、得意な人には時間が足りない試験だった、と振り返った。

「コピーライター時代と今とで、世の中が変わったと思うのは、どういうところですか」には「インターネットの登場が広告も脚本も変えた」と答え、「コピーライターになったときと脚本家になったときで苦労したのは、どんなことですか」には、「会社員になったときは、自信はないくせにプライドは高くて人の話を聞かず、空回りしていた。失敗を重ねるうちに、人の意見を取り入れる余裕がでてきて、仕事がやりやすくなった。おかげで脚本家になったときは、さほど苦労しなかった」と答えた。

「脚本というのは、家作りにおける設計図のようなもの」というよくあるたとえを持ち出し、「子ども部屋が欲しいという子どもと、書斎が欲しいパパと広い台所が欲しいママのそれぞれの言い分を聞いて、交通整理しながら解決法を探るような仕事。根気強さと解決のための引き出しがたくさん要る」と話した。

「こういう家にしましょうという全体の計画があらすじ。次に大バコと呼ばれるおおまかな構成を作るのが部屋割りにあたるもの。そこが固まると、窓やドアの形や位置を決めるように、さらに細かくシーンを割って小バコを作る。最後に細かい線を書き込んで図面を完成させるようにト書きと台詞のスタイルにしたら、脚本が出来上がる」と脚本作りの過程を説明し、「脚本を書き始めるまでが半分、初稿を書いてから直す作業が残り半分という感じ」と言うと、「パコダテ人で星良に声がかかったときは、作業で言うとどの辺でしたか」という質問。「決まったキャストに合わせて本を書き直したりするので、早い段階で検討稿としていったん印刷してキャスティングを始めるケースが多いから、後半の最初のほうかな」と答えた。

インタビューが面白いのは、相手の視点によって、自分が普段思い至らない部分に光が当てられるところ。コピーライターだった頃と脚本家の今をじっくり比べたことはなかったから、質問に答えながら、なるほどと自分の言葉に新鮮さを覚えた。コンクール受賞作だった『ぱこだて人』が前田哲監督に出会って『パコダテ人』に化けた経緯を話しているところに、せらママ到着。

星良ちゃんは最後に「脚本を書いて、世の中にどうなって欲しいですか」といったことを聞いた。「どんな作品を書いていきたいですか」ではなく「世の中」という言葉を使うところが面白い。「世の中と関わる」という労働の原点を突いているようにも思った。わたしの答えは、「インターネットの中だけで買い物も人間関係も事足りてしまう時代だけど、人と関わりたいという気持ちになれるような作品を書いていきたい」。

ほどなくインタビューは終わり、せらママは積み上げた資料に興味津々。とくに『パコダテ人』の脚本やパンフを見て、懐かしがっていた。「せら、脚本覚えてる?」「その頃は字が読めなかったから読んでないよ」。前田監督が見本を見せてくれたのを真似して演技していたそう。

夕食から後は、せらママのトーク全開となった。

星良ちゃんとせらママも熱心に観てくれている朝ドラ「つばさ」の第20週「かなしい秘密」は、「いつかこんな日が来るとは」が悪い形で現実となってしまう展開。ここしばらく悶々としていた玉木家の父、竹雄(中村梅雀)の秘めた暗い過去が明らかに。過去からの刺客あらわる!?のハラハラした展開を楽しみつつ、家族と過ごすありふれた幸せのありがたさをしみじみと噛み締める一週間。演出は全26週で唯一の女性ディレクター、亀村朋子さん。いつもは毎週月曜だけの「脚本家 今井雅子」のクレジットが毎日出る増量週間でもあるので、いつもの週より女性の目線が感じられるかも。

竹雄の過去暴露の衝撃の余波は、第21週「しあわせの分岐点」へと引っ張るので、どうぞ続けて「どうなる、玉木家?」をお見守りください。つばさの幼なじみ、お隣の万里(吉田桂子)ちゃんが活躍する第22週「信じる力」は、再び今井雅子増量週間。

2008年08月09日(土)  冷蔵庫に塩豚があれば
2007年08月09日(木)  ちょこっと関わった『犬と私の10の約束』
2004年08月09日(月)  巨星 小林正樹の世界『怪談』
2002年08月09日(金)  二代目デジカメ
1999年08月09日(月)  カンヌレポート最終ページ

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