三百人劇場にて、1965年のカンヌ審査員特別賞受賞作品『怪談』を観る。15日まで開催中の『巨星 小林正樹の世界』の上映作品。昨日飲んだCMプロデューサー・山下治城さんのほめっぷりがすごくて、その勢いに「観ねば!」となった。「読むステージパフォーマンス」プチクリ発行人の山下さん、舞台はもちろん映画にかける情熱も並々ならぬものがある。そんな山下さんが企画上映のたびに通う三百人劇場は、うちから歩いて10分の距離にある。
「とにかく映像がすごいんです」と山下さんが連呼してしまうのも納得。オープニングの「水に墨汁を垂らすハイスピード映像」からド肝を抜かれる。なんて美しい色。なんて怪しい雰囲気。クレジットの入れ方も洒落ていて、物語が始まる前に「この絵はただものではない!」と興奮する。小泉八雲の原作を水木洋子さん(去年亡くなられた美しい方)が脚色した『黒髪』『雪女』『耳無し芳一』『茶碗の中』のオムニバス。四十年も前の作品だというのに、古さどころか新しさを感じさせ、斬新だと感じる。大きな目を見開いた『雪女』の空。平家の霊たちがうごめく『耳無し芳一』の世界。見事に怪しい舞台を作り上げている美術セットのディテールとスケールは半端じゃない。三國連太郎、仲代達矢、岸恵子をはじめとする豪華キャストの強烈な存在感、心の透き間につけ込むような音の巧みな使い方、それらすべてをまとめ、総合芸術に仕上げた監督の設計力に舌を巻く。DVDの特典映像に入っている色彩設計図を見てみたい。
「小林正樹ってすごい監督がいる!」といろんな人に興奮を伝えると、「知らなかったの!」と逆に驚かれた。映画関係者にとっても映画ファンにとっても常識の人であり、日本映画が誇る才能なのだった。『風の絨毯』以来、映画の世界に首と足を突っ込んでいる益田祐美子さんによると、「イランでは黒澤明の次に人気がある日本人監督」とのこと。
2002年08月09日(金) 二代目デジカメ
1999年08月09日(月) カンヌレポート最終ページ