お盆休みといっても、この暑さでは出かける気もせず、子連れともなればなおさらで、友人の家に行ったり友人を招いたりしてすごしている。今日はご近所仲間に声をかけ、わが家で夕食。食欲と好奇心旺盛なご近所仲間との食事は、毎回話題が尽きず、皆さんの博識ぶりや交友範囲の広さに感心させられる。会うたびにメンバーの新たな一面を発見するのも楽しみで、今夜は鉄道マニアで映画ファンのT氏が、実はテレビもよく観ている、ということがわかり、「どこにそんな時間があるんですか!」と驚いた。フィルムセンターや池袋の文芸座に通いつつ新作映画もチェックし、各地のSLに乗り込み、そのチケット入手に奔走し、もちろん仕事もし、とてもテレビも観る時間が残っているとは思えない。
いつもとは路線を変え、珍しく芸能界ネタで盛り上がったのだが、ここで一同の記憶力に老化の波が押し寄せていることを思い知る。タレントの名前が出てこないのだ。顔は浮かんでいるのに名前がついてこないので、話が前に進まず、「えーっと、ほら、なんだっけ。脚がきれいで有名な歌手。ダンナも芸能人で、苗字が『え』ではじまる……」「榎木孝明?」「遠藤憲一?」「もう少し若い……」。誰だろ誰だろと考えても答えは出ず、あきらめて別な話題に移った頃に「思い出した。森高千里!」「ああ、そっか、江口洋介の『え』ねえ」となる。他にも「今すごくいいと思っている女優さんがいて」「名前は?」「えーっと、度忘れした。本と化粧品の広告に出てて髪が長い」。これだけのヒントでなぜ蒼井優にたどり着けたのは謎だけれど、物忘れ世代に差し掛かっているんだなあということを痛感した夜だった。昔のことを思い出して脳を活性化させる回想法なるものがボケ防止に効く、と新聞記事で読んだが、三十代後半の脳も時々かき回してやらないと、さび付いて使い物にならないのかもしれない。
わたしの場合、打ち合わせなんかで「○○役、誰がいいですかね?」とキャストのイメージを聞かれたりするので、咄嗟に名前が出てこないのはまずい。それにも増して困るのが、何度も会っている人の名前が出にくくなっていること。目の前にいる人を呼びかけようとして、「あれ、名前なんだっけ」となることがふえた。自信がないので、つい相手の名前を呼ばずに会話を済ませてしまうことになるのだけれど、その間に相手は「今井さん」と何度も呼んでくれるので、申し訳なくなる。フリーで仕事するようになって、いろんな会社のいろんな人に会うようになり、ばらばらといただく名刺が整理できていないように、人の名前が記憶の引き出しの中でごちゃごちゃになったり飛び出したりしている様を想像する。それとも、これもやっぱり老化なのだろうか。
2004年08月15日(日) ハリケーン・チャーリーさん
2002年08月15日(木) 川喜多記念映画文化財団