もうひとり、後半でカムイと死闘を繰り広げる不動役の伊藤英明さんがとてもよかった。刀を持ってカムイに挑みかかるときの笑ったような絶妙な表情に殺気が宿る。しかし、わたしはなぜかずっと「江口洋介」だと思い込んで観てしまっていて、エンドロールを見て、違うじゃないかと気づいた。『クイール』で主役の渡辺満を演じている小林薫さんが漁師の半兵衛役でいい味を出している。半兵衛の妻お鹿となる抜け忍スバルを演じる小雪さんは、今井雅子のエッセイが載っている友人ミヤケマイの作品集第2弾『ココでないドコか-forget me not-』の帯に推薦文を寄せている。わたしのいた広告会社が手がけていた「爽健美茶」のCMに出演していた縁で会社の新年式典にも来たことがあり、勝手に親近感。函館での珍道中もご一緒した『パコダテ人』の木下ほうかさん(ブログ開いていたのを発見)も出演。『パコダテ人』といえば、衣装デザインは小川久美子さん。京都撮影のカメラは『パコダテ人』『子ぎつねヘレン』『ドクターヨシカの犯罪カルテ』の浜田毅さん(ご一緒してないけど、『血と骨』『おくりびと』も)。
手紙でつながる、ラジオでつながる。そこには、伝えたい気持ちがある。シンプルだけど、とても大切なことを問いかけようとしている作品。欲を言えば、東京の仕事に忙しい主人公が何度も函館に足を運ぶよりは遠隔操作で少年に働きどころを作ったほうが、遠く離れた相手をラジオでつなげる意味は際立った気がする。最近、映画を観ると、「自分だったらこうした」と考えてしまうのが困った癖。脚本は藤井清美さんと鈴木友海さん。藤井さんは『The Last 10 Months 〜10ケ月〜』で日テレのシナリオ登竜門優秀賞を受賞された人。月刊ドラマに載った脚本が印象に残っている。
監督は『花より男子』の三城真一さん(プロデューサーで参加している映画『花より男子ファイナル プレミアム』の脚本は、サタケミキオの名前で「つばさ」真瀬昌彦役の宅間孝行さんが書いている)。音楽は「篤姫」の吉俣良さん。主題歌はSkoop On Somebodyとこちらも豪華。
【ノベライズ】『ぼくとママの黄色い自転車』の原作『僕の行く道』を書いた新堂冬樹さんが映画と同タイトルで9月刊行。ちなみにこの本が「白新堂の6冊目」とのこと。『黒い太陽』などのノワール系が「黒新堂」で純愛路線が「白新堂」とジャンル分けされている。ブログのタイトルも「白と黒 blanc et noir」。
せっかくバルト9に来たことなので、『愛を読むひと』を観て行くことに。レディースデーということもあって、満席。原作のドイツ語題は『Der Vorleser』で英題は『The Reade』。日本語版も『朗読者』と直訳だが、映画では『愛を読むひと』と名づけたのがうまい。読むことが愛情表現そのものであり、読むという行為で愛の強さと深さを物語る作品。女は誰でもピロートークが大好きだけど、「順番を変えましょう」とケイト・ウィンスレット演じるハンナが提案したことから、朗読は愛撫の意味合いを強める。15才のマイケルが最初に本を読み聞かせたきっかけは、彼女が「読んでよ」とせがんだからだが、英語では「I'd rather listen to you」、あなたが読むのを聞きたいというのが可愛い。