2009年07月29日(水)  24億の瞳、きらり。「瀬戸内国際子ども映画祭」

2011年開催を目指して準備を始めた「瀬戸内国際子ども映画祭」の実行委員会が東京であり、出席する(写真は差し入れで出された麹町のパティシエ・シマのチーズケーキ。MOBA アカデミアの的場朱美さん、ごちそうさまでした)。6月に小豆島で顔合わせの会があったのだけど、馳せ参じることができず、今日が初めての参加。とはいえ声をかけてくださった小豆島オリーブランドの柳生会長をはじめ、集まった方の多くが小豆島がロケ地の『ぼくとママの黄色い自転車』関係者で、はじめましての方は4名。

今日の打ち合わせは、どういう映画祭にしたいか、何をしたいか、何が参考になるか、どこが協力してくれそうか、などそれぞれのアイデアを持ち寄る会。三人寄れば文殊の知恵とはこのことで、「それなら、この人を紹介できます」「こんな活動があるんですけど」と人や情報がどんどんつながる。ゼロから作り上げる映画祭の輪郭が早くも描けそうな手応えを感じ、ワクワクする時間となった。

忙しい人たちが三々五々散った後、柳生さんと雑談。「打ち合わせの後のこの時間が、いいんだよ」と同席した娘の照美さんに話されていたが、たしかにこういうおまけの会話には、鍋の後の雑炊のような、うまみがある。柳生さんとお会いするのは二度目だが、共鳴するところが多い。

「僕はね、やりたいと思ったことは必ず実現できるんです。願っていると、そのために必要な人と出会えるんですよ」と柳生さん。「小豆島で映画祭をやりたい!」と思っていたら、ある方のお通夜で『風の絨毯』プロデューサーの魔女田さんこと益田祐美子さんと出会ったのだそう。「人と人をつなげることが得意な方だったんですが、亡くなってからもつなげてくれました」と言う。柳生さんが『ぼくママ』に関わっていることを聞いた益田さんが「それってもしかして今井さんが脚本を書いた映画?」と反応し、わたしと柳生さんがつながって、わたしも映画祭の準備に巻き込まれることになった。「傘と心は開いているときがいちばん役に立つ」という名言を教えてくれたのは益田さんだけど、心の傘=アンテナを開いている者同士が出会うべくして出会った気がする。6月の会合で柳生さんは映画祭のエクゼクティブ・プロデューサーに、魔女田さんは総合プロデューサーに任命されている。

金持ちよりも人持ちになりたいという思いを年齢を重ねるとともに強くしているが、魔女田さんを見ていると、「人脈は金脈」でもあるようで、会議の間も次々とあちこちからお金を引き出すアイデアが飛び出した。政府や各国大使館のお墨付きや協力を取りつける段取りも心得たもの。土台作りは魔女田さんマジックにおまかせできそうで、わたしは今までに関わった映画祭での経験を話したり、パブリシティを取る(記事にしてもらう)ためにこんなニュースを発信してはというアイデアをいくつか出した。

各自が得意分野で力を出し合いましょうということで、わたしは映画祭のコンセプト作りを宿題に持ち帰る。映画祭を立ち上げるというのは物語を構築するようなものだから、しっかりした共感できるテーマがあると、人物は動きやすくなる。6月の会で新聞の取材を受けた魔女田さんが小豆島を舞台にした名画『二十四の瞳』にひっかけて「24億の瞳(つまり、世界中の子どもたち)の注目を集めたい」と話したところ、記者が食いつき、「24億の瞳」という見出しが地元紙を大きく飾ったが、

24億の瞳、きらり。

というキャッチコピーが浮かんだ。オリジナルにならって、

二十四億の瞳、きらり。

とすべきか? でも、「億」がつくと「にじゅうし」ではなく「にじゅうよん」と読みが変わるので、差別化と世界を意識するという意味でも、算数字がいいのか。皆さまのご意見は? 錬金術師の魔女田さんには「24億円、きらり」を目指していただき、2年後の第1回開催を成功させたい。

【お知らせ】『ぼくママ』サイトに試写会トーク報告

『ぼくとママの黄色い自転車』公開メイン館である新宿バルト9で7月22日に行われたキャリア・マム会員限定試写会(>>>日記)。上映前のキャリア・マムの堤香苗社長と今井雅子のトークの模様がぼくママ公式サイトのニュースページに登場。やりとりのダイジェストも掲載されています。

2008年07月29日(火)  マタニティオレンジ316 はじめての雷、まだ怖くない。
2007年07月29日(日)  マタニティオレンジ152 子守すごろく
2004年07月29日(木)  クリエイティブ進化論 by MTV JAPAN
2002年07月29日(月)  中央線が舞台の不思議な映画『レイズライン』


2009年07月27日(月)  パイプ椅子でのけぞって『カムイ外伝』

松竹試写室にて9月19日公開の『カムイ外伝』を観る。ぎりぎりに滑り込むと案の定満席で、補助椅子の最前列を残すのみ。それから2時間、パイプ椅子からスクリーンを斜めに観ながら、手に汗握る展開に何度ものけぞることになった。

出産を経て少しは図太くなったものの血しぶきには弱いわたし。幸い、斬り合いがかなり多い割にはグロテスクな流血はおさえられ、飛び散る血さえも美しく見せようという心意気さえ感じられたので、目をそむける場面はなかった。とはいえ、馬の生々しい姿にギョッとなったり、後半は『ジョーズ』か!のような鮫襲撃に腰を浮かしたり、頭よりも体が先に反応する場面の連続で、パイプ椅子に座り続ける苦行も相まって、やたらと体力を消耗する。並々ならぬエネルギーを注ぎ込まれた作品なので、観る側にも気合が必要だ。

崔洋一監督×榎望プロデューサーの顔合わせは、『血と骨』の前に『クイール』がある。娘のたまがこのところ「クイールわんわん」にはまっているのだが、これをたまと観たら、ケガ人続出で「どうしたの? いたいの?」と聞き続けるだろうなと想像した。アクションと殺陣の迫力はなかなかのもので、相当時間をかけて動きを仕込んだのではと思われる。大木の枝で大車輪したり、木のてっぺんから急降下したり、大自然版シルク・ドゥ・ソレイユのような華麗な技に目を見張った。

カムイは抜け忍(ぬけにん=忍者を抜け出した逃亡者)ゆえ戦いながら逃げ続ける宿命なのだが、カムイ役の松山ケンイチの動きには人間離れしたバネと鋭さがあり、地を蹴って走る姿にも野生のたくましさがある。カムイを生きているという感じで実にいい。ヤンキー先生こと義家弘介さんの半生を描いた花堂純次監督の『不良少年の夢』、前田哲監督の『ドルフィン・ブルー』、宮崎あおいちゃんと共演した『NANA』を劇場で観たが、そのどの役にも既視感がなく、それぞれの役を自分のものにしている。今回のカムイは、持ち前の目ヂカラがとくに活きていて、その目だけで語れていた場面がいくつもあった。試写室を出るとき、あちこちから「松山君、頑張ってたね」という声が聞かれたのが印象的だった。この作品でまたファンとオファーが増えそう。

もうひとり、後半でカムイと死闘を繰り広げる不動役の伊藤英明さんがとてもよかった。刀を持ってカムイに挑みかかるときの笑ったような絶妙な表情に殺気が宿る。しかし、わたしはなぜかずっと「江口洋介」だと思い込んで観てしまっていて、エンドロールを見て、違うじゃないかと気づいた。『クイール』で主役の渡辺満を演じている小林薫さんが漁師の半兵衛役でいい味を出している。半兵衛の妻お鹿となる抜け忍スバルを演じる小雪さんは、今井雅子のエッセイが載っている友人ミヤケマイの作品集第2弾『ココでないドコか-forget me not-』の帯に推薦文を寄せている。わたしのいた広告会社が手がけていた「爽健美茶」のCMに出演していた縁で会社の新年式典にも来たことがあり、勝手に親近感。函館での珍道中もご一緒した『パコダテ人』の木下ほうかさん(ブログ開いていたのを発見)も出演。『パコダテ人』といえば、衣装デザインは小川久美子さん。京都撮影のカメラは『パコダテ人』『子ぎつねヘレン』『ドクターヨシカの犯罪カルテ』の浜田毅さん(ご一緒してないけど、『血と骨』『おくりびと』も)。

映像の美しさ、大きさが際立ち、息をのむような引き絵が何度も拝める。アクションシーンのハイスピードも効果的。とくに水辺での殺陣の水しぶきは印象的だった。島のロケは沖縄にセットを組んだそうで、海の青も山の緑も「日本にこんな色があったのか」と驚くほど深い。物語の重苦しさに比べて背景が楽園的すぎるともいえるが、めったに観られないものをスクリーンで観た、という気持ちになった。

脚本は崔監督と宮藤官九郎さん。原作(決定版カムイデン全集 カムイ伝 外伝 11巻セット13860円也)を読んでいないので、どこにクドカンらしさが発揮されているのかはよくわからなかったが、膨大な原作(『カムイ外伝』のうち15回にわたって「ビッグコミック」に連載された「スガルの島」のエピソードを原作にしているそう)を2時間に凝縮する作業は大変だっただろうなあと想像した。

ラストに流れる倖田來未の主題歌「Alive」はハイドンの「私を泣かせてください」を編曲したもので、これがツボに来た。娘を産み落とす瞬間に助産院の産室を満たしていた曲で、このメロディに触れると賛美歌に包まれるような厳かな気持ちになる。カムイら虐げられた者への慈愛とともに劇中で流れた血への鎮魂も感じさせてくれた。

事前に「娘がクイールにはまっています」のメールを送っておいた榎さんと、松竹のビルを出るときにばったり会った。「今観て来ました」と伝えると、「クイールと全然違うでしょ」と榎さん。「たしかに」と答えて駅へ向かいながら、ふと思った。崔監督の作品に出てくる人間は、逆境を乗り越えるたくましさ、図太さが共通しているのでは、と。クイールの視覚障害者しかり。ご本人も迫力のある方で、函館港イルミナシオン映画祭でご一緒したことがあるが、そのとき引っさげて来た(監修として参加)映画『田んぼdeミュージカル』の高齢素人集団にも、老いを跳ね返すパワーがあった。

2008年07月27日(日)  SKIPシティ国際Dシネマ映画祭9日目 クロージング
2007年07月27日(金)  あの傑作本が傑作映画に『自虐の詩』
2005年07月27日(水)  シナトレ2 頭の中にテープレコーダーを
2004年07月27日(火)  コメディエンヌ前原星良
2002年07月27日(土)  上野アトレ
2000年07月27日(木)  10年後に掘り出したスケジュール帳より(2010/11/29)


2009年07月26日(日)  朝ドラ「つばさ」第18週は「二十歳の夏の終わりに」

神保町シアターにて成瀬巳喜男の『妻』を観る。黒地に白抜きで漢字一文字のタイトルがどーんと出て、「妻という字の中には女がある」とあらためて見た。妻の半分は女が占めるが、結婚して女が半減するともいえる。結婚10年目の夫婦のすれ違いを描き、妻の寄る辺なさが身にしみる作品。今よりも結婚した女に帰る場所がなかった時代のことだから、なおのこと夫の心がない家を守るのはやりきれない。だが、文句を言うばかりで努力しない妻にも落ち度はある。

重い話の割にところどころ笑わせてくれるが(三國連太郎演じる美大生が、とぼけたいい味!)、救いのない結末に、「夫婦って……」とため息。結婚9年目のダンナと観終わった後、感想を交わしたが、小ネタの話に終始した。「成瀬を観なさい」とすすめてくれたご近所仲間のT氏に「身につまされる内容でした」とメールしたことを伝えたら、「君もお茶でブクブクしたりするよね」とダンナ。高峰三枝子演じる妻が食事の後に箸で奥歯に詰まったものをかきだしたりお茶で口の中をゆすいだりする姿に、「これでは夫はげんなりだなあ」と上原謙演じる夫に同情したが、わたしはそんなことはしません! でも、身につまされるポイントはそこなのか、と拍子抜けし、笑った。

「愛があるのか?」と確認しあって夫婦になってしまってからは、愛はあるものとして扱われる。波風が立たない限り、在庫確認をするチャンスはない。その質や量が時間とともに変化することを大らかに受け止め、ほどよく流されているうちに10年、20年と時を重ねていくのだろう。息永く夫婦を続けるためには、向き合うことと同じぐらい、やりすごすことも大事なことなのかもしれないと思った。

折しも「つばさ」第18週は夫婦の話。恋にも仕事にも行き詰まり、家を出ると決意したつばさが放った矢は地図をそれ、向かった先は、長瀞。加乃子の異母妹である紀菜子(斉藤由貴)と、その夫で船頭の富司(山下真司)に歓迎され、傷心を癒されるつばさ。しかし、仲睦まじく見える紀菜子夫妻は互いの心が見えず、苦しんでいた。一方、つばさを心配した知秋も付き添って出かけ、束の間「子どものいない夫婦」になった竹雄と加乃子は、自分たちの将来を考えてしまう……という二組の夫婦話と並行してつばさの再生が描かれる一週間。山あり川ありの長瀞の美しい自然をお楽しみください。このところ頼もしい弟として成長著しい知秋は、富司の男っぷりに惚れ込んで肉体改造を試み(キーアイテムは薪割り!?)、腕力をつける。

演出は、4、5、7、11週の大橋守さん。タイトルは「二十歳の夏の終わりに」で、二十歳のつばさが描かれる最後の週。第18週でつばさは生まれ変わり、あらたな気持ちで第19週「太陽がいっぱいだ」へと踏み出し、物語も大きくうねっていく。第20週「かなしい秘密」は、「脚本協力 今井雅子」のクレジットが毎日出る増量週間。

2008年07月26日(土)  SKIPシティ国際Dシネマ映画祭8日目 いよいよ審査
2007年07月26日(木)  エアコンの電源が入らない
2005年07月26日(火)  トレランス番外公演『BROKENハムレット』
2004年07月26日(月)  ヱスビー食品「カレー五人衆、名人達のカレー」
2002年07月26日(金)  映画『月のひつじ』とアポロ11号やらせ事件
2000年07月26日(水)  10年後に掘り出したスケジュール帳より(2010/11/29)


2009年07月24日(金)  映画『引き出しの中のラブレター』とラヴレター募集

松竹試写室にて『引き出しの中のラブレター』を観る。5月に公開された『60歳のラブレター』(>>>試写の感想)と同じく、ラブレター募集から生まれた映画。その昔、月刊公募ガイドをめくってはこの手の募集にせっせと応募していたわたしは、それだけでも親しみを覚えてしまう。それに加えて、ラジオで人と人をつなぐストーリーは、脚本に関わっている朝ドラ「つばさ」にも通じるものがあり、さらに函館が物語の鍵を握る舞台として登場ということで、観る前から感情移入は準備万端。『60歳のラブレター』と函館が舞台で病院内ラジオを描いた『Little DJ〜小さな恋の物語』(>>>試写の感想)を重ね合わせ、さらに函館の景色に今井雅子映画デビュー作の『パコダテ人』を思い出しながら、観た。

主役のパーソナリティは常磐貴子さん。本上まなみさん演じる同郷の親友との大阪弁のかけあいが楽しい。本場のイントネーションとリズムで喋れるこのお二人にあて書きして、大阪弁の映画を作りたい、と作品を観ながら妄想を膨らませてしまった。恋人が萩原聖人さん、ラジオ局の社長が伊東四郎さん、上司が吹越満さん。番組に手紙を送ってくる函館の少年は林遣都さん。その少年の父が豊原功補さん、祖父が仲代達矢さん……とキャストが豪華。中島知子さんの妊婦は、これまでに観た映画の妊婦でいちばん説得力があった。冴えない出稼ぎタクシー運転手を演じた岩尾望さんが、すばらしい存在感。この人がエールを贈る場面に、いちばん泣かされた。情けない男の一生懸命な姿は、飾らない分だけ真っすぐ胸を打つ。

お節介でお調子者の漁師を演じた片岡鶴太郎さんも、とてもよかった。こういうおっちゃん、いるよなあ。八千草薫さんのおしとやかなようで自分をしっかり持った母親をはじめ、登場人物は短い時間で輪郭をくっきりと見せられるように作られている。とはいうものの登場人物がけっこう多く、複数の物語が同時進行し、まいた伏線をどう回収していくのか、期待とハラハラ感が募った。だが、函館の少年一家の物語を中心にばらばらだったピースが美しく納まり、人だけでなくエピソードもつながって、安心するとともに感心した。群像劇が見事に成功している『ラブ・アクチュアリー』と同じく、「この人とこの人がつながっていたとは!」という驚きが感動になった。

手紙でつながる、ラジオでつながる。そこには、伝えたい気持ちがある。シンプルだけど、とても大切なことを問いかけようとしている作品。欲を言えば、東京の仕事に忙しい主人公が何度も函館に足を運ぶよりは遠隔操作で少年に働きどころを作ったほうが、遠く離れた相手をラジオでつなげる意味は際立った気がする。最近、映画を観ると、「自分だったらこうした」と考えてしまうのが困った癖。脚本は藤井清美さんと鈴木友海さん。藤井さんは『The Last 10 Months 〜10ケ月〜』で日テレのシナリオ登竜門優秀賞を受賞された人。月刊ドラマに載った脚本が印象に残っている。

監督は『花より男子』の三城真一さん(プロデューサーで参加している映画『花より男子ファイナル プレミアム』の脚本は、サタケミキオの名前で「つばさ」真瀬昌彦役の宅間孝行さんが書いている)。音楽は「篤姫」の吉俣良さん。主題歌はSkoop On Somebodyとこちらも豪華。

ところで、映画の仕事を何年かやっているおかげで、たいていの映画になんらかのご縁はあったりするのだが、この作品は、とくに関わりが深い。

【配給】『子ぎつねヘレン』『天使の卵』の松竹
【ロケ地】『パコダテ人』の函館
【出演者】『パコダテ人』の萩原聖人さん、ラジオドラマ「ランゲルハンス島の謎」「過去に架ける虹」の吹越満さん、朝ドラ「つばさ」の佐戸井けん太さん(タクシー運転手の上司役)、『ジェニファ』の六平直政さん(主人公の父役)。常磐貴子さんとは作品でのご縁はないが、放送文化基金賞の授賞式で同じ列に着席(ドラマ部門の本賞を「ビューティフルライフ」が受賞、ラジオ部門の本賞を「雪だるまの詩」が受賞)したので、一方的に親近感。本上さんとも作品では未対面だけど、短歌の「猫又」の会で引っかかるようにご一緒させていただいている。
【プレミア上映】去年長編部門の審査員を務めたSKIPシティDシネマ国際映画祭にて招待上映。

【ノベライズ】『ぼくとママの黄色い自転車』の原作『僕の行く道』を書いた新堂冬樹さんが映画と同タイトルで9月刊行。ちなみにこの本が「白新堂の6冊目」とのこと。『黒い太陽』などのノワール系が「黒新堂」で純愛路線が「白新堂」とジャンル分けされている。ブログのタイトルも「白と黒 blanc et noir」。

【原案】『ブレーン・ストーミング・ティーン』と『子ぎつねヘレンの10のおくりもの』でお世話になった文芸社から出版された『届かなかったラヴレター』(こちらは「ウ」に点々)。中身のラヴレター募集を行っているのが、先日の『ぼくママ』試写会でご縁ができたキャリア・マム。トークをご一緒した社長の堤香苗さんと控え室でお話ししているときに、このコンクールの次回募集「届かなかったラヴレター2010」の審査をお願いされた。

というわけで、なにかとご縁がある『引き出しの中のラブレター』は10月全国公開。ぜひ、映画を観て、「届かなかったラヴレター」にご応募を。しまいっぱなしの想いを引き出して、綴ってみてください。

2008年07月24日(木)  潜在意識?『7月24日通りのクリスマス』
2007年07月24日(火)  マタニティオレンジ150 自分一人の体じゃない
2000年07月24日(月)  10年後に掘り出したスケジュール帳より(2010/11/29)


2009年07月23日(木)  ちいさいパーンツに憧れる、たま2才11か月。

こないだ産んだばかりのような気もするが、2006年8月22日生まれの娘のたまは、あと一か月で3才になる。2才最後のキャッチフレーズを考えるにあたり、この一か月を振り返りつつキーワードを挙げてみた。「夏の扉を開けた」。生まれて初めて髪を切ったのが6月の終わり。これは結構な事件。「どすこいバレリーナ」。足を高く上げる一発芸の「バレリーナ」が進化し、四股を踏んで「どすこい」と着地するオチがついた。

笑いを取ることにいちだんとサービス精神を働かせるようになり、お風呂上がりには両肩から下ろしたタオルを胸の前でクロスさせ、「ちゅばさのおばあちゃん」(千代がいつも着ている着物のつもり)とおどける。四角いお皿を直角に組み合わせて、「パソコン」という一発ギャグも編み出した。器用に皿を動かして開閉させ、ノート型パソコンのつもり。「お笑いに目覚めた」一か月でもあった。

以前、2歳児のネーミングセンスについて日記に書いたが、皿からパソコンを連想するやわらか頭には驚かされる。近所の東洋大学の入口にある噴水を見て、「みんなシャンプーしてるね」。「こないだばったり会ったお友だちが99(=ショップ99)に今日もいたらびっくりだね」と言うと、「99にモーモいたらびっくりだね」と切り返す。そりゃあ牛がいたらびっくりだ。この後、「99にじーじいたらびっくりだね」と続き、言葉遊び好きはわたし譲りのよう。「コピーライター入門」、いや、むしろ、わたしのほうが刺激をもらっている。

ダンボールに詰めていた絵本を棚に並べるようになったおかげで、絵本を手に取ってくれることもふえたけど、やっぱり映像が大好き。ビデオで観るか、パソコンでYouTubeを観るか。「なんかみるー」はすっかり口癖になった。とりわけ、「クイールわんわんに夢中」。『子ぎつねヘレン』『天使の卵』のプロデューサーの榎望さんと『子ぎつねヘレン』『ぼくとママの黄色い自転車』のドッグトレーナーの宮忠臣さんが参加し、『天使の卵』の戸田恵子さんが出演されている映画『クイール』にはまり、毎日のように「クイールわんわんみる!」とせがんでいる。

あんまり何度も観るものだから場面の順序や台詞を相当覚えてしまい、怖い蛇と小林薫さんが出る場面が近づくと隠れ、自転車を指差して「これ、障害物」とクイールに教える場面では、「これは しょうがいぶつじゃないよ。じてんしゃだよ」と画面に突っ込み、「あなたは うんめいの こよ(あなたは運命の子よ)」と劇中の台詞を突然口走る。「映画のビデオで英語を学ぶ」の日本語版といった感じで、言葉が豊かになるのはうれしいけれど、ビデオ漬けは心配。朝ドラ「つばさ」にも反応するようになり、今朝は「ゆうかちゃん、こなかったね」と言っていた。出ていない登場人物のことを気にしたのは初めて。

自転車のスピードを知った」、これは最近のビッグニュース。半年ほど言い続けていた二人乗りの夢がかない、もっと乗りたいと泣きじゃくるほど夢中になった。お友だちの家から借りた電動ママチャリを返すのが怖かったが、3日間乗って気が済んだのか、返した後はあっさりした反応だった。スピード狂なのか、「飛び出し注意」は頭の痛い問題。車道に向かってドンキホーテのように駆け出すことが度々あり、そのたびに寿命の縮む思いをしている。川越のカフェの店内から飛び出したときには、わたしの悲鳴も飛び出した。通行人に体当たりしていなかったら車にぶつかっていた。「つばさ」の人出に命拾いした格好だが、どうやったら車の怖さをわかってくれるのだろう。

いろいろと候補を挙げたが、選んだのは、「ちいさいパーンツに憧れる」。わたしが忙しかったせいもあり、トイレトレーニングが後退したたまは、プールのシーズン到来でやる気を向上。さらに、かわいいパンツを買って「おむつが外れたら、はこうね」と言い聞かせると、「ちいさいパーンツ」と自分に喝を入れるようになった。便座に座りながら、「でんしゃに のってくるよ。いま おりてきた」などと実況するので、出る感覚はつかんでいる様子。日によって、朝から夜までおむつがカラカラの日もあれば、一度もトイレでしない日もあり、成果にはムラがあるけれど、意欲はかつてなく高まっている。3才までに外れるかしらん。

あと一か月といえば、今井雅子の6本目の脚本長編映画『ぼくとママの黄色い自転車』の公開も8月22日。公式サイトもリニューアルし、宣伝の露出もふえていく模様。わたしも、いまいまさこカフェのトップページにもバナーを貼りつけたり、試写会の感想を書いてくださっているブログにお邪魔したり。自分が関わった作品は、手をかけた分だけ愛しいわが子のようなもの。たまも『ぼくママ』も、愛されて、伸びる夏になりますように。

2008年07月23日(水)  神楽坂の隠れ家で、英語で映画を語る。
2007年07月23日(月)  マタニティオレンジ149 ダンボールハウス
2005年07月23日(土)  映画『LIVE and BECOME』・バレエ『ライモンダ』
2004年07月23日(金)  ザ・ハリウッド大作『スパイダーマン2』
2003年07月23日(水)  チョコッと幸せ


2009年07月22日(水)  『ぼくママ』キャリア・マム試写会&『愛を読むひと』

新宿バルト9にて、働きたい女性のためのコミュニティサイト「キャリア・マム」の会員限定『ぼくとママの黄色い自転車』(公式サイト、リニューアルしました)試写会。キャリア・マム代表取締役の堤香苗さんと上映前にトークということで、45分前に会場入りし、顔合わせと打ち合わせ。神戸出身の二児の母でフリーアナウンサーの堤さんは、さすが空気を作るのがお上手で、あっという間に和やかに打ち解けられた。キャリア・マム取締役の井筒祥子さんとコーディネイターの宮入美由紀さん、宣伝のトルネードフィルムの田中久美子さん、共同テレビの井口喜一プロデューサーと本番までのおしゃべりが弾んだ。

トークの時間は15分。開始が少し遅れたので、正味は10分強ぐらい。堤さんのリードに乗せられて気持ちよく、「原作を脚本化するにあたって」「キャストのイメージは?」などについて話す。原作『僕の行く道』の著者である新堂冬樹さんのことを「『黒い太陽』などを書かれている……」と紹介したが、奇しくも「黒い太陽=日食」の日であり、ちょうど公開一か月前。公開日が娘の3才の誕生日に重なること、生んだ直後に原作を読んで、「子どもと引き裂かれるなんて想像できない。でも、もしそうなるとしたら……と考えて脚本を練った」話をする。原作から大きく変わったのは、同行するのがネコではなく犬になり、移動が新幹線ではなく自転車になった点だと話し、ドッグトレーナーは『子ぎつねヘレン』でキツネに演技させた人だと紹介。「『子ぎつねヘレン』を観られた方?」と客席に尋ねると、かなりの数の手が挙がって驚いた。阿部サダヲさんのファンの方々でしょうか。

最後に見どころを聞かれて、小豆島の美しさを挙げた。ロケにずいぶんご協力いただいているが、絵になる風景の数々をお借りしている。この作品を観て、小豆島を訪れたくなってくれたらうれしい。そして、朝ドラ「つばさ」の宣伝もさせていただく。「つばさ」と『ぼくママ』は、人を信じるあたたかさが似ていると思う。

いよいよ上映。スクリーンで観るのはこれで3度目で、答え合わせは一段落し、だいぶ冷静に観られるようになった。毎回客席の反応が少しずつ違うのが興味深い。観終わった後、堤さんは「泣きました〜」と涙で鼻声になったまま次の打ち合わせへ。出口で観客の皆さんをお見送りしていると、何人かの方が声をかけてくださった。大志が旅先で出会う人たちが「ありがとう」と大志に声をかけるところを「あなたの印象に合っていた」とうれしい言葉もいただく。

トークの模様はキャリア・マムのサイトに掲載されるそう。堤さんはブログ「堤香苗のほんねのはなし」でも早速取り上げてくださっている。

せっかくバルト9に来たことなので、『愛を読むひと』を観て行くことに。レディースデーということもあって、満席。原作のドイツ語題は『Der Vorleser』で英題は『The Reade』。日本語版も『朗読者』と直訳だが、映画では『愛を読むひと』と名づけたのがうまい。読むことが愛情表現そのものであり、読むという行為で愛の強さと深さを物語る作品。女は誰でもピロートークが大好きだけど、「順番を変えましょう」とケイト・ウィンスレット演じるハンナが提案したことから、朗読は愛撫の意味合いを強める。15才のマイケルが最初に本を読み聞かせたきっかけは、彼女が「読んでよ」とせがんだからだが、英語では「I'd rather listen to you」、あなたが読むのを聞きたいというのが可愛い。

前半はいちばん多い衣装はヌードというほど入浴やベッドの場面が多い。中年にさしかかったハンナの裸は艶かしいというよりは生々しく、一人で生きる女の孤独や悲しみや疲れを宿し、マイケルの若さとたくましさが際立つ。親子ほどに年が離れた二人は互いを埋め合うように恋に落ち、逢瀬を重ねる。言葉での説明を排し、なるようになったと描かれ、観客もまたそう受け止める。

これでもかと肌を重ねる前半があるから、指一本触れるどころか互いの顔を見ることもできない後半が活きてくる。そのとき、読むという愛情表現が真価を発揮する。マイケルの朗読のたたみかけは、物語の伝承者となった人々が各自の物語を口ずさみながら行き交う『華氏451』のラストを彷彿とさせ、美しく力強く愛を謳う名場面となっていた。彼の朗読が彼女の人生の終盤にもたらした奇跡と呼んでいいような変化にも心を動かされた。定冠詞の「the」で涙を誘われたのは初めてのことだ。生きることは世界を知ること、その喜びが彼女が「the」を口にする場面に凝縮されていた。

生きること、愛することの重みと苦しみ、その中に光る希望を求めようとする人の悲しみ。ひたひたと問いかけることの多い作品だった。観終わって立ち上がるとき、隣に座っていた初老の夫婦の夫が「原作では書き置きの意味がわからない場面があった気がする」と話しているのが耳に入り、勝手にその場面を頭の中で思い浮かべて、また涙を誘われた。原作をずいぶん前(ヤシガニ脱走騒動があった日だから2003年9月)に友人から強く勧められながらまだ読めていないのだが、ぜひ手に取ってみたくなった。

また、劇中でマイケルがユダヤ人強制収容所を歩く場面があり、アウシュビッツを訪ねたときのことを思い出した。以前日記に書いたこともあるが(2002年10月21日(月) アウシュビッツの爪痕)、旅行記代わりの絵日記がどこかにあるはずで、掘り出したいと思っている。東ドイツにあった収容所を訪ねたのが中学一年のときで、その頃に『アンネの日記』にはまり、日記を熱心に書くようになったのだが、ホロコーストを取り上げた作品にアンテナを向けてしまうのもそのせいかもしれない。

予告編では『ぼくママ』が流れた。テイストは違うけれど、愛する人の嘘を尊重して守ろうとする『ぼくママ』の一志(阿部サダヲ)と『愛を読むひと』のマイケルの一途で不器用な姿が重なった。

2008年07月22日(火)  マタニティオレンジ314 おっぱい「まだ でる!」たま1才11か月
2007年07月22日(日)  マタニティオレンジ148 ダブルケーキに仰天!たま11/12才
2005年07月22日(金)  万寿美さん再会と神楽坂阿波踊り
2002年07月22日(月)  10年前のアトランタの地下鉄の涙の温度


2009年07月21日(火)  一目惚れの恋のその後

7月6日の日記に書いた、恋に落ちたチェストのその後。家具ショップのWA-PLUSさんとメールをやりとりし、「ONE WOOD」というシリーズの「TEL CHEST」(電話台)を購入することに。玄関の靴箱横のスペースがチェストとぴったり同じ幅42センチ、奥行き35センチというのも、ここにいらっしゃいと言わんばかりで、これも何かの縁。一目惚れの顛末を日記に書いたことを報告したところ、「家具職人の中にも毎日お昼に『つばさ』を欠かさず観ている人がいます」などと話も弾み、オンラインでのやりとりながら家具同様あったかみのある対応で楽しい買い物となった。

チェストは間もなく九州を発ち、今週中に東京のわが家に到着する予定。待ち受けるこちらは長旅の恋人を迎えるような気持ちで大掃除にいそしんでいる。そもそもわが家には物に対して収納が足りない、ということで、急遽本棚を購入。楽天市場で数百点を見て回り、東急ハンズや西武ロフトへも足を運んだ結果、「今うちにあるのがいちばんいい」という結論に至り、同じものをリピート購入。スライド書棚ルート600Sという商品で、幅60センチ×高さ180センチ×奥行き30センチに驚くほどの数の本やCDが納まる。扉にCD受けがついていてディスプレイ収納できるのもすぐれもの。ただ、CD受けのでっぱりの分だけ奥行きがプラスされ、実際には奥行き32センチ。この2センチが大きく、棚の鼻先すれすれでドアが閉まることになった。前に買ったときは完成品が届き、CD受けをつける作業は不要だった気がするし、棚を受けるビスも安っぽくなったが、その成果がコストダウンに現れ、前回より一万円ほど安く買えた。

大量の本、CD、ビデオの類いをスライド書棚に移動したついでに、床に積み上げた資料の整理に手をつける。原稿のプリントアウト、参考資料の本やDVD、脚本の山……。朝ドラ「つばさ」は最終週の第26週までのホンがそろったが、一週につき検討稿、準備稿、完本と少なくとも3冊あり、週によっては4冊、5冊あり、百冊級の大所帯になった。つるつるの表紙の完本はガラス戸のディスプレイラックにずらりと並べ、あとのものはダンボールに納めて押し入れへ。かさばるけれど、朝ドラに関われる機会も最初で最後かもしれないので、とっておくべし。

『パコダテ人』の感想文やらコンクール時代の応募原稿やらタイムカプセルのように懐かしいものが次々と掘り出され、つい手が止まってしまう。探していて見つからなかったピンホール眼鏡や書きかけの手紙も発掘。「返したはずだけど」と言い張った本が出てきて、焦ったりする。

資料の底のそこかしこから小石がゴロゴロ出てくる。娘のたまが外から持ち帰ったものらしい。家の片隅で三途の川計画が進んでいたとは。泥棒が入っても気づかないほど散らかっているという自負があったが、異物を持ち込まれても気づかないのだった。でも、この数日の掃除の成果で、万年雪が解けるように少しずつ床が見え始め、体感床面積が拡大しつつある。「恋をしてキレイになる」とはよく言ったもので、わたしの場合は家の中がキレイになった。

日記に書いたその後といえば、7月8日の日記で絶賛した『築城せよ!』はテアトル新宿にて7/18(土)〜8/7(金)までの3週間、18:55より上映中。名古屋上映は名古屋駅前のミッドランドシネマとMOVIX三好の2館で月末まで上映が延長。

また、6月30日の日記に書いたEric Gowerさんは、やはり探していた本人だった。ブログに書き込んだところメールが来て、オンライン上で再会を果たし、興奮を分かち合っている。

そして、7月5日の日記でお知らせしたキャリア・マム会員限定『ぼくとママの黄色い自転車』試写会トークは、いよいよ明日。どうなりますやら、ご報告はまた日記にて。

2008年07月21日(月)  マタニティオレンジ313 なす術なし!の手足口病
2007年07月21日(土)  体に寄り添う仕事用の椅子
2005年07月21日(木)  日本科学未来館『恋愛物語展』
2004年07月21日(水)  明珠唯在吾方寸(良寛)
2002年07月21日(日)  関西土産
2000年07月21日(金)  10年後に掘り出したスケジュール帳より(2010/11/29)


2009年07月20日(月)  渋谷はるのおがわプレーパーク5周年

3連休は遠出をせず、東京の中で過ごした。娘のたまと休日をじっくり一緒に過ごせるだけでも十分な贅沢。土曜日は荒川自然公園へ行き、夕方にはお友だちのまゆたんちの自転車を借りて、念願の二人乗りに初挑戦。借りたままの自転車で日曜日もご近所をサイクリング。スピードを上げて景色が流れるだけで、見慣れた界隈が見違え、冒険気分を味わえる。夜は「夏の思い出に」というダンナの発案で焼き肉屋へ。たまは焼き肉屋は初めてだったけど、マザー牧場で肉を焼いたときほどは興奮しなかった。

そして、今日は、友人のY家に誘われ、代々木公園の一角にある「渋谷はるのおがわプレーパーク」の5周年のお祭りへ。プレーリーダーがいて、子どもたちと遊具や遊びを作り出していくという話は聞いていたけれど、ここまで自由で創造的な公園だったとは、と驚きの連続。5周年記念ケーキは、木で作った「5」(クッキーを貼り付けてある)のまわりを皆で持ち寄ったカップケーキが取り囲むというもの。わたしたち一家が着いたときには、あらかたケーキが行き渡った頃だったので、最初はびっしり敷き詰められていたのだろう。

ステージで演奏を披露したのは、隣の公園で練習していたというウクレレ道場の皆さん。「ハメハメハ大王」の歌に一同ノリノリ。その後、「何する? 水遊びする?」とY夫人。どこかの生け簀になっていたのをもらい受けたというたらい舟がプール。中の泥を洗うのも、ホースを引っ張ってきて水を入れるのも、子どもたちが勝手にやる。たまは水が冷たすぎたのか、シャワー攻撃にびっくりしたのか、すぐに出てしまい、木の車を引っ張る遊びを始めた。知らない子が乗りこんでは、下りていく。

ステージでは楽器を演奏する大人を子どもが取り囲み、木陰では談笑する婦人たちの姿が。ベビーベッド(雨ざらし)もあり、そこで子どもを昼寝させたりオムツを替えたりもする。なんと大らか。東京にこんなところがあったのか、とカルチャーショックを受けた。普段は工具と木材が出ていて、好きずきに遊具や椅子を作れるのだそう。遊具も新しいのができたと思ったら古いのを壊すという柔軟さがあり、常に変化し続けているのだとか。「去年はウォータースライダーを作ったんだけど、子どもたちの悲鳴がうるさすぎて近所迷惑になっちゃって、取り壊しちゃったの」とY夫人。

「5周年の記念手ぬぐいを作ろう」のコーナーでは、白い布に思い思いにスタンプをペタペタ。その隣には「はるプレ図書館」と称して、本(これも雨ざらしなのか、ページが膨らみきっている)が10冊ほど。その中にプレーパークの活動報告書を見つける。東京では世田谷などにもあるらしい。「自分の責任で自由に遊ぶ」というのが、プレーパークの精神だそう。こういう公園で遊ぶかどうかで人生観が変わるのではないかと思えてくる。

子どもの頃、自宅の庭の砂場を基地にして、海賊ごっこや探険ごっこをしたのを思い出した。海賊の船や旗を手づくりしたりもした。与えられた遊具や遊びを使うのではなく、ない遊びを生み出す経験が、一生ものの発明や発想のチカラを鍛えてくれた気がする。

着いたときには初めての場所に戸惑って硬くなっていたたまは、2時間ほどいるううちにすっかりこの公園が気に入り、最後はアスレチックに大はしゃぎ。実にいい顔になっていた。自然の木にロープをくくりつけたブランコの強度は? 「事故があっても自己責任」というのがプレーパークの考えだそうで、過保護指数の高い文京区で実現するのは難しいかもしれない。

少し足を延ばして、代々木公園のドッグランを冷やかすと、『クイール』にはまっているたまは、これまた興奮。ポニーに乗れるコーナーもあるのだそう。

代々木公園から徒歩でY家へ向かい、早めの夕食を御馳走になる。Y家には9才のミナミちゃん、たまと同い年で7月生まれのアオチンがいて、最初は3人で遊んでいたが、いつの間にか、アオチンとたまの二人きりで会話しながら遊んでいた。お揃いのリュックとお弁当箱を用意してもらい、おもちゃの食べものを詰め込んでピクニックごっこ。たまより50日ほどお姉さんのアオチンは、朝ドラ「つばさ」のファンで、今いちばんの関心事は「ゆうかちゃん」。「ラジオぽてと」「まなせさん」などとつばさ用語がすらすら出てくる。「わすれないで きせつはかわっても〜」と主題歌のサビを「シーザーズラー」まで歌ってくれたのには、びっくり。Y夫妻も初めて聞いたそうで、「この子なりにお客さんにサービスしてるんだなあ」。

夕食のメニューはお好み焼きと聞いていたが、お好み焼きが登場する前に次から次へと御馳走が出される。見事に整頓された部屋とともに感心し、それにひきかえわが家は……と反省。「たまちゃんちにも きてね」とたまが約束してしまったので、お返しにご招待できるよう、掃除にいっそう力を入れなくては。

2008年07月20日(日)  映画祭と日常を行き来する通勤審査員
2005年07月20日(水)  立て続けに泣く『砂の器』『フライ,ダディ,フライ』
2002年07月20日(土)  トルコ風結婚式
2000年07月20日(木)  10年後に掘り出したスケジュール帳より(2010/11/29)


2009年07月19日(日)  朝ドラ「つばさ」第17週は「さよなら おかん」

昨日、荒川自然公園で「おむつが外れていない子はプールに入れません」と言われたときの娘のたまは、世の中にはどうにもならないことがあると知った顔をしていた。よっぽど悔しかったのか、今日は朝から積極的にトイレを知らせるようになり、「これでパンツになれるね。ちいさいパンツ!」と主張している。

また、昨日の夕方、たまは念願の親子二人乗りを初体験した。つばさのお仕事が終わったら、お友だちのまゆたんの自転車を借りようねと話していたのだが、「ママ ちゅばさのおしごと おわったのに じてんしゃ わすれてるでしょ」とせっつかれ、あわてて借りに行ったのだった。自転車に乗りたいと言い続けてきたたまの興奮は相当なもので、「おそら とんでいるみたい」(電動自転車の加速は、たしかにふわっと体が浮く感覚がある)と大はしゃぎ。いったん家に戻ったが、「もういっぺん」とせがまれ、再び乗りに行き、戻ってからが大変だった。「またのる。もっとのる」とぐずり、床にひっくり返って泣くこと半時間。「もう暗いから明日ね」と言い聞かせ、「せっかく楽しかったのに、そんなに泣いたら、楽しかったことが消えちゃうでしょ」と嘆いたが、泣き募るばかり。自分が乗りたいだけでなく、「だれかがのっちゃうよ」と心配する行き過ぎた独占欲が怖くなったが、本人もどうしていいのかわからず泣くしかないのだろうなあと思い、泣くにまかせた。

人生なんて、思うようにいかないことの連続だけど、折り合いをつけるようになるのが、大人になるということなのだなと、2才にして人生の壁にぶつかっている娘を見て思った。

「つばさ」第17週「さよなら おかん」では、二十歳の挫折が描かれている。台風の夜、濁流から父を助けたのと引き換えにリハビリ中の足と逆の足を痛めてしまった翔太(小柳友)は、チーム復帰が遠のいてしまう。励まそうとするつばさ(多部未華子)との温度差が二人の関係にひびを入れ、つばさもまた失意を味わう。家の中でも外でもいつも誰かのために動いていたつばさが、初めて家族から手を差し伸べられる立場に。何を信じていいかわからないときの家族の支えが光る。

また、恋がうまくいかないときには仕事を頑張ろうとするもの。台風のときの災害報道に感銘を受けたこえど会前会長の城之内房子(冨士眞奈美)が大口スポンサーに名乗りを上げ、新番組を立ち上げることに。真瀬(宅間孝行)からインタビューを任されたつばさは、房子の怒りに火をつける事件を起こしてしまう。恋にも仕事にも行き詰まったつばさは、おかんである自分を捨てるために、初めて川越を離れる決意をするという一週間。この後ラジオぽてとを揺るがす脅威となる房子の登場にご注目。千代役の吉行和子さんと大の仲良しという冨士さん、後々の二人のからみもお楽しみに。

すでに登場しているサッカーボールの携帯ストラップがキーアイテムに。また、「らくらくおそうじ センジュくん」が悲しみを象徴するアイテムとして登場。千手おそうじグッズを背負ったバカバカしい姿から、すっきりお掃除したくてもできない胸の内の苦しみが伝わると、やりきれなさがいや増して涙を誘う。この場面、先日のファンミーティングでも宅間さんが「泣けるんですよ。あの場面をネタに一晩飲みました」と語っていた。他にも新生活応援グッズやつばさ応援グッズなど加乃子がらみのアイテムが活躍。

第17週も「脚本協力 今井雅子」のクレジットが毎日出る増量週間。演出は第8週、9週、15週の福井充広さん。続く第18週「二十歳の夏の終わりに」は長瀞(ながとろ)が舞台で、第10週に登場した紀菜子(斉藤由貴)とつばさが再会。そして第19週「太陽がいっぱいだ」では、ついにサンバの謎が明らかに。ますます目が離せない展開の「つばさ」を引き続きお楽しみください。 

2008年07月19日(土)  世界は広くて狭い! SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2008開幕
2007年07月19日(木)  忘れ物を忘れる速度
2005年07月19日(火)  会社員最後の日
2002年07月19日(金)  少林サッカー
2000年07月19日(水)  10年後に掘り出したスケジュール帳より(2010/11/29)


2009年07月18日(土)  荒川自然公園に驚いた

このところ、娘のたまとじいじ(ダンナ父)のデートコースになっている荒川区立の荒川自然公園。「たまがいつも遊んでいるところを見ておくべし」とダンナ父に言われ、わたしとダンナも初めて訪ねることになった。わが家からはバスとモノレールと都電を乗り継いで、最寄り駅の荒川二丁目駅まで約40分(都電一日乗車券700円がお得)。いろんな乗り物に乗れるのがうれしくて、たまは大はしゃぎ。

素晴らしいとは聞いていたものの、とにかく広く、施設や遊具が充実。都会ではなかなか見られないカブトムシを間近で見られるコーナーでは、「取られたりしないのかな」とお節介な心配をしつつ、無料開放とはなんと贅沢なと感激した。

国蝶のオオムラサキの観察園では、卵からかえったばかりの幼虫から成長した蝶までを見ることができる。写真の蝶はおとなしいなあと思ったら死んでいた。でも、そのすぐそばでは、小さな幼虫たちがせっせと葉っぱを食べていた。

白鳥と鯉が泳ぐ池を通り過ぎ、すべり台のある遊び場を越えると、浅くて広いプールがあり、そこが今日のお目当て。早速たまを水着に着替えさせようとしたら、「おむつが外れていない子は入れません」とライフガードのお姉さん。たまは「……」と絶句し、納得いかない顔。この悔しさをバネにトイレトレーニングに燃えてほしい。

気を取り直して交通園へ。ここは、信号機や横断歩道があり、交通ルールが学べるほか、乗り物を借りて走らせることができる。三輪車、補助輪つき自転車、自転車、豆自動車、さらにはゴーカートまで! 飽きっぽいたまは乗り物を取っ替え引っ替え。

「プールいく」と未練がましくぼやくので、水辺コーナーで水遊び
をさせることに。くるぶしぐらいまでの水が流れる岩場を貸し切りプールにして、歩いたり水を蹴ったり腹這いになってワニ歩きをしたり。たまは十分満足だった様子。

それにしても、「こんな場所があったのか」と感心しきり。公園にはあちこちに花が咲き、その世話をする人の姿もよく見られた。案内したり質問に答えたりしてくれるスタッフも至るところにいる。ボランティアの方も多いのか、立ち働く人が目立ち、たくさんの人の手に支えられている公園だと感じた。働く人も遊ぶ人も生き生きとしていて、躍動するような空気を作っている。公園は生き物だなあとつくづく思った。

2008年07月18日(金)  マタニティオレンジ312 『JUNO』を観て思い出した9か月
2004年07月18日(日)  ニヤリヒヤリ本『ニッポンの誤植』
2000年07月18日(火)  10年後に掘り出したスケジュール帳より(2010/11/29)

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