初日に出会った『Under the Bombs 戦渦の下で』の助監督兼スタイリスト兼ジャーナリスト役のビシャラさんは、英語とアラビア語の他にフランス語も少々という言葉の羽根に加えてバツグンの人なつっこさと愛嬌でパーティ会場を飛び回り、すっかり人気者になっていた。「大好きな日本に来れたことが、すでに賞だよ」と喜び、「レバノンは今も戦渦の下。いつ爆弾に当たって死んでもおかしくない。戦争は僕らには日常。爆撃の音で眠れないのは最初だけ。そういうことを僕という人間を通して日本の人に知ってもらえたら、この来日には意味がある」とも言っていた。レバノンという国への大きな親近感と興味をお土産に置いて行った彼はダンサー、振付師でもあり、コスチュームデザインも手がける。わたしに会うたびに着ているものを面白がってくれた。名刺の肩書きは「artist unlimited」。「やりたいことがあるうちは死なない気がする」と言っていた彼が、どうか爆弾に当たることなく才能を発揮し続けてほしいと願う。