SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2日目。今日から国際コンペティションの長編部門と国内コンペティションの短編部門が始まり、会期中に各作品2回の上映機会がある。昨日はオープニングだから盛況だったけれど、今日はどうだろう、と行ってみると、朝一番の上映から立ち見が出るほどで、初日だけじゃないんだ、となんだかうれしくなった。長編部門の審査員5人は12本のノミネート作品を観た上でクロージング前日の審査会議で受賞作品を選び出す。どの作品をどのように観てどのような感想を持ったかについて、審査が終わるまでは記さないほうが良さそう。どれもクオリティが高く紹介したい作品ばかりで、一度目の上映で観た作品を「ぜひ観るべし!」と二度目の上映に誘うことができたらと思うのだけど、それができないのは歯がゆい。
今日は審査委員長のダニー・クラウツさんと審査員のリカルド・デ・アンジェリスさんとそれぞれのアテンドの通訳さんと行動を共にした(写真は会場に特設されたシネマカフェでの休憩時に食べたカレーパン)。ダニーさんはオーストリアでDOR FILMという製作スタジオを立ち上げ、100本以上の映画やテレビをプロデュースされている。「こっちが3才の娘で、こっちが18才の娘」と子どもの写真を見せてくれたので、「15才も離れているの」と驚いたら、「他に5人いる」と言われて、もっと驚いた。「映画作りと子作り、とても生産的な人生ですねえ」と感心。映画祭の会期中に妻と子の誕生日があるので、プレゼントを日本で見つけなきゃと言う。精力的に仕事をこなしつつ家庭を楽しむ大らかさに好感。
リカルドさんはアルゼンチンの撮影監督で、3作目の『A Place in the world』がアカデミー賞候補に。16本撮った長編作品のうち8作品がデジタル撮影で、南アメリカにデジタル技術を広めている。とにかく機械が好きで、記録撮影のクルーが担いでいるカメラや会場にあるハイビジョンテレビなどに興味津々。英語は片言だけどコミュニケーション能力はバツグンで、表情が実に豊か。この人のいる現場は笑い声が絶えないだろうなあ。あるいは、南米の人たちって、皆さんこんなに陽気なんだろうか。9才の孫娘の写真(ご自身で激写)を見せて自慢するお茶目なじいじでもある。
スペイン語の響きが好きで、イタリア語とともにぜひ習得したい言語なのだけど、リカルドさんが話しているのを聞いていると、ますますその気持ちが募る。ジャケットは「ジャケッタ」。上着は「カンペッラ」。ここ(この席)は「アキ」。「アキは日本語で空いてるって意味」だと教えると、「アキ、アキ?(ここ空いてる?)」。おいしいは「デリシオーソ」も使うけど、「リコ」のほうが簡単でかわいい。
「映画祭と家をback and forthするのかい?」とダニーさん。家から会場まではドアtoドアで40分ぐらいなので余裕で通える。だけど、映画祭に通勤する難点は「浸る」ことができないこと。家に帰れば乳飲み子が泣き、洗い物は満載。食事を作っている間に今日スクリーンで観た映画の数々は吹っ飛び、頭の中は現実に支配される。これまで行った函館や宮崎や夕張の映画祭では、その街に滞在するという非日常の中に映画というさらなる非日常があった。線として映画祭を楽しむ滞在型に比べ、映画と日常を行き来する通い型は、断続的な点での体験となる。でも、それはそれで面白く、娘に授乳しながら「人生にとって映画とは何だろう」なんてことをふと考え、「そもそも映画とは映画館を出て日常に戻って行く人のためにあるのだ」なんて当たり前のことにあらためて気づいたりしている。
2005年07月20日(水) 立て続けに泣く『砂の器』『フライ,ダディ,フライ』
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2000年07月20日(木) 10年後に掘り出したスケジュール帳より(2010/11/29)