『風の絨毯』プロデューサーの益田祐美子さんより映画『LIVE and BECOME』の試写案内をもらい、映画美学校試写室へ。
「ベルリン国際映画祭で絶賛(パノラマ部門審査員特別賞と観客賞受賞)された作品なんだけど、宗教が絡んでるから日本ではなかなか買い手がつかなくて、買っちゃった」と、魔女田節は健在。カフェグルーヴ社長・浜ちゃんこと浜田寿人さんと、もう一人と3人で出資して共同購入したそう。カンヌ映画祭に買い付けに行った浜ちゃんが感動し、「ぜひ日本でも見てもらいたい」と益田さんを巻き込んだとのこと。
監督はルーマニア生まれでフランス在住のラディ・ミヘイレアニュ。ユダヤ人ジャーナリストで共産党員、ナチス強制収容所から逃亡した父を持ち、前作『Train de vie(いのちの列車)』は、強制収容所行き列車を偽造してナチの手を逃れる主人公を描いた作品。長編3作目となる本作で選んだ題材は、「エチオピア系ユダヤ人のイスラエル引揚げ」。
わたし自身は不勉強で知らなかったが、ファラシャと呼ばれるエチオピア系ユダヤ人を救出するという1984年の『モーゼ作戦』により、85年から86年にかけて大量のファラシャがイスラエルへ移住したが、その中には、貧しい生活からの脱出を求めて出自を偽る者もいたという。
作品の主人公は、生きるために愛する母と別れ、ユダヤ人と偽ってスーダンの難民キャンプを逃れた少年。「シュロモ」という名を与えられた彼は、イスラエルの白人社会でファラシャへの差別や偏見に耐え、偽りの自分と抱えた秘密の大きさに苦しみ、母に会いたい恋しさを募らせながら成長していく。
成長に合わせて3人の役者がシュロモを演じているが、青年期を演じたシラク・M・サバハはエチオピア出身でイスラエルに移住し、黒人としての苦労を味わったという。そんな経験が役柄に投影されているのか、ドキュメンタリーを見ているような気持ちにさせられた。
「行きなさい、生き抜いて、生まれ変わりなさい」という難民キャンプでの別れ際の母の言葉が題名(原題はフランス語で『VA,VIS,ET DEVIENS』)になっているが、その言葉の意味を問い続けるシュロモの苦悩と葛藤に心を揺さぶられ、壁を乗り越えてはより強くより魅力的な人間になっていく姿に引きつけられる。公開は来年以降になりそうだが、歴史を知るという上でも大いに観る価値のある作品。
夜は先週と同じく上野の東京文化会館にてアメリカンバレエシアターの『ライモンダ』。地震の影響で交通機関がストップし、45分遅れての開演。それでも空席が目立っていたのが惜しい。
「戦争に行った恋人と夢の中で会っていたら、別な男も夢に出てきて、二人の間で揺れるヒロイン。恋人が戦地から戻ると、二人の男が彼女をめぐって争うことに。決闘の末、恋人が勝って披露宴でめでたしめでたし」という2幕もの。
1幕目は夢のシーンが続いてわたしまで夢見心地になってうとうとしてしまったが、2幕目は踊りの博覧会状態で、花火大会のクライマックスのようなにぎやかさ。眠気も吹っ飛び、前のめりに。カーテンコールでは観客総立ち、割れんばかりの拍手で会場が揺れた。
今日は何かと揺れる一日。
2004年07月23日(金) ザ・ハリウッド大作『スパイダーマン2』
2003年07月23日(水) チョコッと幸せ