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夢の図書館新館

お天気猫や

-- 2003年10月28日(火) --

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ハロウィーン休みのお知らせ。

いつも読んでくださってありがとうございます。

急に収穫がいそがしくなり(笑)、 勝手ながら、31日終るまで、本の感想をお休みします。

再開するまで、もうしばらくお待ちを。

from 三魔女

2000年10月28日(土) 『屍の声』

お天気猫や

-- 2003年10月26日(日) --

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「Trick or treat」の歌♪

先日、掲示板でハロウィーンで子どもたちが
ご近所を回るときの歌を教えてもらいました。
「Trick or treat!」
には、続きがあったんですね。
それは、こんな風につづくのです。


「Trick or treat」

Trick or treat.
Trick or treat.

I want something good to eat.

Trick or treat.
Trick or treat.

Give me something nice and sweet.
Give me candy and an apple, too.
And I won't play a trick on you!

2001年10月26日(金) 『フォックス先生の猫マッサージ』『あなたの猫がわかる本』
2000年10月26日(木) 『犬たちの伝説』

お天気猫や

-- 2003年10月24日(金) --

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『オズの虹の国』

オズの魔法使いのシリーズって、全部で 14冊もあるんだそうです。 そのなかで、ドロシーが登場しない唯一の本が、 第2作の『オズの虹の国』なんですね。 出版は1904年。

ドロシーは登場しませんが、ハロウィーンな キャラクターが登場します。 その人物の名は、カボチャ頭のジャック。 文字どおり、彼の頭はカボチャでできています。 つくったのは、チップ少年。 オズの国の北にある、ギリキン国という、いろんなものが 紫色をしている国に住んでいます。 ジャックナイフでけずったカボチャに、 紫のズボン、 赤いシャツ、 白の水玉もようのピンクのチョッキを 着せて、棒でつないでできあがり。

チップは、育ての親である、魔術好きのモンビおばあさんを おどろかせるためにジャックを作りましたが、 おばあさんが、ジャックに「いのちの粉」をふりかけた ものだから、見る間にジャックは命あるものになります。 カボチャの陽気な笑いをそのままに。 チップをお父さんと呼ぶ、カボチャ人間に。 そして一緒に、モンビおばあさんの家を脱出して、 エメラルドの都をめざすのでした。

冒険の旅の途中、ジャックはいいます。

「わたしの笑顔ですけどね。見れば見るほど味がありますよ。 いつだっておんなしなんです」

おお、それでこそジャック・オー・ランタン! ハロウィーンのキャラクターが、オズの世界にもまぎれ込んで いたなんて、楽しい再発見でした。 1904年、もうかれこれ100年も前のことです。 (マーズ)


『オズの虹の国』 著者:ライマン・フランク・ボーム / 絵:新井苑子 / 訳:佐藤高子 / 出版社:ハヤカワ文庫NV1975

2001年10月24日(水) 『おやすみなさいフランシス』
2000年10月24日(火) 『夏の夜の夢』

お天気猫や

-- 2003年10月23日(木) --

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『癒しの葉』

紫堂ワールド第二弾(私にとっての)は、 戦いと癒しのファンタジー。 ユーリグ、セレス、リュセル、アジンの 盟友たちが、聖者サナトールを護衛しながら、 生きること、自分のなかの闇と戦う姿を描く。

表面は護衛だが、「癒しの葉」という不思議な現象の謎を解くため 各国から聖者のもとに派遣された、4人の若者たち。 やがて聖者の見せた壮大な奇跡は、生命樹の痕跡となって それを観たすべての人の胸に焼き付けられる。 意識しようとしまいと。

それでも、争いは絶えない。 自在に姿を変える「影の民」(エレメンタル)が人々に憑き、 国々を襲い始めたとき、 誰も戦うすべを知らなかった。 エレメンタルへの恐怖、敵への恐怖が支配し、 世界はゆがめられてゆく。

最終話から、引用したいメッセージがある。 ストーリーの醍醐味を損なうわけではないので、 あえて。

この世に生まれて来たのなら 誰でも幸せに生きたい ある人たちにとっては簡単なその方法を 私たちはこれから学ばねばならないのだ──

剣と友情の冒険ファンタジーの姿を借りながら、 このシリーズのメインテーマでもあるAC(アダルト・チルドレン)からの 生き直しが、ラスト近くで語られている。 一見さりげないこのメッセージこそ、 すべての『過去にしばられた私たち』にとって、 大人になってからくり返し学ばねばならない 新しい希望なのだ。

※そうそう、第7巻の48ページのコマ、私のお気に入りです。 クレアとユーリグが静かに別れを告げる場面。 クレアは顔を手でほとんど隠しているのですが、 アップで涙を見せるよりも、悲しみをポーズで伝えています。 後ろにセレスが来てるのがまた。。 (マーズ)


『癒しの葉』1-8 著者・絵:紫堂恭子 / 出版社:アスカコミックスDX(角川書店)1998-2000

2002年10月23日(水) 『魂の伴侶』
2001年10月23日(火) ☆点字の絵本という発想。
2000年10月23日(月) 『クリティカル進化論』

お天気猫や

-- 2003年10月21日(火) --

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『リカちゃん大図鑑』

☆リカちゃんに見た夢。

私を「リカちゃん」と再会させてくれたのは、 梨木香歩さんの『りかさん』である。 「人形遊びをしないで大きくなった女の子は、 疳が強すぎて自分でも大変。積み重ねてきた、 強すぎる思いが、その女の人を蝕んでいく。」 との一文を読み、これは大変と、慌てて、 小さなめいっ子たちに、リカちゃん人形を買い与えることとなった。 云十年ぶりの再会、であった。

リカちゃんもモデルチェンジを繰り返し、 当然ながら、私の思い出のリカちゃん (実のところ、私にとってかけがえのない人形−私の分身−は いずみちゃんの方であったが。)とは、 ずいぶん様変わりをしていた。

懐かしい気持ちでいっぱいだったが、 さすがに、マイ・リカちゃんを所有するには至らなかった。 しかし、これをきっかけに、かつて小さな人形を大事に思っていた気持ちが、 むくむくと蘇り、現在では、臆面もなく、 ブライス人形を部屋にコレクションするようになってしまった。 少女時代の懐かしさ、リカちゃんとの思い出を、 私のように、今、ブライスに投影している向きは、結構多いのではないかと、 密かに思っている。

さて。 愛蔵版『リカちゃん大図鑑』には、 リカちゃん人形の歴史がぎっしりと詰まっている。 ページをめくると、懐かしさと新発見に充ち満ちている。 もちろん、あの頃のリカちゃん人形は残っていない。 親戚の子にあげてしまって、それっきり。 リカちゃん、いずみちゃんが二人(分身のいずみちゃんと 意地悪役のいずみちゃん−両親が別々にダブって買ってくれた のだが、当時の私には微妙に二人の顔が違って見えた。)、 リカちゃんのママ、くるみちゃん、わたるくん、 悪役担当の多分偽物バービーと、大家族であった。 そんな失ったお人形を思い出しながら、本をめくるのだが、 実際は、見たことも聞いたこともなかったようなお人形の方が ずっとたくさん載っている。 さすが、『大図鑑』である。 時代時代のお人形やファッションの変遷。 変化していく家族とお友達の広がり。 時代を、その時々の少女の姿を リカちゃんはちゃんと写している。 時代を写しているといえば、ちょっと変わった本で、 “リカちゃんハウスの移り変わりに見る日本の「住宅」の変遷” というような、テーマの本を持っている。 リカちゃんというのは、時代の写し鏡の一つなのでしょう。

しかし。 それにしても、マニアックである。 リカちゃんの世界は、深い(笑)。 リカちゃんのファンクラブ「リカちゃんフレンド」の 会員限定販売のリカちゃんあり、 タカラのHP限定版リカちゃんあり、 最近はご当地リカちゃんのストラップありと、 子供相手ではなく、絶対大人ターゲットのリカちゃん戦略だ。

『リカちゃん大図鑑』の華やかな少女の夢のオン・パレードを見ながら、 小さかった頃、リカちゃんに投影して、夢見た大人の世界や将来像と、 えらくかけ離れてしまったなあと、苦笑したりもしている。 (シィアル)


『生誕35周年記念 リカちゃん大図鑑1967-2002 愛蔵版』/ 出版社:ヌーベルグーMOOK2002

※1億円リカちゃんから初代リカちゃんまで、  35年間の歴代キャラクターが勢揃い。  シールにポストカード、歴代リカちゃんピンナップの付録付き。

2002年10月21日(月) ☆「ワンス・アポンナ・タイム・シリーズ」
2000年10月21日(土) 『神秘学マニア』

お天気猫や

-- 2003年10月20日(月) --

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『パンプキン・ムーンシャイン』

☆ターシャ・テューダーのデビュー絵本。

1938年に出版され、以後、60年以上、80冊を越えて 続いている、ターシャの息長い創作の はじまりの一歩となった作品。

この『パンプキン・ムーンシャイン』は、 『ターシャ・テューダー・クラシック・コレクション』 として、2001年から日本で刊行されている11本の、 最初の3冊に含まれています。

正方形をして、本文の角を丸めてあるのも可愛くて、 手でなでてしまうような絵本。 扉を開けると、 「ちいさな おはなしを ちいさな かわいいこに かぼちゃちょうちんのことを『パンプキン・ムーンシャイン』 というのです」 と書かれています。

コネティカットの女の子、シルヴィー・アンが、 おばあちゃんの家で過ごしたハロウィーンのお話。 まだ女性たちが、女の子にいたるまで、 ボンネットをかぶっていた頃のお話。

農場の動物たちもたくさん登場して、 素朴で手のかかる生活の息づかいを、ターシャが 今も守っている生活の一端をかいま見せてくれます。 この絵本も、ターシャが最も愛着を感じているという、 1830年代を描いたのでしょうか。

シルヴィー・アンは、犬のウィギーと一緒に、 丘の上の畑でみつけた大きな大きなかぼちゃを、 やっとのことで、 おじいちゃんにカービングしてもらい、 ちょうちんを作り、無事に門のところに飾るのでした。 歯をむきだして笑う、こわーいかぼちゃです。

そしてお話は、その先もちょっと続きます。 それは読んでの、お楽しみ。
(マーズ)


『パンプキン・ムーンシャイン』 著者・絵:ターシャ・テューダー / 訳:内藤里永子 / 出版社:メディア・ファクトリー2001

2000年10月20日(金) 『悪を呼ぶ少年』

お天気猫や

-- 2003年10月17日(金) --

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『ハロウィーン・パーティー』

エルキュール・ポアロとハロウィーン。

去年だったか、シィアルに紹介を頼まれて忘れていて、 今年になってまたこの本をやおら探したところ、 幸運にもその日に見つけました。

ポアロとは旧知の探偵作家、オリヴァ夫人が 招かれた、イギリスのハロウィーン・パーティーで ひとりの少女が殺されます。 しかも、ボビング・アップルのおけで溺死させられて。

少女を殺した人物は? すでに老境のポアロは、オリヴァ夫人の依頼で、 事件の捜査に乗り出します。

読んでいると、発表されたのは1969年というのに、 まるで昨今の日本の世相のようで身震いしました。 犯罪の加害者と被害者の低年齢化、 精神鑑定が必要な犯罪者の増加・・・

そもそも、ハロウィーンパーティーの様子が 出て来るという理由で探したのですが、 確かに、スナップドラゴンという危険な火遊びも 出てきて興味深かったです。 イギリスにも、本格的なハロウィーンがあるの? と思われるかもしれませんが、このパーティーは、 特別念入りに計画されたものだったのでしょう。 ただし、殺人のあったこのパーティー、 ポアロ自身は参加していません。

当日のだしものは、証人によって多少順序が違うのですが、 箒の柄の審査(賞品付き)、風船を突いたりぶったりするゲーム、 リンゴ喰い競争(ボビング・アップル。障害物競走 と呼んでいる証人もいます)、 小麦粉ゲーム、 電灯が消えるたびに相手を変えるダンス、 女の子が暗い部屋で鏡をのぞき未来の結婚相手を見る遊び、 食事のあとに「スナップ・ドラゴン」です。

スナップ・ドラゴン/ぶどうつまみゲームとは、 ブランディをかけて火をつけた干しぶどうの大きな皿から、 焼けたぶどうを手でつかんで食べる遊び。 灯りを消して、炎が消えるまで楽しみます。 むしろクリスマスを連想させるようなもの─と書かれています。

小麦粉ゲームというのは、 コップに入れて押し付けた小麦粉をお盆に伏せて山を作り、 その上に6ペンス硬貨を置き、みんなで6ペンス玉を 落さないよう、順に少しずつ山を削り取ってゆきます。 玉を落したらアウトで、最後に残った人が、6ペンス もらえるというもの。

本作は、クリスティー79歳の作品。 オーソドックスな謎解きの展開でありながら、 マクベス夫人、庭園の薀蓄、ウンディーネ、生け贄の儀式、 「オオカミが来た」のうそつき少年(少女)など、 イマジネーションゆたかなモチーフが多く登場し、 犯人探しだけでなく、全体がこわ楽しい「ハロウィーン」 のムードになっているようです。

なお、原題では『Hallowe'en Party』とつづっています。 (マーズ)


『ハロウィーン・パーティー』 著者:アガサ・クリスティー / 訳:中村能三 / 出版社:ハヤカワ文庫1977

2001年10月17日(水) 『民子』
2000年10月17日(火) 『TEA<茶>の本』

お天気猫や

-- 2003年10月15日(水) --

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『あやし』

宮部みゆきさんのお江戸のホラー短編集です。 ハロウィーンになんでお江戸の怪談なんだ!とお思いでしょうが、 北村薫先生と一緒に怖い短編で盛り上がったり ご自身でホラーアンソロジーを編んだり (ミヤベ式だと「テラー」ですって) 欧米ものの怖い短編が大好きなミヤベさん、 きっとご自分でもクラッシックで寒気のするような怪異譚を いろいろ試してみたかったのでしょうね、 ひゅ〜どろどろの江戸怪談とはまたちょっと異なった雰囲気です。 理不尽で説明不能の怖い怪異、 異界のものとのしみじみとした交流、 あやかし以上に怖いヒト、子供達の冒険成長譚、 ショッカー、心理ミステリ等、 舞台はみんなお江戸ですが、お話はバラエティに富んでいます。

全編を通して変わらないのは、日々をつましく真面目に働く 江戸の庶民のすがすがしい生き方と、 人(場合によってはヒトでないもの)とのちょっとした心の通いあい。 だからこそ心の通わない相手はそれがヒトであっても ヒトでなくとも限り無く恐ろしい。 そういった怖さのネタが、ホラーになるか、 ミステリになるかは、作者の心一つ。 結局超常的なものではなかったけれど、 妖異の哀しみの残るある一編などは、茂七親分シリーズの一話として映像化して欲しいなあ。

そうそう、なんでこの本を日本の怪談の季節に紹介しないで ハロウィーンに紹介しているのかと言うと。 出るんですよ、お江戸にも。 夜のカボチャ畑と化け物と子供を守るカボチャの神様。 (ナルシア)


『あやし』 著者:宮部みゆき / 出版社:角川文庫

2002年10月15日(火) 秋休みのお知らせ。
2001年10月15日(月) 『ハロウィーンがやってきた』
2000年10月15日(日) ☆ 女王に薔薇を。

お天気猫や

-- 2003年10月14日(火) --

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『オリスルートの銀の小枝』

初めての紫堂恭子ワールドは、 魔法学院ものファンタジー。

二人の王が協力して国境につくった、平和地帯「オリスルート」。 ここに設立されたシルヴァン学院は、 世界に向けて送り出される紛争の調停役、 『金枝の使者』を輩出することで知られる、 権威ある魔法(アート)学校。

シルヴァン学院の男子生徒、 アリアン、ヴィンセンス、フェンネルの三人組は それぞれ全く違う性格だが、なぜかいつもひとからげになっている。

アリアンは兄弟たちの生存競争に揉まれて育ち、 持ち前の悩まない性格と笑顔で、順応力は高い。 黒髪で長身のヴィンセンスは大国カラマスルートからやってきた。 黙っていると美形。 ナイーブな外見のフェンネルは、魔術国ラバンサラの王族。 ブラック・アートの血筋への恐怖を抱えている。

そんな彼らが、闇から助けた伝説のロスマリン姫の魂とともに、 学院の特命を負い、金ならざる『銀の小枝』を胸に、 各国へと旅をする。 中立地帯にあるシルヴァン学院の生徒とはいえ、 ふとしたきっかけで、いつ周辺国が戦争状態になるか わからないという状況のもと、まだヒヨコの三人は、 悩める我が身を抱えながら、人間どうしの関わりを学んでゆく。

彼ら三人とも、順にロスマリン姫が憑依して 完全に女性化するというコメディタッチの展開が、 『仮面の王』という強大な敵との戦いに花を添える。 男子学生の女装というのは、学園少女漫画の定石だが、 最後に女性化することになるフェンネルは、 後半でシリアスなヒロイン(?)として大活躍。

何せ若い三人組の冒険なので、表面はギャグあり花ありで 軽く読めるのだが、中心にあるのは、若い人たち特有の コミュニケーションの未熟さといった問題や、 人それぞれの『生き方』や『幸せ』の提示でもあり、 その深みとのバランスが、とても心地よい。

余談だが、ファンタジー好きのキーワードも楽しめた。 シルヴァン学院は、大魔法使い『ゲド』の学んだ『ロークの学院』を ほうふつとさせる。 同じくゲドからの『レヴァンネン王』も、 名前だけの登場とはいえ、思わず頬がゆるむ。 『ゴーメンガースト』からの『フレイ』は、金枝の使者として登場。 (外見はまったく違うので・・念のため) シリーズを貸してくれた方が、ゲドも入ってるからね、と うれしそうに言っていたとおりである。 これを皮切りに、紫堂ワールドへ繰り出してゆく秋。 (マーズ)


『オリスルートの銀の小枝』1-4 著者:紫堂恭子 / 出版社:角川書店あすかコミックスDX1995

2000年10月14日(土) 『ファッションデザイナー』

お天気猫や

-- 2003年10月11日(土) --

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☆「ハロウィーン」を、ミッケ!

『ミッケ』という、かくれんぼ絵本があります。 きれいな写真の中から、 「赤い鳥三羽をさがそう」とか、 「割れたクッキーのサンタさんは?」という 各ページの楽しい質問に答えて、目を皿のようにして探すのです。 見つかれば、もちろん「ミッケ!」 小さな子どもから、大人までわいわいと まるでカルタのように楽しめる写真絵本です。

残念ながら、その「ミッケ!」シリーズには、 ハロウィーンはありません。 でも、その代わり、洋書の『The Best Halloween Hunt Ever』 という絵本を見つけました。 洋書ですが、絵本の中で見つける項目は、 「絵」で示されているので、小さな子供でも、 かくれんぼしている黒猫やらお化けやらを 楽しく探し出すことができます。

おまけに、『ミッケ!』シリーズには、 解答がないから、いつも各ページ、 何かが見つからなくて、悔しい思いをしていたのですが、 この絵本は巻末に「Answer」があります。 『ミッケ!』のように、立派で上等な本ではなく、 ぺらんぺらんの絵本ですが、 お値段もお手ごろでおすすめです。(※500円くらい。) (シィアル)


『The Best Halloween Hunt Ever』 著者:John Speirs / 出版社:Scholastic

2002年10月11日(金) ☆オオヤケの本棚。
2001年10月11日(木) 『コレリ大尉のマンドリン』
2000年10月11日(水) 『君について行こう』

お天気猫や

-- 2003年10月10日(金) --

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☆ハロウィーンの手づくり本。

☆ハロウィーンの手づくり本。

見ているだけで楽しくなってくる、 ハロウィーン・ブックをご紹介します。

残念ながら洋書なので英語ですが、いずれにしても子ども向け。 大人ならば、何とかなるでしょ!ということで・・・

『The Halloween Activity Book 』、 こちらは、本の形からカボチャになってて、 表紙を見ただけでも、ベリーキュートです。 中はオレンジと黒の2色刷りで、32ページ。 キャラクターがとにかくイジワル顔で、かわいいのです。 スプーキーな宴の料理や、魔女の帽子、 カボチャから育てるジャック・オー・ランタンの 作り方などなど、いろんなコワカワイイのが載ってます。 ハロウィーンの由来も、ちゃんとありますよ。 日本では子ども向けというより、10代以上、上限なしの楽しみ って感じのイラストブックです。

『Halloween Fun』と、 『175 Easy-To-Do Halloween Craft』も、今年買った本。

いずれも、紙や毛糸、布など、子どもたちが簡単に手に入れられる 材料を使って、魔女やコウモリ、カボチャ、ゴーストなどを 作ることができます。 『Halloween Fun』のほうはイラストで説明されていて、 やや上級生向けといってもいいでしょうか。 『175 Easy-To-Do Halloween Craft』のほうは、 全部カラー写真がついてるので、 できあがりがイメージしやすいのもいいですね。

皆さまのハロウィーンのヒントになればうれしいです。 (マーズ)


『The Halloween Activity Book』著者:Mymi Doinet,Benjamin Chaud / 出版社:chronicle books, san francisco
『Halloween Fun』著者:Abigail Willis, Annabel Spenceley / 出版社:KINGFISHER
『175 Easy-To-Do Halloween Craft 』 / 出版社:BOYDS MILLS PRESS

2001年10月10日(水) 『夏の王』
2000年10月10日(火) 『字幕の中に人生』

お天気猫や

-- 2003年10月09日(木) --

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『バンパイヤ』

☆手塚治虫のマクベス

小さい頃、TV アニメの『ジャングル大帝』が大好きでした。 真っ白でころころっとした小さなライオン、 レオがとても可愛かったのですが、 一方、同じ手塚アニマルでも、マンガに出て来るふさふさしたしっぽで 長い背中の曲線の美しいオオカミのお兄ちゃんもあこがれでした。 話は暗くて幼児にはよくわからなかったのですが、 普段は人間で月夜にオオカミに変身するトッペイ兄ちゃん、 まんまるいものを見るとところかまわず可愛い小オオカミに 変身しちゃう弟のチッペイ、悪女なオオカミ女ルリ子さん等 狼人間達が活躍する少年漫画、タイトルは『バンパイヤ』。

Vampireと言うと、今では昼は墓に眠って夜に人の血を吸う東欧の 伝説の怪物を思いますが、日本ではヴァンパイアという言葉はおそらく このマンガのヒット(1966年〜)で一般に知られたのでしょう。 普段は人間の姿で日常生活を行っているものの、 何らかの刺激で獣の姿に変わる変身種族の事を このマンガでは「バンパイヤ」族と呼んでいます。 ネズミから馬、ワニ、ワシ、吸血コウモリまで、種類は問いませんが、 変身すると姿と能力のみならず心も獣になるので、知能は人間のまま 本能の赴くままの行動を取るようになる恐るべき種族。

例によって中学生になってからおこづかいで 『バンパイヤ』を買って読み直しました。 主人公は正義感が強いオオカミ少年トッペイだと思っていたのですが、 物語にはもう一人、真の主人公が居ました。 手塚キャラ中最大の美形悪役、黒髪黒メガネの奸智に長けた少年、 間久部緑郎・通称ロック。 人間社会の掟を破り、他人を意のままに操る事を楽しむ悪魔の申し子は バンパイヤ族の事を知り、彼等を利用して社会を転覆させる事を目論みます。

この物語ではロックの本名が「間久部」となっていて、手塚先生は 邪悪な手段によって王位を獲ながらもやがて予言された敵に滅ぼされる 『マクベス』のイメージを悪の主人公に与えたようです。 自覚的な悪の美学と魅力に満ちたロック本人のキャラとしては、 周囲に惑わされて悪事に手を染め自滅するマクベスというよりは、 同じシェイクスピアキャラの中でも自らの頭脳に恃み、 権力を目指し悪を極めて華々しく散るリチャード三世そのものです。 マクベスとしてのロックが印象深いのは、占いの三婆に 未来の栄光と存在する可能性のない敵の予言を与えられ、 心おきなく悪事に突き進んで行く場面と、親友殺しの場面でしょうか。

「バンクォー」を彷佛とさせる剛勇で生一本の親友は 間久部が唯一大切にし続けているものでした。 世の中の全ての秩序の破壊を楽しみながら、どうしても 断ち切れなかった友情を、彼は苦悩の末破壊します。 この手塚的解釈を『マクベス』に差し戻して見ると、友を手にかけた マクベスの辛苦と畏れの深さが幾倍にも増して感じられます。 さすがは手塚先生、勉強になるなあ。

その手塚先生、ご自分の作品にチョイ役では頻繁に登場しているものの、 本格的に主役級で活躍されているのはこれぐらいではないでしょうか。 いくら心正しいトッペイ君とはいえ、彼は月の夜には獣の姿になり 獣の心に戻るいわば悪党のロックと同じ闇の世界の住人なのです。 闇の世界の住人達が破壊しようとしている、 ごく普通の日常社会の住人代表が、人気マンガ家で マンガ映画制作会社『虫プロ』社長・我らが手塚治虫氏。

満月の夜、美しい姿をした獣と悪魔の申し子が、ビルの谷間を跳梁する。 窮屈な社会規範に従う事を望まない者達を獣に変身する人々になぞらえ、 四十年前の東京に破壊と混乱を描き出した少年漫画『バンパイヤ』。 現代の『ハリー・ポッター』ファンなら「アニメーガス」になってみたいでしょ。 誰しもできるならば、足の疾い毛並みの豊かな獣になって夜を走りたい。 (ナルシア)


『バンパイヤ』 著者:手塚治虫 / 出版社:秋田書店

2002年10月09日(水) 『調理場という戦場』
2001年10月09日(火) ☆古本屋巡りをしても、読みたい。
2000年10月09日(月) 『血のごとく赤く』

お天気猫や

-- 2003年10月08日(水) --

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『マクベス』(その3)

☆ミラノ・スカラ座のマクベス

その前衛的な舞台がドイツで評判を取ったミラノ・スカラ座のマクベス、 東京引っ越し公演です。会場はお馴染み東京文化会館。 舞台上には巨大な中空の立方体が立ち上がるのみ、 一切の装飾はありません。 この虚ろな立方体がある時はマクベスの居城の王の寝室に続く階段に、 ある時は魔女の洞窟に、ある時はスコットランドの野になります。

そしてこの舞台で印象的なのは鮮烈な原色に統一された衣装と 照明のみで表現するシンプルでインパクトのある情景描写。 惨劇を象徴するかのような第一幕の深紅、 王の栄光を表しているのか第二幕の輝く黄色、 夜と魔法を描く第三幕の深い海の底のような青、 そして自由と解放の象徴でしょうか、第四幕の緑。 それに全ての光を吸い消す刺客の黒のヴェルヴェット。 古典的に着飾った正統派コスチューム・プレイではありませんが、 スピーディな劇進行と現代的な心理描写には 端的で個性を明確にした表現が合うのでしょう。

「しかし。ダンカン王弱そう」  王は歌わないので体格の良い歌手達と並ぶとひよわに見えます。

『誰も思うまい、あんな年寄にあれほど血があろうとは』

と、 マクベス夫人が言うくらいですから、 ダンカン王って小柄な老人なんですね
「あれだったらついつい殺して王位を取りたくなるかも」 「‥‥」 そこが演出の手際というものでしょうか。 純白の衣装で台詞のない王はもの言わぬ事によって見せ場を作ります。 歌手はもちろん歌う事で見事に役を演じますが、この舞台ではまた、 オペラでありながら歌を歌わない「亡霊」達が重要な役割を担います。 心の弱ったマクベスにしか見えない、このもの言わぬ亡霊達がまた怖い。 逆説的ですが、「無言」そのものが際立つのは、 台詞劇以上に声が主役となるオペラならではかもしれません。

「ところで、第三幕の魔女の体操、何だったの?」 「体操?‥‥あれはバレエです(汗)」 フランス式のオペラ公演では普通バレエの場面を入れるのです。 とはいえ、確かに前衛風というかモダンな踊りでした。 「魔女の薬草はベラドンナやヒヨスといったアトロピン系の麻薬ですから」 「なるほど、あの動きはアトロピン中毒症状のイメージかも」 第一幕で魔女達を見たバンクォーが原作と同じく

「ヒゲがあるが、女なのか」

などと言っていましたが、 演じているのがなにしろミラノ・スカラ座コーラスガールと ダンサー達ですから、こちらの魔女集団は見るからに若くて美しい、 どちらかといえば軽やかな精霊のようです。

「マクダフ、歌上手かったね〜」 「美声でしたね。華麗なるテノールですし、  役柄上思いっきり歌い上げてオッケー、というのもあります」 まるまるとした体格に緋色のローブと黒光りする鎧の胸当て、 黒いチョンマゲがまるで力士のようでいかにも強そうな武将です。 同じ衣装で、マクベスの剛胆な友人であり、 後に暗殺されるバンクォーは存在感のあるバス。 恐るべきマクベス夫人を演じたソプラノは、カーテンコールの度に 長いドレスの裳裾をふんづけそうになってお茶目に笑ってました。 「あの‥‥マクベス歌った人」 不安に震える主人公は繊細なバリトン。 「カーテンコール、なんだか恥ずかしそうにしてましたね」 「いやあの。髪‥‥カツラなんだ」 「そりゃ舞台ですから。あの赤い髪、雰囲気ぴったりでしたけど」 (パンフの写真を見せられる) 「‥‥‥‥。髪ないと、優しそうですね」 公演終わったら、あのお似合いのカツラ貰って帰ると良いかも。 ちなみに開演午後六時、全幕終わったのは十時を過ぎていました。

後日、世界のマエストロ、ミラノ・スカラ座音楽監督ムーティが TVインタビューに出演していました。 滞在中に体調を崩したそうで、折角のハンサムがやつれていたのが お気の毒でしたが、熱心に今回公演について語ってくれていました。 「教養ある日本のみなさんにベルディが教養ある人であった事を 理解していただきたくて、今回の公演はシェイクスピアにしました」 ‥‥(笑)。 恋愛と激情の物語が多いからといって、情熱と策略が巧みに計算された イタリアンオペラを馬鹿っぽいとは思いませんよ。(ナルシア)


ミラノ・スカラ座日本公演『マクベス』/ 指揮:リッカルド・ムーティ / 演出:グレアム・ヴィック

2002年10月08日(火) 『ミス・マナーズのほんとうのマナー』
2001年10月08日(月) 『トラフィック』
2000年10月08日(日) ☆ どちらの“ライス”?

お天気猫や

-- 2003年10月07日(火) --

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『マクベス』(その2)

☆ベルディのマクベス

同じベルディのシェイクスピアものでもポピュラーな 『オテロ』と異なり、『マクベス』は あまり上演を目にする機会もありませんし、 CDに至っては全曲版もハイライト版も現在全部品切れで手に入りません。 いくらなんでも公演会場には売っているだろう、と思ったけれど、 なんとミラノ・スカラ座版すら会場にない。 幕間に手持ちのCDの対訳を読んでいた人がうらやましい。

「なんで普通にCDがないの?」 「そりゃ、あの話ですから」 普段そんなに売れないので、CDの部数も出していなかったのでしょう。 一般にオペラの売りになる哀切きわまりなく歌い上げるアリアとか、 美男美女の愛のデュエットとか、馴染み深く口ずさめるような曲とか、 そういう「受ける」曲はほとんどなし。 第一、女性のソロは低く策謀を語るマクベス夫人だけ。大胆です。 私はあのデュエットなんか好きですけどね。 「どんなの」 「ほら、マクベスが王を殺して戻って来て滅茶苦茶動転しているのを  マクベス夫人が叱咤激励する場面。大きな声では歌えませんが」 「‥‥」

しかしいくら好きで取り上げたテーマとはいえ、 ベルディも『マクベス』のオペラ化には並々ならぬ苦労をした事でしょう。 原作の緊迫感と不安感を維持するためには、 情緒的な美しいメロディは向きません。 オペラの醍醐味である、感情を華麗に歌い上げる場面などもってのほか。 うっかりすると名曲になってしまうようなところを、 若いベルディは意識的に必至で抑えた事でしょう。 もっとも、オペラらしい音楽性や観客サービス向上のために、 三人の魔女や三人の刺客が二十人以上の大員数になっていたりします。 魔女の合唱と踊りは豪華なオペラらしくて良いとして、 大勢の刺客が暗殺の歌を楽しそうに合唱して踊ってたら いくら暗い森の中でも変でしょうが。

「『マクベス』の中でどのアリアが好きですか?」 「えーと、亡命中のマクダフの」 「殺された幼い我が子を悼む歌ですね」 合唱はその前の勇ましい『我が祖国よ』が一番人気でしょう。 「バンクォーが暗殺される前に小さな息子に唱う曲も良いですね」 「主役のマクベスのアリアは人気ないのか。と言うか、  歌として聞くにはやっぱり悲しい曲のほうが感動するよね」 「恋愛ネタがないので二人とも可愛い息子で泣かすわけです」 「でも、バンクォー、護衛も付けず歩くほうが悪いよ」 「たぶん、あのアリアを貰ったんでキャラが原作と違っちゃったんです。  原作のバンクォーって、魔女すら怒鳴り付けるような剛胆さで、  マクベスは友人ながらその生まれつきの王者の風格を  畏れていた訳でしょう?」 「そういえば、感じが違うね」 「オペラのほうだと暗い予感に脅えながら幼い息子に切々と唱いかける、  って雰囲気になりますから、むざむざ危険の潜む暗い森に  踏み込むなんて、と思っちゃうんですよね」 「うーん、感傷的な名曲はバンクォーには合わないか」 「一曲あげたくなるのは分かりますよね、いいキャラだから」

他にも、オペラとしての音楽性と原作の演劇性との融合をはかるために いろいろ工夫した部分があって、ベルディの熱意がしのばれます。 ただ一人のソプラノであるマクベス夫人の存在は原作以上に重要で、 クライマックスの鍵となる『バーナムの森』も、 森の合唱(笑)というオペラならではの技で盛り上げています。

「でも『オテロ』のほうはオペラでもすごく有名だよね?」 「だってあれは‥‥どんな話か知ってますか」 「どんなの」 「高貴な心映えの将軍が腹黒い部下に騙されて、  奥さんが不倫をしていると思い込んで殺しちゃう話」 「そ、それは‥‥オペラ向きの話だ‥‥」 「そりゃもう愛と激情の名曲が目白押し」

とはいえ、悲しい恋に涙するような場面はまるでありませんが、 私は歌劇『マクベス』に他のオペラに無い長所を発見しました。 主人公が若い美男美女だった場合、素晴らしい歌い手がその通りの ビジュアルを合わせ持つという事はなかなか困難です。 よく言われるのが、やはりベルディの傑作中の傑作『椿姫』。 その最期の場面、涙なくして聞けぬ歌だが、 ‥‥どうみても結核で死ぬようには見えないぞヴィオレッタ。 ところが、これが『マクベス』ですと、 登場人物がほとんど勇猛で名を馳せた武人達ばかりなので、 みんなものすごく強そうに見えて良い。 厚い肩に鎧がとても似合って、いかにも血で血を洗い、王位を、 スコットランド一国を奪い合うに相応しい。(ナルシア)


歌劇『マクベス』全4幕 / 作曲:ジュゼッペ・ヴェルディ / 作詞:フランチェスコ・マリア・ピアーヴェおよびアンドレア・マッフェイ(イタリア語) / 原作:ウィリアム・シェイクスピア

2002年10月07日(月) 『花日記]』
2001年10月07日(日) ☆SFの佳品リスト
2000年10月07日(土) 『陰陽師』

お天気猫や

-- 2003年10月06日(月) --

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『マクベス』(その1)

☆シェイクスピアのマクベス

ミラノ・スカラ座を観にいきましょう。 「何を演るの?」 ベルディのマクベス。 「ま、マクベス?シェイクスピア四大悲劇の?オペラになってるの?」 ベルディはシェイクスピア好きなんですよ。 ほら、今回もう一つの方の公演は有名な『オテロ』でしょ。 「なるほど。『マクベス』ってどんな話だったっけ」 それはですね。

スコットランドの武将マクベスは、荒野で三人の魔女に出会う。 魔女の不思議な予言に心動かされたマクベスは王を暗殺し、 王位を手にする。 しかしその日からマクベスの心は恐ろしい不安に苛まれ、 とめどなく邪魔な者達を手にかけ始める。

「もう眠れないぞ!マクベスは眠りを殺した」

 人間、睡眠は大事ですよね、眠らないと精神状態が不安定になって  亡霊が見えたり被害妄想に襲われたりする 「眠れなくなるの。良心のある殺人者だね」 「下克上は悪事ではない時代ですから、 マクベスは悪人ではないんですよ。 意識して悪を極めるリチャード三世とは違います。 マクベスの場合、奥方が無理やり唆したんです」 「ああ、マクベス夫人か」

心理学で必ず語られるマクベス夫人の強迫観念による「手洗い行動」。 昼間は強い意志で気丈に振る舞い夫を叱咤する夫人も、終幕、 夜ごと夢うつつに血塗られた手をいつまでもこすり続ける。

「まだ血の臭いが取れぬ、アラビア中の香水をみな振り掛けても  この小さな手に芳しさは戻らない。ああ、ああ、ああ」

「‥‥怖いよ。その台詞、魚さばいた後よく言ってない?」 「愛唱句です」 「‥‥」

やがて自分も王位を奪われ殺されるのではないか、 という不安にいてもたってもいられなくなったマクベスは、 再び荒野の魔女のもとを訪れ、新たな予言を手に入れる。

「マクベスを倒せる者はおらぬ、女の産み落とした者のなかには」 「マクベスは滅びはせぬ、あのバーナムの森が  ダンシネインの丘に攻め上ってくるまでは」

「それじゃ大丈夫じゃん」 「この予言がトリックになっているんですよ。この部分は面白いので  その後あっちこっちでアレンジされて使われてますよね」 「例えば?」 「ロード・オブ・ザ・リング。  あの話は『マクベス』ネタがいっぱい入っているので、  来年公開の『王の帰還』を見てから教えてあげます」 ひとつだけ。『二つの塔』で字義通り「森が城を攻める」場面、 あったでしょ。

昔、TVで演っていた『マクベス』のクライマックスを見た弟が言った。 「あー、よかった、マクダフが『わはははは!俺は男から生まれたのだ』  とか言ったらシェイクスピア殴りにいってたところでした」 殴られずにすんで良かったですね文豪。 「英語の引っ掛けなので、日本語だとピンとこないんですけどね」 「それで、バーナムの森はお城を攻めるの?」 「たぶんその場面は御存知だと思います。 本を貸しますので読んで下さい。 シェイクスピアものの中では短くまとまっていて 緊迫感があるからすぐ読めますよ」 主人公が逡巡する故に悲劇が増幅される『ハムレット』に較べると、 『マクベス』は坂道を転がり落ちる様に一直線に破滅に向かって、 あっという間に幕切れを迎えます。 元スコットランド王に劇をお目にかけるためにシェイクスピアは 王室に不都合な部分を劇中からカットしたらしいと言われていて、 言葉の端々からいろいろ察せられるけれど語られないマクベス夫人や 刺客の背景を全部明らかにした完全版がどっかから発見されないかなあ、 などと思ってしまうくらいです。出て来たらすごいお宝ですが。

翌日。 「う〜〜むう〜〜む」 「読みました?」 「あとちょっと。人間って‥‥こういうものかあ‥‥  こういうものだよね‥‥う〜〜む」 だから四百年経っても一字一句そのままに演じられているんですよね。 (ナルシア)


『マクベス』 著者:ウィリアム・シェイクスピア / 訳:福田 恒存 / 出版社:新潮文庫
『マクベス』 著者:ウィリアム・シェイクスピア / 訳:木下順二 / 出版社:岩波文庫
『マクベス─シェイクスピア全集3』 著者:ウィリアム・シェイクスピア / 訳:松岡和子 / 出版社:ちくま文庫
『マクベス─シェイクスピアコレクション』 著者:ウィリアム・シェイクスピア / 訳:三神勲 / 出版社:角川文庫クラッシクス 

*文中の台詞はどの翻訳というものではなく、私の記憶の中の台詞です。

2000年10月06日(金) 『ささなみのアケロン』

お天気猫や

-- 2003年10月03日(金) --

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『ねこじゃら商店へいらっしゃい』

先日、夢図書のBBSで、本のなかに出てくるお店で 行ってみたいところ、という話題があった。 この本の舞台である「ねこじゃら商店」もまた、 一生に一度は行ってみたいようなお店。 児童書好きの友人が、面白いのでぜひ、とすすめてくれた本だ。 絵も最高にマッチしていて、子どものころ読んだ 日本の怪談の雰囲気を思い出したりした。

店の主は、白菊丸というレトロな名前の ちょっと不気味な大猫。 店は気の向いたときに開けてるらしく、 町の狭い路地を入ったところなんかに、 こつぜんとあらわれるのだという。 なんでも屋なので、白菊丸の仕事も何かと大変だ。 横柄な客もいれば、こわがる客もいる。 たいていのものはそろっているのだが、 たいていのものは「在庫切れ」で、翌日までに 調達したりもする。技も知恵もいる仕事だ。

とはいえ、バッタを買いにきたガマガエルで始まり、 顔を買いにきたのっぺらぼうの話で終わる ねこじゃら商店のお客さんたちは、 皆が皆、ここへ来ようと思ってくるわけでもない。 波長が合って引き寄せられてくるというのが、 ねこじゃら式の集客方法なのかも。

白菊丸は化け猫ではないし、 宮澤賢治の『注文の多い料理店』のように、 怖いお店ではないけれど、お客から受ける注文は なかなかむずかしいものばかり。 ただし、この店で一度に買える商品の種類は、ひとつだけ。 欲張りは白菊丸のもっとも嫌うところらしい。 お代はたいてい、お客のもっているもので払う。 だから、磨いた小石のお金でもいいのだ。

私は何を買いにいこうかな。 昨夜見かけたノラ仔猫の新しい家、なんて 売ってないかなあ。

ニャゴ、ニャゴ、ニャゴ、ニャゴ。 (マーズ)


『ねこじゃら商店へいらっしゃい』 著者:富安陽子 / 絵:井上洋介 / 出版社:ポプラ社1999

2002年10月03日(木) 『ボストン夫人のパッチワーク』
2001年10月03日(水) 『星を継ぐもの』
2000年10月03日(火) 『恋愛的瞬間』

お天気猫や

-- 2003年10月02日(木) --

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「Heaven?」その2

佐々木倫子の『Heaven?』が、第6巻にして完結してしまった。 本誌の連載は読んでないので、単行本になってから知った。

シリーズを集めているのは私だが、 私より先に買って読んだシィアルは、 まさかこんな風に突然終わってしまうとは、と 言いながらパラパラと読み返している。 いろいろ思うところがあるようだ。 終わってほしくなかった、と言う。 気分は地団太を踏む子どものようだったらしい。

私は言った。 9巻も10巻も続けるより、今ここで終わるほうが ロワン・ディシーらしいのでは、というようなことを。

まあそれはいいのだが、番外に入っている 短い書き下ろし漫画の内容について私がたずねると、 彼女は、あれは本編とはまったく関係ない、と言い切った。

でも、読んでみると関係あった。 ロワン・ディシーのカウンター常連の、 気弱なお客さんの話だったのだ。

それにしても、あの伊賀観が。 そういうふうに。 という終わり方であった。 心なしか、それぞれのエピソードの厚みも、 最終巻にふさわしく、各方向から作品を支えていたし、 伊賀君の両親(父も良い味を出していた)も再登場して、 最初のころの容易ならざる出来事を思い出させてくれた。

話の筋には関係なく、どうでもいいことなのだが、 なぜ少年漫画系(青年誌を含めて)は フキダシのなかの文章に「。」をつけ、 少女漫画系は、それをよしとしないのだろう。 『Heaven?』や『おたんこナース』は青年誌連載なので、 佐々木倫子が少女漫画誌に 書いた漫画とはちがって、「。」が ついている、ほんとに瑣末なことだが。

ただ、私たちにとっては瑣末でも、書くほうにとっては けっこう大きな問題かもしれない、とは思う。 広告のキャッチコピーに「。」がついてないと、どうも おさまりが悪いと思うが、漫画のフキダシには 「。」がないほうが読みやすいのは、 単に私が少女漫画系で育てられたせいなのか。

ともかくも。 最終章は、「楽園」。 それがタイトルの疑問の答えとなっている。 よくもここまで生きながらえてくれました。 ロワン・ディシー、6巻まで楽しませてくれて、 ありがとう。 (マーズ)

さっそく補足:読んでくださった方から教えていただきましたが、 「。」がつくかどうかは、出版社によって決まるとのこと。 書店で見たら、サンデーにはついていて、マガジンやジャンプには ついてませんでした。女性向けのは基本的についてません。 セリフをしゃべる人のキャラによってつけたり つけなかったり、というのがあってもいいですよね。


『Heaven?』 著者・絵:佐々木倫子 / 出版社:小学館2003

2002年10月02日(水) 『on reading』
2001年10月02日(火) 『快眠力』
2000年10月02日(月) 『養生訓』

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