甘玉堂の看板(これは立派!)の向こうから顔を出して写真を撮る人多し。こういう美術や小道具は撮影が終わると、どこへ行くのだろう。
6時半少し前からNHK埼玉局長、川越市長が挨拶。今回は定員の6倍の応募があったそう。川越市民会館の客席数は1261だそうで、その6倍となるとすごい数。続いて、幕の向こうで準備が整うまでの間を後藤高久チーフプロデューサーがトークでつなぐ。石を投げないで」「席を立つ時はトイレですとわかるように」などとお得意の関西ノリ。「今日の皆さんのテーマは、つまらなくても笑うこと」「笑いは人間だけに与えられた救済」などと説く。客席がほどよくほぐれ、主題歌のインストが歌版に変わり、盛り上がったところで幕が開くと、真瀬社長(宅間孝行さん)、ロナウ二郎(脇知弘さん)、玉木つばさ(多部未華子)が舞台に板つきで現れ、場内にどよめきのような歓声と拍手が沸き起こった。
渋谷のファンミーティング同様、幕が開くと同時にラジオぽてとを舞台にした寸劇が始まる。「アイラブ川越」というスペシャル番組を放送中という設定で、ブースのつばさと二郎が川越のいいところを紹介。「川越にはおいしいお菓子がたくさんある」と言うつばさに、「僕も食べ過ぎて太っちゃいました」と二郎が言い、突っ込みの視線を受けて「元々でした」。ブースの外では甘玉堂の加乃子から「川越名物あまたま」のちゃっかり売り込み電話を受ける真瀬。一方、「ラジオぽてとがあるから川越が好き」というお便りを紹介するブース。身内が書いたんじゃないかと疑う真瀬は、優花が書いたお便りだと知ってメロメロに。すると客席から「つばさちゃーん」と声がして、リポーターの伸子が登場。アドリブで客席の3名に「川越のいいところ」を聞いたが、一人目の外人さんとは片言英語でのやりとりがあったり、「郊外の雑木林もすばらしい」「ラジオぽてとの名前にもなっているが、これだけさつまいもの食べものがあるのは世界でも川越だけ」などと味のあるコメントが飛び出し、微笑ましい笑いを誘っていた。寸劇の脚本にも関わっているので、客席の反応を確かめられた(なかなか受けた!)のはうれしかった。
伸子もステージに上がって寸劇が終わると、埼玉放送局の結城さとみアナウンサーと後藤高久チーフプロデューサーが加わり、トーク開始。川越でロケした場面をダイジェストで振り返った後、それぞれの好きな場面紹介のトップバッター脇さんは、第17週のキネマ屋上でビール片手につばさと語る場面(実はアルコールがまったくダメでノンアルコールビールの微量なアルコールで酔ってろれつが怪しくなったそう)を選んだ。ベッカム一郎(麒麟の川島明さん)との漫才が良かった、と他の出演者から褒められると、「ベッカムと比べて、ロナウ二郎が売れなかった理由がわかった」と脇さん。
松本さんは第12週ののど自慢で「あなた」を歌う場面を選んだ。第12週でのど自慢をやりたい、しかも「あなた」を松本さんに歌って欲しいという演出の大杉太郎さんの具体的な所信表明から本作りは始まったが、事前のインタビューで松本さんからも「ぜひ歌を」と言われていたそう。つばさ班は折りに触れて役者さんの意見を聞き、物語に取り入れており、伸子がいつも算盤を弾いているのも「算盤が得意」というヒアリングがあったから。でも、松本さんがファンクラブに入っていた田川陽介さんを夫の良男役に決めたのは偶然だったそう。田川さんがクランクアップの花束受け取りを「まだ出たい」と拒否したため、その後にも出番を用意することになったエピソードも披露された。この後、田川さん演じる良男がラストに向けてボディブローのように登場するところも、いかにも「つばさ」らしい遊び心があるのでご注目を。
続いて真瀬さんが選んだ場面ものど自慢だが、歌っているのは千代と浪岡。流すVTRを間違えたのかと思いきや、客席にエキストラで出演している宅間さんの姿が。真瀬とは別人の観客に扮しているので、帽子を目深にかぶり、シャツはワイシャツの下の肌着の腕をまくっているという怪しい姿。真瀬として登場している場面では、同じく第12週で優花を叱り、優花に「お父さんなんか大嫌い」と言われ、「お父さんて呼ばれた」と感激するところを選んだ。
このあたりにサプライズゲストで優花ちゃん役の畠山彩奈(はたけやまりな)ちゃんが登場。緊張しつつも一生懸命おしゃべりする姿が、なんともけなげで愛らしい。のど自慢で歌った「やきいもグーチーパー」を宅間さんと振りつきで披露してくれ、客席は「かわい〜」ととろける寸前。優花ちゃんはうちの2歳児娘のたまが最も心を寄せる登場人物なので、たまを連れて来れば喜んだだろうなと思った。
今日は参加できなかった浪岡(ROLLYさん)が選んだのは、渋谷ファンミーティングで爆笑を買った第15週の「眼鏡吹っ飛び」場面。今回も大いに受け、何度も再生されることになった。他のドラマならNGとなるハプニングカットを歓迎していただいてしまうのは、「つばさ」らしいところ。多部ちゃんが選んだ場面は、第10週の優花ちゃんがキネマにやってくるにあたっての引っ越し騒動。優花ちゃんが退場し、続いて登場したサプライズゲストは、なんと竹雄(中村梅雀さん)と加乃子(高畑淳子さん)。わたしも人一倍興奮してしまう。
高畑さんが選んだお気に入りは、第3週の工事現場近くでつばさと語り合う場面、そして橋の上で知秋を抱きしめる場面。梅雀さんが選んだ場面は、第一週の川越祭りの曳っかわせと重ねての千代と加乃子の母娘喧嘩。このシーンの最後に「行かないで〜」と涙まみれの竹雄が加乃子にすがる。つばさが選んだ玉木家を象徴するシーンは、第17週で翔太がいなくなって落ち込むつばさの前に家族が入れ替わり立ち代わり現れ、優しさを差し出すところ。多部ちゃんはリプレイを観るたびに涙ぐみ、スタッフがハンカチを差し入れたり引っ込めたり。撮影中の中締めに偶然立ち会ったときも感極まって涙していたし、とても感激屋さんのよう。「あと少しで家族じゃなくなっちゃうじゃないですか」と言う多部ちゃんに、「何言ってるの。ずっと家族よ。結婚式行くわよ」と高畑さん。「そのときは夫婦として行きましょ。どうせあたし一人だし、いいじゃない」と梅雀さんに言う口調は、まさに加乃子。高畑さんは「子どもを捨てる母」という突拍子もないキャラクターを作るのにずいぶん苦労されたそうだけど、繊細さの裏返しの大胆さは素顔の高畑さんにも通じるものを感じる。
高畑さんと梅雀さんが桐朋学園の先輩後輩(一年違い)だったとか初めて聞く話も多く、楽屋のおしゃべりをのぞかせてもらっているような楽しさがあった。19週から23週までの5週分の予告を上映したり、あらかじめ受け付けておいた出演者への質問に答えたり(「川越で食べておいしかったものは?」「川越の好きな場所はどこですか」など)があった後、最後に一人一言で締めくくり、あっという間に2時間弱が過ぎた。個人的には、梅雀さんのコメントがどれもあったかく、本当にいい人だなあとますますファンになった。