待ちに待ったキンダー・フィルム・フェスティバルでの『パコダテ人』上映日。なのに、起きられない。昨日から調子が悪かったのだが、夏風邪をひいてしまったようだ。熱は37度を越えたり越えなかったりの微妙なところ。頭がガンガンして、喉も痛い。こんなこと、前にもあったなあと思ったら、ゆうばり映画祭だった。あのときも熱が下がらず、起き上がるのもやっとだったのに、夕張に着いたら元気になった。パコダテ人にパワーをもらおう、と会場へ向かう。
上映前に「監督の前田さんと脚本家の今井さんから挨拶があります」と紹介され、一言ずつ話す。「しっぽが生えたことある人?」という前田さんのつかみは、うまい。150席の客席はびっしり埋まり、20人近い立ち見が出た。クーラーがかなり効いていて、寒い人のためにタオルが貸し出されていたが、それも足りなくなり、寒さに耐えられずに出てしまった子が何人かいたのは残念。人の出入りはかなり激しく「この子たちには面白くなかったのかなあ」と思ったりした。上映中はほんとに静かで、笑いはほとんど起きず、内容が理解出来ていないのではと不安になったが、それは真剣に見入っていた証拠らしい。上映後の質問タイムで、子どもたちがいかに集中して作品を見ていたかに驚いた。「ひかるのしっぽは、あの後どうなったんですか」「ひかるたちの子どもは、しっぽが生えるんですか」……次々と質問が飛んでくる。
「ひかるにたたかれそうになったしっぽが逃げたのは、どうやっているんですか」という質問は、実際には仕掛けを聞き出そうとしたのだと思うが、前田監督は「あのしっぽは、少しだけ自分の意思で動くことができるんです。みんな、自分の右手で左手をたたけるでしょう?ずっとたたいていたら、左手がイヤがって逃げていきませんか。それと同じです」と夢のある答えを用意した。次の瞬間、子どもたちが一斉に右手で左手をたたきはじめ、「あ、ほんとだ、逃げる!」と歓声をあげだした。なんて、ゆかいな好奇心!そして、「どうして、しっぽが生える話にしたんですか」という質問に「パコダテ人2では、角や羽根が生えるかもしれません」と監督が答えると、「パコダテ人2では、どんな動物がモデルですか?」「角だったら牛!」と元気な声が飛ぶ。その場でパート2のストーリーができそうな勢い。子どもたちの熱気に、朝からの微熱は吹き飛んでしまった。