2002年08月02日(金)  「山の上ホテル」サプライズと「実録・福田和子」

会社帰り、神田の「山の上ホテル」に寄る。明日、わたしが挙式した同じ部屋で友人夫婦が披露宴を挙げると聞き、手紙を託しに行った。応対に出た女性がよく冷えたコーヒーを出してくれた。何度か打ち合わせに訪れたロビーを懐かしく見回しながら、「ここは余計なものがなくて、一目惚れしたんですよ」としばらく世間話をする。わたしたちの担当だった女性は、去年結婚退職し、すでにお母さんになっているらしい。思いっきり先を越されている。打ち合わせのとき、「結婚するときは、ここ(山の上ホテル)で挙式するんですか?」と彼女に聞いたら、「ここは職場ですから……」と答えられたが、やはり山の上ホテルとは別の場所で挙式されたとのこと。しっかり者で感じのいい方だったので、素敵なお母さんになっていると思う。

そんな話を義母にしながら、まったく話題と似つかわしくない番組を見た。『実録・福田和子』。最初はなんとなく見はじめ、「ひどい女ねえ」「あら、この後、殺しちゃったんですって」と実況していた義母の口数が減っていき、最後のほうは無言で画面に見入ってしまった。主人公の心の声や家族の葛藤をもっと盛り込めば、よりドラマティックになっただろうが、あえてそうしていない。ドラマだったら、「食い足りない」と指摘されるかもしれないが、「実録」とつけてあるように、フィクションの部分を極力おさえ、淡々と事実を追う展開になっている。福田和子の半生を大竹しのぶが再現しているという感じで、リプレイとして見ると、「あんな幸せそうな主婦がなぜ……」とわが身に置き換えて考えることもでき、奥深かった。時効直前に捕まった福田和子が警察で自分の名前を署名し、「他人みたいですわ」と呟く最後の台詞が良かった。

時効まで逃げ続ける犯人の心理にはとても興味があって、以前『透明人間』というラジオドラマをコンクールに出したことがある。最終選考で落とされた理由のひとつに「主人公が罪を犯した動機が描かれておらず、主人公に同情できない」というものがあった。福田和子の場合も、よくわからないが、そこには事実がある。事実を超えるものを書くには、人間の真理を描かなくてはならないのだろう。

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