2012年06月27日(水)  豚まんクーラーはないけれど

先日、映画関係のプロデューサーや監督と雑談していて、わたしが引っ越した話をしたところ「脚本家今井雅子の家にはコレがある!という目玉を作るべし」と言われた。

堂々たるウォーターベッドが鎮座ましている、とか、
雄々しいドーベルマンを飼っている、とか。

「うちは、観葉植物がたくさんありますけど」と言うと、
「そんなんじゃインパクトがない」とダメ出しされ、
「5歳の娘がアフロのかつらをかぶせてくれます」と言うと、
「もっとこう、作品と直結した何か!」を求められ、
「鉄板をデスクにしているとか、ワインクーラーならぬ豚まんクーラーがあるとか」という話に落ち着いた。

豚まんクーラー? なんじゃそりゃ。
お好み焼きぐらいは焼きますけど。

他の脚本家よりもたくさん持っているものといえば、たぶん、観葉植物。引っ越して以来、ちょこちょこと買い集めて、めざせジャングルな勢いで増殖中。

そんなわけで、テレビ脚本デビュー作「彼女たちの獣医学入門」でお世話になった獣医の石井万寿美さんから新居祝いのリクエストを聞かれて、「観葉植物」をお願いしたら、



どーんと、すごいのが届いた。木陰で涼めそうな立派なパキラの寄せ植え。

百均で買ったサボテンや157円のミニ観葉がちょこまかと並ぶ中に、いきなり大王降臨の風情。

その上にあるのは、ネットで一目惚れして、一家でお世話になっているUさんに新居祝いにリクエストしたmidorie(ミドリエ)。サントリーが開発した軽い素材が土代わりで、水を入れても1キロ足らずという超軽量ゆえ壁にかけて絵画のようにグリーンを楽しめるスグレモノ。




絵画のようだけど日々変化するのが、midorieの面白いところ。わが家にやってきたひと月半前と比べると、ずいぶん成長したのがわかる。

贈ってくださったUさんはご自宅用にもmidorieを買い求められた。「お宅のミドリエちゃんはどうですか?」と育ち具合を尋ねあっている。

Uさんのmidorie、万寿美さんの木、と水やりしながら、贈り主に想いを馳せる。「育つプレゼント」は、贈り贈られる人間関係も育まれるようで、じっくり楽しめる。

2010年06月27日(日)  子守話115「デニズとデニーズズ」
2008年06月27日(金)  マタニティオレンジ303 幻の一発芸、体文字の「TAMA」
2007年06月27日(水)  中国経絡気功整体の大先生
2002年06月27日(木)  泉北コミュニティ


2012年06月26日(火)  地上350メートル

さて、これはなんでしょう。



たまがカメラをぐるぐる回しながら撮って、色とりどりの光がブレたもの。


柱越しに撮っています。


左上の赤い光、東京タワーがヒント。


答えは、東京スカイツリー。中国語表記で「東京大空樹」となるはずが商標登録されていて「東京晴空塔」になったと先日の中国語教室で習ったばかり。


地上350メートルで食べるソフトクリーム。これが期待以上。カプチーノも泡しっかりで、なかなかおいしい。


下のソラマチの輸入チーズ屋さんで食べたチーズソフトも、また食べたい味。ソラマチ散策も楽しくて、たまはムックを愛読しているQ-potのショップを見つけて興奮。


お月様も地上で見るのとなんだか違って、不思議な感じ。


ブレたお月様。


到着したときは、ちょうどお日様が沈む頃。


たまは、夜景よりもブレ写真撮影が楽しくて、ミナ ペルホネン(minä perhonen=フィンランドの言葉で「私のちょうちょ」)の制服を着た案内のお兄さんお姉さんに相手にしてもらい、最後は一緒になってエレベーターを下りてきたお客さんを出迎え、「いらっしゃいませ」。

でも、エレベーターを下りた人たちの視線は、目の前のガラス張りの壁越しの東京の夜景に釘づけ。腰のあたりで手を振っている5歳児に気づいた人はいなかった。

日時指定料500円を足して2500円の元は取った。7/11からは当日券も発売されるので、2000円で地上350メートルへ。さらに上まで登るには、プラス1000円。

お土産も強気な山の上価格。そらからちゃんのノートがたしか350円。そのノートに、登った日の夜も次の朝もスカイツリーの思い出を綴ってくれた。

「きのうはすかいつりーにいきました で たまちゃんはすごくたのしくて おうちにかえったらばたっとねてしまいました でもすごくたのしかったです すかいつりいはすごくたかくこれぐらいでした」

2011年06月26日(日)  サンリオピューロランドを「たまセンター」と呼ぶ
2010年06月26日(土)  JAGDA新人作家展とキャンドル展とことりっぷ
2009年06月26日(金)  江ノ島の大道芸人「のぢぞう」さん
2008年06月26日(木)  知らなかった、大坂夏の陣『戦国のゲルニカ』 
2007年06月26日(火)  マタニティオレンジ136 サロン井戸端
2004年06月26日(土)  映画『マチコのかたち』


2012年06月24日(日)  「ドラマの種を花咲かせる」三丘同窓会総会講演

母校の大阪府立三国丘高校は、同窓会がしっかりしている。それだけ母校愛は熱く結束は固く、「三国」というだけで今井雅子やその作品を応援してくださっている方も多い。

来年の同窓会総会の講演を、と昨年電話をくださった同窓会事務局の丸山芳美さんは、『パコダテ人』の頃から見ています、とのことだった。

学校での講演が続いているが、今回は年配の先輩方が多いとのことで、「ドラマの種を花咲かせる」と題して、日常からドラマの種を拾い集めて、水をやり肥料をやり、作品という花を咲かせる過程を実例で紹介しつつ、「ネタにする=元を取る」という話にした。



これまでに手がけた作品がどのように生まれたかを、まずは震災前の映画『パコダテ人』『子ぎつねヘレン』朝ドラ「てっぱん」で紹介。

函館山のてっぺんで酔っ払った頭にまずタイトルが思い浮かんだ『パコダテ人』は、ぱぴぷぺぽのマルにヒントを得て、「欠点ではなく、おまけ」という個性の話にした。その発想の源には、横並びが前提の日本から、みんな違うことが前提のアメリカに飛び込んだ留学経験があった。

生まれたばかりのわたしを見た祖母の第一声が「鼻がない、穴しかない!」で、鼻が低いことがコンプレックスだったけれど、留学先のアメリカでは「平たい顔」をうらやましがられた……というエピソードが、どっと受けた。

皆さんがよく笑い、熱心にメモを取られる様子が壇上から見えて、とても気持ちよく話せた。

『子ぎつねヘレン』では「辛+一=幸」(辛さを幸せに変えるのは、たった一人の強い味方)なのだと脚本を書きながら発見し、「てっぱん」では、「家族」とは何かを皆で煮詰めていった結果、「家族=つくるもの」ということを半年かけて描こうとなった。

「タネ=ネタ」を拾うには「傘と心は開いたときが一番役に立つ」の心がけ。心の傘を開かせるおまじないは「おもろい」。おもろいことないかなと辺りを見回し、見つけたらおもろいと感心する。この繰り返しで、自然とネタが身につく。

拾ったネタを逃さないためにおすすめなのは「脳みその出張所」を持つこと。昔なら日記帳に書き留める、今ならブログに書いたり、ツイッターでつぶやいたり。人に話すのも、記憶を焼きつけるには有効。わたしが講演を好きなのは、人に話すと、自分の代わりに「あんた、こないだ、こんなこと言うてたで」と覚えていてくれるから。

「人生、失敗したもん勝ち」と思っていたし、出産も子育てもネタと思えば苦労は報われ、困難は乗り越えられてきた。

あの日までは。

あるとき、「即興脚本ライブ」というイベントをやった。脚本作りは連想ゲームで、コミュニケーション能力を磨くのにも役立つという手応えを得た。それが2011年3月7日の月曜日。その週の金曜日に震災があった。

ネタにしようがない現実に打ちのめされた。その9日後には京都で講演を控えていたが、何を話していいか頭が真っ白になった。

そんなとき、新聞の風刺投稿欄で見つけた「足りないもの ○力」という言葉。○には「電」ではなく「伝」があてられていた。大事な一言が足りなかったり、余計な一言が付け足されたりが、混乱や不安や争いを招いていた。人をつなげ、救うのは、「伝力=伝える力」。その力を強くするために、自分にできることがあると思えた。

NHKよる★ドラ「ビターシュガー」の脚本作りは「これを震災前の設定にするか後の設定にするか」の検証から始まった。未来からの逆算で今を生きるのではなく、一瞬一瞬を写真を撮るように積み重ねた先に未来がある、という考え方は、震災後の価値観の中で生まれたと思う。

震災復興企画として依頼されたNHKアニメ「おじゃる丸スペシャル 銀河がマロを呼んでいる〜ふたりの願い星」では、打ち合わせを重ねるなかで「おじゃる丸が銀河鉄道から種をまき、被災地に花を咲かせる」というプロットをあらため、「おじゃる丸が自分の幸せのために旅した結果、幸せは自分がいるここにあると気づく」物語にした。


最新作の『わにのだんす』は、ラフスケッチの段階で「お金と言い過ぎ」という指摘を受けたことで「何のために稼ぐのか」を突き詰める絵本になった。何年か前に「金持ちより人持ち」という言葉に出会って以来、仕事を引き受けるよりどころにしているが、震災後、その想いはさらに強くなった。きらきら光る「金」は、自分を飾りたてることではなく、他者との関係の中に見出される。

最後に、ひとつの仕事が次の仕事を呼び込み、わらしべ長者のように今日まで続いていることを話し、「ドラマの種を花咲かせる」には、人と人のつながりを枯らさないことも大事だと締めくくると、ちょうど持ち時間の一時間になった。

懇親会までの15分の間に、用意した20冊ほどの『わにのだんす』サイン本が完売したと聞いて、驚いた。エンブックスの西川俊充さんも堺出身で、応援せずにはいられない情熱人だと紹介したことも後押ししたかもしれない。物販はおつりのやりとりが大変だけど、「千円で販売、本代との差額は桃柿育成基金に寄付」という事務局の機転に感心した。

懇親会では、ひっきりなしに話しかけられ、感想を頂戴した。皆さん、今のご自分の状況と重ねて、心に響くメッセージを持ち帰ってくださった様子。「元は取りましたか?」「低い鼻が高くなりました」などと講演から早速引用したスピーチが会場を湧かせた。

「伝力」が効力を発揮するには、それを受け止める「受信力」も必要だとあらためて思った。また、「受信力」の高い方は「伝力」も高いことを実感した。「伝える力、伝わる力」があわさって「伝力」なのかもしれない。

高校を卒業して19年目にして初めて参加した同窓会総会。それこそわたしは「おもろい」スイッチ押しまくりの心の傘は開きっぱなし。今日一日でうんと「人持ち」になり、母校がもっと好きになった。

招いてくださった方々、お手伝いしてくださった方々、聴いてくださった方々、ありがとうございました。

それから、お知らせ。
41回卒業3年6組の同窓会が8月4日に大阪で行われます。クラスメートの皆さん、そのときに。

2011年06月24日(金)  思い出とご縁のフレンチ「シェ ルネ」最後の晩餐
2010年06月24日(木)  栄養も元も取る朝食バイキング
2009年06月24日(水)  江ノ島の思い出「たまえのしまをゆく」
2008年06月24日(火)  カレーとコーヒーとチョコレート
2007年06月24日(日)  マタニティオレンジ135 うっかりケーキでたま10/12才
2005年06月24日(金)  『子ぎつねヘレン』ロケ見学7日目
2004年06月24日(木)  東京ディズニーランド『バズ・ライトイヤー夏の大作戦』
2000年06月24日(土)  10年後に掘り出したスケジュール帳より(2010/11/27)


2012年06月23日(土)  「わにのだんす」サイン本と再会

『パコダテ人』の頃から応援してくださっている大阪のさのっちさんに引越のお知らせをしなきゃと思っていたら、「わにのだんすのサイン本が届きました」とメールが来た。

この手の以心伝心、過去にも何度か。

ちょうど大阪に行くんですよと返信すると、新大阪でつかまえますとのこと。

これまた、過去に何度か。

「一年ぶりですか?」「いや、もっとですよ。二年は空いてるかも」
おしゃべりしながら御堂筋線で難波まで移動して、なんなんタウンの「もぐら屋」という甘味喫茶へ。



堺名物くるみ餅にソフトクリームがのっかった「くるみソフト」を食べながら。積もる話と最近の話を行ったり来たり。

先日東京今日のわが家にエンブックスの西川俊充さんと画家の島袋千栄さんが来て、せっせとサインしたうちの一冊と大阪で再会。めぐりめぐるご縁を象徴するような出来事。

2010年06月23日(水)  ベランダでリゾートごはん
2009年06月23日(火)  人脈が金脈を呼ぶ魔女田式錬金術
2008年06月23日(月)  念ずれば、柿の葉寿司 
2007年06月23日(土)  「イラン・ジョーク集」のモクタリさんと鎌倉ナイト
2005年06月23日(木)  『子ぎつねヘレン』ロケ見学6日目
2000年06月23日(金)  10年後に掘り出したスケジュール帳より(2010/11/27)


2012年06月22日(金)  あいうえおカード即興物語

今朝のできごと。キッチンで朝食の支度をしていると、

「しろいとり、なーんだ?」「あかくてすっぱいくだもの、なーんだ?」「はねるどうぶつなーんだ?」と、ダイニングテーブルから、たまの声。

クイズの答えは「あひる」「いちご」うさぎ」。たまは、「あいうえおカード」をめくりながら出題。


オットセイの絵が描かれた「お」まで来て、突然物語を語り始めた。

「こないだ、たまちゃんっていう、かわいいこがきたんだよ、とおっとせいがいいました」
「しってる。ぼくのところにもきたよ、とかにがいいました。ぼくをつかまえて、あそんでいたよ。えびもつかまえていたよ」
カードは「お」の次の「か」に。
二つのカードの登場人物に会話をさせ、なめらかなつながり。

さらに一枚めくって、きりんの絵の「き」。
ここから先、舞台は動物園に。

朝食の支度をしながら聞き流していると、いつしか手袋の絵の「て」まで来て、
「てぶくろをしたかかりのひとは、ものれーるにのって、どこかへいきました。どこへいったんでしょう」と引っ張って、一枚めくり、トマトの絵の「と」へ。
「とまとをとりにいったのでした」
その次は、茄子の「な」。
「とまとのとなりには、なすがなっていました。なすは、ぴかぴかしていました」
ちょうどベランダでプチトマトと茄子を並んで栽培中。

「な」の次は、虹の「に」。
「そして、あめがふって、なすは、もっとぴかぴかになりました。あめのあとには、にじがでました」
即興で物語を作っているのだけど、カードの順番は覚えているらしく、虹が出る前に雨を降らせている。その雨のせいで、茄子がいっそうぴかぴかした、という描写をつけ加えたところに感心した。

動物園では「ね」のねずみが出たあと、「の」の乗り物がたくさん集まった。

物語は、「かかりのひとがどこかにいって、ゆくえふめいになりました」という展開に。

「ほ」の星が出ると、「ほしが、きりんのかたちになりました。かかりのひとが、おそらにえをかいたのです。おっとせいもあんしんしました」。なんと係員は宇宙まで足を伸ばしたらしい。

「ま」の窓を誰かがつけてくれたことに感謝し、「み」で水が出なくなり、「む」で虫がたくさん出た後に、「め」の眼鏡。
「むしめがね、とだじゃれのようなことを、だれかがいいました」
と関西人DNAを感じさせる流れ。

続いての「も」は森の絵なのだけど「からすがおべんとうをもっていってしまいました」となり、次の「や」で「でも、おべんとうをあけると、やさいばっかりで、からすはがっかりしました」。

次の「ゆ」は銀世界。
「そうこうしているうちに、ふゆになりました。ふゆは、しんしんとさむいです。ゆきはぽろぽろとふってきます」
次の「よ」は夜。
「ほしがでてくるのは、さむいので、やだでした」


続いて、「ら」はライオン。「り」はリス。
「らいおんは、さくのところからでてしまいました。さくのそとに、ごろんとしたかったのです」
「そして、きのうえをみると、りすがおいしそうに、きのみをたべていました」

「る」は留守番で、家の窓辺でお留守番をしている犬の絵。
「かかりさんがもどってこないので、いぬのちろのいえにいきました」
係員が動物園からいなくなった話は引っ張ったまま、犬に名前をつけて、新たな展開。

次はレモンの「れ」とろうそくの「ろ」。
「そっちのおうちにれもんはありますか、ときくと、いぬのちろは、だしました。これこれ、これです、といいました」
「ちろは、きゃんどるをともしてくれました。いいにおいです」

そして、ワニの「わ」とペンギンの「ん」。
「どうぶつえんから、わにはそろそろとあるいてきました」
「ぺんぎんも ぺたぺたとあるいてきました。じめんがつちなので、つちもあしにくっついてきました」

キャンドルのにおいや、足の裏にくっつく土まで描写するのが面白い。わたしの苦手なト書きを書かせたら、うまいかもしれない。

最後は「を」で「き○をうえる」と書いてあり、植樹の絵。
「かかりいんさんがもどってきて、きをうえました」で締めくくられた。ちなみに係員さんが宇宙まで出かけたのは、動物園に仲間入りさせる「うちゅうじんをさがしに」行っていたとのことで、伏線の回収もバッチリ。

たまがまだ赤ちゃんの頃、熱海へ行った折におみやげに買ったリングカード・あいうえお(とだこうしろう)が、即興創作物語の種本になるとは。

聞き流した部分も採録したくて、「もう一度やって」とデジカメを構えたら、「もう、たまちゃんみたいによくはたらくこども、ままにはいいかもしれないけど、ままみたいになんにもしないおとな、たまちゃんは、やだよ!」とダメ出しされた。

2010年06月22日(火)  ジュースも醤油もセルフで!たま3歳10か月
2009年06月22日(月)  手は焼けるけど世話も焼きたい、たま2才10か月。
2008年06月22日(日)  マタニティオレンジ302 英語も飛び出す、たま1才10か月
2007年06月22日(金)  マタニティオレンジ134 わが家語
2005年06月22日(水)  『子ぎつねヘレン』ロケ見学5日目
2004年06月22日(火)  はちみつ・亜紀子のお菓子教室
2003年06月22日(日)  不思議なふしぎなミラクルリーフ
2002年06月22日(土)  木村崇人「木もれ陽プロジェクト」
2000年06月22日(木)  10年後に掘り出したスケジュール帳より(2010/11/26)
1998年06月22日(月)  カンヌ98 3日目 いざCMの嵐!


2012年06月19日(火)  小さな焦げ跡より大きな傷

夕飯を終えて、たまが「きゃんどるやるぅ」と言い出し、テーブルに出してあったキャンドルを灯した。

たまをテーブルに残し、オープンキッチンの流し場でお皿を洗っていたら、「わ! どうしよう!」と悲鳴のようなたまの声がして、あわてて駆けつけると、テーブルの上に、赤々と燃えるマッチ棒が横たわっていた。

わたしも「わーわー」と大騒ぎして、消してみると、マッチ棒だと思ったのは、爪楊枝だった。

キャンドルをいくつか灯すとき、マッチ棒がもったいないので、わたしが爪楊枝で火を移していたのを見て、覚えていたのだろう。キャンドルの火を爪楊枝で受けたものの、炎が指に迫ってきて、持ちきれず、落としてしまったらしい。

新居に合わせて数週間前に届いたばかりのテーブルに、焦げ跡がついた。「もう、なんてことしたの!」と叱りながら、テーブルをごしごししていると「だって、どうしていいか、わかんなかったんだもん」と、たまが泣きだした。

考えてみれば、手元に火を持つ体験といえば、花火ぐらいで、指先から数センチ先に炎を受けて、それが迫って来たのは初めてのことだったのだろう。怖くて、あるいは、熱くて、思わず落としてしまったら、テーブルの上で火が燃え続け、「わ! どうしよう!」の悲鳴となった。

そのことに気づいて、ごしごしの手を止め、「たま、怖かったね」と抱きしめると、たまはいっそう強く泣いた。

その後、「まま、だいっきらい」と言い捨て、寝室にたてこもった。

テーブルには、うっすら焦げ跡が残ったけれど、無垢の木ならではの木目や傷に紛れて、目を凝らさないとわからない。それよりも大きな傷を、球の心に刻んでしまった。

「たまへ おこってごめんね。こわかったね。けがしなくてよかったね。でてきて、あそぼ」と手紙を書いて、ろう城を続ける寝室のドアの下に滑らせると、しばらくして「もどってきたよ」と部屋を出てきた。

大きな焦げ跡なら、見るたびに思い出すのだろうけれど、記憶を呼び覚ますきっかけにはなりそうにないささやかさなので、書き記しておこうと思う。


2011年06月19日(日)  鎌倉散歩
2010年06月19日(土)  〈の〉はおしりに似てるね『とけいのほん』
2009年06月19日(金)  報酬系とドーパミンと子守話80話
2008年06月19日(木)  「第2回万葉ラブストーリー」受賞作発表
2007年06月19日(火)  父イマセン、ピースボートに乗る。
2005年06月19日(日)  『子ぎつねヘレン』ロケ見学2日目
2004年06月19日(土)  既刊本 出会ったときが 新刊本
2003年06月19日(木)  真夜中のアイスクリーム


2012年06月07日(木)  二度惚れの一枚板風テーブル

引越は執筆の敵だ!
と、この際断言してしまおう。

引越したい、と思ったときから、不動産サイトめぐりが始まり、ようやく引越先が決まったら、今度はインテリアサイトめぐりが始まる。

これがなかなか時間を食う。

トイレひとつ取っても、壁に貼るウォールステッカー、床のピータイル椅子、ペーパーホルダーとネットを探し回ってひとつひとつ選んだ。

リビングのスポットライトも、安いけど見栄えのいいものをネットで探した。

書斎机は木の家具のサイトをめぐりにめぐった結果、決め手に欠けて、テレビ収納スペースに改造した元ドレッサーの棚板を木箱に乗せてデスクとして使うことに。その木箱もネットで探した。

いちばん時間をかけたのが、ダイニングのテーブルと椅子。
椅子はイームズチェア風のもので色鮮やかな赤、オレンジ、黄、しかも一脚1万円でお釣りが来る、というものを見つけるまで、あちこちのサイトをぐるぐる回った。

まず椅子を決めてから、テーブルに迷い続けた。

リフォーム工事中に大工さんが作業台にしていた簡易テーブルが大きくて、「これぐらい大きさがあると、人が集まったときにいいな」と思って長さを測ったら180センチあった。180センチ以上ある無垢の一枚板テーブルを探し求めて、サイトめぐりを続けていたある日、なにかの拍子で「一枚板風のテーブル」にひとめ惚れした。

木を何枚か継ぎ合わせているので、一枚板よりもお求めやすいお値段、そのうえ手入れもしやすいという。重厚すぎず、素朴すぎず、ほどよく洗練されたフォルムも気に入った。その後もいくつかのテーブルとパソコン越しにお見合いしたけれど、やっぱりあれにしよう、と決めた。

それが、こちら。


受注生産なので、到着までひと月半かかると言われ、ようやく今日到着。

クロネコさんが二人で運び入れ、「ここにお願いします」という位置に手際良く設置してくれた。

ひと月あまり前に届いていたイームズ風チェア6脚がちょうどいい感じに納まる。タモ材とヴィヴィッドなビタミンカラーの相性よし。アルダー材の床との相性もよし。


ネットでの買い物は、届いてみてがっかりということもあり、賭けなのだけど、このテーブルは「ネットでの写真写り以上」の美人さんだった。脚にも木目がきれいに出ていて、惚れ惚れ、二度惚れ。

2010年06月07日(月)  フューチャー、シュミレーション、造詣が深い……。
2009年06月07日(日)  朝ドラ「つばさ」第11週は「愛の複雑骨折」
2008年06月07日(土)  高島屋ミヤケマイ個展『ココでないドコか』で乾杯
2007年06月07日(木)  誰かにしゃべりたくなる映画『しゃべれどもしゃべれども』
2005年06月07日(火)  友を訪ねて名古屋へ
2004年06月07日(月)  絨毯ひろげて岐阜県人会
2002年06月07日(金)  ドキドキの顔合わせ


2012年06月01日(金)  2012年5月「月間たま語大賞」

月に一本選んで、年末に年間たま語大賞を選びましょう、の5月編(5歳8か月〜9か月)。まずは、この一か月のたま語(@tamago_bot822)をずらずらっと。

パパに買ってもらった運動靴がうれしくて、何度も見せにくる。「このくつ、いいでしょ? なんどみてもおなじだけど、いいでしょ?」何度見ても同じだけどってとこがツボです。(5/6)

わたしにつられて早起き。うっすらと空に残る月を見ていたら、すーっと消え入る瞬間を目撃。「いま、つきがどあしめたね」いま月がドアを閉めた。詩人。(5/8)


【たま絵】日本語習いたての外国人が書いた感じの『珠江』の名刺。 (5/9)

「たまちゃん、またあうひまでのいちわ、かけたよ」『また逢う日まで』という連ドラを執筆中らしく、Pは空想上の従姉で脚本家のあられちゃん。「いいかんじだから、にわかいてよっていわれちゃった。ままはどうなの?すすんでる?」同業者と話しているみたい。(5/10)

「そのひをどうにかしてってどらまもかいてるの」その日をどうにかして?「そっちはだめだしされたの」どこがダメだったの?「わかれのところ」何がダメだったの?「あられちゃん(※空想上の従姉で脚本家)がやってほしいようにわかれなかったから」ありがちな事情(5/10)

おままごとでプリンを運びながら「ぷりんはやわらないからきをつけてはこばないと、ぷるんとほどけちゃう」プリンがほどけるという言い回しに、表情がほどけました。(5/10)


「しんごうをわたるときは、こうやって、てをあげるんだよ」足は上げなくてよろしいし、腋の下を隠す必要もありません。 (5/10)


【たま絵】「きょうそうかい」と保育園父母会の総会参加を呼びかけ。わたしが書き添えたのが不満で「これはこどもがかいたんです」 (5/11)

マンション前に出ていた粗大ごみの整理箪笥の引き出しを開けると、中から丸まった肌色パンストが。「ままー。ひきだしにおにくはいってるよ〜」(5/11)


【たま絵】日曜日は母の日。(5/11)


【たま絵】頭にかぶっているのは「かぶと」だそう。 (5/11)

「(保育園の)れんらくちょう、きょうはなんにもかいてないよ」どうしてわかるの?「いつもはおひるねのあいだにかいてるけど、きょうはおひるごはんがおわったら、のーとしまってくださいっていわれたの」探偵たまの推理。(5/13)

「ままのおならは、あたまにくる〜。ぱぱのおならは、こしにくる〜」。ようわからんけど、ツボにくる〜。(5/17)

朝早くからQ-pot.のムックを開いて、「ぴこ、ぴこ、ぴこ、ぴこ」。大好きセンサーが働くたびに、作動音を発信。わたしと趣味同じで、食べ物アクセに目がないです。(5/18)

「たまちゃんとまま、いつてをつなぐのをやめるんだろね?」ずっとつないでいたいね。「じゃあどうしていまつないでないの?」それはあなたを乗せて自転車運転してるから。(5/20)

ご家庭でご不用になりましたエアコン、ラジカセ…と回収車のアナウンスが聞こえてきて「うちでつかわなくなったしなものは、ままでーす」用済み…。(5/20)

「つきって、りんごとれもんからできてるんだよ。だから、たべられるの。でも、とどかないでしょ?だから、ながれぼしがたべるの。いいねえ、ながれぼしに、なりたいね。ながれぼしは、おなかいっぱいになって、どあをしめるの」。ドアを閉める=消える。(5/20)

暗くなってきたね。太陽が食べられているんだよ。「だれに?」お月様に。「おつきさまは、ながれぼしにたべられるの」昨日そんなこと言ってたね。「それで、ながれぼしは、たいようにたべられるの」天上の食物連鎖。(5/20)


【たま絵】目の形が「のの字」から進化。星が入った。(5/21)

最近はやりのワイルドスギちゃんの口調がお気に入り。「てんかすをてのひらにのっけてたべるんだぜ〜」チャイルドたまちゃん。(5/22)


【たま絵】「たまへよりみづきちゃんまたとまりにきてねたまえまってるねまたいっぱいあそぼねたまえまってるねままもとまりにきていいてゆてたよたまもいいよぱぱもたのしみにしてたよたまえより」去年転園してきた保育園で仲良しのお友だちができ、またお泊り来てねの手紙。「たまえまってるね」の繰り返しにキュン。(5/23)

野菜食べなさいとパパに言われて「やさいはたべないけど、ままうんじゅうにさいはたべまーす」とわたし(ウン十二歳)の腕を噛み噛み。(5/23)

ごっこ遊びで8歳の子の役。漢字書けるのと聞くと「かけるよ。ろーむとか」ろうむ?「そう。るぉーむ。えいご」Rome!?「あと、らくだとか」駝!?(5/23)


【たま絵】「ままあしたのえんそく9じしゅうごおだよもていくのはすいとおおべんとおおしぼりていしゆ」(5/23)

「あいすはあいすでも、さわるとあつくて、やけどするあいすは?」答えはドライアイス。こんななぞなぞを作れるようになりました。冷たすぎて痛いと熱いと感じるのよね。(5/23)

「あいすはあいすでも、のむあいすは?」アイスコーヒー。「あたり。じゃあ、いすはいすでも、たべられるいすは?」アイス?「あたり。じゃあ、いすはいすでも、たべられないいすは?いす!」そのまんますぎて、ウケた。(5/23)

「ぎょうちゅうってなあに?」体の中にいる虫よ。おしりから出入りするから、おしりぺったんシールで探すんだって。「おしりにすんでるの?」そうなのかな。「じゃあうんちたべてるの?」さあ…。「いたらいいな。そしたら、あんまりといれにいかなくて、すむよね」(5/29)


5月のたま語でいちばん反響があったのは、5月8日の

わたしにつられて早起き。うっすらと空に残る月を見ていたら、すーっと消え入る瞬間を目撃。「いま、つきがどあしめたね」いま月がドアを閉めた。詩人。

これを5月の月間たま語大賞に決定。

2010年06月01日(火)  「てっぱん」尾道ロケ見学3日目、渡船で向島へ。
2009年06月01日(月)  子どもが消えた!パニック
2008年06月01日(日)  出張いまいまさこカフェ8杯目『企画という恋が終わるとき』
2007年06月01日(金)  「いしぶみ」という恋文
2005年06月01日(水)  映画『子ぎつねヘレン』撮影中
2004年06月01日(火)  歌人デビュー本『短歌があるじゃないか。』
2002年06月01日(土)  フリマ
2000年06月01日(木)  10年後に掘り出したスケジュール帳より(2010/11/26)
1979年06月01日(金)  4年2組日記 日記のざいりょう

<<<前の日記  次の日記>>>