今朝、保育園の連絡ノートを書いていたら、「たまがいないぞ!」とダンナが叫んだ。「そんなはずないよ」と言って見回したが、姿が見えない。「え! ほんとにいない!」「何やってんだよ!」「知らないよ、わたしはノート書いてたんだから!」と言い合いながら、決して広くない家の中を右往左往。「ベランダか!」と出てみた。最近たまはベランダに出るのが好きで、一人で出入りしている。しかし、ベランダにもいない。「まさか、落ちたか!」と悪い予感に青ざめる。室外機に乗って落ちたら危ないなと思っていたが、ほんとにそれが起きてしまったのか! 。ありえないとは思うけれど、本当にどこにもいないので、消去法で考えると、落ちたとしか考えられなくなってくる。
たくましい想像力が現実を先回りして最悪の事態を思い描き、息苦しくなってきたそのとき、「なんだ、ここかよ」と素っ頓狂なダンナの声がして、敷きっぱなしの布団から顔を出したたまをダンナがもみくちゃにしていた。くしゃっとしわの寄ったかけ布団の下に隠れていたのを見落として、そこを飛び越えて、あわて者のわたしとダンナはあたふたしていたのだった。
たまは二度寝のつもりだったか、かくれんぼのつもりだったか。ばあ、と顔を出したら両親がすごい形相で駆け寄ってきて、泣き笑いしながら痛いほど強く抱きしめるので、怖がって泣き出してしまった。しかし、親の涙も負けてない。我ながら驚き、恥ずかしくなるほどのあわてふためきようを振り返り、これほど何かに必死になったのは、いつぶりだろうと思った。生まれて間もない頃、布団の上に寝かしていたはずなのにいなくなったときも焦ったが、そのときは、キックで体が移動し、予想以上の距離を進んで家具の下に潜り込んでいた。
家の中でほんの数分迷子になっただけで、この騒ぎ。外で迷子になったりしたら、生きた心地がしないだろう。自分にとって、わが子がかけがえのない存在であることをあらためて思い知った出来事だった。
というわけで、今日の子守話は迷子の話。
76「まいごのママとたまちゃん」
ママと たまちゃんは いつも いっしょ。 ママと たま なまえも よくにて なかよしこよし。
ところが デパートにでかけた あるひのこと。 つないだ てと てが はなれて たまちゃんと ママは はなればなれに なった。
「ママー」と たまちゃんが よぶと たくさんの おんなのひとが いっせに ふりむいた。 そして たまちゃんを みて 「うちのこじゃないわ」と いった。たまちゃんは 「みんな わたしの ママじゃないわ」と なきべそをかいた。
とそのとき「たまちゃーん」とこえがした。 ふりかえったのは たまちゃん ひとり。 ママが なきべそかいて はしってきた。 「ママー」「たまー」「ママー」「たまー」 なんども なまえを よびあっていたら なみだが ぽろぽろ こぼれてきた。
「もう はなれないでね」と ママが たまちゃんの てを ぎゅっと にぎった。 たまちゃんも ぎゅっと にぎりかえした。
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