友人でNHKディレクターの城光一君から昨夜「これから僕の作った番組やるんで観てください」と電話があり、『その時歴史が動いた』を観た。タイトルは『戦国のゲルニカ〜大坂夏の陣、惨劇はなぜ起きたのか』。電話で城君が「大坂夏の陣に一般市民がだいぶ巻き込まれてたことがわかってきて、屏風絵にも残っているんですよ」と話してくれたのだが、通常は主君の活躍を描いて後世に遺すことを目的とする屏風絵に、市民が犠牲になった惨劇が克明に描き記されている。戦争への悔恨が過ちを繰り返さないための教訓として描かせたのだろうか。戦争映画を作る動機にも似ている。
この屏風絵を大阪城天守閣に所蔵するにあたって働きかけた当時の天守閣主任、岡本良一さんが「この絵を見ていると、当時の市民の怒りや悲しみの声が聞こえてくるような気がする。この絵はまさにわが国の元和版ゲルニカと言ってよいかもしれない」と語ったのに由来して、番組では「戦国のゲルニカ」と呼んでいたのだが、血を流し、逃げ惑う民衆の叫びがブラウン管を通しても伝わってくるようだった。これが絵画ではなく史実の記録であることの重みを感じる。そこに描かれているのは、わが故郷、大阪に暮らしていた名もなき人たちだ。
学生時代は歴史にあまり興味が持てず、過ぎたことを学んで何になろうという気持ちもあり、授業で習ったはずの大坂夏の陣についても名称以上のことを覚えていない。年を重ねてから歴史を面白く感じるのは、過去は変えられないけれど、目の前にある未来は変えられることを身をもって体験し、歴史を学ぶのではなく、歴史から学ぶのだと知るからだろうか。番組を観終わってから、「案内してくれてありがとう。戦国のゲルニカのこと、知れてよかった」と城君に電話した。
2007年06月26日(火) マタニティオレンジ136 サロン井戸端
2004年06月26日(土) 映画『マチコのかたち』