朝日新聞別刷り「be」の6月6日付けサイエンス版に「報酬系」のことが載っていた。脳には報酬系と呼ばれる神経回路があり、そこが損得勘定をして人の行動を左右しているという。昨日の日記に書いた「感想力」はまさにこの報酬系の活性剤だといえる。いい感想をくれる人に、いい仕事で応えようという意欲が湧くのだ。
報酬系という親しみやすい単語が脳研究の分野の用語として使われていることが興味深く、調べてみると、この報酬系は「ドーパミン」に関係しているらしい。ドーパミンという単語を知り、その響きにはまったのは、今の半分ほどの若さだった大学生の頃。チアリーダー仲間で読書家の理系だったヤスコちゃんが「脳がドーパミンという快楽物質を出すと、苦しみが快楽になる」ということを教えてくれ、もう一人の同期のトンちゃんとともに「ドーパミン、ドーパミン」をかけ声にランニングや筋トレをしていたのが懐かしい。ランニングハイもドーパミンの仕業だが、褒められたり報われたりするときの満たされた気持ちもまたドーパミンが運んでくるものだったのだ。
頑張れば報われると信じられると、努力は苦ではなくなるという見地からも「褒めて育てる」は一理あるらしいが、子どもを育てる側からいえば、子育ての苦労を吹き飛ばし、喜びに換えてくれるのは、子どもからの報酬だといえる。「ママ だいすき」「ママ また つくってね」その一言で、どこからかチカラが湧いてくるし、子どもの成長を日々見られることがごほうびだと思えるからこそ、愛情を注げる。実際、記事によると、母親は、他の子の写真よりも自分の子の写真を見たときに、報酬系が最も活発に働くという。パブロフの犬のように、わが子の顔を見ただけで報酬系が反応するらしい。
今日で80話目の子守話(火曜日に行った回転寿司がかなり気に入ったらしく、「くるくるやさん また いこうね」を連発。なので寿司ネタで)も、報酬系がはりきった結果。「これを聞かせたらどんな顔するかな」の期待と、聞かせたときの反応が、おはなしの種から花を咲かせる水や栄養になっている。「今年中に100話」の目標達成まで、あと20話。
子守話80「おすしと くるくる」
あるひ パパと ママが たまちゃんに 「くるくる まわる おすしやさんに いこっか」と いいました。 ダンスが だいすきな たまちゃんは 「たのしそう!」と おおよろこびで でかけました。
ところが くるくる まわるのは たまちゃんではなく おすしでした。 すっかり まわるつもりだった たまちゃんは がっかりです。 「ママ おねがい。いっしゅうだけ まわらせて」と おねがいすると 「ちちんぷいぷい。たまちゃん おすしぐらい ちいさくなあれ」と ママが まほうを かけてくれました。
ちいさくなった たまちゃんを ママは おやゆびと ひとさしゆびで ひょいと つまんで まわってきた いなりずしの おさらに のっけました。 「いっしゅうだけ まわったら もどるんだぞ。 いなりずしの おさらごと ひきあげるから」と パパが いいました。 「はーい。いってきます」と たまちゃんは いくらの つぶより ちいさくなった てを ふって しゅっぱつしました。
おさらから ながめる けしきは とても ゆかいです。 「みてみて。おやゆびひめ みたいな おんなのこが のってる!」 いなりずしの よこに ちょこんと たっている たまちゃんを みて おきゃくさんたちは おおさわぎ。 でも だれも たまちゃんを たべる ゆうきは ありません。 「バイバーイ」と あいさつして たまちゃんは つぎの テーブルへ むかいます。 パシャリと しゃしんを とる おにいさん。 「わたしも のりたいよう」と なきだす おんなのこ。 「おにんぎょうの かたちの おすしなんて あったかしら」と てんいんさんは めを ぱちくりさせました。
あっというまに いっしゅうの たびが おわって たまちゃんは パパと ママがいる テーブルに もどってきました。 「たまちゃん さあ おしまいよ」と ママが いなりずしの おさらに てを のばしました。 「やだ! もう いっしゅう まわる」と たまちゃんが いうと 「やくそくは やくそくだ」と パパ。 でも くいしんぼの ママは いたずらっこの たまちゃんが いないと ゆっくり おすしを たべられるので 「じゃあ もう いっしゅうだけね」と ゆるしてくれました。
たまちゃんは おおはりきりで にしゅうめを まわりはじめました。 ところが おきゃくさんは もう びっくりして くれません。 たまちゃんが てを ふっても おすしに むちゅうで しらんかおです。 たまちゃんは ゆかいな きもちが きえて だんだん こころぼそく なってきました。
ながい ながい にしゅうめが おわって パパと ママの いる テーブルが みえてくると たまちゃんは なみだが でそうに なりました。 「パパ ママ ただいま!」 たまちゃんが おおきな こえで いうと ママが たまちゃんの ほうを みました。 ところが なんということでしょう。ママが てを のばしたのは たまちゃんが のっている いなりずしの おさらでは なくて その うしろから きた まぐろの おさらだったのです。 パパも あなごの おすしを ほおばるのに いそがしくて たまちゃんに きづいて くれません。
ぐずぐずしていると パパと ママの いる テーブルを とおりすぎてしまいます。 たまちゃんは いなりずしの おさらから ジャンプして テーブルに もどろうと しましたが きゅうりまきの きゅうりより みじかい あしでは むりでした。 「パパ ママ さようなら〜」 その こえも パパと ママには とどきません。 たまちゃんの さんしゅうめの たびが はじまりました。
パパと ママが みえなくなると なんだか もう にどと パパと ママに あえないような きがして たまちゃんは なみだが ぽたぽた おちてきました。 「ちいさくなって まわりたい なんて いわなきゃよかった」 「いっしゅうだけで やめとけば よかった」 くやんでも もう ておくれでした。
と そのときです。 めのまえに とつぜん おとしあなが あいて いなりずしの おさらは あなに おっこちてしまいました。 たまちゃんも いっしょに まっさかさま。 なんしゅうも まわった おすしは すてられて しまうのです。 たまちゃんも ゴミに なってしまうのでしょうか。 そうしたら ほんとうに パパと ママに あえなくなってしまいます。
どうしよう どうしよう どうしよう。
どすんと おすしの ゴミの やまのうえに しりもちを ついた たまちゃんは びっくりして めを さましました。 あれれ そこは くるくる まわる おすしやさんの なかではなく たまちゃんの おうちです。 たまちゃんが ベッドから おっこちた おとで パパと ママも めを さましました。 「どうしたんだい たまちゃん」とパパ。 「こわい ゆめを みたの?」とママ。 たまちゃんは パパと ママに だきついて 「もう おすしやさんで まわりません」と べそを かきました。
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2008年06月19日(木) 「第2回万葉ラブストーリー」受賞作発表
2007年06月19日(火) 父イマセン、ピースボートに乗る。
2005年06月19日(日) 『子ぎつねヘレン』ロケ見学2日目
2004年06月19日(土) 既刊本 出会ったときが 新刊本
2003年06月19日(木) 真夜中のアイスクリーム