京都時代の知り合いのツキハラさんが来るから遊びに来ない?と鎌倉のセピー君からお誘い。明日のたまの10/12才誕生会の準備があるからどうしよう、と迷ったら、「今井さんが前に日記に書いてたイラン・ジョーク集の人も来るよ」とのこと。さらに、4月にセピー邸で大人の休日を一緒に過ごしたテスン君とユキコさんのカップルも集まるということで、準備は何とかなる、と見切って鎌倉へ向かった。
「イラン・ジョーク集の人」とは2004年の秋に益田祐美子さんからもらった『イラン・ジョーク集〜笑いは世界をつなぐ』の著者、モクタリ・ダヴィッドさんのこと。益田さんが『風の絨毯』の次の作品として準備を進めていた『パルナシウス』という長編映画のペルシャ語訳を手伝っていた人で、その縁で彼の本を大量に買った益田さんが一冊分けてくれたのだった。
この爆笑本、日記でも口コミでも相当たくさんの人にすすめたのだけど、著者のモクタリさんのユーモアセンスにも興味が湧いて、日記の最後に「近いうちに会えそうな気がする」と書いた。それが3年足らずで現実になった。セピー君とはモクタリさんが来日して間もない頃からの二十年来の友人なのだという。『風の絨毯』の脚本に関わることになったとき、真っ先にわたしが話を聞いたのがセピー君だったけれど、彼とモクタリさんをつなげたことはなかった。わたしも『パルナシウス』の企画にちょこっと関わっていたので、「ちょうちょと焼きいもの話」(この二つが登場する映画だった)をモクタリさんと懐かしんだ。
ちょうど刊行されたばかりという『世界の困った人ジョーク集』をサイン入りで贈呈され、早速読み始めると、これまた面白い。シモネタが元気だったイラン人・ジョーク集がピンクなら、政治ネタや宗教ネタがふえた第2弾はブラック。
わたしが思わず声を上げて笑ったのは、「アインシュタインとピカソとブッシュ大統領が天国の入口で中に入れてもらえるよう交渉」するジョーク。天国の門番に「お前たちが本物だということを証明しなさい」と言われ、アインシュタインは相対性理論を書き、ピカソはゲルニカを描き、無事本物であることが認められて中に入れてもらう。最後に「アインシュタインやピカソと同じように自分がブッシュ大統領であることを証明したまえ」と門番に言われたブッシュ氏、「すみません。アインシュタインとピカソって誰ですか?」。この質問で、晴れて大統領本人だと証明された……という内容。
他にも「パラシュートと間違えてランドセルを背負って飛び降りる」などブッシュ大統領はジョークの世界ではモテモテ。ユダヤ人のケチぶりをネタにしたジョークでは、旅先で出会った旅人に「互いを忘れないように」と指輪の交換を提案されたユダヤ人が、相手が差し出した指輪を受け取りながら「私を思い出したくなったら、指輪を上げなかったことを思い出してください」とオチがつく。
ジョークの合間に添えられたモクタリさんのコメントからは「世の中いろんな人がいるから楽しいよね」という気分が伝わってきて、みんながこの本のジョークで笑い合えれば世界はもう少し平和になれるんじゃないか、と思ってしまう。ワハハ度もフムフム度も昨年読んだバカ売れ本『世界の日本人ジョーク集』(早坂隆)に引けをとらないけれど、売れ行きだけは天と地の差。「こっちは宣伝してないからね。どうやってみんなこの本見つけてくるんだろね」とモクタリさん。
本の内容以上に著者本人が「ジョーク集」のような人で、「昼食べてないからおなか空いた〜」「朝から何にも食べてない」と一同が言い合っているところに「ボクなんか、朝から朝と昼しか食べてないよ!」とボケをかまし、「こんなに飲んで明日の朝起きられるかなあ」と酒のペースを落とそうものなら「ボクなんか、あさって仕事だよ!」と言い放ち(「あさっては月曜日だから、みんなそうだよ!」と突っ込みの嵐!)、実に打ちやすい球をこれでもかと投げてくる。早坂隆さんと先日「ジョーク集著者対談」をしたそうだけど、爆笑対談だったのではないだろうか。隣で聞いてみたかった。
2日後に控えたユキコさんの誕生日祝いも兼ねて、テーブルにはテスン君が腕をふるった愛情料理が並んだ。チリビーンズ、韓国風ゆで豚、蛸とネギときゅうりのコチジャンサラダ、テスン君のオモニが漬けたキムチ、ブイヤベース……。どれもおいしく、お酒がすすむ。モクタリさんの爆笑トーク、ネパール研究者のツキハラさんの含蓄のある言葉、共通の友人の思い出話……尽きない会話も味わい深い。帰るのが惜しくなって終電を諦め、明日のことは明日考えることに。
腹ごなしに夜の砂浜を裸足で散歩。たまをだっこして重かったけれど、東京の生活にはない波の音や潮風を10か月児なりに味わっている様子だった。たまは「こんなに楽しいんですもの、寝てたまるものですか」とばかりに日付が変わっても目がらんらん。6時起き昼寝抜きのわたしが先にばてて、たまを寝かしつけるのを口実に布団へ。
夜中の2時過ぎに目が覚めると、隣室のテーブルは大盛り上がりで、タクシーについて同時多発的にしゃべる6人の声が聞こえてきた。「おつり投げるってのは許せないでしょう!」「国会議事堂に案内してくれって言ったら、そっち方面詳しくないんでって言われて」「規制緩和の弊害だ!」「こっちは客だぞ!」みんな好き好きしゃべって、聞き役がいない状況。それから一時間ぐらいして、「ユキコは完璧だ!」と叫ぶテスン君の熱い声でまた目が覚めた。「そう思いませんか!」と同意を求めるテスン君に答えて、「前から思ってたんだけど、北海道の女性っていいよね」とはぐらかすモクタリさんの声が聞こえた。
◆2004年10月10日 爆笑!『イラン・ジョーク集〜笑いは世界をつなぐ』
2005年06月23日(木) 『子ぎつねヘレン』ロケ見学6日目
2000年06月23日(金) 10年後に掘り出したスケジュール帳より(2010/11/27)