丁寧に、 丁寧に、 想いを積み増す事で。
負の記憶を。
徐々に、 徐々に、 溶かし消す事が出来るけれど。
丁寧に、 丁寧に、 積み増した筈の、 正の遺産は。
案外簡単に、 喰い潰されて了うのだろうか。
其れとも。
積み増した数と同じ数だけ、 其の想いを、 抉り続けたのだろうか。
記念日に交わす杯の、 其の中から。
「これ。」 「美味しく無い。」
「本当だ。」 「不味いね。」
赤葡萄酒が、 互いの歩みを嘲笑う。
八年。
其の内の何年分、 姫は、 後ろを向いて来たのだろう。
「逢いたく無かったよ。」
「呼んだのそっちだろ。」
「娘は可愛いけれど。」 「余計な物が漏れなく付いて来るでしょ?」
「余計な物なんだから。」 「扱き使わないでくれる?」
俺が居なく成る事で、 必ず、 前に向くのなら。
其れも、 一つの候補に成り得るけれど。
姫の其れは、 違うと。
俺にですら分かるんだよね。
---------- References Jun.19 2009, 「執行猶予が延びましたか」 Jun.19 2008, 「何処へ向かう心算でしょうか」 Jun.19 2007, 「偶然欲しただけでしょうか」 Jun.20 2006, 「祈念の紅は消えたのでしょうか」 Jun.19 2005, 「時のみが知る応えでしょうか」 Jun.19 2004, 「今日は記憶に値する記念日ですか」
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