2012年08月31日(金) |
アール・エドレッドの場合(仮)・7 |
だが次の日も、その次の日も。やはり男は現れなかった。 このままではらちがあかない。アールは自分からうってでることにした。 「幽霊ですか?」 小首をかしげるのは黒髪に緑の瞳を持つ少女。 「前にも手伝ってくれただろ? 頼むよ」 本当は幽霊と確定したわけではないのだが、対策は早いにこしたことがない。いぶかしがる彼女にアールはいきさつをかいつまんで話した。青ずくめの男。誰もが覚えていそうなのに、彼以外誰も見たことも聞いたこともないという。やはりアールの思い過ごしだったのかというとそうではなくて。 「クレン、どう思う?」 近くにいた精霊に話しかけるとよくわからないよという声がかえってきた。 (「ボクと同じ精霊が実体化したってことならわかるけど。だったらそれを見た人間が覚えてるはずだよね。でもこの人が言ってることが本当なら、精霊とは違う存在なのかもしれない」) だとしたら、やはり幽霊だというのか。 「会ってみないことにはわかりませんね」 話を聞いただけでは本当にわからない。幽霊や悪霊であれば除霊する必要があるし、人間であれば話を聞いてみたい気持ちもある。 「その男の人は何か言ってませんでしたか? やりたかったこととか目的地とか。もしかしたら何かの手がかりになるかもしれません」 リーシェの助言にしたがい先日の会話を思いおこしてみる。結果的に海竜亭でご飯をごちそうになり旅行記にまつわる会話をした。 ……本当にそれだけだったか? そもそも男はなぜ道で倒れていたのか。
『アンタ、なんであんなところに倒れてたんだ?』 『海を離れてたからかな。あと探し物をしていて』 『探し物?』 『探し物というよりも捜し場所かな。知らないかい? ――って場所を――』
「思い出した!」 ぽんと手をたたいてうなずく。男は確かに言っていた。探し物を求めてさ迷う男。幽霊にぴったりではないか。 わかったのなら話は早い。 「俺が連れてくるから。その時は頼むよ」 熱心なアールの懇願に根負けして。本人を連れてくることを条件に、リーシェはしぶしぶ彼の提案を承諾した。
過去日記
2006年08月31日(木) 地道 2005年08月31日(水) ありえないことじゃないけれど 2004年08月31日(火) 「家族写真」第一話UP。 2003年08月31日(日) 延髄は大事です
2012年08月30日(木) |
アール・エドレッドの場合(仮)・6 |
「――ってことがあったんだ。どう思う?」 今となっては居候宅となってしまった友人の家で。アールは彼に声をかけた。 「どう思うって、変な話としか言いようがないだろ」 一部黒みがかった白髪の青年が率直な感想を口にする。確かに先日会った人間を誰も覚えていないというのはおかしい。周囲の反応がおかしいのか、それとも。 「もしくは」 「もしくは!?」 思わず身をのりだしたアールに青年は――レイは、気むずかしい顔で意見を述べる。 「……生き霊とか?」 しばしの間が空いた後。なんでもない、忘れてくれと片手をふった。だが、アールにとってはなんでもないどころの話ではなかった。 「生き霊か!」 普通の人間なら眉をひそめるか怖がるのかもしれない。そんなはずないだろと冷静に指摘してもおかしくない。だが、アールという男には幸か不幸か霊と呼ばれるものに対する経験があった。 あれはいつだっただろう。幽霊が出るという噂を聞きつけて、退魔師のリーシェという少女と劇場を訪れて。 「そっかー。生き霊かー。弱ったな」 「全然よわったようには見えない」 友人の指摘はなんのその。アールの頭の中には次の旅行記の設計図がパズルのように組み立てられていった。 前回はリーシェのおかげで幽霊を撃退することができた。だが後になって考えてみればあっという間に終わってしまってもったいなかったような気がする。幸い、男は冷酷な雰囲気や恐ろしげなそれも全く感じられなかった。うまくいけば別のネタもつかめるかもしれない。
「タイトルは『突撃・海竜亭に潜む幽霊!?』これに決まりだ!」 「まだ幽霊って決まったわけじゃないだろ」 レイのツッコミをよそに、アールは拳をかたく握った。
過去日記
2006年08月30日(水) 夏も終わり 2004年08月30日(月) 台風 2003年08月30日(土) 休みまであと5日
2012年08月29日(水) |
アール・エドレッドの場合(仮)・5 |
数日後。 アール・エドレッドは海竜亭を訪れていた。約束を果たすためだ。 冒険記はほんのさわりしかできていない。だからどうした。書物は読み手の意見があってこそ、より完成度を増していくのだ。なんども繰り返して書いていくうちに完成に近づくだろう。 男は海竜亭に詳しいようだった。だったらここに顔を出していればそのうち姿をあらわすだろう、そうふんでのことだったが。 「こねえんだよな」 店の中で一番安いメニューを頼みつつ、辺りを見回す。全身青ずくめの男。特徴がわかっているから容易に見つかると思っていたが男の姿はいっこうに見えない。 「なあ、ここ最近青ずくめの男って見なかった?」 店員に尋ねると、そんな人は知らないという返事。やはり、ここ数日は姿を現してないのだろうか。 「あんたも見ただろ? 『本当にお腹が空いてたみたいですね』って笑ってたじゃないか」 顔なじみになりつつあった自分と同世代の女性店員に尋ねると、真面目な顔で返ってきた。 「そんな人、一度も見たことありませんけど」 冗談を言っている素振りには見えない。彼女にとっては正真正銘、あの男の存在はここにはなかった――記憶から抹消されているのだ。
『さしずめ海の道楽息子ってところかな』
表情をくるくると変えて、人なつっこそうに笑いかけていた青ずくめの男。店員が見ていないというのなら、彼は一体なんだというのだろう。
過去日記
2006年08月29日(火) 明日は本番 2005年08月29日(月) 「EVER GREEN」8−1UP 2004年08月29日(日) 十五少年漂流記 2003年08月29日(金) 「EVER GREEN」3−6UP
2012年08月28日(火) |
アール・エドレッドの場合(仮)・4 |
「俺はアール・エドレッド」 人なつっこい笑みにつられて自らも名乗りをあげる。 「道楽息子って言ってたけど、何やってたんだ?」 そもそもあれでは完璧な行き倒れだ。人のことは言えた義理じゃないが、それなりの事情があったのだろう。 「ここ(ティル・ナ・ノーグ)を探していろんな場所をさ迷ってたんだ。西へ東へあてのない一人旅ってところかな」 ティル・ナ・ノーグは噂があるのは知っている。だが探し当てる場所でもさ迷う場所でもないはずだが。 「なんてね。本当はここへ来る勇気がなかっただけかな」 さっきまでの表情が嘘だったかのように寂しげな表情を見せる。だが一瞬にして『食べないともったいない』と皿に顔を近づける。 「それで、たどり着いた感想は?」 見ていて飽きないとはこういう奴のことをいうんだろうか。何気なく聞いてみると男の紫の瞳が揺らいだ。 「……とても、綺麗な場所だ。全てが輝いて見える」 できれば二人で見たかった。そんなつぶやきはアールの耳に届くことはなく。しばらくは二人、黙々と食事をたいらげることとなった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「ありがとう。君のおかげで助かったよ」 「俺こそごちそうさま。かえって悪いな」 これくらい、どうってことないさと笑い握手を交わした後、二人はそれぞれの目的地に向かって歩く。 「俺、冒険記書いてるんだ。何かいいネタがあったら教えてくれよ」 なんだったら書いた記録も読ませてやる。明るく告げると藍色の髪の男は二つ返事でうなずいた。 「わかった。今度会えたら考えとくよ」 「約束だからな!」
「……また、あえたらね」
こうして、この日は幕を閉じた――はずだった。
過去日記
2006年08月28日(月) 夏休みもあと少し 2004年08月28日(土) ゲームとどーでもいい記憶力 2003年08月28日(木) 続・文明人への道
2012年08月27日(月) |
アール・エドレッドの場合(仮)・3 |
「これ美味いよな。どうやって作ってるんだろ」 グラタンを口に含みながら離すと目の前の男は同意した。 「だろ? はじめこれを食べてるの見たときは吐きそうになったんだけど、実際口に入れたらおいしかった。考えてみれば、魚だって小魚を食べて生きてるんだ。ここで食べてあげなかったらそれこそ同胞達の死が犠牲になってしまう」 違和感を感じながらもうまいうまいとフォークを動かすのは藍色の髪の男。背丈はアールとほぼ同じくらいで年の功なら自分とほぼ同じ、もしくは年かさといったところか。髪や耳には真珠を連ねたような飾りがありこの地域には珍しい服装をしている。波の模様が描かれた青の外套に同系色のズボン。上から下まで同じ色でまとめられていた。表題をつけるとすれば、さしずめ『青い男』といったところだろう。 服装もさることながら椅子に置かれた同色の布袋も奇異なものだった。大事なものだろうかと親切心で持とうとすればずっしり重い――どころの話ではない。 持てなかった。成人男子の力をしてもうんともすんともいわない。引きずろうとすれば中から奇妙な音がして慌てて手放した。一体なんなんだ、これ。 男が気がついてから尋ねようとしたが、男の紫の瞳は目の前の皿をたいらげることに夢中になっていてそれどころではなさそうだ。つい数ヶ月前、自分も同じ事をやってしまった――今となっては居候のきっかけになった――のでここは黙って見守っておく。途中『本当にお腹が空いてたみたいですね』と店員に笑われたのを流しつつ、アールは辛抱強く待った。 待ちに待って。ようやく水を喉に流し終えたところで男は口を開く。 「オレはリザ。リザ・ルシオーラ。さしずめ海の道楽息子ってところかな」
過去日記
2005年08月27日(土) ある意味妄想 2004年08月27日(金) 「SkyHigh,FlyHigh!」Part,19UP 2003年08月27日(水) 四章を書きたい!
2012年08月26日(日) |
アール・エドレッドの場合(仮)・2 |
本当に復活した。
「いやー。一時はどうなるかと思った」 「大げさだろ」 「本当本当。目的地にいくはずが途中で迷って。やっぱりあれだなあ。海から離れるとどうも調子が悪くなるみたいだ」 いや。そもそもここ(ティル・ナ・ノーグ)自体が海そのものだし。 つっこみたかったが目の前の男が聞いていなさそうだったのでやめた。そもそもここで反論すれば目の前の料理がなくなりそうな気がする。
『水をください。できれば海水で』 半信半疑で港までひきずって――もとい、肩をかして。コップでも借りて海の水をくもうかと思案していると、勢い余って海に落ちてしまった。気を失っている人間が海中に沈めばどうなるか。慌てて海中から引きずり出してもどってきて。 さすがに人工呼吸をする気にはなれずなりゆきを見守っていると気づいた時の第一声は「あれ? 君、誰?」だった。 「まだ残ってるよ。さめないうちに早く食べなよ」 今日はふんだりけったりだと思っていたが、どうやらそうでもないらしい。助けてくれたお礼ということで港にある飲食店『海竜亭』で食事をごちそうしてもらうことになり――結果的に海に突き落としたという事実は伏せておいた――現在にいたる。気になることは多々あるものの、男が言うように確かにこのままでは皿の料理が冷えてしまう。 考えるのは後回しとばかりにアールは空腹を満たすことに専念した。
過去日記
2005年08月26日(金) 「SkyHigh,FlyHigh!」Part,70UP 2004年08月26日(木) キャラとテーマと 2003年08月26日(火) 文明人への道
2012年08月25日(土) |
アール・エドレッドの場合(仮)・1 |
アール・エドレッドは悩んでいた。 そもそも自分は旅行記を書くためにここ、ティル・ナ・ノーグへやってきたはずだ。しかも一般的なそれではなく、誰もが目を留めるような世界一面白いものを。 だから、このような事態はまったくもって想像していなかった。
「……返事がない。まるで屍のようだ」 目の前に転がる物体を前にそうつぶやいてみる。 藍色の髪の人間に見える。少なくとも外見上は。うつぶせに倒れているため顔はわからないが、体格からみるに自分と同じくらいの男だろう。 試しに声をかけてみても、反応はまったくない。 ここは騎士団にでも通報すべきか、それとも見て見ぬふりをすればいいのか。とりあえず持っていた剣の先でつついてみる。 つん。 つんつん。 ぴくりとも動かない。やはり屍のようだ。 「うわあっ!」 屍だと思われていた物体はむくりと起き上がった。 上半身を起こし、焦点のあってない紫の瞳を周囲にやって。 「み……」 「み?」 わけがわからず聞き直すと。 「水ください。できれば海のもの」 そう言って、男はぱたりと倒れた。
過去日記
2006年08月25日(金) 「EVER GREEN」10−2UP 2005年08月25日(木) RPGネタ? 2004年08月25日(水) 文明人への道・たぶん五回目くらい 2003年08月25日(月) DL版
2012年08月24日(金) |
伊織の手紙−海より−(仮)・18 |
おまけ
「なんだかなあ。青春してるよな。あいつら」 「ったく。俺らが馬鹿みたいじゃねぇか」
「先生はあれでいいんです?」 「本当は私がしかるべき立場なんだろうがな。彼が言うべきことを全て担ってくれたよ」
「無事でよかったですね。あの二人、本当につきあってないのかな」 「下手な詮索はよしとけ。そのうち勝手に気づくだろ」 「ほほえましいですね」
「あ。とんだ」 「とんだな」 「またなんかやらかしたんだろ」 「お兄ちゃーん、夕飯までには帰ってきてね」
そんなやりとりが繰り広げられるなんて気づくはずもなく。今日も相方をお星様にしてしまいました。
わたしの道のりは、まだまだ長そうです。
過去日記
2006年08月24日(木) カキ氷 2004年08月24日(火) 「秘密の言葉」UP
2012年08月23日(木) |
「伊織(イオリ)の手紙 ― 海辺のとある一日より ―」その1UP。 |
タイトルがなかなかきまりませんでした。
いままでにーさん(リザ)ばっかり書いてたのでこんどはイオリ編です。 藤の湯+グラツィア施療院御一行+αの海遊び。自分の中の目標は『目指せお姫様抱っこ』です。 相方のユータスくんは宗像竜子さんから 藤の湯御一行様は
ソハヤさんはタチバナナツメさん・麻葉紗綾さんから トモエさんはタチバナナツメさん・相良マミさんから パティちゃんは水居さんから
グラツィア施療院御一行様は イレーネ先生は美羽(原案・タチバナナツメ)さん・汀雲さんから リオさんは香栄きーあさん・ジョアンヌさんから
お借りしました。詳しくは下のバナーからどうぞ。 それにしても登場人物多いですね。これだけの人数でお出かけするとなると何かしら起こりそうな。 ちなみにユータスくんはイオリの相方さんになります。施療院(病院)の業務のかたわらで彼の仕事を手伝っているといいますか。出会い編も書きますと言いながらまだ書いてないし。
のんびりゆっくり書いてきます。まずは下書きがんばらなきゃ(ぇ。
過去日記
2005年08月23日(火) 予告編? 2004年08月23日(月) 山南さんとおめでとうございますと(意味不明) 2003年08月23日(土) 駄文です
2012年08月22日(水) |
てぃるのぐ夏祭り案(仮)・その3 |
夜の部
・雰囲気的には縁日みたいなかんじ。昨今では白花(シラハナ)の文化も多く取り入れられており浴衣とよばれる着物ににた衣装を用いることも ・祭りの締めくくりには巨大な花火が打ち上げられる。ちなみに花火には鎮魂(亡くなった人々の慰霊と悪病退散)の意味が込められている ・お祭り騒ぎを聞きつけた海の精霊や生き物たちがひょっこり姿を現すとも言われているが実際はさだかではない ・出店の店員をじっと見ているとまれに魚のエラらしきものが見えることが……あれ? ・祭りの役員は基本ティル・ナ・ノーグの人間だが中には妙にガラが悪いというかヤ○キーというかヤ○ザっぽいひとがいる。夏の風物詩?
出店の種類
・型抜き(ガート型。壊さずに作れるともれなく豪華賞品もらえるよ!) ・とうもろこし ・ラムネ ・リンゴ飴 ・ガートのお面(子どもに大人気) ・かき氷のお店とかあるとよし。 ・射的もあるとよし。騎士団の人とかいたら夢中になってやってそうな気がする ・お祭りの時に店の商品を一瞬にして食い尽くしてしまう妙齢の女性が存在するらしい。海の皆様には『クラーケン・ハンター』として恐れられてるとか(嘘)
・普段は人間嫌いな海の皆さん達も酒さえあればその日は陸も海の民も無礼講。最終的にはカオスな状態になること間違いなし。たまに変なものが見えたとしても『お祭りだから』と笑ってスルーしちゃいましょう。
過去日記
2004年08月22日(日) とある兄弟の会話(何回目だ?) 2003年08月22日(金) EVER GREEN3−5UP
2012年08月21日(火) |
てぃるのぐ夏祭り案(仮)・その2 |
名前: まだ未定 コンセプト:漢祭り 裏タイトル:がんばってボスを止めようね♪
時期:八月(アマラ)の中頃 オルマでも可だけどハロウィンとかぶっちゃう? 午前と午後の二部形式です
午前の部 ・港というより海がメイン ・リールやオルマ、コルナ様の船首像が祭られている
リール=豊漁(力の象徴) オルマ=商売繁盛 コルナ=航海の無事
どれを飾るかは船の持ち主の自由
・元々は津波などの海の事故で亡くなった人々の慰霊と悪病退散、その年の豊漁を祈って寺院と漁師達の間で細々とおこなっていたのが始まり。年を追うごとに規模が拡大して現在は商人や騎士団の方々の協力もあおぐことに。
・人形を添えた小さな船を作ってもよりの寺院もしくは漁師さんにあずけます。思い思いの丈を綴った文をそえることも。灯籠流し? ・あずかった小舟は漁師さんや船の持ち主達が海の中央(?)まではこんでくれます。そこで司祭による祈りが捧げられた後、鎮魂の願いを込めて流します。 ・その日は漁は禁止。万が一漁を行い、かつ食べてしまったりしたらリール様が怒って雷や津波がおこるとか。実際に面白半分で魚を食べてしまい、耳元でリール様の怒りの声を延々と聞くはめになったとかならなかっただとか(実際は海中のリール様が歌ってるだけ) ・船乗り達は海の上からリールに向けてお酒を献上することがならわし。良いものであればあるほどよし。もしお酒をけちったりしたらその年はとんでもない災厄に見舞われることに(実際は酒を飲んだ上機嫌のリール様が以下略) ・リールの力の象徴ともされる三つ叉の矛(のレプリカ)が司祭の手から海の中央に投げ入れられる。それを手にした者はその年の幸運を約束されるとか ・実際に矛はレプリカとはいえ値打ちもの。参加は誰でも自由だが取りに行こうとするのはほとんどが男、漁師さん達。むさい。 ・最終的には海の中央(もしくは港)で矛を掲げた者が勝利者。それまでにどんな抗争(とりあい)が行われるかはやってみないとわからない。 ・海がメインの祭りなので水着の参加者が多い。海遊びがてら祭りを楽しむかんじです ・夜に比べると少ないものの出店も少しあります。 カターニャさんの冷たいハーブティー(案:伊那さん)とかよさそうですね。 ・スイカとかあっても良さそうだけど果たしてティル・ナ・ノーグにあるのやら ・氷菓子(要するに冷たいお菓子や飲み物)のコンテストがあってもいいかも。各店舗同じ数だけ作ってあって一番に売り切ったお店の優勝とか
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
おまけ 三つ叉の矛=トリアイナ=コルナ様 くーるびゅーてぃ。 海の世界の良心というか矛。唯一無二、絶対零度のツッコミ役(意味不明)。
過去日記
2004年08月21日(土) さっそく考えてみた 2003年08月21日(木) 今さらだけど番外編(向日葵)について
2012年08月20日(月) |
てぃるのぐ夏祭り案(仮)・その1 |
正式名称 : 未定 裏タイトル: リール様をあがめ奉ろう。ひいては引きずり出そう、もしくはみんなで止めようね♪
・午前と午後の二部編成。もしくは二日に別れても可 ・午前中は海がメイン。海もしくは港で何かできれば ・当日は港にある船全部にリール様、もしくはコルナ様の像が祭られている ・船の上から灯籠ながしみたいなものがあってもいいかなあ。 ・海のどこかに商品? おいて『それを手にした者は一年間幸運になれる』みたいなものをみんなで取り合う。遠泳もしくはビーチフラッグみたいなもの ・とにかく漢らしさがでれば
・夜の部は雰囲気的には縁日みたいなかんじかも。浴衣着てたりとか? で、出店の店員全てが人間にばけた海関連の方々だったりする。たまに本性見えてますよ。というかヤ○ザ。 ・かき氷のお店とかあるとよし。 ・射的もあるとよし。騎士団の人とかいたら夢中になってやってそうな気がする ・時期的には7〜8月。サマラ様とかアマラ様とかいるから花火とかあっても可。白花(シラハナ)産だったりするとか ・むしろ人間の祭りに興味を持った海の皆様たちが陸で真似事をしてみた感じ? ・普段は人間嫌いな海の皆さん達も酒さえあればその日は陸も海の民も無礼講。最終的にはカオスな状態になること間違いなし。 ・リンゴ飴とかガートのお面とかあると縁日っぽい
お祭り裏事情 裏タイトル(?): ボスをみんなで止めよう
・祭りの最後で行われる花火。人間にとっては神秘的な光景だが海にとってはそれが合図 ・血みどろの抗争――ではなく、いかにして大ボス(リール)の歌を止めるか。ボスと子分達のある意味聖戦(謎)
リール様の裏情報? ・とにかく俺様 ・ものすごく音痴――もとい、個性的な歌声。無駄に声量はある ・近くで聞いたらみんな七日七晩寝込む ・地上だったら即津波レベル。お祭り中に危険を察知した地上の動物たちが一斉に逃げ出したら気をつけて! ・この日ばかりは抗争続きの海の皆さんも一致団結。とにもかくにもあの方をとめなければ ・そういう意味では重要なお祭り ・最後のブレーキはコルナ様。「なにやってるんですか」と絶対零度の笑みでボスの頭をスリッパではたく(ハリセンでも可)。 ・ちなみにオルマ様と別れた原因もここらへんにあるとか。天性の音痴だったんですね。 ・オルマ様は歌ものすごく上手いです。オペラ歌手みたいな感じ?
花火後の風景
地上 「うわあ。とても綺麗」 「本当。リール様もお喜びになってるかな」 「ええ。きっとそうよ」
みたいな会話がされている一方。
海底 「父上。今日こそは覚悟してもらいます(めずらしく本気モード)」 「おもしれぇ。止められるもんなら止めてみな(マイク片手に)」 「何度も何度も聞かされる身内の身にもなってみろってんだ(半分キレたてる)!」 『野郎ども! 若に加勢するんだ』
そして血みどろの戦いが幕をあける
「いい加減観念しろ! 年貢の納め時なんだよ(とにかく総動員で取り押さえる)!!」 「離せ! まだ俺様は歌える!!」
みたいなノリ。
・こんなことが海底で行われていることなど人間は知るよしもなく。花火をみては皆ロマンチックな夜を過ごしているとか
過去日記
2006年08月20日(日) 似たもの親子 2004年08月20日(金) 「EVER GREEN」6−13、14UP 2003年08月20日(水) 番外編? UP
2012年08月19日(日) |
伊織の手紙−海より−(仮)・17 |
ユータスは背が高いだけのもやし男。本人を前に失礼だけどそんなことをずっと考えていた。でも実際は女の子一人を抱えて泳ぎきるだけの体力の持ち主だった。 悔しいけど、やっぱり男の子なんだ。 「重くない?」 人一人を抱えて泳いだ上にこうして横抱きで歩いているなんて。なんとなく気恥ずかしくなって聞いてみると重くないという返事が返ってきた。 「もっと重いと思ってた」 …………。 「この体格ならもっと太るべきだ。ニーヴ様だってあんなに綺麗な造形をしてる」 しかも人ではない存在と比べられてしまった。 「そういえば、初めて会ったときも小柄な男だと思った。女ならもっと凹凸のある造形であるべきだろ」 少しでも格好いいかもと思ったわたしが馬鹿だった。 「均整がとれているのはいいことだけど、像を造るとしたら致命的だ。だから体が貧弱に――」 「これ以上言わんでよか!!!」 身につけていたハリセンを使って。 相方は今日も元気に空の星になってしまった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
こうして友達のおかげでわたしも女の子も一命をとりとめました。友人の言うとおりこれからは自分の体ももっと大事にしつつ医学の勉強に励もうと思います。 あと、相方にはもう少しデリカシーという言葉をしっかり脳内に刻んでもらおうと思います。
過去日記
2005年08月19日(金) 「SkyHigh,FlyHigh!」Part,69UP 2004年08月19日(木) 乙女チックに 2003年08月19日(火) 化粧品
2012年08月18日(土) |
伊織の手紙−海より−(仮)・16 |
「オレは医学のことはよくわからない」 真剣な表情でユータがつぶやく。 「けど、病気や怪我で困ってる人を助けたいと思ったから異国からここに来たんだろ? なのに、こんなところで夢を終わらせてどうするんだ」 ぽつぽつと言葉が滑り落ちる。 「本当に人を助けたいと思うなら、まずは自分の身の安全を第一に考えるべきじゃないのか」 いつになく真面目で真剣な眼差し。そして、その台詞は常々わたしが彼に言ってるものと同じ内容のもので。 きっと彼なりにわたしを心配してくれたんだろう。 「ごめんなさい」 素直に謝罪の言葉を口にすると『ん』とひとつうなずいて眼鏡をかけた。 「そういえばユータって泳げたの?」 水着を着てなかったからてっきり運動ができない、もしかしたら泳げないのかもと思ってた。海中のしかも遠い場所までやってこれたってことは相当体力がないか泳ぎが上手じゃなきゃできるはずがない。 そう思って尋ねると兄弟子達に鍛え上げられたのだとか。全員に会ったことはないけど確かにあの個性的な面々のなかで育てば体は自然と鍛え上げられるということなんだろうか。 しばらくすると視界に藤の湯や施療院のみんなの姿が認められるようになった。 手を振り替えそうとして、顔をしかめる。そういえば足首をひねっていたんだった。 少し前を歩いていた相方が首をかしげ、ああと納得したようにうなずく。 「ごめん。ちょっとだけ肩貸してくれる――」 という前にひょいと抱き上げられてしまった。 いわゆる横抱き。お姫様だっこ。 「こっちの方が早い。怪我を悪化させたくないだろ」 年頃の女の子が憧れるものなのに。よりによってこいつにされてしまうなんて。でも緊張と疲れてしまった体は全然言うことをきいてくれなくて。大人しく彼の提案にのっかることにした。
過去日記
2006年08月18日(金) 「EVER GREEN」10−1UP 2005年08月18日(木) 精霊流しに行ってきました 2004年08月18日(水) これからの執筆予定
2012年08月17日(金) |
伊織の手紙−海より−(仮)・15 |
「イオリ?」 いつもより瞳が大きく見えるのは眼鏡をはずしているから。 服越しに心臓の音が伝わるのは相手が服を着ていたから。 「……うん。大丈夫」 そう言って体にもたれかかる。これらの情報から導かれるものはただ一つ。 「ユータが助けてくれたの?」 しかも服を着たままの状態で。砂浜から海まで距離はあったはずなのに。 問いかけたかったけど体が疲れていたのと彼の表情を見て口をつぐむ。目がいつになく真剣で、安否の確認からずっと何も離さない。元々多弁ではなかったけれど、それにしたって静かすぎる。 ほどなくして海から岸辺にたどり着いて。ようやく抱えていた腕をおろしてくれた。 足に触れる砂の感触がひどくなつかしい。大地ってこんなにも安心できるものなんだ。そんな感慨にふけっていると。
ぱしん。
頬に鈍い痛みがはしった。
何が起こったのかわからなかった。頬の痛みよりもぶたれたという事実が衝撃的で。 「お前は何をしにここにきたんだ」 ましてや目の前の相方に怒られる日が来るなんて。 眼鏡がないからか今日の相方は別人に見える。 後にも先にもユータに真剣に怒りをぶつけられたのはこの日が最初で最後だった。
過去日記
2007年08月17日(金) 今さらなのですが 2004年08月17日(火) 冬ソナよりもなすび 2003年08月17日(日) 番外編執筆中
2012年08月16日(木) |
伊織の手紙−海より−(仮)・14 |
意識を手放そうとした瞬間、ぐいっと腕を捕まれた。 荒々しいなんてものじゃない。そうしなければ何かを手放してしまうような。力加減なんて考えてられない。とにかく必死といった体がよくわかる。 「つかまれ」 何も考えられない。とにかく腕をつかむことに必死で、相手がだれなのか確認する余裕もない。助かりたいただ一心で腕をつかんで必死にすがりついて。 「あと少し泳ぐ。それまでもつか?」 とにかく必死に声の主に抱きついて。その場を乗り切るのにただただ必死で。 「もう少しでつくから……イオリ?」 そこで、わたしの意識は途切れた。
あの子は大丈夫だったのかな。せめて親御さんの元へ返してあげたかったな。 医術を学ぶために白花(シラハナ)からやってきたのにまさかこんなところで夢ついえてしまうなんて。
「本当に、ありがとうございました」 「お礼ならこいつに言ってください」
わたしって無鉄砲なところがあったから。それがいけなかったのかな。
「シャーリィもお礼を言いなさい」 「お姉ちゃん、大丈夫?」 「こいつは体鍛えてるから。あと少しで気づくと思う」 聞き慣れた声。ここで、はじめて自分が助かったのだと言うことに気づく。 お礼の言葉とともに子どもが後にする気配。よかった、無事だったんだね。 ……じゃあ、わたしは誰に助けられたんだろう。 ぼうっとしていた頭を動かしてまぶたをゆっくりと開く。そこにあったのは見慣れたダークグリーンの瞳。 「大丈夫か?」
わたしを抱え上げていたのは他ならぬ相方――ユータス・アルテニカだった。
過去日記
2007年08月16日(木) 「佐藤さん家の日常」日常編その7UP 2005年08月16日(火) 書きたいなーとは思ってるもの 2004年08月16日(月) 「SkyHigh,FlyHigh!」Part,18UP+α(愛とも言わないこともない) 2003年08月16日(土) 接続って……
2012年08月15日(水) |
伊織の手紙−海より−(仮)・13 |
子どもはいた。 ピンクの水着に同じ色のリボンをした女の子。ウィルくんから聞いた特徴と全てが一致している。 まずは浮き輪をなんとかしないと。 泳ぎはお父さんから教わっていたから人並みにはできる。でも小柄とはいえ人を抱えて長距離を泳いだことはない。今のわたしに果たしてできるだろうか。 そんなことを考える余裕もなくて。まずは浮き輪を捕まえることに専念する。幸いすんなりと浮き輪の端をつかむことに成功した。 「もう大丈夫だから」 子どもに近づいて声をかける。でも子どもはパニック状態で手をのばすと必死になってしがみついていた。 とりあえずこの状況をなんとかしないと。 捕まえた浮き輪を子どもの体に通して。流されないように浮き輪の端をつかみながら泳ぐ。 「……?」 途中で足首に違和感を覚えて泳ぎをとめる。止まっていれば平気なのに、泳ごうとすると再び鈍い痛みがおそってくる。もしかしなくてもさっき飛び込んだ時にひねったんだ。よりによってこんな時に! 「大丈夫。お姉ちゃんと一緒に帰ろうね」 でも泣き言はいってられない。安心させるために笑顔を作って岸に向かって泳ぐ。 距離が進むに比例して足首の痛みもひどくなる。浮き輪をつかんでいた手もだんだんしびれてきた。だからどうした。そんなことはいってられないんだ。今は少しでも早くこの子を助けないと。 ふと子どもの泣き声がしなくなったことに気づいてふりかえる。シャーリィは浮き輪から再び離れていた。長い間海に流されていたんだ。ましてや子ども、体力がなくなってもおかしくはない。 「シャーリィちゃん!」 浮き輪を離して再び子どもに近づく。残りの力で子どもを抱き上げて、浮かび上がって泳ぎをすすめて。 でもわたしの体力のほうが限界だった。
お願いリール様。わたしはどうなってもいいからシャーリィちゃんの命だけは助けてください。
視界に誰かが叫んでいるような気配を認めたような気がした。
過去日記
2005年08月15日(月) お盆にまつわるえとせとら 2004年08月15日(日) 砂漠にまつわるエトセトラ・その3 2003年08月15日(金) つながった!
2012年08月14日(火) |
伊織の手紙−海より−(仮)・12 |
アルテニカ兄弟には親御さんの捜索をお願いした。子ども達と接する時間が長かった分、わたし一人で捜すよりも早くすむだろう。 わたしとリオさんは海の海岸、ぎりぎりまで移動する。本当ならユータにも頼みたかったけどニナちゃん達や他の子ども達のことも心配だったからそっちを優先させた。 「波が高いな。もうすぐ満ち潮になる」 今は日はまだ高い。でも時間がたてば引き潮から満ち潮に変わって、今よりもずっとずっと捜しにくくなる。 「泳ぎの得意な奴を呼んできたほうがいいな。俺は先生達を呼んでくる。イオリちゃんはここで見張ってて」 そう言うとリオさんは海岸を後にした。 改めて海に視線をうつす。さっきは200マイスくらいの距離だったのに今ではもっと遠くに浮き輪が見える。浮き輪を見つけてそれほど時間はたってない。ただ流されただけならまだしも持ち主が側にいたら? あまつさえ―― 「!」 浮き輪から少し離れたところ。そこに必死になって浮き輪をつかもうとしている――子ども。
嫌な予感は的中した。 迷ってる暇はなかった。上着を脱いで海に飛び込む。準備体操くらいしておけばよかった。でも場合が場合なんだ。今いかなきゃ後で絶対後悔する。 お願い。間に合って!
過去日記
2004年08月14日(土) 砂漠にまつわるエトセトラ・その2
2012年08月13日(月) |
「暁に魚が奏でる唄は」その6UP。 |
にーさんの過去話、これにて終了です。
メルヘン+少女漫画チックが今回のお話のコンセプトです。 リザにーさんの一人称ということだったので不安はあったんですがなんとかまとまってほっとしました。にーさんも若い頃は色々おいたしていたということで。 そのおいた云々の後、師匠や弟子を拾い、しいては子どもが生まれたわけで。
……どれだけ年くってるんでしょう。この人。
これから先は海企画もしくはイオリの出会い編を書いていければと。でも他のお話も書いてみたいような。 なにはともあれこれからもおつきあいいただけると幸いです。
過去日記
2005年08月13日(土) 京都日記その4 2004年08月13日(金) 「EVER GREEN」6−12UP
2012年08月12日(日) |
伊織の手紙−海より−(仮)・11 |
「……ん?」 自称・人間観察をしていたリオさんが首をかしげる。ジュースを飲むのをやめて彼の方をのぞきみるとリオさんは不思議そうな顔をして言った。 「あそこに見えるのって何だと思う?」 リオさんにならって視線を砂浜から海に移動させる。海には水遊びを楽しむカップル、その奥には流れる浮き輪。そしてその先には…… 「浮き輪?」 普通は泳げない人や子どもが海遊びをするときに使うものだ。だから当然子どもがそばにいないとおかしい。 海に浮かぶのは小さな浮き輪が一つ。じゃあ、子どもは一体どこへ? 「…………!」 嫌な予感がして砂浜に戻る。 「イオリちゃんどうしたの?」 まだ砂遊びをしていたニナちゃんに半ば詰め寄る形で問いかける。 「ニナちゃん、さっきここにいた子ども達ってまだいるかな」 「いると思うけど」 ふりかえって人数を確かめる。一人、二人、三人。 「四、ごー、六」 『七人?』 二人の声が重なる。たしかはじめは全員で八人いたはず。じゃあ、残りの一人はどこへ? 「オレ見たよ。さっき一人浮き輪持って海に入っていった」 名前は確かシャーリィだったかな、そう聞き終わる前に体が動いていた。 「ニナちゃん達は親御さんを捜してきて。わたしは海に行ってくる!」 「どうしたんだ?」 騒ぎを聞きつけたユータスが顔を上げる。 「お願い。緊急事態なの」
過去日記
2007年08月12日(日) 現状報告 2005年08月12日(金) 「SkyHigh,FlyHigh!」Part,68UP 2004年08月12日(木) はまりました
2012年08月11日(土) |
伊織の手紙−海より−(仮)・10 |
「リオさんは泳がないんですか?」 わたしと同じく水着の上に上着をはおったままの格好で。 「俺は泳ぎ得意じゃないから」 そう言ってストローをくわえジュースをすする。 リオ・シャルデニー。わたしより少し背が高く、見ようによっては同世代の男子に間違われるけどれっきとした成人男性だ。 「俺としては海中にいるよりもこうして人間チェックをしておいた方が有意義」 聞こえ方によっては怪しい物言いだけどリオさんの場合は少し違う。初めてあった時も「いい体つきしてるよね」だったし。変質者かと警戒したけど実際は『骨格と筋肉とのバランスがとれた、将来の有望株』らしい。彼としてはほめてくれたらしいけどわたしにとってはちっとも嬉しくない。 「あそこの彼はもう少し運動した方がいいね。バランスが悪すぎる」 「そっちの彼女はやせすぎ。女の子ってどうしてこうやせようと思うのかなあ。成長期に食べておかないと成長できないのに」 彼はわたしと同じくグラツィア施療院につとめる整体師。普段はおじいちゃんやおばあちゃんの腰痛や関節の痛みを和らげるのがお仕事だけど時には不慮の事故でなくしてしまった腕や脚を作ったりと医師のイレーネ先生とは違った分野のスペシャリストだ。 「あと五年もしたらりっぱな骨格ができあがるのに。もったいないよなあ。これじゃあ宝の持ち腐れだ」 だけど、使い方が若干間違っているような気もするけど。手渡されたジュースをすすりながらぼんやりとそんなことを考えた。
過去日記
2006年08月11日(金) 「EVER GREEN」10−0UP 2005年08月11日(木) 京都日記その3 2004年08月11日(水) 中間報告・多分四回目 2003年08月11日(月) どうしよう
2012年08月10日(金) |
伊織の手紙−海より−(仮)・9 |
一人読書にふける兄をよそに兄弟達はボール遊びを始めた。はじめは少しだけだったけど、一人増え二人増え。 「お姉ちゃんできた!」 近くにいた子ども達が砂でできたお城を指さす。 「すごいね。みんなで作ったの?」 「うんっ!」 無邪気に笑う子ども達がまぶしい。目を細めているとオレも! あたしもと子ども達に手をひっぱられる。 ……まあ、いいか。 本当は落ち着いたらみんなのいないところで泳いでこようかと思ってたけど。子ども達をおいていくわけにはいかないし。今日は砂浜遊びに専念しよう。 「大盛況だね」 振り向くとコップを二つ手にしたリオさんがいた。 「先生達はいいんですか?」 「成り行きを見守ってたんだけどね。まだまだ続きそうだから」 ちなみにトモエさんとパティちゃんもいるよと言われて。面白半分出始めたビーチバレーはまだ終わりそうにはなさそうだ。 「イオリちゃんってほんと子どもに好かれるんだね」 ジュースを受け取りながらそんなことないですよと返す。白花(シラハナ)にいた頃から兄弟がいなかったぶん、近所の子ども達とよく遊びはしたけれど。今は工房を手伝うようになったからニナちゃんやウィルくんと話をするようになったし。今回もその影響なのかな。そう言うとそれも一つの才能だよと感心された。
過去日記
2005年08月10日(水) 京都日記その2 2004年08月10日(火) 「SkyHigh,FlyHigh!」Part,17UP 2003年08月10日(日) いきなり次回予告
2012年08月09日(木) |
伊織の手紙−海より−(仮)・8 |
「泳げないなら教えてあげるよ?」 「ありがとう。でも今日はちょっと体調が悪いから」 わらってごまかす。正確には体調よりも気分がのらなかったんだけど。 よく見るとニナちゃんとウィルくんの周りには複数の子ども達がいた。詳しく聞くと同じく遊びにきていたらしい。全部で六人。ニナちゃん達をあわせたら八人。なかなかの大人数になる。 「お兄ちゃんは?」 相方の所在を尋ねるとみんなはだまって指を指す。そこには砂浜の上にシートを敷きテントの中で本を読むユータの姿があった。 「何やってるの?」 「読書」 見ればわかる。 「そうじゃなくて。ニナちゃんとウィルくんのことはいいの?」 「だからこうして見てる」 確かにユータスは海に行くとは言っても泳ぐとは一言もいってない。だから服装の厨房にいるときとほとんど変わらない。若干薄着になった程度。 なんだかものすごくずるい気がする。 「もしかして泳げないの?」 なにげなく聞いてみるも反応はなし。読書に夢中になってしまったようだ。 「おにいちゃん、いっつもこうなの。一度夢中になったらとうぶんはこのまま」 「兄ちゃんのことはほっといてイオリちゃん遊ぼうぜ」 妹や弟のほうが兄よりも何倍もしっかりしていた。
過去日記
2006年08月09日(水) 中性脂肪 2005年08月09日(火) 京都日記その1 2004年08月09日(月) 「祭りの夜」UP 2003年08月09日(土) 職業病?
2012年08月08日(水) |
伊織の手紙−海より−(仮)・7 |
なんでこんなことになってるんだろう。 「そろそろ観念したらどうだ?」 「冗談。ようやく体が温まってきたところなんだぜ?」 台詞だけ聞けば果たし合いのようにも思える。だけど実際は海岸で繰り広げられるビーチバレー。 「いくぜ!」 「なんの!」 しかも二人とものめり込んでいる。 「先生、止めなくて良かったんですか?」 「この方が健全でいいだろ?」 「本当。二人とも楽しそうですね」 確かに端から見れば球技に熱中しているようにも見える。そしてあながち間違ってもない。 「ここは私と彼女に任せて君は羽をのばしてきなさい」 「せっかく海へきたんですもの。伊織ちゃんも楽しまなきゃ」 ユリシーズがいてもいなくても海を楽しめるとは思えないけど。大人二人の心遣いに感謝して海岸を後にした。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「イオリちゃんこっちこっち!」 離れた海岸でニナちゃんが手招きする。近づくと満面の笑みで出迎えてくれた。 「イオリちゃんは海は初めて?」 「こっちに来るとき船には乗ったけど」 白花(シラハナ)からこっちへ渡る時に船に乗って。途中で一騒動あったものの、なんとかここまでたどり着くことができた。そのことがきっかけになってできた代物は護身用にと今も肌身離さず持ち歩いている。 「イオリちゃんは泳げないの?」 「泳げるよ」 白花(シラハナ)にも海はあった。もしものことがあったら大変だからとお父さんにみっちりしごかれていた。
過去日記
2005年08月08日(月) 「EVER GREEN」8−0UP 2004年08月08日(日) 砂漠にまつわるエトセトラ(エジプト編) 2003年08月08日(金) 「EVER GREEN」3−3UP
2012年08月07日(火) |
「暁に魚が奏でる唄は」その4,5UP。 |
本当はずっと前から更新してました。
「小説家になろう」を先に更新しているのでこっちが遅れ気味になってすみません。予定としてはあと一話で終わりになります。 にーさんの本領発揮といいますか。本人が言うようにぶち切れて暴れ回ってますね。さしずめ怪獣映画のよう。
なんども言いますが、こっちのにーさんはEGやSHFHの頃よりも前の時代の話に鳴ると思います。にーさんも紆余曲折あって今の話になったんだろうなあ。 そしてこいつ、この頃から天然タラシだったんだなあ(遠い目)。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
現在、EGを「小説家になろう」で連載させてもらってます。
とはいってもほんのちょこっとですが。
今までのものにちょこっと手直しをした程度。だったら今のままでも十分なんでしょうが携帯だと見れないんですよね。だったらちゃんと書き直して色々ためしてみようかと。
気が向いたときに更新していくつもりです。こっちだとスマートフォンでもちゃんと読めるので安心。今の技術ってすごいですね。
過去日記
2005年08月07日(日) いざ行かん 2004年08月07日(土) ネタ構想落書き 2003年08月07日(木) 享年四ヶ月
2012年08月06日(月) |
伊織の手紙−海より−(仮)・6 |
「それはわからねえな。俺としては穏やかな海を見て気持ちを静めたいところだが、あの姿を見れば心中穏やかじゃいられない」 そう言って海岸からもどってきたトモエさんの方を向く。白い水着が同じく白い肌に似合ってまぶしい。同性のわたしから見てもどきどきするもの。ちなみにパティは赤のチェック柄の水着。上下にわかれていてとても似合ってる。 ふいに自分の格好を見下ろして、上にはおっていたパーカーを慌てて閉じ直す。海にきたんだから当然水着は着用している。だけど泳ぐかどうかは決めかねていたからぎりぎりで迷って上着をはおることで落ち着いた。今日は海に来たのであって泳ぎに来たわけじゃないんだから。それよりも今はトモエさんを守らなきゃ。 「ユリシーズさんも来ていたんですね」 そしてトモエさんは何度も何度も言いくるめられてるのに人がいいのかなんなのか相手の意図に全く気づこうとしない。 「貴女のまぶしさにはニーヴもかすんでしまう。ましてやトリアイナ(海の守り神)も道をあけることでしょう」 「ユリシーズさんもお上手ですのね」 その証拠にまったく気づいてない。しかもなんだか変な方向に話がずれちゃってるし。 「お世辞ではありません。貴女の前ではどんなものだって――」 「だったら海に沈めてやろうか」 怒りをはらんだ声にふりかえるとそこにはトモエさんの旦那様が仁王立ちしていた。 「なんだ。あんたもいたのか」 「俺はこいつの夫だ。いて何が悪い」 「ああ悪いね。あんたがいたらトモエさんとゆっくり話もできやしない」 「どの口がそんなこと言いやがる」 「面白い。やろうってのか?」 一触即発。そんなとき。 「周りにギャラリーがいることだし、ここは穏便にこれでいくのはどうだ?」 そこにはビーチボールを手にした先生がいた。
過去日記
2010年08月06日(金) 退院しました。 2007年08月06日(月) eg-HTMLで文章サイトをつくってみよう 6 2006年08月06日(日) チャングムの誓い 2005年08月06日(土) 準備中 2004年08月06日(金) 「EVER GREEN」6−11UP 2003年08月06日(水) Fairy tail第三話UP
2012年08月05日(日) |
伊織の手紙−海より−(仮)・5 |
一週間後。藤の湯とグラツィア施療院御一行+αは予定通り海へ行くことになった。 「晴れてよかったですね」 「トモエさんの日頃の行いがいいからですよ」 「パティちゃんったら口が上手いんだから」 本当に。雲一つない晴天で海遊びにはもってこいの天気。でもわたしにとってはできれば雨になってほしかった。 「イオリちゃんもこっちおいでよ!」 先に出かけたパティやトモエさんに後から行くと告げて周りを見回す。 海だから当然海水にぬれる。だから水遊びを目的とした面々はみんな水着は持参済み。今もこうして海を楽しんでいる。ここティル・ナ・ノーグにきてわかったことだけど気温の変化はほとんどない。強いて言えば白花(シラハナ)でいうところの春に近い感覚。シラハナは四季があって夏と呼ばれる時期に海遊びをすることがおおいのだけれど。ここは気候が変わらないから思い立ったが吉日とばかりに思い思いの面々が海へ遊びにくる。ちなみに海への道のりは藤の湯から小一時間ほど。海竜亭からだともっと短い時間でたどりつく。 「久々に顔を出してみればこんなありがたいものが拝めるなんてな。まったくもっていい場面に遭遇したな」 だから海竜亭の面々が遊びに来ていても何ら不思議はない。 「なんでユリシーズがここにいるの」 「ここって海竜亭の目と鼻の先だろ。いてなにが悪い?」 少し長めの前髪。青がかった緑の瞳がしてやったりと笑っている。 「悪くはないけどトモエさんには近づかないで」 彼はわたしよりもずっと年上。でも呼び捨てにしてるのは外見からかもしだされる軟派な雰囲気ととある一件からで。尊敬するに値しないと早々に踏んでからはずっと名前の呼び捨てになっている。
過去日記
2007年08月05日(日) eg-HTMLで文章サイトをつくってみよう 5 2004年08月05日(木) 資料探し。2 2003年08月05日(火) 自爆
2012年08月04日(土) |
伊織の手紙−海より−(仮)・4 |
「別にかまわないぞ」 ユータ。あんたもか。 相棒はしっかりと首を縦にふってくれた。 「ニナやウィルも行きたがってたから。施療院の そうきたか。 別に、わたしは泳げない訳じゃない。だけど。 「イオリ?」 「うるさか!」 裏拳が飛んでしまったのはご愛敬だ。 「お望み通り行ってあげるわよ。それでいいんでしょ!」 「なんで俺が殴られるんだ」 ニナちゃんやウィルくんのお願いを無下にできるほどわたしは非情にはなれない。 「お兄ちゃん。またイオリちゃんに変なこと言ったんでしょ。イオリちゃんに謝りなさい!」 「なんで俺が」 「いいから!」 すごい剣幕でつめよられて。納得がいかない表情はしていたものの、ごめんなさいとユータスに謝られた。 「イオリちゃんも行くの? 海楽しみだね」 「……楽しみだね」 かくして藤の湯、施療院+αの海開きが決定した。
過去日記
2007年08月04日(土) eg-HTMLで文章サイトをつくってみよう 4 2006年08月04日(金) 「EVER GREEN」9−12UP 2005年08月04日(木) 「SkyHigh,FlyHigh!」Part,67UP 2004年08月04日(水) 結果と我が家の日常 2003年08月04日(月) 昨日に引き続き。
2012年08月03日(金) |
伊織の手紙−海より−(仮)・3 |
「別にかまわないぞ?」 期待はあっさりと裏切られた。 「たまには従業員にちゃんとした休みを与えてもいいだろう」 てっきり難色を示されるかと思ってたのに。むしろそっちを期待してたのに。 「でも先生がここで頑張っているのにわたし一人が――」 「だったらみんなで行けばいいんじゃない?」 しかも余計な横やり――もとい、別の声にさえぎられた。 「藤の湯からはみんなでって言われたんだよね? だったらみんなで行けば問題なし」 「でも急に休んだら皆さんに迷惑がかかるし、先生の治療を必要としている人たちが」 「張り紙でも出しとけば大丈夫だよ。そもそも出かけるのは明日明後日の話じゃないんでしょ?」 「でも」 「イオリは真面目すぎるんだ。本来ならば故郷に帰省させてあげたいところだがそこまでの余裕はなくてね。申し訳ないが海で我慢してくれ」 我慢しなくていいから働かせてください! そう言いたかったけど周りの気遣う視線が痛々しい――もとい、有無を言わせぬ迫力で。でもと言いつのろうとしたわたしにこう提案してきた。 「だったら相棒にも聞いてみたらどうだ?」 「相棒?」 わたしにとってここ、ティル・ナ・ノーグでの相棒はたった一人しかいなくて。でも彼はお世辞にも海と縁が近いとは言い難い。むしろ全速力で反対の方角にいそうな気がする。 「体力の増強もかねて誘ってみたらどうだ?」 「じゃあユータが 今度こそ首を横にふってくれるだろう。ただそれだけを期待して二つ返事でうなずいた。
過去日記
2011年08月03日(水) 生存報告です 2007年08月03日(金) eg-HTMLで文章サイトをつくってみよう 3 2004年08月03日(火) どうでもいい昔話 2003年08月03日(日) お休み♪
2012年08月02日(木) |
伊織の手紙−海より−(仮)・2 |
「海に行ってみませんか?」 ことの始まりはパティのこの一言だった。 「明日は定休日ですし、せっかくだからみんなで出かけましょうよ」 藤の湯は月に一度だけ定休日がある。もちろん他にも休みはあるし職員が代わりがわりにお休みをもらっている。明日はパティの休日というわけだ。 「行ってこい。ここ(藤の湯)は俺がなんとかしておくから」 一日くらいどうにかなるだろ。そう言ったソハヤさんの声を他ならぬトモエさんがさえぎった。 「ソハヤさんも行くんです」 「海に行きたいんだろ? だったら」 「だからこそソハヤさんも行くんです」 心なしか声が沈んでいるような気もする。 「パティちゃん少し先延ばしにしてもいいかしら」 「いいですよ。来週はみんなお休みですし、みんなで行った方が楽しいですもん」 そんな感じで藤の湯御一行の海遊びが決定しました。 ――で終わるところだったんだけど。 「だったらお前も行けよ」 なぜかその場に居合わせたわたしにもお声がかかった。 「わたしは施療院の手伝いがあるから無理ですよ」 笑ってごまかそうとしたけどそうは問屋がおろさなかった。 「だったら施療院の面子もそろえればいいじゃねえか」 「でも先生がなんて言うか――」 「せっかくだからイオリちゃんも行こう。楽しいよ」 「お弁当だったら私が作るから心配しないでね」 純粋な二人の瞳に迫られて、先生がいいと言ったらですよと念をおしてその日は帰った。
過去日記
2009年08月02日(日) きえてしまうかもしれないので 2007年08月02日(木) eg-HTMLで文章サイトをつくってみよう 2 2004年08月02日(月) シリアス続きだと 2003年08月02日(土) 徒然草
2012年08月01日(水) |
伊織の手紙−海より−(仮)・1 |
拝啓 お父さん、お母さん、ばあちゃんへ
こんにちは。伊織(イオリ)です。 白花(シラハナ)はもう夏になってるのかな。わたしが住んでるここ、ティル・ナ・ノーグには四季がないので時々懐かしく感じます。この時期だと海びらきがはじまってるんでしょうね。精霊にさらわれないように祈りを捧げて、その後海でたくさん遊んで。ひょっとしたらお父さんはもう先に泳いでいるのかも。風邪引かないようにお母さんは気をつけていてください。
そうそう、海といえば――
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
本当はみんなで海に遊びに行きましたって手紙に綴るはずだったのに。 「…………」 顔が赤くなってそれどころじゃない。 薄茶の髪にダークグリーンの瞳。普段見慣れているはずなのに今はこんなにも近くて。 足下が宙をあおいでおぼつかない。それはそうだ。わたしの腕は目の前の人物にもたれかかる形になっている。 つまりは横抱き。俗に言う―― 「……大丈夫か?」 それを、よりによってこいつにされているなんて。 「……うん」 そう返事をするのが精一杯だった。
過去日記
2007年08月01日(水) eg-HTMLで文章サイトをつくってみよう 1 2004年08月01日(日) 新撰組 2003年08月01日(金) 花火大会
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