2009年11月23日(月)  一条の光の中で〜たま閉じ込められ事件

洗面所のドアを閉めて一人遊びに興じていた娘のたまに、「そろそろ出ておいで」と声をかけ、ドアを開けようとしたら、開かない。間違って中から鍵をかけたのかと思ったら、そうではない。では、たまが止めているのか? それにしては、5ミリほど開くだけで、それ以上は動かない。何か決定的なストッパーが存在している。

「ドアの前に何か落ちてない?」と聞くと、「みえないよー」と答える。中が真っ暗なのだ。「手で触ってごらん」と伝えるが、「わかんないよー」と言うので、ドアの下のほうをたたき、「たまも同じところをたたいて」と指示し、その手を下げていって床をたたかせる。たたく音だけして、発見はない。

たまが「ママぁ」と呼びかける声が不安げだ。ドアの下のほうにあるスリットのような隙間から手を差し込むと、小さな手がぎゅっとにぎり返して来た。この隙間が何のためにあるのかこれまではよくわからなかったが、こういう非常事態に励まし合うという重要な使い道があったのか! 一人で暗闇に閉じ込められたたまも心細いはずだが、親も相当パニックになっている。たまのほうが幾分余裕があるのか、爪やすりを隙間から差し入れ(差し出し?)たりするが、こんなことやっていては進展がない。

ドアを無理矢理開けようと試みるが、やはりガンと跳ね返される。一体何が引っかかっているのだ? 落ち着け落ち着けと自分に言い聞かせるけれど、頭の中では、このまま埒が開かなかったときのことをシミュレーションし始める。

こういうときは119番か? 生まれ育った大阪・堺の地元紙「泉北コミュニティ」でわたしが真っ先に読んでいた110番・119番通報コーナーを思い出す。見開きで数十件の出動記録に、「子どもが閉じ込められはしご車出動」がけっこうな確率で混じっていた。でも、はしご車は要らない、ドアさえ開けてもらえばいい場合は、どこに頼めばいい? カギの119番か? でもカギじゃない。のこぎりでドアを切るか? でものこぎりもドアの向こうだ。蹴破るしかないか? ドアの修理代はおいくら万円……?

それよりもっと怖いのは、ドアを壊せなかったときだ。おむつが持つのか? 最後にいつ買えたっけ? 寝てしまったら、風邪を引くぞ。その前に、不安でどうにかなってしまわないか?

そのとき、一人ブレストの成果なのか、ふと「引っかかっているのは上のほうなのでは?」とひらめいた。床に落ちている何かがストッパーになっているのではなく、上のほうで何かが出っ張っているのではないか。としたら、引き出しだ!

「たま、引き出しが開いてるでしょ? それを閉めて」と確信を持って訴えたが、即解決とはならず、「みえないよー」「わかんないよー」が続く。「引き出し、こっちよこっち」とドアをたたいて方角を知らせ、引き出しを触らせ、「それを閉めて!」。ようやく引き出しが閉まる気配があり、ドアを開けると、開いた!

たまを抱きしめて涙ぐむのは親のほうで、たまは「こわくなかったよ」とけろりと言う。時間にすれば、10分弱の出来事だったが、その何倍にも感じられた。

洗面所に入って灯りをつけ、状況を再現、ドアを閉め、引き出しを開けると、ドアはほとんど開かない。


その状態で灯りを消すと、闇に一条の光が差し込むといった具合で、これでは引き出しが開いているかどうかもわからない。30秒もしないうちに、耐えられなくなって飛び出した。

2009年11月22日(日)  『パコダテ人』で保育園児だった星良ちゃんが……!

今井雅子の映画脚本デビュー作『パコダテ人』で、シッポが生えてしまう函館市役所職員古田はるお(大泉洋)の一人娘まゆちゃんを演じた前原星良ちゃん。映画の中ではひまわり保育園ひよこ組という設定で、「ぴまわりぽいくえん ぷるたまゆ」とたどたどしく愛らしいパコダテ語を披露してくれたが、本人も当時現役保育園児だった。

パコダテ人に出た後の宮韻△いちゃんや大泉洋さんの大活躍にも目を見張るが、見違えるほど成長したといえば、今や中学2年生となった星良ちゃん。身長だけでも50センチ以上伸びて、わたしに追いつき、追い越し、15センチほど引き離してしまった。

ダンス部で青春しながらバレエ教室も続けている星良ちゃん、今日がその発表会。1〜3名ずつの小さなプログラムが並んだ第一部のトリ、『ドンキホーテ』の「キトリ」の赤と黒のカルメンな衣装の星良ちゃんがステージに上がった瞬間、客席はハッと引きつけられ、場内の空気が変わった。扇を仰ぎながらステージから微笑みかけるさまの艶っぽいこと。緊張を感じさせない舞台度胸は、さすが。ひいきを差し引いてもおつりの来る堂々たるプリマぶり。ジャンプは高く、スピンは美しく、手足の表情は実に伸びやか。客席を引きつけ続け、最後のお辞儀も優雅さと貫禄をたたえ、ブラボー! わたしの膝で見ていた娘のたまも惜しみない拍手を贈った。

第二部『くるみ割り人形』では、「あし笛」役。もう一人の女の子との息の合った踊りに、曲の途中で拍手が沸き起こった。

星良ちゃんだけでなく、他の子たちを見ているのも楽しく、衣装もそれぞれ凝っていて、目を楽しませてもらった。幼稚園ぐらいの小さな子たちは立っているのが精一杯で、お辞儀だけがしっかり決まってたりするが、それも微笑ましい。恥ずかしそうに踊る子たちの中で、小さいながらも「わたしを見て」オーラを放っている子もいる。ちゃんと個性が出ていて面白かった。星良ちゃんをはじめ小学校高学年ぐらいの子たちは、「表現する」ことに気を配る余裕が出て、見応えがあった。

踊るのが大好きなたまは動きを真似したりして、バレエに興味を持った様子。習わせてみるのもおいいかもと思うが、先日の棒立ち運動会を思い出し、チュチュ姿で固まっている図を想像してしまった。

2008年11月22日(土)  8年目の「いい夫婦の日」
2007年11月22日(木)  マタニティオレンジ205 たま15/12才ではじめて歌う
2006年11月22日(水)  何かとめでたい「いい夫婦の日」
2002年11月22日(金)  ザ テレビジョンお正月超特大号


2009年11月21日(土)  六義園で七五三写真四人衆

タイトルに三、四、五、六、七をそろえてみました。

それはさておき、娘のたまは明日で3歳3か月。いわゆる七五三は先週だったようだが、写真だけでも撮っておこうかと、妹のとこのおさがりの着物を娘のたまに着せ、日本庭園の紅葉が色づきかけた六義園(りくぎえん)へ。小石川後楽園とともに江戸の二大名園に数えられていたというが、わたしは和歌を庭園で再現しようとしたという六義園に断然親しみを覚える。

撮影は、2004年にブレーン・ストーミング・ティーンを出版した際の雑誌取材で写真を撮ってもらって以来、親しくさせていただいているフォトグラファーの内藤恵美さんにお願いする。いつもこちらがお礼を言う側なのに「撮らせていただいて、ありがとうございます」と言ってくれる気持ちのいい人。とても自然な雰囲気を作って撮ってくれるのと、撮ることを楽しんでくれるのがありがたい。

今日の内藤さんは千歳飴代わりにアンパンマンのお菓子が詰まったクリスマスバッグを持って登場。気遣いの内藤さんに対して、親のわたしたちは、着物を着せて出て来るのが精一杯。たまの髪はボサボサだし、前髪はギザギザのガタガタだし、口のまわりは粉ふいてるし、鼻くそが見え隠れ。それでいてティッシュもタオルも持ってきていないという詰めの甘さ。

将来、たまが今日の写真を見たら、突っ込みどころ満載だけど、それはそれで親の性格がうかがえて面白いかもしれない、と開き直る。

紅葉目当てで、六義園は一年でいちばんにぎわう季節。お年寄りが多く、口々に「あらかわいい」「おめでとうございます」などと声をかけられる。他にも七五三と思しきおめかしした親子連れを何組も見かけた。

「カメラマンを連れ出すなんて贅沢だねえ」と年配の男性。そう、ほんと、贅沢なこと。快くつきあってくださる内藤さんに感謝。写真は、たまを撮る内藤さんをわたしが撮ったもの。

たまは履き慣れない草履を嫌がり、運動靴に履き替え、ついには着物も窮屈だと言い出し、おなかがすいたとぐずり、撮影は一時間ちょっとで終了した。

六義園の南側にはアンパンマンの本を出しているフレーベル館があり、アンパンマンショップを併設している。その正面にあるアンパンマンの像の前で、たまは今日いちばんの表情を見せてくれた。子どものいい顔を引き出すのも、アンパンマン頼み。

六義園近くの名古屋コーチンのお店で焼き鳥ランチの後、わが家に移動して、さらに撮ってもらう。レゴで遊ぶたま。積み木で遊ぶたま。内藤さんは遊び相手になりながら、パシャパシャ撮る。いつの間にか、子守と写真が逆転し、夕方まで遊んでもらった。こちらの写真は内藤さんが撮ったもの。

たまは去年撮ってもらった記憶は残っていないのか、今日が初対面だと思っている様子。すっかり内藤さんになついたが、「サイトウさーん」と呼ぶので、違うよと訂正したら、後々「たまちゃん、ナイトウさんのこと、まちがえてサイトウさんって いっちゃったんだよね。あはははは」とネタにして喜んでいた。

斎藤さん、じゃなくて、内藤さんに、記録も記憶もありがとう。

2006年11月21日(火)  『築城せよ。』と魔女田映画祭
2003年11月21日(金)  押忍!いくつになっても応援団
2002年11月21日(木)  ファミレスの誘惑


2009年11月20日(金)  ドラマも映画も小説も11月は短編月間

脚本を書かせていただくことになった「つばさ」スピンオフドラマ2本は、最後の詰め。一本10分弱ながら、その短時間に起伏をつけて決着をつけるという短編ゆえの難しさがある。加えて、朝ドラ「つばさ」を観ていた人には、その番外編として楽しめ、総集編への期待を高めてもらい、かつ、観ていなかった人には、独立した作品として楽しみつつ総集編を観てみようと興味を持ってもらわなくてはならない。

第1回から第4回まで審査を務めたNHK奈良の「万葉ラブストーリー」脚本募集が約10分のドラマだが、応募作品を読んで、「詰め込み過ぎ」だの「ドラマが乏しい」だの手厳しい指摘をしていたくせに、いざ自分で書いてみると、これまでの万葉ラブの受賞作はよく出来ていたなとあらためてレベルの高さに感心した。これまでの受賞者12名の皆さんは即戦力になれると本人たちにも伝えているけれど、短編があれだけうまく書ければ、長編はもっとうまく書けるのではと思う。

そんなこんなで四苦八苦しつつも、後藤プロデューサー、西谷ディレクターとの打ち合わせは雑談も弾んで楽しく、書かせていただけるのはうれしく、ようやく山頂(決定稿)が見えてきたところ。12月初旬に撮影、総集編が放送される12月29日・30日の前に放送される予定。総集編とあわせてお楽しみくださいませ。

『つばさ』総集編(前後編)
★放送予定※変更になる場合があります)
<前編>12/29(火) 総合・午前8:15〜9:44
<後編>12/30(水) 総合・午前8:15〜9:44


「つばさ」公式サイトは番組放送終了後も進化を続け、スタッフブログもほぼ毎日更新。ファン掲示板もにぎわっているので、感想やスピンオフへのエールなどをぜひぜひ。

短編といえば、前田監督とやった『隣のモンちゃん』『オセロ』以来、ひさしぶりに短編映画の脚本を書いた。オリジナルのコメディで、初稿に皆さんが乗ってくれ、そのままどんどん膨らませて決定稿に持ち込めたという幸せなお仕事。順調に行けば、年明け撮影、春頃完成の予定。どんな風に公開されるのかはまだ決まっていないが、わたしの痛い過去を作品にリサイクルした好例となった。どんな経験も脚本家には無駄にならない、を証明できる一本になるかもしれない。

先日の日記にも書いたけれど、11月はエッセイ(これも短編ジャンル?)の依頼も多かった。仕事の傾向につられてか、手に取る本も短編ばかり。出版社の方によると、短編は売るのが難しいらしいが、電車での移動時間を読書にあてるわたしには、短編の短さがありがたい。

そして、今井雅子の初めての短編小説4編を集めた「クリスマスの贈りもの」は、今日で公開3週間目。まだお読みでない方は、ぜひUSJの期間限定(来年1/6まで)サイトLimited Christmasへ。左から順に4編読むと、少しずつお話がつながっているので、右から読まれませぬように。

2006年11月20日(月)  マタニティオレンジ30 偶然は人生最高の香辛料
2005年11月20日(日)  G-up side,B;session『ゼロ番区』
2004年11月20日(土)  高倉台・三原台同窓会
2002年11月20日(水)  カタカナ語


2009年11月19日(木)  鴻上尚史さんの『恋愛戯曲』ついに映画化

いつか目を覚ますかもしれないという希望を抱いて、今井雅子の書棚で眠り続ける企画たち。そのひとつ、鴻上尚史さん作・演出の『恋愛戯曲』が、映画化の羽を得て、旅立って行った。 わたしが脚本家デビューして何年も経たない頃に、戯曲から映画化脚本をおこす仕事に関わらせてもらったのだが、なかなか映画化の道が拓けなかった。でも、その後もプロデューサーと鴻上さんは粘り強く道を探り、ついに実現させた。その熱意に拍手。脚本は結局鴻上さんが書かれたのか、わたしの書いた脚本は採用されなかったけれど、原作そして鴻上さんの一ファンとして、映画化作品を応援したいと思う。 雲の上の人だった鴻上さんとの打ち合わせは夢のようだったし、2006年の舞台再演時には劇場パンフレットで鴻上さんと対談もさせてもらったし(>>>2006年05月19日(金) 鴻上尚史さんと「恋愛」対談)、楽しい思い出をたくさんもらったので、とても親しみを覚えている。 『恋愛戯曲』は魅力的なキャストを得て、ただ今撮影中とのこと。どうか力強く羽ばたいて、たくさんの人に届いてほしい。

2008年11月19日(水)  美しさを感じる心
2002年11月19日(火)  白い巨塔


2009年11月18日(水)  「黙らせろ」と言われても

デニーズで娘のたまと二人で夕食。なるべく外食は避けようと思っているのだけど、今日は一日中パソコンに向かい、冷蔵庫も空っぽで、買って帰るか外で食べるかの選択となった。

デザートにカシスのシャーベットを注文したのが失敗だった。「半分こね」と言い含めたのに、わたしに似て食い意地の張っているたまは独り占めしようとし、譲ればいいのをわたしも横取りしようとし、最後の一口をわたしが食べた瞬間、「うわ〜〜〜〜ん」と店内に響き渡る声で泣かれてしまった。

泣くほどのことじゃないでしょとなだめ、店員さんの視線が背中に刺さるのを感じつつ、さっさとお茶を飲んで引き上げようとお茶を流し込んでいると、「なんで黙らせないんだ!」と客のおじさんに抗議を受け、たまはさらに泣く。すみません、すぐ出ますから……とひたすらぺこぺこ謝りながら席を立った。待ち合いロビーに保育園で同じクラスの女の子を見つけると、たまはぴたりと泣き止んだが、彼女の一家が呼ばれて席に案内されると、離れたくなくて、また泣いた。やれやれ。

わたしも子どもを産む前は「なんでいつまでも泣かせてるんだろ」と不快に思ったり腹を立てたりしたけれど、黙らせる方法があればとっくに試しているのだ。ちゃんと叱ってるし、なだめているし、決して手をこまねいているわけではないし、そこに怒鳴りこむのは火に油を注ぐだけだ。わたしにも泣かせた責任はあるし、静かな食事を邪魔してしまったことは申し訳ないし、わたしたちが悪いことは確かなのだけど、もう少し大らかさが欲しいと願うのは贅沢なのだろうか。なんだか淋しいなと思ったら、わたしも泣きたくなった。

小豆島へ行った帰り、高松郊外のお風呂屋さんでもたまが洗い場で転んで大泣きして、地元のおばあちゃんに叱られたことがあった。でも、そのとき、その人は「いつまでも泣かせていると母親の器量が疑われるよって」とわたしを叱った上で、泣きじゃくるたまに「どうしたどうした?」と声をかけ、「痛かったんか? よしよしもう大丈夫」となだめ、わたしの援軍になってくれた。問題を分かち合って解決をはかろうとしてくれたお節介が心強く、ありがたかった。

ただでさえ子どもに泣かれて孤独を味わっているところに「黙らせろ」と突き放されると、母親は絶望的に孤立する。「一緒に黙らせよう」と分かち合ってもらえたら、母親は孤立しなくて済む。

何を食べたんだか忘れてしまうほどくたくたになって帰宅し、「たまちゃん、泣くんだったらもうデニーズには行けないね」と娘をなじると、「そうだねえ。ドラえもんのおみせにしよっか」とけろっとして言う。デニーズがダメなら、ココス。そんな問題じゃないんだってばと力がぬけた。

2006年11月18日(土)  アーロンバシャ(Aaron Basha)のBaby Shoes


2009年11月17日(火)  八百屋さんで「ママください」と父のホック

朝食は大阪土産の551蓬莱の豚まん。前回京都駅で行列に屈して買いそびれた雪辱を果たし、堺の実家から持って来たビニール袋に厳重に梱包してにおい封じをして東京に持ち帰った。ほかほか蒸したてではなくチルドにしたのもにおい対策でもあり、新幹線の車内で手を伸ばしたくなる誘惑を断つためでもある。かわりに中華ちまきを新幹線車中での夕食に。海鮮味と、栗としいたけと鶏肉。二つで700円超えとは、けっこういい値段だった。コストパフォーマンス的にも、551といえば、やっぱり豚まん。

わたしが大阪へ発つとき、顔をぐしゃぐしゃにしてぐずった娘のたまは、その後は機嫌良くやっててくれたらしい。昨日は保育園の帰り、パパとなじみの八百屋さんに立ち寄り、「ママください」と言ったとか。それだけ聞くと切ない話でもあるが、明るく弾ける調子だったそうで、しっかり八百屋さんの笑いを取ったというからたくましい。留守番で父と娘の絆も深まるのは、いいことだ。

父と娘といえば、昨日の朝、わたしのワンピースの背中のファスナーが「開いているで」と父イマセンが指摘した。しょっちゅう考え事をしているせいか、ファスナーが途中で止まることがよくある。脚本を学ぶ200人ほどの学生さんを前にパネルディスカッションをやったとき、拍手で迎えられて壇上に来てから気づき、あわてて「ファスナーを閉め忘れるというト書きで登場人物のそそっかしさを描ける」とネタにした。昨日もそのときと同じワンピースだったが、父のおかげで中学生にだらしない大人を印象づける失態を免れた。

帰宅してそのワンピースを脱ぐとき、普段自分では面倒くさがって省略するファスナーのてっぺんのホックが引っかけられているのに気づいた。父にファスナーを上げてもらったのも初めてだった気がするが、がさつなおっちゃんという印象の父がホックをきっちりと留めたことが意外だった。40年近く父娘をやっていても、新鮮な驚きがある。

2007年11月17日(土)  出張いまいまさこカフェ6杯目 「脚本で食べていく」
2006年11月17日(金)  関西映画『メアリ』!?
2005年11月17日(木)  『天使の卵』ロケ見学4日目 電車でGO!
2002年11月17日(日)  学園祭


2009年11月16日(月)  金蘭千里中学校講演「宝物はあなたの中にある!」


大阪にある私立の金蘭千里中学校にて講演。『子ぎつねヘレン』も応援してくださった今井雅子ファンの方のご紹介というわけで、その方が持参されたヘレンちゃんを手に記念撮影。

2年生の皆さんに「宝物はあなたの中にある!」をテーマにお話。先生方の他に父兄の方も何名か。地元大阪出身で、今日は実家のある堺から泉北高速に乗って天下茶屋で堺筋線に乗り換えて来ました、と大阪弁で語り始めると、親近感を持ってもらえた様子。


講演の内容は2年前に大学生を前に話した内容(>>>2007年10月26日(金) 愛知工業大学で「つなげる」出前講義
)をアレンジ。前回は作品ごとに「アイデアをどう結びつけたか」を話したが、今回は事前に授業で『子ぎつねヘレン』を観てくれているとのことで、ヘレンを引き合いに出しながら、「原作から脚本、映像になるまで」を説明したり、脚本開発や撮影の裏話を披露したりした。最初に刷った脚本で役者さんを口説き、決まった役者さんに合わせて脚本を書き直すこと(これを「あて書き」と言う)、ロケハンに行ったら太一とヘレンの家出先に想定していたゲームセンターがなくて、代わりに貨車でどうかと提案されたことなどを話す。


脚本家にとって大事な「つなげる力」は、「引き出しを使いこなす力」と言える。その引き出しの中身は、日々のちょっとした心がけで充実させることができる。それは、好奇心と想像力を掛け合わせて、「おもしろい!」と感動すること。感動したことは記憶に刻まれる。外国語もそう。丸暗記よりも、そうか、なるほど、と感心しながら覚えたほうが身につく。「L'arc en ciel」はフランス語の「虹」で、分解するとarc(アーチ)とciel(空)になる。空にかかるアーチで虹かあとうなずいたら、もう忘れない、


好奇心と想像力のアンテナを張っておくと、おもしろいことや出会いがどんどんあるし、どんどんつながる。金蘭千里中学校は進学に熱心な学校らしいが、おもしろがって学んだことは、受験を乗り切るだけじゃなくて、一生ものの財産になってくれると思う。


最後は『ブレーン・ストーミング・ティーン』の中にある言葉「宝物はあなたの中にある!」で締めくくる。

質疑応答の口火を切ったのは校長先生。「自分の意図したメッセージがうまく観客に伝わらなかった場合、どう感じるか」という質問に「作品は受け取ってくれる人がいて完成する。いろんな見方があっていいし、感想から発見すること、学ぶことも多い」といったことを答えた。

続いての先生は「中学校時代はどんな生徒でしたか」「作品を書くための専門知識はどこから得ますか」。中学校時代はソフトボール部の万年補欠で、週末は試合応援ばかり。でも、クラブ活動は最後まで続けなさいという母の方針で、続けたことが根気強さを養ってくれた。文化祭では脚本を書いたり演出したりした。作品に必要な専門知識は、たとえば『子ぎつねヘレン』なら獣医監修の方がついて、用語などは助けてもらえるが、幅広く知識を身につけるためには新聞を読むのがいちばん、と答える。

生徒さんの質問トップバッターは「小心者で人前で話すのが苦手」だという男の子。でも、手を挙げて真っ先に質問する勇気はさすが。わたしが中学生の頃はみんなの前で声をあげるのが極端に苦手だったが、「活発な人を輪の外から眺めている気持ち」を知っていることは、わたしにとっては大事なこと。恥ずかしいと思うのは自分を否定されるのを怖れるからで、裏を返せば、それだけ自分が好きということ。その気持ちも大切にしてほしい。

彼が「『つばさ』観てました」と言ってくれたのに乗じて、年末放送の総集編とスピンオフの宣伝をさせてもらった。

生徒さんのお母さんからは、母親からどんな風に育てられたかという質問があった。何事も最後までやり通せと言われて、続けることの大切さをたたきこまれたこと、中学一年のときに当時の東ドイツに連れて行かれたことがその後の人生に大きな影響を与えたことを話す。でも、後から思ったのだが、母がしょっちゅう「あんたはおもろい子や」と言ってくれたことが、わたしに自信をくれたように思う。ここにも「面白がることが力を伸ばす」法則が生きている。

質問に反射神経で答えるときの脳内は、ブレーン・ストーミング状態。自分の回答を客観的に聞きながら、へーえと思ったりする。

他には「スランプのときはどうしますか」という男の子からの質問。あまりスランプはないが、やる気が出ないときは無理して書こうとせず、まったく違うことをやって気分転換する。そうすると、また書きたくなる。仕事で一緒になった出演者の印象を聞いてくれた子もいた。

「仕事は楽しいですか」と質問した女の子がいて、そのシンプルさが印象に残った。「楽しいです」と答え、「仕事を楽しくするのもつまらなくするのも自分次第です」と付け足した。彼女は「どうやったら今日の話のような心を打つ言葉が出て来るんですか」と二つ目の質問をした。たとえば、「傘と心は〜」の言葉は、『風の絨毯』プロデューサーの益田祐美子さんが英語を教わっていたときの例文だったと紹介。日々の経験の中でわたしの心を動かした言葉が、彼女の心にも何かを残せたとしたらうれしい。

講演の後に校長室で歓談しているところに、生徒さんたちが次々と訪ねてきたとき、サインではなく握手を求めたのは彼女一人で、「仕事が楽しいのはいいことです」とあらためて言い、しばらく握手の手を離さなかった。もしかしたら、彼女は自分の毎日を楽しくする方法を探しているところなのかもしれない。

時計を持っていなかったので時間がよくわからなかったが、質疑応答も含めて2時間近くだったような……よくしゃべった。

校長室にて、中学校と高等学校の校長を兼ねる辻本賢さんと歓談。気さくでとても話しやすい方。わたしのサインを求めに来た女の子たちに「入れ入れ」と手招き。校長先生と生徒さんの距離が近い。今も教壇に立ち、公民を教えているとか。下敷きやらノートやらペンケースやらに生徒さんの名前と「宝物はあなたの中にある!」と今日の日付と今井雅子のサインを書き入れた。お母さんが質問してくれた生徒さんが来たので、USJの短編小説「クリスマスの贈りもの」の小冊子にお母さんあてのサインを入れて手渡した。

校長先生は映画青年だったそうで、学生の頃、早朝の映画館を借り切って自分の好みの作品を自主上映し、そこでの一年分の収益をつぎこんで無料上映会を開いたりしていたとか。あたたかみのある自慢の校舎は卒業生が設計を手がけたそうで、ゆったりとスペースを取った階段に「赤絨毯を敷いて結婚式挙げたらええと思うてるんですよ」。

学校はホーム、卒業生を含めた生徒とその家族、職員とその家族は大きなファミリーだと考える校長先生。その精神は、障子張りのパネルを開けると登下校する生徒が見える校長室のたたずまいにも見て取れる。わたしもまた帰ってきたいと思える素敵な学校だった。

2008年11月16日(日)  『七人は僕の恋人』→シブヤさんの結婚パーティ
2007年11月16日(金)  三丘スポーツ史3に『寄り道ブドウ』掲載
2006年11月16日(木)  映画『フラガール』に拍手
2005年11月16日(水)  『天使の卵』ロケ見学3日目 ミラクル


2009年11月15日(日)  エクスプレスカードで大阪へ

まわりからすすめられ、JR東日本のエクスプレスガードに入る。年会費が1000円かかるが、割引料金で新幹線の切符が買えて、出発前で発券前なら何度でも変更可能で、乗った回数に応じてグリーン車にアップグレードできるという。後から送られてくるICカードを使えば、料金はさらに割引になり、チケットレス乗車ができて、スイカと重ねて使うこともできるらしい。

今日の大阪出張が、エクスプレスカードデビュー。ICカードは未着なので、ネットで予約したチケット(e特急券+乗車券)をエクスプレスカードを使って駅券売機で受け取ることに。いきなり丸の内側の改札でつまずく。「ここはJR東海の改札なので、こちらの券売機では引き換えられません。八重洲口側におまわりいただくか、スイカで入って精算してください」とのこと。スイカで入り、券売機でチケットを受け取る際に「スイカまたは乗車券があれば入れてください」の指示が出たので、入れた。これで精算ができたことになるらしい。入場券料金がかかったのかどうかは不明。おっかなびっくりだったが、なんとかチケットは入手でき、領収書も出てきた(領収書はオンラインでも出力できる)。

この部分を読んだご近所仲間で鉄道ファンのT氏より以下のような指摘をいただいた。

東海道山陽新幹線の「エクスプレス予約」自体はJR東海とJR西日本の展開するサービスなので、「JR東日本のエクスプレスカード」という記載、大手町側の改札はJR東日本管轄なので東海のチケットの発券ができないのであって記述が逆、事実とちょっと違うものなのでご指摘させて頂きます。

エクスプレス予約は東海と西日本の2社で運営していますが、それぞれ対応するクレジットカードを発行しており、JR東海は「エクスプレスカード」というカード、JR西日本は「J-Westカード」というカードを発行しています。(それぞれICカードの「Toica」、「ICOCA」が対応しているのですが、あまり 複雑になるのでここでは割愛)

エクスプレスカード:
http://expresscard.jp/

J-Westカード:
http://www.jr-odekake.net/j-west/

類推するに、いまいさんはJR東海の「エクスプレスカード」に入会されたのかなと思います。


とのこと。自分の入ったカードの正体もよくわかっていなかったとはお恥ずかしい。上記日記の「JR東海」と「JR東日本」を逆にしてお読み頂きたい。

また、JR東日本のVIEWカード保有者もモバイルSuicaにしている場合のみ、東海道山陽新幹線のエクスプレス予約が可能となる特約(1,050円年会費別途必要)があります。

VIEWエクスプレス特約:
http://www.jreast.co.jp/MOBILESUICA/use/ex-ic/howto.html

東京と関西圏で行動することの多い、いまいさんの行動パターンを考えると、東海道新幹線に乗車すること以外にメリットのない東海のエクスプレスカードに入会するより、東日本のVIEWカードでモバイルSuicaにするか、西日本のJ-Westカードに入会し、ICOCAを持つことのほうが便利でお得だったと思い、事前に聞いて頂ければ…。と、少々残念です。

なお、東京での在来線の利用や、大阪での在来線の利用がある場合は、EX-ICサービスよりもe特急券のほうが安価になる場合などありますので、今後詳しくなってくださいね。


とのことで、鉄道のことならT氏に聞け、を怠ったことを反省しつつ、今後入会を検討される方はご参考になりましたら。

お弁当を吟味する時間があまりなく、駅弁は深川弁当。茶色のグラデーションだったが、なかなかしっとりとおいしかった。このあと大阪で一時から始まった打ち合わせが終わったのは、8時。しっかり腹ごしらえしておいて正解。

移動のおともは『毒笑小説』(東野圭吾)と『からくりからくさ』(梨木香歩)。一冊目を読み終えて二冊目にさしかかった頃に新大阪に着いた。

打ち合わせの後、お好み焼き屋でコースをいただく。餅やらキムチやら豚やら海鮮やら。こんなに粉もんを食べ尽くすのはひさしぶり。大阪やあと感激する。締めの汁ものにまでちっこいお好み焼きが浮かんでいた。

2008年11月15日(土)  陶芸教室の成果
2007年11月15日(木)  マタニティオレンジ204 最近の目覚ましい成長
2005年11月15日(火)  『天使の卵』ロケ見学2日目 旅人気分
2004年11月15日(月)  「トロフィーワイフ」と「破れ鍋に綴じ蓋」
2002年11月15日(金)  ストレス食べたる!


2009年11月14日(土)  11月は締切ラッシュ

来月発売の「月刊シナリオ」作家通信(脚本家の近況を綴るコーナー)の原稿を書く。一年に一度ペースで依頼があり、作品の宣伝をするチャンスをいただいている。今回はUSJサイトで公開している短編小説「クリスマスの贈りもの」と1/21発売の『ぼくとママの黄色い自転車』DVD、脚本協力した朝ドラ「つばさ」総集編の年末放送とその前に放送予定のスピンオフの脚本を書いたことを案内した。

今月は3か月に一度の池袋シネマ振興会のフリーペーパーbukuと、2か月に一度のJR社員向け定期購読誌「クリエイティブ21」の締切が重なった。2と3の最小公倍数は6だから、半年に一度のこと。bukuに連載中のエッセイ「出張いまいまさこカフェ」は12月18日発行の次号で14杯目。「クリスマスの贈りもの」執筆で味わった「原作者のキモチ」について綴っている。一方、クリエイティブ21は11月発行号に第一回〈「書き鉄」スイッチ〉が掲載され、あと5回、一年間の連載予定。第2回は車内アナウンスをネタに「声色いろいろ」というタイトルで原稿を練っている。どちらも11月下旬締切なので、これぐらいにだいたい固めて、何日か発酵させて、締切前に起こして最後の仕上げをする。

さらに年賀状代わりに発行している毎年新聞のネタと文面もそろそろ考えないと。

本業の脚本の締切も重なり、コメディ路線の短編映画と朝ドラ「つばさ」スピンオフ(9分半の短編2本)を決定稿に向けて磨いているところ。

2008年11月14日(金)  百均ブログ探偵と『江戸宵闇妖鉤爪』
2007年11月14日(水)  マタニティオレンジ203 サロン井戸端「お金で買えないもの」
2006年11月14日(火)  マタニティオレンジ29 読書の秋
2005年11月14日(月)  『天使の卵』ロケ見学1日目 なつかしの京都
2004年11月14日(日)  『バニッシング・ポイント』@ルテアトル銀座

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