学生時代、応援団チアリーダー部というところにいた。応援団というのは、ハタから見ると野蛮で荒唐無稽な存在のようで、「何が面白くてやっているの」と4年の間に百回以上は聞かれた。母校のチームを応援するときも気合十分だが、それ以上に気合が入るのが他大学応援団との酒の席。試合では応援する身だが、飲み会では団員自ら選手となって戦う。先輩の注いだ酒を真っ先に飲み干し(頭の上で空のグラスをひっくり返して証明する)た下級生だけが名刺を頂戴できたり、サッポロソフトという酒というよりアルコール原液のようなものを石油ポンプで飲まされたり。そのまわりをビニール袋を張ったポリバケツが取り囲んでいた。わたしは好奇心が勝ってそれなりに修羅場を楽しんでいたけれど、「応援は好きだけど酒は嫌い」と去って行った仲間は数え切れない。
苦労を共にした者同士の結束は強まるようで、卒団してからもつきあいは続き、学校や学年の違いを超えて一緒に飲む。今夜はわたしの大学のひとつ上のリーダー部長だったI先輩が上京していて、のぞみの終電で大阪に帰るというので、東京駅近くに4大学からOBが集まった。8時過ぎに到着すると、全員が大声で一斉にしゃべり、すでにわけがわからない状態。社会人になって十年以上経つというのに、まるで飲み方が変わっていない。皆さん、職場で浮いていないだろうか。心配だ。T大リーダー部だったK先輩は「お前はーきっといいことあるぞぉー」とわたしの頭を木魚のようにたたき続けた。
9時過ぎ、I先輩を見送りに東京駅へ。切符売場で「ニューじゃんやろーぜ!」。負けた人が全員分のジュースを買う「ジューじゃん」の入場券版。N大のI先輩が8人分を買う羽目に。数分後、新幹線ホームは演舞会場となり、冷たい視線をものともせず、マーチやエールが繰り広げられた。酔っ払った応援団員ほど怖いもの知らずはいない。奇妙な光景を写真に撮りながら、中に入ってみない限り理解できない集団だろうなあと思う。熱くて、まっすぐで、情にもろくて、ちょっと不器用で……結局のところ、応援団を離れられない理由は「人」なのだ。明日は、わたしと同期で2年前に急逝したH大のI君の命日。関西にいる応援団関係者が集まって、霊前にお参りすることになっている。東京組からはラベルに寄せ書きをした焼酎をI先輩に託した。新幹線の中で口をつけてなければいいのだけど。
2002年11月21日(木) ファミレスの誘惑