2005年11月14日(月)  『天使の卵』ロケ見学1日目 なつかしの京都

京都駅に着くと、「帰ってきた」という気持ちになる。学生時代の四年間を過ごした思い出の町。ここで『天使の卵』のロケが決まったと知ったときはうれしかった。駅からタクシーを拾うと大渋滞。秋の京都は人が押し寄せる。ロケは大変だろうが、一年でいちばん京都が美しい季節をフィルムに納められる。話好きな運転手さんに「いい声してますね」と褒めたら、「私、数年前まで東京で役者やってましてん」。東映ニューフェイスの13期生、小坂和由さん。「2期が高倉健さん、4期か5期に梅宮辰夫さんがいてはります」とのこと。斬られ役の福ちゃんこと福本清三さんと写った写真を見せてくれた。

夏姫が歩太を問い詰める画廊のロケ地となった美術館は学生時代によく通った場所。到着するとほどなくOKが出て、ばらける。歩太役の市原隼人さん、夏姫役の沢尻エリカさんにはじめましての挨拶。どちらも眩しいほど若く、旬の人のオーラを放っている。映画『問題のない私たち』の舞台挨拶で沢尻さんを初めて見たときは衝撃的で、作品での演技のインパクトもあいまって、監督の森岡利行さんに「彼女いいですね!」と興奮して伝えると、「これからまだまだ行きますよ」と言われたのだが、本当にその後の活躍は目覚ましい。

ロケ弁当で早めの夕食を取り、夜は歩太の母・幸恵が切り盛りする小料理屋『けやき』のシーン。京都らしい通りにたたずむ小料理屋を借りての撮影。犬のフクスケは、原作を読んでイメージしたまんまの「いかにもフクスケ」顔。幸恵役は戸田恵子さん。「舞台『温水(ぬくみず)夫妻』を見て以来のファンなんです」とマネージャーさんに挨拶したら、「直接伝えてください」と戸田さんに紹介される。舞台の客席から、テレビの前で、スクリーンの前で、いろんな戸田さんを見てきたけれど、目の前の本人の輝きは格別。溌剌としたあの声で発せられる言葉が自分に向けられている……それだけですっかり舞い上がってしまう。

店の飲み客のエキストラとして、急遽わたしもテーブルに着くが、カメラからは死角の位置。同じテーブルに着いたエキストラの甲林高雄さんと谷口孝弘さんは残念そう。「ここ写らんのとちゃうの? さんざん待たされたのになぁ」と甲林さん。歩太の作るチャーハン(普段から料理し慣れているのか、手つきがサマになってる)のにおいが厨房からこぼれてきて、「おなかすきましたなー。客の役やねんからつまみぐらい出してほしいもんですなー」とぼやく。場を和ませようとトークに励むうちに打ち解けてきて、話が盛り上がってきたところで撮影は終了。「実はこの作品の脚本を書いているんです」と明かすと、「ええ記念になりました」と言ってもらえる。最後は店の前で記念撮影。

夕方5時に始まった撮影も、撤収する頃には日付が変わろうとしていた。おなかが空いたので、冨樫森監督にいただいた紫野和久傳の『柚こごり』をホテルの部屋に戻って食べる。撮影に入ると監督は現場のことで身も心もいっぱいになるものだが、「お構いできなくてすみません」とさりげなく極上のお菓子を差し入れてくれる心遣いが心憎い。絶妙な甘さに炊いた柚子に柚子のゼリーを重ねたものが柚子の器に納まった柚子尽くし。空腹で食べるのがもったいない上品で贅沢なお味。『けやき』ロケ地の近くにあるお店も雰囲気があった。懐石料理のお店だそう。

2004年11月14日(日)  『バニッシング・ポイント』@ルテアトル銀座

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