美談も。
生還劇も。
其れは、 多くの勇気や多くの希望を産み出す、 原動力だけれど。
裏に在る現実は。
決して、 家鴨がさらりと口にする程、 綺麗でも、 簡単でも無い。
加えて。
与えられた幸運と環境を、 享受して。
戻って来られた時。
搾り出して、 闘って、 総てを使い尽くした此の身しか。
其処に、 残らぬのだ。
幾つもの、 恵まれた環境を前提にした、 画面の綺麗事に。
あの子は、 何時も牙を剥く。
「やっと借金が百万切ったよ。」 「と言っても小坊主に出させてるんだけれどさ。」
「おめでと。」
一つの報告を。
あの子は、 照れ臭そうに言った。
其れで良い。
途絶えると宣言された其の命を。
たった独りで、 抗って、 帰還させた事。
其れが。
あの子の為した、 大きな、 大きな、 成果なのだから。
満身創痍から、 其の先に続く助走路を造るのは。
俺の役目で良いんだ。
傍に。
俺は、 居られなかったのだから。
---------- References Jan.07 2017, 「生きる価値は数式でしょうか」 May.28 2016, 「終着地を見据えられますか」 Apr.27 2016, 「重い指先でしょうか」 Apr.25 2016, 「敵う言の葉が在るのでしょうか」 Mar.27 2016, 「命を否定する懇願を是認出来ますか」 Oct.05 2015, 「美談は暴力だと気付けますか」
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