何時か、 記憶が途絶えて了うとしても。
其れは、 忘却を前提とした仕組みの、 営みで在って。
受容の可否など超越した、 摂理に、 過ぎないけれど。
何時か、 五感が途絶えて了う。
加えて、 其れは人の手で下される。
其れは。
決して、 自然な摂理などでは無い。
生か、 声か。
其の二択へ、 決して抗えぬ眼前に。
幾度、 想いを握り潰して叩き付けた事か。
此れは。
自身に棲まわせた、 あの子の核で。
喪う事すら許されぬ刻の、 あの子の証だ。
「もう声が聞けなくなるかも知れない。」 「だから大事に記録して残して来たんだよ。」
「もう声聞けるよ。」
「そうね。」 「そうだけれど。」
「けど何?」
何世代も取り残された其の携帯に、 残された声を。
林檎の其れに移したいと、 そう言う俺に。
あの子は。
もっと、 大事にして欲しい事が在ると。
多分、 そう言いたいのだろうな。
---------- References Jan.02 2016, 「最後の会話に値しますか」 Apr.28 2016, 「足らぬ覚悟を問われて居るのでしょうか」 Feb.07 2017, 「忘れる刻限が来たのでしょうか」
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