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夢の図書館新館

お天気猫や

-- 2006年02月25日(土) --

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『コレクタブル絵本ストア』

A5版の、輸入ダイアリーみたいな外観。

アンティーク絵本やセレクト絵本など、「コレクタブル」な絵本ショップの紹介が4店、 そして思い入れを形にする絵本作家が3人登場する。 絵本の歴史もかいま見られるから、文字は小さいけれど、密度が凝縮された本。

私は特に分野を絞った絵本のコレクションはしていないが、 ヴィンテージ絵本をはじめとするコレクションを所蔵する知人もいる。 ここに紹介されている1軒、神戸の「ファビュラス・オールド・ブック」も、そんな知人を通じて名前を知った。

このところずっと、まったく趣味や嗜好のためだけに都会へ行くという機会がないので、 もし今行けるんなら、ここに紹介されたお店を全部訪ねてみたい。

ブルーナの絵の変遷を取りあげたページに『しらゆきひめ』の表紙が載っているのを見て、その絵本の、悪いお妃が化けた魔法使いのおばあさんが、すっごい顔をしていたことを思い出した!あれは一見の価値ありだ。所有していたい。

コールデコットやグリーナウェイの紹介文で、それぞれの名を冠した賞のことには、あえて触れなかったのだろうか。「コレクタブル」な絵本蒐集には、受賞作を網羅する、というコレクションもあるけれど、本書では取りあげられていなかったから?

ああ、海外に仕入れに行きたいな。(何を仕入れるかが問題だけど!)

(マーズ)


『コレクタブル絵本ストア』編集:山村光春 / 出版社:ピエ・ブックス2004

2005年02月25日(金) ☆ピーター・パンゲラン!その1「フック」
2004年02月25日(水) ☆映画・オブ・ザ・リング『王の帰還』(その一)
2003年02月25日(火) 『末枯れの花守り』
2002年02月25日(月) 『スター☆ガール』

お天気猫や

-- 2006年02月18日(土) --

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『ニューヨークの24時間』

私の周辺に、本物のジャーナリストはいない。 しかし、内側には、ニューヨークで孤高に暮らす一人の ジャーナリストが生きている。

20代で友人(シィアル)にすすめられて読んだ当時、 なかなか千葉流の時間管理・仕事術を実践するには いたらなかった。ある意味、とてもシビアで厳しい生き方に見えたものだ。

ただ、そのエッセンスだけを少し自分の生活に写し取って、 はたから見ればどこにもその影すらないかもしれないが、 今に至っているつもりである。

そのころは人に雇われていたから、20代後半でフリーになったとき、 もっときちんと読んでおくべきだったろうか。 確かそのころ、シィアルが『ニュー・ウーマン』を プレゼントしてくれたのだが、他の本はしばらく読み返していなかった。

本書が書かれてから、20年。

これは私たちにとってかなり長い時間である。 そのとおり、何と私たちの社会環境は変わったことだろう。 私自身の仕事環境も変わった。 そこにはもちろん、インターネットが関わっている。

今では私もジャーナリストでこそないものの、フリーで食べてゆく者の ひとりとして、もしどこかで出会えば話ができるかもしれないような相手として、 あえて言えば自分の身に置き換えながら、千葉敦子を読むことができる。 とても不思議な感覚だ。 かつては、そんな日が来ようとは想像にも余ったというのに。

本書の執筆は1985-86年頃。彼女がニューヨークに(猫とともに!)移住してからなので、 40歳を過ぎてから。再発する癌との闘いをも作品として世に問い続け、 1987年、46歳で他界した。

しかしこの20年、彼女の本を読んでからこれまでの、その間の隔たりの無さにしばし呆然としてしまう。 ここに書かれていることのほとんどは、今現在も十分に通用する。

コンピュータやインターネット、膨大な情報データベースを 日本はアメリカに20年近く遅れて実用化したのだった。 SOHOと呼ばれている(本書にはその名前は出てこない)ワークスタイルが 当時すでに定着しかけていたことも、再認識した。 まるで未来を予報し、ニューヨークから日本の未来の読者へ、 彼女は訴えているかのようだ。

内容は簡単にしか書かないが、一日をいくつかの時間帯に分け、 そのなかでどのような仕事や生活の割り振りをしながら NYで生活しているか、という構成になっている。

改めて読むと、自分も同じようにしていることもあれば、 違った方法をとっているところもあったり。 アメリカ礼賛をするわけではないが、社会の基盤となるものについて 考えずには読めない一冊である。 仕事柄共通する悩みもあって、時折口許がゆるんでしまうと同時に、 これから自分にできることは何か、思わざるを得ない。

時間やお金や意に添わない人の奴隷になってはいけない、という メッセージは、彼女がそれをたゆみなく実践していたからこそ、 強く輝いているのだ。 (マーズ)


『ニューヨークの24時間』著者:千葉敦子 / 出版社:文春文庫1990

2004年02月18日(水) 『ギリシア 風の島のカテリーナ』(世界の子どもたち14)
2003年02月18日(火) 『幸せなフランス雑貨』
2002年02月18日(月) 『ふしぎをのせたアリエル号』

お天気猫や

-- 2006年02月10日(金) --

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『ひと月の夏』その2

若さを振り返る気分ほど、老いるために必要なものがあるだろうか。

若さゆえか、その時の空気ゆえか、一歩踏み出すことのなかった 「恋」ですらも、長い時が過ぎてみれば、踏み出して消えた恋に 劣るものではないのだろう。

戦場から解放された主人公が、ヨークシャーの小さな村、オクスゴドビーに 身を寄せる夏の数十日。

そこで20代の私が味わったのは、村人たちの日常にまぎれこむ ことで癒される時間と、消えないものと、後では二度と巡ってこない出会い。

夏休みの物語をなぜか真冬に読んでしまったのだけれど、 読後の切なさは、どこかよき時代の日本でもあった。

どんなに時がたっても、記憶のなかのオクスゴドビーや村の人々は 変わることをしない。それだけが確かなことなのだろう。

甘さよりもほろ苦さが、胸にながくとどまる。

何をしたかではなく、何をしなかったかを、 ずっと人は思い続けるのだから。

そして、そういう時、胸をしめつけられるような思いをする者がきっといるのだ ――かけがえのない時は過去となり、自分たちはそこにいないことを思って。(引用)

(マーズ)

『ひと月の夏』


『ひと月の夏』その2 著者:J・L・カー / 訳:小野寺 健 / 出版社:白水Uブックス1993

2005年02月10日(木) 『チャングム』
2004年02月10日(火) ☆1800年代の後半。
2003年02月10日(月) 『ひかりの国のタッシンダ』
2001年02月10日(土) 『夏草の記憶』

お天気猫や

-- 2006年02月01日(水) --

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『北風のうしろの国』(その2)

☆ダイアモンド

主人公の少年の名前は、「ダイアモンド」と言います。 本人は、父親が操る老馬のダイアモンドじいさんから名付けられたと思い込んでいて、それを誇りにしています。
美しく吹き荒れる北風と行動を伴にしているときはさして思わなかったのですが、「北風のうしろの国」から帰ってきてから、私はやっとこの名の素晴らしさに気が付きました。
物語の後半は、19世紀のロンドンの辛く貧しい暮らしの現実の中で語られます。

ガス灯に照らしだされた部屋はじつにみじめったらしく、荒涼としていた。
汚らしい、がらんとした、絶望がでんと腰を据えている部屋だった。
その部屋の真中の腰かけにダイアモンドはすわって赤ん坊に笑いかけた。
赤ん坊はかれの膝の上で明かりの方に笑顔を向けていた。

暗く荒れ果てた室内に、きらきらと澄みきった輝きが溢れるよう。
彼が、「ダイアモンド」が居るからです。
「ダイアモンド」という言葉は、置かれる場面が暗ければ暗い程光を放ちます。
重苦しい日々の生活の中でも、少し普通と違ったダイアモンドの言葉や行いに周囲の人々は心打たれます。

家には優しい母あるいは姉が居りながら、この世のものではない美しい女性に異界に誘われ彷徨う少年といえば、泉鏡花の数々の作品が思い出されます。 鏡花と同じように幼くして母を失ったマクドナルドも、女性を畏れ、崇拝しているようです。
幼いダイアモンドも貧しい少女に対しては驚くような騎士道精神を発揮し、空に輝く星を管理する男の子の天使達は、女の子の天使達の姿をじかに見る事はできないのです。がんばれ、男の子。

近所の美術館でラファエル前派展があったとき、美しい母親が幼い息子のベッドに頭をもたせかけているペン画が展示されていました。
他の大量の色彩豊かな作品のポストカードと一緒に買い込んだ、この作品のポストカードも今手元にあります。
画家はもちろん、アーサー・ヒューズ。
まるで『北風のうしろの国』の一場面のようです。

(ナルシア)


『北風のうしろの国』著者:ジョージ・マクドナルド/ 訳:中村妙子/ 出版社:ハヤカワ文庫

2005年02月01日(火) 『大事なことはみーんな猫に教わった』
2002年02月01日(金) ☆『アメリ』のパンフレット。
2001年02月01日(木) 『The Aardman』

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