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十代の子どもたちは、どんな思いでこの本を読み終わるのだろう。 不思議で、奇妙、ハッピーで、せつなくて、つらくて、すごく苦しい。 大人が読んでも、奇妙で、つらくて、すごく苦しい。 私には、痛快な自由を満喫するハッピーな気分も、 恋するせつなく愛おしい気持ちも、 理解はできるが、そういう思いを抱くことはできなかった。
スターガールは、とっても変わっている。 すごく変わってる。すごく、すごく。 その強烈な個性を痛快とも思えないし、 手放しで素晴らしいと喝采することもできない。 ただただ、不安で胸が痛くなる。
それは。 その個性の、その伸びやかな感性の、 行き着く先を、追い詰められていくその先を知っているから。 彼女は、あまりにも、変わりすぎているから。
彼女は、自分の名前をスターガールと、名乗った。 彼女はある日突然現れる。 開拓時代のようなロングドレス。 いつもウクレレと、ネズミのシナモンが一緒。 クラスメイトのように、化粧もしないし、 誕生日の生徒がいれば、学食でその子のために、 バースディソングを歌う。 最初、彼女は集団から警戒され、やがて、人気者になり、 そして……。
…ああ。 今、突然、映画『アメリ』の主人公、アメリを思い出した。 彼女も変わっている。彼女だって、すごく変わっている。 変な子だ。 でも。彼女は大人で、自分を守る術を知っている。 変なことをするけれど、大胆かつ、こっそり、ひっそりと。 共感をし、一緒に笑うこともできる。 ちょっとばかり、変わっててもいいじゃない。 ずいぶん違っててもいいじゃない。 同じでなくていい。 そう思った。
けれど、スターガールには。 彼女は、自分を守る術を持っていない。 そんな思いすら、彼女は抱いたことがない。 彼女の心はゆたかで、大きく、そして、自由。 何にも縛られない。
大事なのはね、おなじグループに属するもの同士は、おなじような行動をするっていうことなんだ。(P232)
個性的でありたい。自分らしくありたい。 それは誰しもが願うこと。 でも、その一方で、「同じ」でありたい。 「違う」ということは、 それは「異質」、「異分子」、「異端」ということ。 ほんとうにそうだろうか? そう思う人は多い。 みんなと同じように個性的でありたい。 みんなからも認められる自分らしさ。
個性的でありたいと思うけれど、 個性が際だってしまうと、集団の中ではやっていけない。 特に、小さな集団では。 けれど、 うまくやれれば、個性は険しさにならず、 あるいは、もっとうまくやれれば、 仲間に埋没するために、 多くをごまかしたり、うやむやにしたりせずに すむかもしれない。 大人だって、集団の中の自分のポジションに苦しんでいる。 大人だからか。 子どもだって。 子どもだからか。
『スター☆ガール』を読みながら、どんどんと、 苦くなっていく。 子どもたちは、何を感じるのだろう。 本を読みながら感じる痛みを、自分の痛みとすることができるのか。 痛みをかかえる子だけが、相づちを打ち、スターガールと心を共にし、 涙を流すのか。
私は、知りたい。(シィアル)
『スター☆ガール』 著者:ジェリー・スピネッリ / 訳:千葉茂樹 / 出版社:理論社
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管理者:お天気猫や
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