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わくわくする不思議がいっぱいつまった(とわかっている) ぶあつい本を手にするのは、世の中の幸運のうちでも 上等の部類だと思う。 読み始めたとたんに、その期待が報われることを 知るのもまた。 名作の書き出しと最後の文章は、ときに、 まるで一つの文章のようにつながり、全体を象徴すると言われる。 この本も、まさにそう。
おもちゃ文学から枝分かれした(ということにしている) 「ぬいぐるみ文学」のジャンルに入る本。 というのも、 主人公のエイミイは人間の女の子だが、 彼女の持っていた水夫のぬいぐるみ人形キャプテンが 人間になったあと、今度はエイミイが人形になってしまう。 (仕立て屋のお父さんが作った人形だから、 布製ということで、ぬいぐるみと呼べないこともない) キャプテンは本物の水夫になり、船を手に入れる。
そして、ふたりは 帆船アリエル号に乗って、 これまた動物のぬいぐるみや下着などから 生れた水夫たちとともに、海賊と戦い、 宝を探す冒険に出る! これが不思議でなくてなんだろう。
シンシア・ライラントの珠玉作『ヴァン・ゴッホ・カフェ』の 主人公の少女は、不思議なことが起こるのを信じて じっと待っているのだった(シィアルの同書評を参照)が、 こちらの主人公エイミイもまた、人生に対して同じ 対処方を持っているのが興味深かった。
そして、起こるのだ。 これ以上ありえないような、不思議が。
アリエル号の乗組員たちの運命は? 謎に包まれた人物の本当の目的は?
各章に引用され、物語の重要な鍵となっているのは、 マザー・グースの歌の数々。 ぬいぐるみたちは、まず、お話を聞かせてもらわねばならない。 そうしてからでないと、本物の命をもらえない。 それには、そう、マザー・グースがうってつけ。
きっと作者のケネディも、マザー・グースの歌を 幼い耳で聞きながら大きくなった人にちがいない。 子守唄でおなじみの古いマザー・グースの歌が これほど不思議でいっぱいだからこそ、英米には 子どもの本の名作家もまた多いのではないだろうか。 (マーズ)
『ふしぎをのせたアリエル号』 著者:リチャード・ケネディ / 訳・絵:中川千尋 / 出版社:福武文庫(絶版)、徳間書店(2001年9月発行)
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管理者:お天気猫や
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