雲間の朝日に想うこと


< 爽健美茶に負けるのですか >


泉から溢れ出る貴女の音だと、
そう想っていたけれど。

其の位置よりも、
音源は少しだけ上に在った。



貴女の奥底に衝撃を残そうと、
何度も揺れる度に。

器の水がたぷたぷと揺すられる様な、
妙な音が耳に届いた。











種を明かせば。


 「音がしてるよ?」
 「お茶飲み過ぎた?」

 「お腹張ってる・・・」


貴女の腹部に水が入って居た、
ただ其れだけの事には違いないけれど。


腹の張りが強過ぎて、
俺の衝撃が、
何時もの様に貴女に残らない。



















翌日。
お互いが離れた後に。


 「お腹の張りが無くなった今朝。」
 「私の右腹部に小坊主を感じました♪」


そう報告を認めて来た貴女に。










もう少しだけ。

色気が有っても良いのでは無いかと、
俺は想うんだ。

せめて貴女と貪り合う時は、
色気に塗れても良いと。


俺はそう想うんだ。









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References
 May.10 2002, 「想いの先は届いていましたか」


2003年06月30日(月)


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< 喧嘩の種を贈るのですか >


こんな事で言い争うのは止めようと、
こんな事で喧嘩をするのは止めようと。

今にも泣きそうな貴女が、
俺にそう言ったのは、
既に三月も前。




貴女の地に在る物と、
俺の地に在る物と。

確かに其処には、
大きな違いが存在するけれど。


冷静に状況を見つめ。

余りの滑稽さに、
場にそぐわぬ不謹慎な笑いを、
隠す事が出来なかった。









 「円やかなんだよ?」
 「知らないもん。」

 「有名だって!」
 「知らないもん。」


そんな物は認めないと、
お互い意地を張り。





 「スープも付いて無いの?」
 「スープなんて付くの?」

 「残り湯で入れるんだよ!」
 「お湯は捨てるもんでしょ?」


そんな方法は邪道だと、
お互い譲らない。





 「だったら持って来てよ!」
 「嫌だよ。」

 「何でよっ!!」
 「探知機通す時に見られるんだよ?」

 「は?」
 「空港の係員に『ヤキソバ?(笑)』とか言われるんだよ?」


高が即席麺の一種に此処まで興奮し、
不毛の議論を繰り返す。



言い返せぬ貴女は、
旗色の悪化した事を切っ掛けにして、
其の馬鹿さ加減に先んじて気が付いたんだ。















ほら見ろ。


 「ぺヤングの方が美味しいかも。」


貴女の敗北宣言に、
勝ち誇って見たけれど。




 「沢山贈ってね!」


負け惜しみを含んで。

矢継ぎ早に、
立て続けに、
強請る貴女の言葉に。



今更ながら、
鼈の様な貴女の執念深さを感じずには、
居られないんだ。


2003年06月29日(日)


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< 喜びの笑顔で逢いませんか >


一抹の不安を、
幾度と無く打ち消そうとした。

余裕の存在は、
消して悪い事では無い。


何事に対しても利点としてのみ働く筈の物であり、
落ち着いた行動には、
本来なら絶対的に不可欠な物なのだから。


 「まさかな。」
 「子供じゃあるまいし。」


蟻の一穴と言う諺を、
幾度と無く打ち消そうとして、
消せずに居た。







予定よりも早く、
貴女は地に降り立った。

予想よりも早く、
貴女は此処へ現れる。


 「早く逢える。」


予定を切り上げて、
待ち合わせ場所に向かった俺の脳裏に。

時間的な貯金が、
まさか時間的な借金を産むとは、
浮かぶ筈も無かったのに。
















 「バス間違っちゃったかも・・・」

 「途中で降りちゃった・・・」


突如始まる迷走。


 「一人で行って待ってるから!」


あれだけ自信に満ちた貴女の姿は、
既に何処にも無い。




 「オジサンに時間を聞いた♪」
 「お兄さんだ!」

 「酔っ払いだよ・・・」
 「それは平日の時間だろう!」

 「怖いよぉ・・・」


電話越しでしか聞き取れない、
酔った男との会話。





貴女の最大の魅力であり、
同時に最大の欠点である振る舞いと。

把握し切れぬ状況と。


 「それで分かったの?」
 「小坊主ぅ・・・」

 「何で泣くの?」
 「後で良い・・・」


苛立ちを隠せぬ俺の言葉に、
貴女は音声を無理矢理遮断した。















俺が想定した時間前のバスに、
貴女が乗ったんじゃない。


確かめずに、
何も聞かずに、
何も考えずに。

人の列に紛れて行ったのは、
貴女自身じゃない。




貴女の顔を一目見る度に。

如何して俺は、
嬉しさではなく安堵感ばかりを、
味わうんだろう。










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References
 Jun.27 2003, 「雲の上まで飛んで行けますか」


2003年06月28日(土)


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History



< 雲の上まで飛んで行けますか >


迎えに行けぬ言い訳を、
飲み込む為の手段じゃないか。


自分の能力の無さを棚に上げて。

画面の前で調べた結果を、
整理して魅せた、
ただ其れだけの行為じゃないか。



馬鹿か俺は。

愛しい女の笑顔を、
一刻も早く手に入れる事すら、
出来ない男なのか。

















 「調べてくれてありがとう。」
 「迷子にならずたどり着けそう。」



貴女から届く感謝の言葉。

我が家の近くまで辿り着く為の、
道程と時間を、
書いて贈っただけなのに。





 「迷子になるなよ!」


偽善ぶった返信など、
出来よう筈も無い。












無事に来い。


機上の貴女に贈れば、
想いはちゃんと、
届いてくれるのだろうか。


2003年06月27日(金)


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History
2002年06月27日(木) まだ遠慮が必要なのですか



< 言葉は選べないのですか >


多岐にわたる選択肢の中で、
何故其の言葉を選んで相手に渡すのか。

選択には理由が在るに違いない。




相手との距離や、
自身との関係や、
第三者を含めた周囲の状況や、
様々な条件の中で。

想いを最大限に表現出来得る言葉を、
選んで伝える。



其れ以外の理由は、
存在し得ないだろう。









貴女に一枚写真を贈った。

産まれたばかりの乳呑児を、
俺の膝に抱えた様子が映し出された写真。


 「アムアムしたくなるぅ♪」

 「私だったら絶対パクッ♪ってしてるよ!」


弾んだ感想を、
この俺に返してくれた貴女だけれど。





俺は許さない。


















其の言葉は。


貴女が俺を頬張る時に、
使う言葉だ。

貴女が俺を悦ばせる時に、
使って来た言葉だ。










貴女や、
想いや、
贈るに。



何処まで俺の気持ちが詰っているのかを、
貴女は理解出来ないんだね。


2003年06月25日(水)


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History
2002年06月25日(火) 支える資格がありますか



< 出来ていますか >


遙か遠くに、
貴女が住む地よりも更に遠くに、
在る人。

其の名前を知りつつ、
未だ一度も、
其の顔を見知らぬ儘の人。


見えぬ相手だからこそ、
自分の想像が相手の人物像に直結する故か。

友と呼ぶには希薄過ぎる関係だけれど、
文字だけの交換は、
不思議と弾む。









他愛も無い恋愛相談。

自身の経験と知識を、
画面を通して、
ただ相手に伝えて行くだけの行為。


俺の言葉一つ一つを、
受け止め、
噛み砕き、
悩みや迷いを整理する作業の中で、
其の言葉は産まれたのか。


 「私より良い恋愛してそう・・・」


彼女の言葉に答えを出せず、
俺は誤魔化し、
曖昧な返事を返した。













良い恋愛?
良い恋愛って何?


 「良い恋愛だったよ。」


例えば相手にこう伝える機会が、
存在したら?



良い恋愛の行き着く先は、
破局か、
恋愛感情の消滅か、
何れか一方だ。

必ず終焉を迎える行為に、
身体を委ねるのが、
良い事なのか。




其の理不尽な原理に怒りを覚えながら、
あの時俺は、
彼女に答えを返せなかった。



















あれから丁度、
一年と言う歳月を経ても。


何を以て良しと定義するのか、
未だに答えを見出せない。




俺は良い恋愛をしているのかな。

この恋愛は、
終焉に向かっているのかな。


2003年06月24日(火)


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History
2002年06月24日(月) 惑わす力をお持ちですか
2001年06月24日(日) それでも分かってたつもりか



< 繋ぎの種が必要ですか >


何時までも手元に残る、
土産と称する餌。

互いの距離を縮めるべく、
時が用意した、
機会を提供し得る品。


其の時は互いに、
手渡しの機会を望んだのかも知れないけれど。











流れ。

空気の流れ。
水の流れ。
熱の流れ。
貨幣の流れ。
物の流れ。
人の流れ。
血液の流れ。
気の流れ。


そして。

唯一位置の移動を伴わず、
秘める影響力は計り知れない、
時の流れ。




 「会う?」

 「週末は忙しいのだ。」
 「土曜は誕生日だしね。」

 「お茶くらいの時間は?」

 「彼氏と一緒で良いんだったら。」

 「こらこら。」



時間が解決したあの子の惑い。

時間が未解決にした、
あの子に手渡す筈の土産。







賞味期限と言う、
人を急かす足跡が迫って来た。


 「土産どうすんだよ。」

 「送って♪」


唯一の解決策で、
事を収めれば良いだろうに。


















住処を、
住所を、
送って来た直後に。


 「彼女と喧嘩したらいつでもおいで♪」


惑いの種は、
ちゃんと蒔いてから去るんだね。


2003年06月23日(月)


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History



< 想いを返せぬ時なのでしょうか >


常に離れた土地に住んで居たとしても。

例え僅かであっても、
お互いの距離が遠ざかる時の存在は、
耐え難い事なのだろうか。

遠距離が更に遠距離と名称変更されるのみで、
お互いの生活には、
何の違いも齎されぬ変化だけれど。



 「小坊主はもう移動してるの?♥」

 「気をつけてね〜♥」

 「ねぇ♪」

 「何してるの〜?」

 「移動中?」


徐々に消え行く、
言葉に乗せた弾む想い。

徐々に消え行く、
愛の象徴と言われる印。




普段の住処より遠くに離れて居た俺が、
出張から戻ると言うのに。

嬉々として贈られる貴女の文に、
繰り返し贈られ続ける貴女の問いかけに、
俺は一度も応えなかった。




暴発する寂寥感と、
擡げる不安感。

貴女の惑いは如何許りで有っただろう。




けれども。









何も貴女だけでは無いのだ。

其の想いを抱いたのは、
貴女だけでなく、
俺自身もまた同じ想いに有ったのだ。





















携帯に食事をさせながら、
滞って溜まってしまったメールを、
再度受け取り、
次々に読み進んで。


貴女の変わり様が、
貴女の落胆する顔が、
脳裏に浮かんで思わず笑った。




今電話するからね。


2003年06月22日(日)


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History



< 幸せ太りに変えられるでしょうか >


短い髪と称するには、
幾分長めの髪かも知れないけれど。


十年来の付き合いの中で考えれば。
初めて見知った時から、
二十年と言う歳月の中で考えても。

極端に短い髪。



転機を決意する為に、
半分以上短く切られた自慢の髪。









まるで何も無かったかの様に。


 「お疲れ様〜。」

 「おう。久し振り!」


涼やかな髪と同様に、
目の前の君は明るく振舞っていた。


 「ごめんね。明日から急に旅行で。」

 「ふん。俺を振ったくせに。」


調子を合わせるかの様に、
俺は軽口を重ねた。




一見すれば、
友人の久々の再会だけれど。























話を聞けば、
少しは楽になれるだろうか。





俺の瞳に映っていたのは、
俺の眼を捉えて離さなかったのは。

極端な緊張と、
過度の心労で、
膨よかに変わってしまった君の顔なんだ。


2003年06月21日(土)


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History



< 受け入れぬ想いを押し付けるのか >


実際に受ける衝撃が、
果たしてどれほど大きい物か。

俺には想像すら付かないけれど。


一度同じ立場に据えられ、
そして既に其の座を去った者の、
純粋かつ完全な代替物として捉える事は、
まず不可能に違いない。








好意は好意だ。



しかしかつて其の座に居た者を、
自身の脳裏に焼き付けている者にとっては。

例え其の相手に好意を持っていても、
同じ立場の人間が二人存在すると言う現象は、
受け入れ難い。















 「夜は外で食事しています。」
 「時間が合ったら小坊主も顔出せますか?」

 「相談があるんだけれど。」



俺のお袋が口にした言葉。





同姓の友人達と会食、
新たに始める仕事の相談であり、
現実には俺の勘違いであったけれども。

実母の横に、
違う雄が父として出現する可能性を示唆されただけで、
此処まで動揺する自分が、
同じ行為を小さな彼に与えて良いものなのだろうか。











死別で去った父と、
離別で去った父と、
両者に違いはあれど。


小さな彼が、
何処まで俺を受け入れるのか。

非常に気を遣う小さな彼が、
何処まで本心を開いてくれるのか。



今お袋に再婚相手が現れたとしたら。

俺はきっと、
心を開けないのに。


2003年06月20日(金)


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History
2002年06月20日(木) 償うふりが出来ますか



< 必要な秘密でしょうか >


友人としてか。
遊び相手としてか。

幼心と其の瞳に、
どの様な形で俺が映ったか、
其れは未だ不明だけれど。



何れにせよ、
俺の登場を待ち侘びているとすれば、
何よりの励みだ。





母親である貴女に、
小さな彼が立て続けに問う様子。


 「小坊主は何時来るの?」
 「次は何時来るの?」


貴女経由で耳にしている筈なのに。

何度聞いても、
まるで貴女が俺に対して急かす言葉の様に聞こえるのは、
気のせいだろうか。














もし事が発覚すれば、
小さな彼はきっと大泣きするだろうけれど。


 「じゃあ俺と逢う事は未だ言って無いんだ。」

 「うん・・・」

 「言えないね。」

 「言えないよね。」


内緒にしなければ、
秘密にしておかなければ。

きっと貴女自身すら、
俺の元には来られないだろうから。













御免よ。
許せ。




今回は二人だけの時間なんだ。









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References
 Jun.03 2003, 「女と母とどちらが大切でしょうか」
 Jun.02 2003, 「少し塩辛いでしょうか」
 Jun.01 2003, 「俺は代理の品なのだろうか」


2003年06月18日(水)


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History
2001年06月18日(月) 逃げているだけじゃないですか



< 元気と分かれば其れで充分か >


返信は無いであろう文を、
送り続けた。

携帯の電源を切っていたとしても、
後で目に留るであろうと、
考えつつ。





今頃病院だろうか。

仕事内容と人間関係と、
ストレス塗れの職場から逃亡して、
羽根を休めている頃だろうか。






二週に数度程度の文を、
送り続けた。

何処かの木陰で、
充電して居る事を願いつつ。


羽根を休めて活力を養った後に、
再び皆に活力を分け与える存在として、
戻って来るに違いない。


確信を持ちつつ。







そしてもう一つ、
必ず惑いの種も内包して帰ると、
思いつつ。

























久方ぶりに震える携帯。


 「おはよう。」


この時間帯に届く文は、
きっと元気に復活したあの子だろう。


 「今は何でも食べられるの♪」


あの子は画面から、
今にも飛び出して来そうだけれど。



















 「その後いかが?」
 「彼女ともラブラブ?」


何時でも必ず、
最後に付随する彼女の文字。









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References
 Apr.27 2003, 「寂しく笑っているのでしょうか」


2003年06月17日(火)


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History
2001年06月17日(日) 何を話せば良いのだろうか



< 恋煩いだと片付けて良いのでしょうか >


一日の長さが、
まるで瞬き程の時間に感じる、
気の抜けない一日。





張り詰めた一日に、
張り詰める事を強要された一日に。

無理矢理捻じ込まれた、
緩み。




 「ねぇ。」
 「9時40分頃私の事強く想ってなかった?」



堅固な筈の石垣が、
崩れ掛けるのを、
必死に支えながら。

恨みを覚えるのも御門違いだと、
携帯を閉じて、
怒りを逃がす溜息を吐いた。
















時間指定まで繰り出した、
決め撃ち。


 「仕事中、小坊主が居た感じがしたんだもん。」
 「小坊主の香がしたんだもん。」


仕事の合間に惚けて居られる、
甘く幸せな職場。


 「うぬぼれ、自意識過剰だって?」
 「完璧病気だよね?」


俺がこの時間に、
何処に居て何をしていたのかも、
貴女は知っていると言うのに。







病気?
恋の病とでも言うのか?



仕事中に失敗を繰り返して、
泣き言を繰り返したのは、
一体何時の話だ。


貴女は、
自ら原因を作って、
自ら失敗を産み出して、
挙句の果てに俺に泣き付いて、
再び同じ事を繰り返す気なのか?


















俺より早く一日の終わる貴女から。
欠かさず届く定時便。

其れを要求しているのは、
俺の方だと言うのに。




俺の一日は、
未だ半日以上残っている。


2003年06月16日(月)


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History
2002年06月16日(日) もう少しだけ潜ってますか



< 人を舐めてやしませんか >


友との旅行を優先した処で、
何の問題も無い。


例え先約を優先出来ない、
いや先約を優先しないとしても。

其れを俺が怒る事は、
そもそも筋違いの行為であり、
権利も義務も無いのだ。








 「怒ってる?」
 「会ってくれる?」


既に俺と交わしていた筈の約束を、
反故にしてしまった罪悪感と。

格好の息抜き相手であり、
良き相談相手から、
突き放されるかも知れないと言う恐怖感。


そして。

この程度の行為では、
決して嫌われないであろうと言う、
女の勘。







 「お茶した時にでも詳しく聞かせてよ。」

 「うん。会った時に詳しく話すね。」



過去に吐いてしまった言葉が、
俺と君と、
互いの記憶に在る以上。

会わないと言う選択肢を選んだ時点で、
確かに八方塞に陥るけれど。













でもな。









相手の行為一つ一つを、
観察し、
評価し、
順位付けて行くのは。

雌に限った事では無いと、
理解した方が良い。






雄は決して、
心の内を行動として表面化させないけれど。


2003年06月15日(日)


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History



< 未だ触れぬ腫れ物なのですか >


話せぬ事情も、
話せぬ雰囲気も、
話せぬ距離も、
其処には存在するのだから。


真の事情を告げられぬ儘、
終焉を迎えた処で。

底に隠れ流れる澱みの根源を、
感じ取りながら、
相談と言う行為の応対をすれば、
何の問題も無いけれど。






真の事情を未だに知らぬ儘。

底の見えない澱んだ川の流れで、
猶も手探りに、
落し物を拾わねばならないのだろうか。

















 「最近物騒だしなぁ。」
 「殺されちゃうかも。」
 「一時は本当に危なかったんだよ!」

 「そっか・・・。」



君の見えぬ話に、
相槌と慰めを被せながらも。

見えぬ話故に、
危険の程度を判断出来ず、
途方に暮れる。





















 「あのな・・・」
 「俺は何が有ったか一度も聞いて無いぞ?」



たった一言。

この一言が、
全てを壊してしまいそうで、
何故か言えないんだよ。








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References
 Jun.08 2003, 「鬼になれますか」


2003年06月14日(土)


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History



< 想いの乖離を感じ取れますか >


頻繁に震動を繰り返す地域の様に。

互いの歪が小さい内に、
衝突し、
想いをぶつけ、
絆の撓みを開放する。


細やかな想いを以って、
僅かな揺れを察知する作業は、
想いの外重労働だけれど。







頻繁な震動を起こす事無く、
長期に歪を溜め続ければ。

歪に対する許容の力は消え、
少々の圧力でも、
耐え切れずに大きく揺れる。


そして最後には、
大きな地殻変動を伴い、
お互いの絆に無残な裂け目を残して、
去って行くに違いないんだ。
















想いの乖離が起きる時。

お互いの温度差や、
お互いの認識の違いが、
言葉や態度として表面化する時。


其れは即ち、
大地震の前触れとして発生する、
井戸水の白濁化であり、
動物達の錯乱であり、
小規模な歪の開放なのだろうか。











数日前に貴女から届いた文を、
舐める様に読み返す。


 「私に対しての想いが。」
 「今までとは違う想いになってしまったのでしょうね。」



俺の視点や認識とは、
凡そ懸離れ、
青天の霹靂としか想えぬ言葉。













一方的としか受け取れぬ貴女の想いに。


貴女に対する細やかな想いと、
貴女の揺れを察知する能力の、
不足を感じて。




今更。

貴女から届いた文を、
丹念に丹念に読み返した。


2003年06月12日(木)


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History



< 早く我が家に来られませんか >


声が無くとも。
文字が無くとも。

ふと貴女の存在を、
近くに感ずる時が在る。




局部を締め付ける、
圧迫感が消えた後も。

壁に残る衝撃が、
薄れてしまった後でも。


お互いが寄り添っている錯覚を、
感ずる時が在る。











香。

嗅球を擽る分子の悪戯。















初夏の若葉の様な爽やかな香りが、
貴女の文から漂って来る。


 「昨日小坊主が側に居る気がしたの。」
 「小坊主の香りがしたんだよね〜。」


今朝は気分良く、
一日の始まりを迎えられたと言うのに。










 「今日も小坊主を感じる事が出来るかな?と思ったけれど・・・」
 「クンクンしすぎで鼻が痛い・・・」


笑い話に終わって仕舞うのは、
俺らの宿命だろうか。












貴女があの時、
そっと封筒に託した匂いは、
時々蘇るけれど。


貴女の悦びが沁み込んだ筈の、
床の泉からは。

既に何も捕らえられない。










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References
 Oct.23 2001, 「終わりの予感がありましたか」


2003年06月11日(水)


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History



< 変化を付けて罰が当たるか >


常に変わらぬ想いが、
普段と変わりの無い声や文が、
目の前に在れば。

安心感に富んだ想いを満喫出来ると言う事実に、
偽りは無いけれど。


 「今日も忙しいの?」
 「忙しいよ。」


毎日の会話が、
一組の対になった言葉の交換で終了して仕舞うのならば、
余りに寂し過ぎる。











何の変化も無い事に、
倦怠感を感じて。

少しだけ悪戯をする。






 「何か違う事言ってよ。」
 「え?」


 「後30秒。」
 「えっと・・・」


 「後15秒。」
 「ええっと・・・」


 「後5秒。」
 「今日も忙しかったの?」








瞬時の反応を、
臨機応変に振舞う事を、
貴女は苦手だと言うけれど。


俺が受話器を握る時間帯など、
貴女はとっくに知っているじゃないか。
















当たり前の様に穏やかで、
何の変哲も無い幸福。

当たり前の事過ぎる故に、
忘れがちな幸せ。


大切な宝には違いないけれど。





この程度の香辛料なら。

時折利かせてみたとしても、
良いんじゃないか。


2003年06月10日(火)


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History



< 階段を上っていますか >


一段上だろうか。
それとももう少しだけ、
上の段を駈けているのだろうか。

一段下だろうか。
それとももう少しだけ、
下の段を歩んでいるのだろうか。

もしかしたら、
遙か前を進んでいるのかも知れない。




お互い手と手を取り合って。
共に手と手を繋いで。

自分の信ずる人と共に、
階段を一歩一歩、
歩んで行くのだとすれば。


横に並ぶ人は、
今何処に居るのだろう。








手を離さずに居れば。

手を引き合い、
手を押し合い、
手を握り合い、
徐々に徐々に、
階段を進んで行ける。











ふと想う。

本当だろうか。













俺と貴女との間の距離は、
徐々に徐々に縮まっているけれども。

果たして俺達は、
階段を上っているのだろうか。




思わず俺は、
貴女に吐き捨てた。


 「お互い成長出来てる?」
 「プラスになってんのかな?」



今想えば、
失礼な言い草だ。













同じ事を繰り返す度に。

俺と貴女の間に、
同じ様な出来事で亀裂が入る時に。





俺は貴女を引き降ろしていないか、
疑問に想う。


俺は貴女の成長因子と成り得る存在なのか、
疑問に想う。


2003年06月09日(月)


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History



< 鬼になれますか >


怒りを露にして、
君を詰ったかと思えば。

手を付いてまで、
美辞麗句の限りを尽くして、
君は悪く無いと、
自分が全てに於いて悪いと謝罪する。



敵意を剥き出しにして、
俺は過去の無い新たな世界で生きて行く、
今後道で出遭っても他人だと、
言い切る一方で。

此れで縁が切れてしまうのでは悲し過ぎるから、
何時か再び笑顔で話そうと、
猫撫で声で摺り寄る。






自己の保身と虚栄心を満足させる為に。

相手に依って刹那に態度を変え、
次々に言葉を変え、
変幻自在に振舞っている気になっているのか。

あの馬鹿は。



必ず何処かに、
落とし穴が潜んでいると言うのに。















 「何考えているか分からない。」
 「信じられない。」



一度は惚れた男の豹変に、
戸惑いを隠せない君。




男は見栄っ張りなんだよ。

そして男は、
甘えん坊なんだよ。



だからこそ、
決して隙を見せてはいけない。

そして絶対に、
甘さの欠片を見せてはいけない。
















嫌悪感を懐きながらも。


友人達から届き続ける情報を、
着々と記録して行く君。

彼が味方と信じているであろう友も、
既に彼に愛想を尽かし、
君の味方へと転じているのだ。



 「鬼みたいで嫌なんだけれどなぁ。」
 「裁判になったら証拠になるからさぁ。」






例え鬼になろうと。

君の周囲には、
真実を知っている味方が、
大勢居るじゃないか。







だから。

気を緩めるなよ。
男は甘えん坊なんだ。


2003年06月08日(日)


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History



< 如何受け取るのでしょうか >


絆に対する不安感から、
ふと口を付く言葉。

彼を失いたく無いと言う想いと、
表裏一体の言葉。


其れを十分理解していたとしても。


 「煙草の味がする?」
 「嫌いになった?」


唇を重ねた直後の問いに、
必ず困惑する。







友は嘆く。


 「俺は何処まで踏み込んで良いんだ?」



自身の嗜好を彼女に伝え、
煙草を止めろと言う。

自身の我儘を彼女に押し付け、
煙草を止めろと強いる


彼女の嗜好を想い、
喫煙には関知しない態度を取る。

彼女の健康を想い、
煙草を止めてと願う。



何処までが意思で、
何処までが自我で、
何処までが尊重で、
何処までが愛情なのだろう。
















きっと一つの想いでは無い。


夫れ夫れの想いが独自の強さを持って、
微妙に混じり合って、
複数の想いが重なりあって出来た想い。

全ての想いを内包して、
微妙な天秤の上を往来する想い。



どんな解答を選択しようと、
其処に在る想いは、
きっと一つの想いでは無いから。







昼休み。

後輩相手に何気なく口にした言葉を、
想い返した。


 「きっと相手に『何でしてくれないの?』なんて言うなら。」
 「其れは愛情じゃ無いんだよね。」

 「深いですね・・・」



違う。

相手の行動なら、
自身が感ずる想いが答えだ。




自分が選択した行動が、
如何様にも評価出来る事の方が。

自分が選択した行動は、
如何様にも受け取られる可能性を秘めている事の方が。



寧ろ難しく深い事を、
友に教わった。


2003年06月06日(金)


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History



< 母子で表札を架け替えましたか >


敵地。

過去の雰囲気を打破する為に、
過去の男と闘う為に、
今回乗り込んで来たんだ。



小さな彼が残す想いを、
全て消す事は不可能でも。

其の残り香を上回る想いで、
覆い包む事は可能なんだ。


目の前の扉を開ければ、
目の前に小さな彼が姿を現す。






ふと見上げると、
一枚の表札。


未だ貴女があの男の所有物だと、
そう宣言するかの様な苗字。

未だ小さな彼が、
あの男への想いを強く強く握っていると、
そう警告して来るかの様な苗字。




敵地。














貴女から届く文。


 「小坊主なら気付いてるよね・・・。」
 「嫌な思いさせてしまったんじゃないかって・・・」




貴女の言う通り。

俺は目敏く探知した。
俺が気付かない筈は無いのだ。


けれども貴女は間違っている。



此処は敵地だ。
昔はあの男も居た場所だ。

あの男の名は無くとも、
あの男の威光は、
十二分に凍み込んでいる地だ。


そんな事は百も承知で、
今更嫌悪感を覚える理由にすら成らない、
取るに足らない出来事なのだ。


















事実に気付いた直後から、
貴女は行動に移ったけれども。

少しも安心感は増えていない。


 「すぐ外したからね。」
 「報告終わり!」



俺の想いで無く、
小さな彼の想いは如何なのだろうか。

小さな彼も賛同した事であれば、
きっと安心出来るのだろう。










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References
 Jan.12 2003, 「文字が歳月を見せるのですか」


2003年06月05日(木)


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History
2002年06月05日(水) 自棄になる必要がありますか



< 何故出来ないのでしょうか >


形有る物は、
何時か壊れ行く。

形に拘り、
其れよりも貴重な物を失う事など、
在ってはならないから。



 「携帯に付けてたお揃いのストラップも流しちゃった。」


不注意から、
下水の中へと消えて行った貴女の携帯。

俺と貴女の繋がりに一翼を担っていた形は、
二月程前に一度消えた。






流れた物は取り返せない。
消えた物を手元に戻す術は無い。

事実に向き合わねば、
お互いの想いも進まないのだ。


 「物に拘らなくても良いでしょ。」
 「大切なのはお互いの想いでしょ。」


あの時貴女に伝えた言葉には、
一点の曇りも無い。













けれども。



想いも亦、
不変では無い。

時には固化して意固地な姿を保ち続け、
時には液体の様に姿を流動させ、
様々な姿を、
互いに魅せ付け続ける。




自身を見失わない為の、
自身の弱い心を支える為の、
拠り所として。


何らかの形を欲して、
何が悪い。
















想いの一翼を担う形が、
消えたと言う事は。

想いの翼を捥がれたと言う事実に、
他ならないのだ。








貴女に対して俺は、
想いを逆撫でられたと認識したのか。

貴女の想いの何処を信じたら良いのかと、
絶望感を記憶したのか。


まさか俺は、
怒りを覚えたのか。






 「読み返して元気が出るメール。」
 「またいっぱい頂戴ね!」

 「今度お揃いの物買おうね♪」


良く良く想い返せば、
貴女の言葉に何一つ応えてない事に気付く。


2003年06月04日(水)


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< 女と母とどちらが大切でしょうか >


憂いを含んだ顔。

何か言いたげな、
寂寥感を多分に含んだ、
女の顔。






こんな時には、
意地悪と言う名の悪戯を更に一つ、
加えてみたくなる。



 「寂しいんでしょ。」

 「小坊主ぅ・・・」



態とらしく駄目押しした、
俺の一言に。

ただ俺の名前を返すだけで、
貴女は精一杯だった。




















諭す様に、
宥め賺す様に、
貴女に言い聞かせた。

今迄の様に、
貴女の髪に触れる事など出来ず、
言葉のみを用いて、
想いを伝えた。



 「彼是欲張ってどうするんだよ。」
 「今回は小さな彼が最優先でしょう?」












子を邪魔だと想う事など、
無かったけれど。



俺も貴女も、
神経を張り詰め過ぎた。


小さな彼に気を配り過ぎて、
目の前の貴女と触れ合う行為が、
少な過ぎた。













だからゆっくりと休もうよ。

次の逢瀬は、
俺の元へ来る時には、
二人きりでゆっくり過ごせるじゃない。


2003年06月03日(火)


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2002年06月03日(月) 心強く想ってもらえますか



< 少し塩辛いでしょうか >


父親だろうか。


彼の前に久々に現れた、
年相応の男に。

小さな彼は父親を重ねて、
甘えているのだろうか。




友達だろうか。


貴女の一人の友人として
俺を迎えているのだろうか。

それとも自分の友として、
俺を歓迎しているのだろうか。




恋人だろうか。


母親が好意を持つ男に対して、
決して母が嫌われぬ様に。

自身で出来る精一杯の心遣いを贈ろうと、
必死なのだろうか。
















貴女の声が、
心なしか弾んで聞こえる。


 「小さな彼が作ったんだよ!」


小さな彼の心遣い。

きっと涙を隠し味に、
小さな彼の想いが詰まった一品。






どれが正解でも良いんだ。
答えが一つで無くても良いんだ。

想いの解釈など後回しで、
先ずはこの想いを、
正面から受け止める事が必要なんだ。





















目覚めの食卓には、
少しだけ不恰好な卵焼き。

お皿の上で、
丸く丸く自己主張していた。



今はこの幸福感を、
良く良く味わって食べよう。


2003年06月02日(月)


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History



< 俺は代理の品なのだろうか >


何時までも、
歯を磨き続ける。

何時までも、
着替えに手間取る。

鈍重な、
緩慢な、
少しも進まぬ就寝の準備。





理由を察しようと、
少しでも理解しようと。

思考回路を働かせ、
集中をする。













川の字の中央に誰が来るか。

そんな事まで
毎朝毎晩話し合ったと。

小さな彼と貴女とで、
毎日懸命に話し合ったと。


貴女から聞かされていたから。



 「一緒に寝るか?」



俺の出した解答は、
小さな彼の満面の笑みを呼び出す事に、
成功した。



けれども。












 「髭ジョリジョリだ!」
 「くすぐったい!」


隣に寝た俺の姿に。

小さな彼は、
喜びを表してくれたのだろうか。
















 「お父さんに。」
 「髭ジョリジョリの刑されたんだ!」


隣に寝た俺の姿に。

小さな彼は、
父親を重ねて見ただけなのだろうか。


2003年06月01日(日)


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History
2002年06月01日(土) また逢えますか





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