2008年04月23日(水)  マタニティオレンジ272 二語でおしゃべり、たま1歳8か月

2006年8月22日に生まれた娘のたまは、昨日で1歳8か月になった。1歳になるまでは、12分の1歳にはじまり毎月誕生会を開いていた(子どものためというより、外食の機会が減った親の楽しみのため)ので、「次は○か月だ」とそわそわしながら当日を迎えたけれど、20回目ともなると、過ぎてから、「あ、昨日だったね」となる。

この一か月は二度の発熱に見舞われ、保育園を休んで家でべったり過ごす日が何日かあった。さらに、締切にも追われず、休日もしっかり一緒に遊べた。「もうこんなことができるようになったのか」と今月も驚かされることが多々あった。ズボンを一人で履こうとし、何回かに一度はおしりの半分ぐらいまで上がるようになった。テーブルや床にごはんを飛び散らせながらもスプーンを使って食べようとし、割れるグラスで乾杯したがる。玄関では「かぁぎ」と自分で施錠したがり、雨の日には「かぁさ」と自分で傘を指すと主張する。大人と同じことを自分でやりたい。その自己主張にも言葉がついてくるよになった。手も足も口もずいぶん動くようになり、要注目、要注意。良くも悪くもますます目が離せない。

言葉もひと月でまた増えたけれど、先週末の熱海旅行から帰って以来、この数日でいちだんとおしゃべりになった気がする。帰省や友人宅への外泊以外ではじめての旅行で、はじめて新幹線や船に乗るなど刺激に満ちた体験が何かを伝えたい気持ちをかき立てたのかもしれない。「これ ママの」「ママ こっち」「パパ ねんね」「ニュウニュウ(牛乳) くださいな」など「二語」のおしゃべりが出るようになった。近所のプランターの中にゾウの置物を見つけて、「ゾゾ、ゾゾ」と指差していたのが数日後に消えて以来、通りがかるたびに「ゾゾ、なぁい」と言う。ここにゾウがいたことを覚えていた上に、なくなったことに気づき、前はいたのに今はないと言い続ける。ずいぶん複雑なことができるようになったものだ。

ボキャブラリーもさらに豊かになった。「ピョンピョン」(うさぎ)「チューチュー」(ねずみ)「ニャーン」(猫)「ワンワン」(犬)「ワァニ」(ワニ)「ゾゾ」(ゾウ)「ガオ」(ライオン)「マウマ」(シマウマ)「ナンナ」(花)「ハッパ」(葉っぱ)などの動植物。「パンパン」(パン)「ゴ」(いちご)「カン」(みかん)「ベ」(せんべい)「ビ」(ビスケット、クッキー)などの食べ物。家中に飾ってある「アート」(ハート)。家でも保育園でも使う「トン」(布団)。熱海旅行では「ビューン」(新幹線)を覚えた。「こわい」「いたい」「おおきい」「かたい」などの形容詞も。ケガをすると、自分がぶつかった相手(壁だったり地面だったり)を「メッ」と𠮟ってたたく。

熱海の戸田幸四郎ショップで買い求めた『リングカード・あいうえお』と『リングカード・どうぶつ』のイラストカードを一枚一枚見せていくと、知っている単語は早押しクイズみたいに見た瞬間に答える。その顔の得意げなこと。世界を覚えていく楽しさと興奮を持ち続けられたら、学習は心躍る冒険であり続ける。

今夜の子守話は、めがねの話。リングカードの「めがね」を見せると、たまは「パパ!」と答える。
子守話15 パパのめがね

たいへんたいへん パパがめがねをわすれて かいしゃにでかけちゃった。
めがねはあわてて まどからとびだし パパをおいかけました。
もちろん レンズがわれないように やわらかい しばふのうえに とびおりました。

えきへいそぐパパのせなかが めがねにはよくみえます。
けれど なかなかおいつけません。
めがねのあしはみじかいうえに いつもパパのみみにこしかけているので
はしるどころか あるくことにも なれていないのです。

ようやくえきに つきました。
めがねは きっぷもかわず かいさつのしたをくぐりぬけて でんしゃにのりこみました。
おなじでんしゃに パパがのったのを みとどけたのですが
でんしゃはぎゅうぎゅうづめで どこにだれがいるのか かおがみえません。
めがねは たくさんのあしにふみつぶされないように きをつけながら
しらないだれかの くつのうえで ひとやすみしました。
けれど がたんとでんしゃがゆれると くつからすべりおちるので ねむるわけにはいきません。

でんしゃはパパがいつもおりるえきにつきました。
まいにちパパといっしょにかよっているので めがねはちゃんとおぼえています。
おりるひとの くつにひょいとのっかって めがねはじょうずにでんしゃをおりました。
そのくつには みおぼえがありました。
パパのくつです。

めがねはおもいっきりたかくとびあがって パパのめのまえにとびだしました。
わあ、とパパがびっくりしたときには めがねはりょうあしを パパのみみにひっかけていました。
パパは きのうのよる どこにめがねをおいたかわすれてしまっていたのです。
だけど めがねをさがすためには めがねがひつようだったのでした。
めがねのほうから さがしにきてくれるなんて とパパはおおよろこびしました。

2007年04月23日(月)  はちみつ・亜紀ちゃんのお菓子教室でお買い物
2005年04月23日(土)  根津神社のつつじまつり
2004年04月23日(金)  くりぃむしちゅー初主演作『パローレ』(前田哲監督)
2002年04月23日(火)  プラネット・ハリウッド


2008年04月22日(火)  シナトレ8 コンクールでチャンスをつかめ! 

シナリオ作家協会のシナリオ講座にて、一日講義。受講生は四月から脚本の勉強をはじめた基礎科の生徒さんが中心とのことで「励みになる話を」とリクエストされ、タイトルは「コンクールでチャンスをつかめ!」に。自らコンクールでデビューのチャンスをつかみ、運と縁に助けられて現在に至る今井雅子の体験談をまじえ、脚本を書く腕と気持ちを後押しできそうな話をすることにした。

脚本は何歳になってからでも学べるし、何歳になってもうまくなれるとわたしは考える。脚本家は芸術家というより職人であり、天才でなくとも努力家であれば道を拓いていける。その努力とは書き続けること。しかも、ただ紙を埋めるのではなく、自分の描きたいものを形にする修行を重ねること。そのことを何に例えればわかりやすいだろうと考え、脚本を「料理」に置き換えてみた。

脚本コンクールは、挑戦者が自慢の一皿を送りつけて審査員に食べ比べさせ、腕を競うもの。見知らぬ料理人の作った得体の知れないものを延々と食べさせられ、審査員は食傷気味。そんな相手に食べる気を起こせ、感動させ、食後に高得点をつけたくなる一皿を届けなくてはならない。となると、「ネタの新鮮さ、面白さ」が決め手となる。

わたしの場合、デビューのきっかけをつかんだ札幌放送局主催のオーディオドラマコンクール入選作『雪だるまの詩』は、記憶の蓄積ができない前方性記憶障害を扱った。『博士の愛した数式』や『私の頭の中の消しゴム』で世に知られる前のことで、コンクール受賞作がドラマ化された後に受賞した放送文化基金賞の審査員もまだ知らなかった。もちろん、目新しい食材を皿に盛るだけでは審査員の心は動かせない。どのように調理するかが料理人の腕の見せ所。『雪だるまの詩』では、はかなく消える記憶と雪を重ね、雪のようにはかなく消える夫の記憶を自分の中に雪だるまにして残そうとする妻の視点で描いたことが評価された。

映画脚本デビューのチャンスをつかんだ『ぱこだて人』(『パコダテ人』として映画化)は、「女子高生にしっぽが生える」という飛び道具的設定を使って、「しっぽは欠点ではなくオマケ」と個性の話をし、そのオマケがついた気分を「はこだて」が「ぱこだて」になると表現した。はひふへほがぱぴぷぺぽに変換されるぱこだて語の言葉遊びもスパイスとなり、目を見張って楽しく食べてもらえる一皿となった。

料理と同じで、脚本も毎日書き続けていると手際も勘も良くなってくる。ありあわせの材料を組み合わせておいしいものを作れるコツとワザが身に付き、「あれとあれを組み合わせたらこうなる」という読みもできるようになる。わたしの場合、コピーライターの傍ら脚本家デビューし、しばらくは二足の草鞋をはき続けていたのだけれど、広告を作る作業が「料理」の修業にもなっていたように思う。そう考えると、いきなりフルコースの長編に挑戦するより、CMのようなおつまみサイズのドラマを描くことから始めて、自信と技術がつけていくやり方もありだと言える。

食材(ネタ)×調理(発想)法の組み合わせでコンクールの上位に食い込むために、今日からでもできる勉強法を紹介。まず、新鮮で面白いネタを集めるためには、「人脈(幅広い世代のいろんな人と)」と「ストック」を持つこと。ネタのストックについては、新聞や雑誌を切り抜き、項目別にファイルにまとめることをおすすめした。このとき、記事のどこに惹かれたかに線を引いたり、記事を見て思いついたことをメモしておくと、必要になったときに取り出しやすいだけでなく、頭にもネタを仕込むことができる。デビューした後は、プロデューサーに「予算これだけしかないけど、最高に感動できるもの食べさせて」などと無理な注文をされることになる。そんなとき、手元に使える食材を使いやすい形でどれだけ用意できているかが、競争の激しい料理人(脚本家)の世界で生き残る明暗を分ける。

調理(発想)法を鍛えるやり方として紹介したのは、「レシピ分析」と「食材からの発想」。「レシピ分析」は、名店で感動の味に出会ったときに「これ、どうやって作るんだろ」と想像するのと同じように、お手本にしたい作品がどういう要素をどう調理して成り立っているかを分析する。さらに、そのレシピを真似して作ってみると、より力がつく。「食材からの発想」は、冷蔵庫にあるものやスーパーの特売ありきでメニューを組み立てる主婦のやりくり術の脚本版。ある食材(ネタ)をどう調理するのがおいしいか、考え、実際に作ってみる。同じ素材でいろんなパターンを作って食べ比べたりすると、めきめきとアレンジ力が身につく。

そして、忘れてはならないのが「試食」。料理人本人だけでなく、まわりの人にも食べてもらい、聞いた意見を反映させること。その柔軟性と応用力があるかどうかが料理人として伸びる鍵。締切ぎりぎりに書き上げた初稿をそのままプリントアウトしてコンクールに応募するのは、自分のレストランを出せるかどうかの勝負の一皿を、味見もしないで出すようなもの。料理人の顔が見えなくても、手を抜いた一皿には気の抜けた味しかしない。でも、食べる人の顔を思い浮かべ、その人を喜ばせようというサービス精神と意気込みを注いだ一皿は、作った人の顔が見たくなる。……と例えてみると、思った以上に脚本と料理はよく似ているなあと話している本人が納得してしまった。

質問の手がいくつも挙がった昼の部の講義が終わると、「運命の出会いです!」と駆け寄ってくださる人あり、「お茶をしませんか」と誘ってくださる人あり。夜の部までの2時間強を近くのカフェで過ごす。以前教えたクラスにいた男の子が1人と、今日会った人が4人。「50歳以上は去れ」だの「書けないやつは一生書けない」だのきつい言い方をする脚本家もいるらしく、「誰にでも書ける」というわたしの話に勇気づけられたという。生徒を引き受けた以上、いいところを引き出して教えるのが講師の仕事だとわたしは思うし、初心者の生徒であっても相手に敬意を払うべきだと考える。だけど、下手な期待を抱かせちゃっているのかなあという迷いもある。料理と同じで作り続ければうまくはなるけれど、料理と同じく、プロとしてやっていけるかどうかには壁があるのかもしれない。それでも、食材と調理法の掛け合わせがうまくいけば、コンクールの一点突破は夢ではない、そう言い切れる。だから、コンクールでチャンスをつかめ!

2007年10月27日(土) シナトレ7 紙コップの使い方100案
2006年11月07日(火) シナトレ6 『原作もの』の脚本レシピ
2006年03月02日(木) シナトレ5 プロデューサーと二人三脚
2005年11月01日(火) シナトレ4 言葉遊びで頭の体操
2005年10月12日(水) シナトレ3 盾となり剣となる言葉の力
2005年07月27日(水) シナトレ2 頭の中にテープレコーダーを
2004年09月06日(月) シナトレ1 採点競技にぶっつけ本番?

2007年04月22日(日)  植物は記憶のスイッチ
2002年04月22日(月)  ワープロ


2008年04月21日(月)  マタニティオレンジ271 本を破った。はじめてぶった。

二週間前の風邪が治りきってなかったのか、わたしとダンナにうつした風邪をうつし返されたのか、熱海ではしゃぎすぎたのか、娘のたまが朝から発熱。熱と咳をタスキにして家族で風邪リレーになっている。

保育園を休んだたまは、熱のせいか、いつも以上に聞き分けがない。「魔の二歳児」に向けて日に日に活発になり、暴君化しているのだけど、風邪の熱でわがまま度も過熱気味。何が気に入らないのか、いきなり絵本のページをびりびりと破いてしまった。以前も図書館で借りた本を破ったことがあり、厳しく注意したのだけど、それが悪いことだとわかっていないのか、親が困ると知ってやっているのか。今度こそちゃんと言い聞かせなくてはと顔をのぞきこみ、目を合わせ、「本を破っちゃダメでしょう。本が痛い痛いって言ってるよ」と叱った。ところが、糊で破れ目をつなぎ合わせていると、またしても手を出してきて破ろうとする。「ダメ!」ときつく言い、手を取って甲を叩いた。激しい叩き方ではなかったけれど、親に初めてぶたれたたまは、しゅんとしおらしくなった。

カッとなって声を荒げたことも手を挙げたことがなく、おおらかに子育てをしているつもりだけど、単に甘やかしているだけなのかもという反省もある。しかることから逃げて、子どもを甘やかすというより親自身が甘えているのではないか。保育園の先生を見ていると、子ども相手にビシッとしかっていて、その本気の空気を察して、子どもたちも神妙におしかりを受けている。「𠮟るときはタイミングが大事。ぶれないことが大事」だそうで、悪いことをしたらその場ですぐにしかり、しかっている途中で態度を軟化させてはいけないらしい。大人が迷うと、子どもは戸惑う。厳しくするのは甘やかすよりずっと難しく、親のほうが試されている気がする。

(※パソコンをMacに変えたせいなのか、Windowsでは「しかる」の漢字が化けているとの指摘があり、ひらがなにしました。逆にWindowsで打った丸数字はMacでは文字化けします。互換性があるといいつつ、ところどころで破綻があるのは困ったものです)

2007年04月21日(土)  マタニティオレンジ109 ご近所仲間とたま8/12才
2002年04月21日(日)  貧しい昼食


2008年04月20日(日)  団体新婚旅行in熱海2日目

昨日の雨が上がり、今日は暑いぐらいのいい天気。バイキングの朝食で腹ごしらえし、船着き場まで15分ほど歩いて遊覧船に乗る。ディズニーランドの『カリブの海賊』の上下動を大きくしたみたいに揺れるので、船酔いに弱い福ちゃんはみるみる顔色が悪くなり無口に。途中、甲板に出て、船のまわりを飛び交うカモメの群れにえさ(かっぱえびせん)を投げる。娘のたまは「わあわあ」と興奮。

続いて、太宰治や坪内逍遥など文豪たちに愛された旅館を熱海市が買い取って公開している『起雲閣』へ。ここは前に来てとても気に入ったので、また来たいと思っていたのだけど、福ちゃんさとちゃん夫妻は昨日も来たのだとか。「ここをつぶして高層マンションが建つところだったのを2万人の署名が救ったんです」とガイドさん。1919年に別荘として築かれ、1947年に旅館となり、2000年に熱海市の所有となったそう。毎日話しているうちに名調子が生まれるのか、起雲閣について話しだしたら止まらない。

そのガイドさんおすすめの喫茶室で休憩。見事な庭を望み、アンティークのソファに体を沈め、優雅にいただく熱海紅茶(熱海産マーマレードでいただく)が400円。熱海産マーマレイドを添えたクラッカーが100円。入場料500円を足しても、このティータイムはお値打ち。

花が咲き乱れる庭を散策すると、市民コーラスの練習の声が聞こえてくる。建物の一部は市民の文化活動に開放されている様子。歴史と趣のある建物に歌声を響かせるなんて、贅沢で粋だ。熱海市は本当にいい買い物をしたと思う。

起雲閣の方に「この辺りでお昼をするのにいいところはありますか」と尋ねたら、「どこかを特別におすすめするわけにはいかないんですが」と付近の地図を渡してくださった。3時までやっているという『柴竹』を訪ねると、これが大当たり。「金目鯛の煮付け」「桜えびのかき揚げ」など四品から一品を選ぶと、刺身や小皿がついた定食に。その皿のひとつひとつが「むむ、これは!」と目を見張る出来ばえ。刺身は新鮮だし、煮付けの味付けは絶妙だし、ごはんが進むこと進むこと。

おなかいっぱいになって店を出ると、もう四時。関西組は今から出ても着くのは夜。名残を惜しみ、「また旅行しようね」「今度は関西?」「北海道か九州もいいねえ」などと話して解散。たまが眠ってしまったので、駅までベビーカーを押して歩いていると、絵本が並ぶお店を見つける。熱海に美術館がある戸田幸四郎さんの絵本やグッズを扱っているショップだった。入口の鍵はかかっていて、お隣の洋品店に声をかけると、洋品店を閉めて応対してくださる。色づかいも絵のタッチも明るく楽しく優しく、わたし好み。記念に何を買って帰ろうかと目移りして選んだのが、『リングカード・あいうえお』と『リングカード・どうぶつ』。カルタみたいに絵を描いた一枚一枚をリングで束ねたもので、学生時代の英単語帳の子ども版のような感じ。帰りの新幹線でたまがぐずったときに見せたら、泣くのを忘れて見入り、早速役に立った。

2007年04月20日(金)  マタニティオレンジ108 助産院で赤ちゃん同窓会 
2005年04月20日(水)  東京ハートブレイカーズ公演『黒くやれ』
2002年04月20日(土)  16年ぶりの再会


2008年04月19日(土)  団体新婚旅行in熱海1日目

3年前にわたしの同僚カップルE君とT嬢の披露宴ではじめて会って意気投合したE君の高校時代の同級生の福ちゃんが、タイガースファン同士で盛り上がったさとちゃんと1月に海外挙式。E君T嬢披露宴で仲良くなったメンバーで、旅行でお祝いすることになった。E君T嬢夫妻とうちの一家は関東から、福ちゃんさんちゃん夫妻と、E君の中学時代の同級生の池ちゃんと夫人のさんちゃんは関西からということで、行き先は熱海に。「新婚旅行といえば熱海」はひと昔の話だけど、団体新婚旅行と相成った。

熱海はけっこう好きで、個人的には「日本のカンヌ」だと思っている。海沿いに年季の入ったホテルが建ち並んで、遊覧船が行きかう昔からのリゾート地。南仏カンヌはパリからさらに飛行機を乗り継いで汽車に揺られる長旅だけど、日本のカンヌは東京から新幹線で一時間足らず。あと二週間で出産予定日というときに、「子どもが生まれたら、しばらくは旅行どころじゃなくなる!」と決行したのが熱海旅行。「熱海なら、陣痛がはじまってから新幹線で戻っても間に合う」という腹づもりだった。

その産前駆け込み旅行以来の熱海。パンパンのおなかに内蔵されていた娘のたまはあと3日で1歳8か月。おなかを蹴っていた足は、地面を蹴って走っている。たまが3時間も昼寝をしたせいでわが家はすっかり出遅れ、他のメンバーがひと風呂浴びた後に旅館に到着。急いで浴衣に着替えて夕食となった。

一人一人に立派な脚つきのお膳が用意され、左右の人とは手を伸ばせるほどの距離があり、向かいの人とは数メートルも離れての食事。でも、みんな大きな声でよくしゃべる。担当の仲居さんもよく気がついて世話を焼いてくれ、「お子さんには白いご飯をお持ちしますね。あ、それは塩がきついですから、お水で薄めてあげてください」などと子どもへの目配りもばっちり。

この日はちょうど今年初めての熱海の花火大会。部屋から見えるというので、福ちゃんさとちゃんの部屋に集合。大きな窓いっぱいに花火が広がり、ほとんど時差もなく音が轟く。「あ、ニコちゃんマークや」「魚の形してる! さすが熱海!」などと大人がはしゃぐ傍らで、たまは「こわい〜」と怖じ気づく。でも、最後のほうには「なんな」と言いながら花が開く仕草をして見せた。子どもにも花火は花に見えるんだなあ。15分ほどであっという間だと聞いていたけれど、十分見応えがあり、「ええ日に来たわあ」と予約した福ちゃん株は急上昇。

自ら日を決めて宿を取った新郎新婦は、「前座のほうが派手やったなあ」と言いつつ、持参したMacのスライドショーで南半球の小さな島での挙式と新婚旅行の模様を披露。白い砂がどこまでも続く波打ち際で、はだしの結婚式。ウェディングドレスは「船場で8000円で買うた」とさとちゃん。

スライドショーの後は、わが家が持ってきた「水で描けるシート」を舞台に、お絵描き大会。アートディレクターのE君と福ちゃんはもちろん、池ちゃんも絵が得意。そこに、たまが生まれてから腕を上げたうちのダンナも参戦。描き慣れた「ゾウ」や「ウサギ」は描けるけど、「サイ」「カバ」はお手上げ。ディズニーランドの広告を手がけているE君はディズニーキャラはお手のもの。「スフィンクス」まですらすらと描いたのは驚き。寝てたまるものですかと、たまは目をらんらんとさせ、見入っていた。

2007年04月19日(木)  焼きたてのパンのにおい
2005年04月19日(火)  ありがとうの映画『村の写真集』
2002年04月19日(金)  金一封ならぬ金1g


2008年04月18日(金)  マタニティオレンジ270 おやつでごきげん延長保育

昼過ぎからはじまった打ち合わせが5時前には終わるかなと読んでいたら、思いのほか白熱。気がつくと保育園のお迎えの時間が迫っていた。プロデューサーは「そろそろですか」と時計を気にしてくれたけれど、打ち合わせは引き出しの中身をひっくり返した状態。この中身をどう仕分けるのか、何を捨てるのか、そのヒントぐらいはつかんで帰らないと、「後は宿題で」と言われても何から手をつけていいかわからない。

そのとき、「そうだ、延長があった」と思い出した。文京区の保育園では延長保育で7時15分まで預かってもらえる。連日6時15分ぎりぎりに走って迎えに行くわたしは、時間がある限り甘えてしまうので、延長保育は申請しなかったのだけど、一歳児クラスからは一回400円で「スポット保育」を利用できますよと教えられ、ちょうど昨日「スポット保育登録」の書類を出したばかりだった。保育園に「今日の今日ですみませんが」と電話し、7時過ぎに迎えに行くことに。おかげで何とか今後の方向性を見届けるところまで居合わせることができた。

電話に出た保育士さんには「なるべく早めにお迎えに来てくださいね」と言われた。子どもは親が迎えに来る時間に敏感で、「あの子のママが来たから、つぎはうちのママ」などと順番を読んで待っているという。いつもよりほんの十分迎えが遅くなっただけで不安が募って泣き出す子もいる。果たしてうちの娘のたまは大丈夫かなと駆けつけると、機嫌良く「ママ!」と飛びついてきた。延長保育に入ると「延長おやつ」が出るのだけど、いつも6時15分にたまが帰るのと入れ替わりに延長組はいそいそとおやつのテーブルに着く。たまはそれがうらやましくてしょうがなく、指をくわえて見るのが日課になっていた。その憧れのおやつに今日はじめてありつけたのがうれしくて、ごきげんだったのかもしれない。

2007年04月18日(水)  マタニティオレンジ107 子どもの世界の中心でいられる時間 
2005年04月18日(月)  日比谷界隈お散歩コース


2008年04月17日(木)  『パコダテ人』の縁でバンタンと再会 

脚本を書くようになって、縁の面白さとありがたさをいっそう感じるようになった。「縁ですねえ」という出会いがいくつも重なって、ようやく作品は世に出る。脚本家が無名だったり低予算だったりすると、なおのこと縁に頼る部分は大きくなる。今井雅子の映画脚本デビュー作の『パコダテ人』がまさにそうで、コンクールに応募した原稿を審査員宅で前田哲監督が偶然見つけた(これ面白いよ、と審査員が見せた原稿の下にわたしの応募原稿が隠れていた!)のも縁だし、その前田監督が通っていた高校で同じ時期にわたしの父が教えていたという奇遇も縁。前田監督が紹介してくれたプロデューサーの三木さんとは、なぜかその数か月前に会社の同僚に誘われて行った忘年会で名刺交換していたという縁があり、さらに三木さんが声をかけた読売テレビのプロデューサーは高校の先輩という縁があり、「こういうときは、うまくいくもんです」という三木さんの言葉通り、『パコダテ人』は形になった。映画は飛ぶ(=企画が成立しなくなる)もので、脚本を刷ってもクランクインまでたどり着けるのは半分あればいいほうだという現実を知るようになった今、『パコダテ人』は、縁の積み重ねが呼んだ奇跡みたいな作品だと思う。

『パコダテ人』でいちばんこだわりたかったのが、主人公ひかるのしっぽをチャーミングに彩る衣装。お金がない、でもかわいい服を着せたいとなったときに、「バンタンに行きましょう」とわたしが言い出したのは、ちょうどそのとき見た月刊公募ガイドに、バンタンの広告だったかバンタン主催のコンクールの募集記事だかが出ていて、「ここなら、衣装のデザインに協力してくれるのでは」と思ったから。早速、三木プロデューサーと前田監督と訪ねてみると、応対された担当者が「やりましょう」と乗ってくれ、撮影までひと月ちょっとという短い時間のなか、バンタンの学生さんたちが遊び心にあふれた衣装をデザインし、製作してくれた。主人公の年齢に近い若い感性から生まれた衣装の数々は、作品にカラフルなパワーを吹き込んでくれた。

そのときのバンタンの窓口だった成田康介さんとはその後もメールでやりとりを続けていて、先日放送された『アテンションプリーズ スペシャル』のお知らせをメールしたところ、「また何か一緒にやりたいですね」とお返事をいただいていた。「何か一緒に」と言ってもらえるのは、実現しなくてもうれしいものだけど、成田さんには縁をすかさずつかまえる才能があるらしく、一週間ほどして「早速、ご一緒できそうな企画があります」と追伸が来た。アニマックス大賞というシナリオコンクールの公式ガイダンスイベントをバンタン主催で行うにあたり、パネルディスカッションに参加してほしいという依頼。今月27日開催で、誰にお願いしようかとなったとき、わたしの名前が即座に浮かんだらしい。「縁ですね」とこちらも即答でお引き受けした。

そして今日、打ち合わせで成田さんに再会。「パコダテ人の公開が2002年ですから、6年ぶりぐらいですかねえ」としみじみ。『パコダテ人』の縁がその後の仕事にもつながって今も脚本の仕事を続けられているわたしが、衣装協力してくれたバンタンのイベントで脚本家をめざす人たちに向けて話す。6年かけて小さな恩返しをさせていただける機会がめぐってきた。

2007年04月17日(火)  作詞をしませんか
2005年04月17日(日)  ティッシュちりぢり映画『コーラス』


2008年04月16日(水)  マタニティオレンジ269 『およげ! たいやきくん』作曲家が贈る新しい童謡

以前勤めていた広告会社の大先輩の濱田哲二さんから、「今井って作詞やったりする?」と電話。「友人の佐瀬寿一と新しい童謡のプロジェクトを立ち上げたんだけど」と言う。濱田さんとは先日、運営されている高円寺の『ギャラリー工』で三年ぶりに再会(>>>4月6日の日記)したばかり。それで思い出してもらえたらしい。

早速、『21世紀を生きるすべての子供たちに贈る佐瀬寿一のチャイルド・オアシス・ソング』の企画書が送られてきた。「子供たちに向けた深い情操を育むものとして、新しい世代の母親、父親になる人と共に、『童謡』が持つ親と子のコミュニケーション価値を新たな音楽的視点で見直したい」とある。子どもを授かって童謡と再会し、日々アレンジしたり自作したりしている最中なので、わたしにとってはとっつきやすい。

佐瀬さんは、『およげ! たいやきくん』の作曲家。50年の12月に売り出されて大ヒット(454万7620枚!日本一売れたレコードとしてギネスブックに認定)したこの曲を短い劇に仕立てて町内の子ども会で上演した思い出がある。その作詞を手がけた高田ひろおさんを中心に、幅広い作者から歌詞を募るということで、わたしにも声がかかったのだった。佐瀬さんと高田さんは『パタパタママ』でも組んでいて、これまた子どもの頃によく歌った一曲。三十年経った今でも歌える名曲を送り出した人たちと同じプロジェクトに参加できるなんて、最大級の大人になったご褒美だ。

ある程度まとまった数の歌ができたらアルバムにし、ライブを開いて広めていく予定だという。「世界中から集まった若者が日本各地にホームステイして風土や文化を学びながら地域との交流を結ぶWCI(ワールド・キャンパス・インターナショナル)の全国ツアーのジョイントLIVE」という計画もあり、「家族への愛からはじまって、友だちや地域社会、そして広く世界から地球への愛を育む広がり」を目指していくとのこと。もちろん、そのための企業協賛やタイアップの募集も同時に進めている。

構想は果てしないけれど、まずは楽曲作り。子どもが生まれて、歌も物語もたくさん生まれたけれど、わが子だけに聴かせるものではなくて世に出すとなると、言葉の選び方も慎重になる。記憶の倉庫を掘り起こし、ああでもないこうでもないと歌詞を捻り、こんな2編が生まれた。採用され、佐瀬さんに曲をつけてもらえますように。

はだしになって   作詞:いまいまさこ

1)
春の足音 聞こえてきたら
靴を脱いで 靴下脱いで はだし はだし はだしになろう
ほらあたらしい いのちの気配
靴を脱いで 靴下脱いで 大地にアンテナ ピンと張る

はだし はだし はだかの足で 春をさがしに でかけよう
はだし はだし はだかの足で 春を 春を つかまえよう

2)
夏の水は いいきもち
靴を脱いで 靴下脱いで はだし はだし はだしになろう
砂のこちょこちょ くすぐったい
靴の分だけ 靴下の分だけ 自由になって あそぼうよ

はだし はだし はだかの足で 夏がきらきら 水しぶき 
はだし はだし はだかの足で 夏を 夏を つかまえよう

3)
秋の野原は 落ち葉のじゅうたん
靴を脱いで 靴下脱いで はだし はだし はだしになろう
靴のかわりに 靴下のかわりに 土がふんわり 包んでくれる

はだし はだし はだかの足で 秋のぬくもり たしかめよう
はだし はだし はだかの足で 秋を 秋を つかまえよう

くりかえし)
はだし はだし はだかの足で 季節と 季節と あそぼうよ
はだし はだし はだかの足で 季節を 季節を つかまえよう

お誕生日おめでとう   作詞:いまいまさこ

1)
あなたは覚えてないけれど ママもパパも忘れない
あなたが生まれた日のことを

なにもかもが 小さくて だきしめたら こわれそうで 
でも ママの指 ぎゅっと握った 痛いほどの 強いちから

ずっといっしょだよと 指きりした あの日から 一年
おめでとう おめでとう お誕生日 おめでとう 

いっぱい笑って いっぱい泣いて あなたの一歳の誕生日
いっぱい笑って ときどき泣いて ママも一歳 パパも一歳

2)
あなたを毎日見てるのに ママもパパも飽きないよ
だって毎日ちがうもの
  
去年の靴は もうはけない 去年のシャツは もう小さい
一年前より 背が伸びて 一年前より よく食べる

あたらしい 歌をおぼえて あたらしい 友だちできて
おめでとう おめでとう お誕生日 おめでとう

一年でいちばんたくさんのプレゼント
でも いちばんのプレゼントは
この一年 無事に過ごせて あなたが今日 ここにいること

3)
あなたの寝顔をのぞきこんで ママとパパが話すのは
今日も明日も あなたのこと 

一年前はできなかった 一年前は知らなかった
あなたの世界は 広がるばかり
たのもしくもあり さびしくもあり

少しずつ駆け足になる 一年がまためぐって
おめでとう おめでとう お誕生日 おめでとう

年の数のろうそくを 吹き消すたびに 涙がじわり
その気持ち いつかあなたも わかる日が 来るでしょう

あなたが いくつになっても あなたが 大人になっても
おめでとう おめでとう お誕生日 おめでとう
あなたが いくつになっても うれしさは ますばかり

2007年04月16日(月)  祖師ヶ谷大蔵で小さな旅
2005年04月16日(土)  オーディオドラマ『アクアリウムの夜』再放送中
2002年04月16日(火)  イカすでしょ。『パコダテ人』英語字幕


2008年04月15日(火)  焼きたてのバナナマフィン

最近、毎朝のようにマフィンを焼くようになった。きっかけは、星谷菜々さんの朝食レシピ本『おひさまと、朝ごはん』に載っていた「コーンポップオーバー」というパンをアレンジした野菜たっぷりパン(>>>2008年3月9日(日) マタニティオレンジ249「野菜バイバイ」にバイバイ作戦)。どんな野菜を入れてもそれなりにおいしく失敗なく出来上がるので、面白がって中身をとっかえひっかえするうちにバナナで甘みを出すことを覚え、そのバナナを主役にした「バナナマフィンがいちばんうまい」という結論に落ち着いた。

作り方はいたって簡単。
1)ボウルに卵1個を割り入れる。
2)牛乳100ccを加えて混ぜる。
3)薄力粉100gとベーキングパウダー小さじ1をふるい入れる。
  好みで粉の一部(5〜10g)をきなこにしてもおいしい。
4)バナナ(熟しているほど甘みが出る)2本をボウルの中で適当につぶす。
  さつまいもをプラスする場合は小1本を蒸し、ボウルでつぶす。
  (入れすぎるとバナナが負ける)
5)溶かしバターかオリーブオイルを小さじ1ほど入れるとなめらかに。
6)バターかオイルを塗ったプリン型(100ccの器で6個分)に流し入れ、
  200〜250度のオーブンで10〜5分、180度で10分(けっこう適当)焼く

熟したバナナは甘みの天才。砂糖もはちみつも加えなくても十分な甘さを発揮してくれるので、安心して1歳児の朝食にできる。卵の殻が割れて中身が飛び出す瞬間が娘は大好きなので、一日一回限りのショーをかぶりつきの特等席で見せることも忘れない。イーストの発酵がいらず、混ぜて焼くだけの手軽さもありがたい。8時前に作り始めても朝ドラを見終わる頃には焼き上がる。焼きたてというのはそれだけで御馳走で、部屋の中が甘く香ばしいにおいで満たされると、いい一日が始まりそうな気がしてくる。

2007年04月15日(日)  鎌倉で大人の休日
2005年04月15日(金)  トンマズィーノでアウグーリ!
2002年04月15日(月)  イタリアンランチ


2008年04月14日(月)  マタニティオレンジ268 三浦太郎の絵本で所有格の「の!」

娘のたまが風邪で保育園を休んでいる間、長い一日を狭い家で過ごす「間」を持たせるのに苦労した。外を走り回らせれば疲れて昼寝してくれるのだけど、熱があるときは、その手が使えない。退屈すると「バーニー、み!」(Barneyのビデオを観る!)と言い出す。テレビをおとなしく観ていてくれる間に仕事ができるので助かるけれど、親の仕事を放棄しているようで気が引ける。

「テレビより絵本読もうよ」と言うと、絵本を突っ込んだ紙袋からお気に入りの一冊を引っ張り出して来る。最近はまっているのが、『わたしの』。「おおきいいす ちゅうくらいのいす ちいさいいす わたしのどれかな?」と語りかけると、絵本の中の小さい椅子を指差してから、ダイニングにある自分の椅子を指差し、「の!」と得意げに言う。それから、目につく自分のおもちゃやシャツを次々と指差し、「の!」「の!」「の!」。所有格の「の」を覚え、手当たり次第に所有権を主張しているのが微笑ましい。

同じ作者・三浦太郎さんの『くっついた』と『なーらんだ』も楽しい本。作者のあとがきを読むと、自らの子育てが創作のヒントになっている様子。「くっついた」「なーらんだ」というシンプルな言葉の繰り返しは耳に心地よく、くっつくものや並ぶものの題材を選ぶセンスも洒落ている。

動物のシルエットを象ったバス停に動物の形をしたバスがやって来る『バスがきました』も、たまの心を鷲づかみ。「バスがきました」のフレーズが出てくるたびに「たー」と唱和し、「ぴょんぴょん」とうさぎになって跳ねたり、「ちゅーちゅー」とねずみになって鳴いたり、「ガオ」と両手でたてがみを作ってライオンになったり、大忙し。今のところ、わが家では、三浦太郎絵本はことごとく大当たり。

2007年04月14日(土)  京都の青春
2005年04月14日(木)  マシュー・ボーンの『白鳥の湖』
2002年04月14日(日)  おさかな天国

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