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2011年07月18日(月) |
【音楽】カラヤンの「伴奏」。 |
◆伴奏が出来ない(極度に下手な)指揮者がいるのです。
交響曲とか管弦楽曲は普通、オーケストラだけで演奏し、
その類の指揮はできるけれども、協奏曲などで、独奏者の伴奏をする
ということは、ピアノで伴奏者が、専門職(欧州の音大にはピアノ伴奏科があります)
であるのに似ていて、また、別の「技術」のようです。
伴奏が下手な指揮者と演奏すると、協奏曲の独奏者は非常に演りにくいそうです。
私の敬愛する、ヴォルフガング・サヴァリッシュ先生は、ピアノの名手で、
フィッシャー・ディースカウなど名歌手の伴奏を見事にこなしておられましたが、
その資質は、指揮者としても生きていたようです。
斜めから見たマエストロたちという本がありまして、著者の長谷恭男(はせ・たかお)氏は
長年、N響の事務局長を務めた方ですが、単なる事務局ではなく音楽に造詣が深いのです。
この本には、今や大先生ですがヴァイオリニストの前橋汀子さんが、サヴァリッシュ先生の伴奏(指揮)で、
メンデルスゾーンを弾いたときに、
こんなに弾きやすかったのは初めて。
と言っていたそうです。プロのヴァイオリニストの音は、想像以上に良く響きます。
皆さんのご自宅でプロが音を出したら、余りにも大きな音に驚く事でしょう。
しかし、それでもオーケストラの伴奏で弾くとなると、オーケストラの音量は
さらに大きいわけで(金管もティンパニもいるから、当たり前です)、
考慮せずに音を出されたら、独奏バイオリンなんか、吹っ飛んで(音が聞こえなくなって)
しまいます。
その辺のさじ加減(音量の問題だけではないですが、長くなるので省略します)を
良く心得ていない、伴奏が出来ない指揮者というのが、結構いるのですが、
カラヤンは、伴奏のときは、見事にソリストに合わせます。
再び余談になります。
ピアノの伴奏とオーケストラを指揮する伴奏と話が入り組んで恐縮ですが、
クライバーンで優勝して、一躍有名になった辻井伸行氏がまだ、さほど有名ではない頃に
ヴァイオリニストの川畠成道氏の伴奏をする企画があり、その練習の様子を
テレビドキュメンタリーで放送したことがあります。
余談の余談になりますが川畠成道氏については、以前、ブログに書きました。
2010.07.11 【追加】私が音楽記事を書く理由。/【音楽】ヴァイオリニスト、川畠成道氏のアルバムを薦めます。
さて。何を書こうとしているかというと。
その練習風景で既に、辻井君はプロのソリストに近いレベルに達していましたが、
それは、あくまでも「自分がソロを弾く」場合です。このとき、多分初めて「伴奏」を
経験したようで、音楽的にはずっと先輩である川畠氏に何度も止められて、
「あのね。ソリストがどういう風に弾きたいのか、を考えないとダメだよ」
と伴奏者の初歩的な「心構え」に関して再三注文をだされていました。
それを見て、私は改めて「ああ、やはり伴奏というのは、本当は専門職(専門的技能)なのだな」と
思ったのを良く覚えています。自分でピアノを弾いて伴奏するのが既に難しいのですから、
自分が弾かないで他人に音を出させて伴奏する指揮者はより一層難しいはずです。
◆アンネ・ゾフィー・ムター:モーツァルトヴァイオリン協奏曲
アンネ・ゾフィー・ムターは今や、ベテランです。
調べたら、1963年生まれだから、私より3歳年下ですが、まあ、この年になると
同い年も同然。
その彼女の才能を見出したのがカラヤンです。
カラヤンなくしては、ムターは現在ほどの「大家」になっていなかったでしょう。
モーツァルト:ヴァイオリン協奏曲第3、5番がムター15歳のときのデビューです。
ジャケットの写真。カラヤンから何か指示を受けているのに、「プイ」という
表情の少女時代のアンネ・ゾフィー・ムターが可愛いですね。この中から、
まず、ヴァイオリン協奏曲第3番の第一楽章です。
モーツァルト ヴァイオリン協奏曲 第3番 ト長調 K.216 第一楽章
Mozart Violin Concerto No.3 G major K.216 1st Movement Allegro
ウーム。こうして聴いてみるとやはり天才ですね。モーツァルトのヴァイオリンコンチェルトは
技術的には、後世のパガニーニとかヴィエニアフスキーとか、プロコフィエフなどに比べれば
易しいでしょうが、そういう問題ではなくて、モーツァルトって子供には普通わからないんですね。
ムターはカデンツァまで含めて聴くと、既に大人のモーツァルト作品への理解と同じレベルであることが
分かります。指が回るところを聴かせたいのなら、もっと難しいのを選べば良いのですが、
カラヤンも、多分、ムターの既に成熟した感性、音楽性に着目して、敢えてモーツァルトを
録音したのでしょう。
次は、モーツァルトのヴァイオリン協奏曲は3,4,5番が普通、コンサート・プログラムに載ります。
オーケストラのヴァイオリンのオーディションにも必ず、これが含まれますが、
5番の第三楽章。「トルコ風」と言われています。
モーツァルト ヴァイオリン協奏曲 第5番 イ長調 K.219 「トルコ風」 第三楽章
Mozart Violin Concerto No5 A major 3rd Movment
トルコ風ってのは、当時ヨーロッパで「トルコ風」のエキゾチシズムが流行したそうで、
音楽でも取り入れられています。リズムに現れます。文字で書くと、何だか幼稚なんですが。
ドン。ドン。ドン・ドン・ドン。
となります。今のヴァイオリン協奏曲5番だと、この部分ですね。
モーツァルト ヴァイオリン協奏曲 第5番「トルコ風」の部分。
Mozart Violin Concerto No.5 Excerpt "Turkish"
このリズムは、皆さん御存知の、モーツァルトのピアノソナタ11番「トルコ行進曲」にも出て来ます。
ピアノソナタ11番「トルコ行進曲」より
Mozart Piano Sonata No.11 Turkish March Excerpt
ベートーヴェンの「トルコ行進曲」。この演奏テンポが遅いのですが、最初から
このリズムで書かれています。
ベートーヴェン「トルコ行進曲」より
Beethoven Turkish March Excerpt
というわけで、話が逸れましたが「トルコ風」の説明でした。
◆「奇跡のホルン」デニス・ブレイン、モーツァルトホルン協奏曲の伴奏。
デニス・ブレインは若くして交通事故で亡くなった、イギリスのホルン奏者で
今なお、世界音楽史上、最高のホルン奏者と言われています。「神様」です。
カラヤンはEMIでフィルハーモニア管弦楽団(デニスはこのオーケストラの首席ホルン奏者でした)
を指揮して、モーツァルトのホルン協奏曲全四曲を録音しています。
CDはモーツァルト:ホルン協奏曲全集です。
これ、本当に残念なのですが、この録音は1950年代で、確かに音源は古いのですが、
どういう訳か、アナログレコードの方が音質が良かったのです。
私の世代というのは、かなり損をしてまして、アナログレコードを結構買い集めたときに
世の中にCD(コンパクト・ディスク)が登場し、全てCDで同じ録音を買い直しているわけです。
それは良いとしても、1950年代の録音でも音質が保たれている物もあるのですが、
この、「カラヤン=デニス・ブレイン」はCD化されたら、ひどく音質が悪くなった典型です。
こんな、モノラルに聞こえなかったのですけどね。アナログの頃は。
残念でなりません。
それは、さておき、カラヤンは、ここでもホルンが際立つ、名伴奏をしています。
モーツァルト ホルン協奏曲 第4番 変ホ長調 K.495 第一楽章
Mozart Horn Concerto No.4 E♭ major 1st Movement
音質云々を通り越して、やはりデニス・ブレインの音の「コントロール力」とでもいいましょうか。
絶対間違えそうにない、完璧な演奏ですね。どの音も完全になっているし、音が跳躍してもブレることが
ありません。夭逝したのが残念です。
◆モーリス・アンドレ(トランペット)の伴奏をしたこともあります。
トランペット協奏曲集は、、1974年の録音。珍しくベルリン・フィルなのにEMIから出てます。
モーリス・アンドレ、カラヤン、ベルリン・フィルいずれも全盛期と言っていい。
この「レコード」が出たときは嬉しかったですねえ。
モーリス・アンドレは、やはり、天才です。ラッパを吹くために生まれてきた人としか
考えられません。
そのモーリス・アンドレが、カラヤン=ベルリン・フィルの伴奏で
クラシックトランペットを勉強する者で、知らないということは絶対にあり得ない、
フンメルのトランペット協奏曲その他を録音しているのですから、たまりません。
アナログレコード時代に既に何百回もききましたが、
CD化されてからも何百回聴いたか分かりません。
これまで、何度か華やかな第三楽章ばかりを載せましたが、
今日はフンメル全曲をお聴き頂きます。
フンメル トランペット協奏曲 変ホ長調 第一楽章
Hummel Trumpet Concerto 1st Movement
フンメル トランペット協奏曲 変ホ長調 第二楽章
Hummel Trumpet Concerto 2nd Movement
フンメル トランペット 協奏曲 変ホ長調 第三楽章
Hummel Trumpet Concerto 3rd Movement
最後は、全く私の好みを反映させてしまいましたが、
ピアノ協奏曲、ヴァイオリン協奏曲は、放っておいても皆聴くのです。
そして、吹奏楽少年少女は、トランペット協奏曲、ホルン協奏曲を知っていたとしても
(知らない子が多いらしいですが)、ヴァイオリン協奏曲なんて、聴こうとしないでしょう。
だから、こういう組み合わせにしました。
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2010年07月18日(日) 【演奏会評】東京音大付属音楽教室(辻井伸行氏もここの出身) 発表会。2回目。
2009年07月18日(土) 【音楽】カラヤン(続):バッハ(ブランデンブルク)、ウェーバー(序曲)、チャイコフスキー(バレエ曲)
2008年07月18日(金) 竹島問題に関しては、公平に見て韓国人は狭量だ、と思います。
2007年07月18日(水) 「同時通訳者の草分け、西山千さんの努力と自省」(週刊新潮 7月26日号 P125「墓碑銘」)←あの嫌味な「週刊新潮」が絶賛。/バッハ。
2006年07月18日(火) お薦めCD。今日は4枚一度に書きます。
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2003年07月18日(金) 病気や病人を理解しようとしない者は怠け者である。