JIROの独断的日記 DiaryINDEX|past|will
◆記事1:那覇地検の説明要旨(共同通信)(2010/09/24 17:54) 当庁は本日、公務執行妨害容疑で拘置していたセン其雄船長を、処分保留のまま釈放することを決定した。 ◆記事2:検察判断で釈放決定、政府は追認…官房長官(読売新聞 9月24日(金)22時34分配信) 仙谷官房長官は24日夕の記者会見で、「検察が捜査を遂げた結果、処分保留という現在の判断で身柄を釈放するという報告を受けたので、 ◆記事3:邦人調べ、中国政府から通報=漁船衝突との関連否定―仙谷官房長官(時事通信 9月24日(金)10時28分配信) 仙谷由人官房長官は24日午前の記者会見で、中国で準大手ゼネコン・フジタの日本人社員4人が拘束されたことについて、 ◆コメント:すべて裁判官は、その良心に従ひ独立してその職権を行ひ、この憲法及び法律にのみ拘束される。(日本国憲法第76条第3項) コメントのタイトルに憲法の条文を用いたことはあまりないが、本来、これが全ての「有るべき姿」を示している。 今後の日中関係を考慮すると、これ以上身柄の拘束を継続して捜査を続けることは相当でないと判断した。 のが本当ならば(この決定が政治的圧力と無関係に為された、と本気で信じるのは、かなりオメデタイ人だ)、 憲法76条3項に反している。「裁判官は良心に従って、憲法と法律のみに拘束される」べきであり、 「今後の日中関係を考慮」すること自体が間違っている。それは政治的・外交的事項であり、 政府(行政府)の問題であり、司法が日中関係を考慮してはいけないのである。 しかし、これは司法だけの問題ではないだろう。 記事2で官房長官が強調しているのは、内閣(行政府)が検察(司法)に圧力をかけて、 中国船長を釈放するように命じたわけではない、というのだが、到底信じられない。 三権分立は近代国家の基本だが、それは理想であり、日本だけではなく、完全に司法が独立している、と言いきれる国は少ない。 日本は、そもそも憲法第六章「司法」(第76条から第82条)を読めばすぐに分かるが、実質的には 「二権分立」である。 最高裁判所長官を「任命」するのは天皇ですが、候補を提示するのは内閣である。 日本国憲法 第6条 第2項 天皇は、内閣の指名に基いて、最高裁判所の長たる裁判官を任命する。 そして、最高裁長官以外の裁判官の任命権は、行政府たる内閣にある。 第79条 第1項 最高裁判所は、その長たる裁判官及び法律の定める員数のその他の裁判官でこれを構成し、その長たる裁判官以外の裁判官は、内閣でこれを任命する。 地裁、高裁の裁判官も、内閣が任命する。 第80条 第1項 下級裁判所の裁判官は、最高裁判所の指名した者の名簿によつて、内閣でこれを任命する。(以下略) 今日、中国人船長の釈放を決定したのは検察だが、その長たる検事総長の任命権も内閣が持っている。 検察庁法 第15条 第1項 検事総長、次長検事及び各検事長は一級とし、その任免は、内閣が行い、天皇が、これを認証する。 裁判官は内閣が任命するけれども、憲法を読む限り、罷免権(辞めさせる権限)を持っていないが、実際はそれほど簡単ではない。 中国人船長の釈放から話が逸れるが、国家が敗訴するような判決を下した裁判官が、 その後、家庭裁判所などに回され、一生ドサ回りをさせられ、二度と裁判官席で判決文を読むことなく 生涯を終えた、という類の話は、知っている人は知っている。司法は行政から独立していると言えない。 今日の那覇地検の決定に、政府(内閣=行政府)から何も圧力がなかったとは到底信じられない。 だとしたら、行政府の意気地のなさが、この国辱をもたらしたのである。 どのように言い回しを変えようが、世界のどこから見ても、日本が中国の圧力・脅迫に屈して、 国内法に則った正規の取り調べを途中で放棄し、中国人船長を解放した、と解釈されるであろう。 しかし、検察が、フジタ社員拘束の件が明らかになったから、中国人船長解放を決めたとは考えにくい。あまりにも速すぎる。 恐らく、日中間の水面下の交渉で、今日、那覇地検が船長を解放する「握り」になっていたのであろう。 中国は、恐らくその時には何も言わず、予め、船長が解放される前日に、フジタの日本人社員4人を拘束したのだろう。 それによって、「日本に勝った」優越感を中国国民にアピールすることが出来る。 中国の何も知らない一般庶民は、これで暫く、反政府運動を起こさないだろう。 それが中国の狙いである。対日外交の弱腰は、中国国内で容易に反政府運動に結びつくからである。 外交に関して海千山千の欧米諸国ならば、こういう時に、相手から交換条件を引き出すはずである。 つまり、今回の件なら、船長を解放して、「中国が勝った」感をあたえてやるから、その替わり北朝鮮をなんとかしろ、 とか、一方的なこちらの譲歩では終わらない筈である。日本政府の外交筋も、もしかすると、裏取引で 何らかの「日本にとっていいこと」を約束させているかもしれない、と考えたいが、 全然、何も無くて、これが全てだとしたら、世界の笑いものになるであろう。 【読者の皆様にお願い】 是非、エンピツの投票ボタンをクリックして下さい。皆さまの投票の多さが、次の執筆の原動力になります。画面の右下にボタンがあります。よろしく御願いいたします。
2009年09月24日(木) 「情報源としての他人」の「使い方」。
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