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JIROの独断的日記
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2010年09月24日(金) 司法が「今後の日中関係を考慮」しては、ならない。

記事1:那覇地検の説明要旨(共同通信)(2010/09/24 17:54)

当庁は本日、公務執行妨害容疑で拘置していたセン其雄船長を、処分保留のまま釈放することを決定した。

さらに確認すべき事項もあり、手続きにも時間を要するので釈放の具体的日時等は未定。

事件については、ほかの検察庁から応援をいただくなどして万全の捜査態勢を組み、本日まで石垣海上保安部とともに捜査を行った。

これまで収集した証拠によっても、わが国の領海内で適正な職務に従事していた石垣海上保安部所属の巡視船「みずき」に乗船していた

海上保安官らから停止を求められた際、セン船長が、操船していた漁船の左舷側約40メートルの海域を並走していた「みずき」に向けて左に急転舵して、

故意に同漁船左舷船首部を「みずき」右舷船体中央部等に衝突させたことは明白だ。


また、セン船長の行為は「みずき」に航行障害を発生させる恐れや、

「みずき」甲板上の乗組員らが海に投げ出される恐れがある危険な行為だった。

他方、「みずき」に現実に発生した損傷は、ただちに航行に支障が生じる程度のものではなく、

また、幸い「みずき」乗組員が負傷するなどの被害の発生もなかった。

セン船長はトロール漁船の一船長で、本件は「みずき」の追跡を免れるためとっさに取った行為と認められ、

計画性等は認められず、かつ、セン船長には、わが国における前科等もないなどの事情も認められる。

加えて、引き続きセン船長の身柄を拘置したまま捜査を継続した場合のわが国国民への影響や、今後の日中関係を考慮すると、

これ以上身柄の拘束を継続して捜査を続けることは相当でないと判断した。セン船長の処分は今後の情勢を踏まえて判断する。

なお、この件については、本日、福岡高検及び最高検と協議の上で決したことである。


記事2:検察判断で釈放決定、政府は追認…官房長官(読売新聞 9月24日(金)22時34分配信)

仙谷官房長官は24日夕の記者会見で、「検察が捜査を遂げた結果、処分保留という現在の判断で身柄を釈放するという報告を受けたので、

それはそれとして了とした」と述べ、検察の判断で釈放を決め、政府はそれを追認したと強調した。

検察が釈放理由に外交的な配慮を挙げたことについては、

「検察官が総合的判断の下に処分を考えられたとすれば、そういうこともあり得る」と語った。

中国側がフジタの社員4人を拘束したこととの関連については、「結びつけるのは強引過ぎる」と述べた。

「粛々と国内法に基づいて手続きを進めた結果だ」と強調し、圧力に屈したという見方を否定した。

さらに、

「日中関係が悪化する兆候が見えてきたことはまがう事なき事実だ。日中の戦略的互恵関係の中身を豊かに充実させる方途を、

両国とも努力しなくてはならない」

と語り、関係改善への期待を示した。

柳田法相は24日、「法と証拠に基づいて適切に判断したものと承知している。指揮権を行使した事実はございません」とする談話を発表した。

しかし、野党からは「中国の圧力に屈した印象を持たれるのはよくない」(谷垣自民党総裁)という批判の声が上がっている。

沖縄の米軍普天間飛行場移設問題を巡って日米同盟関係が揺らぐ中、中国に足元を見られたという指摘もある。


◆記事3:邦人調べ、中国政府から通報=漁船衝突との関連否定―仙谷官房長官(時事通信 9月24日(金)10時28分配信)

仙谷由人官房長官は24日午前の記者会見で、中国で準大手ゼネコン・フジタの日本人社員4人が拘束されたことについて、

中国政府から23日夜、中国の軍事施設保護法と刑事訴訟法に基づき、4人を河北省石家荘市で居住監視していると

通報があったことを明らかにした。その上で「詳細は中国大使館を通じて確認中だ」と述べた。

沖縄県・尖閣諸島沖での中国漁船衝突事件との関係については「適用法令からすると関連はないと考えている」と語った。


◆コメント:すべて裁判官は、その良心に従ひ独立してその職権を行ひ、この憲法及び法律にのみ拘束される。(日本国憲法第76条第3項)

コメントのタイトルに憲法の条文を用いたことはあまりないが、本来、これが全ての「有るべき姿」を示している。

即ち、「司法の独立」を定めているのがこの条文である。


司法は、憲法と法律に則り(のっとり)、それ以外のこと(政治・外交)を考慮すべきではない、という意味である。

従って、記事1で那覇地検が、中国漁船の船長を釈放した根拠として、

今後の日中関係を考慮すると、これ以上身柄の拘束を継続して捜査を続けることは相当でないと判断した。

のが本当ならば(この決定が政治的圧力と無関係に為された、と本気で信じるのは、かなりオメデタイ人だ)、

憲法76条3項に反している。「裁判官は良心に従って、憲法と法律のみに拘束される」べきであり、

「今後の日中関係を考慮」すること自体が間違っている。それは政治的・外交的事項であり、

政府(行政府)の問題であり、司法が日中関係を考慮してはいけないのである。


しかし、これは司法だけの問題ではないだろう。

記事2で官房長官が強調しているのは、内閣(行政府)が検察(司法)に圧力をかけて、

中国船長を釈放するように命じたわけではない、というのだが、到底信じられない。


三権分立は近代国家の基本だが、それは理想であり、日本だけではなく、完全に司法が独立している、と言いきれる国は少ない。

日本は、そもそも憲法第六章「司法」(第76条から第82条)を読めばすぐに分かるが、実質的には

「二権分立」である。


最高裁判所長官を「任命」するのは天皇ですが、候補を提示するのは内閣である。
日本国憲法 第6条 第2項 天皇は、内閣の指名に基いて、最高裁判所の長たる裁判官を任命する。

そして、最高裁長官以外の裁判官の任命権は、行政府たる内閣にある。
第79条 第1項 最高裁判所は、その長たる裁判官及び法律の定める員数のその他の裁判官でこれを構成し、その長たる裁判官以外の裁判官は、内閣でこれを任命する。

地裁、高裁の裁判官も、内閣が任命する。
第80条 第1項 下級裁判所の裁判官は、最高裁判所の指名した者の名簿によつて、内閣でこれを任命する。(以下略)

今日、中国人船長の釈放を決定したのは検察だが、その長たる検事総長の任命権も内閣が持っている。
検察庁法 第15条 第1項  検事総長、次長検事及び各検事長は一級とし、その任免は、内閣が行い、天皇が、これを認証する。

裁判官は内閣が任命するけれども、憲法を読む限り、罷免権(辞めさせる権限)を持っていないが、実際はそれほど簡単ではない。

中国人船長の釈放から話が逸れるが、国家が敗訴するような判決を下した裁判官が、

その後、家庭裁判所などに回され、一生ドサ回りをさせられ、二度と裁判官席で判決文を読むことなく

生涯を終えた、という類の話は、知っている人は知っている。司法は行政から独立していると言えない。

今日の那覇地検の決定に、政府(内閣=行政府)から何も圧力がなかったとは到底信じられない。

だとしたら、行政府の意気地のなさが、この国辱をもたらしたのである。


どのように言い回しを変えようが、世界のどこから見ても、日本が中国の圧力・脅迫に屈して、

国内法に則った正規の取り調べを途中で放棄し、中国人船長を解放した、と解釈されるであろう。


しかし、検察が、フジタ社員拘束の件が明らかになったから、中国人船長解放を決めたとは考えにくい。あまりにも速すぎる。

恐らく、日中間の水面下の交渉で、今日、那覇地検が船長を解放する「握り」になっていたのであろう。

中国は、恐らくその時には何も言わず、予め、船長が解放される前日に、フジタの日本人社員4人を拘束したのだろう。

それによって、「日本に勝った」優越感を中国国民にアピールすることが出来る。

中国の何も知らない一般庶民は、これで暫く、反政府運動を起こさないだろう。

それが中国の狙いである。対日外交の弱腰は、中国国内で容易に反政府運動に結びつくからである。


外交に関して海千山千の欧米諸国ならば、こういう時に、相手から交換条件を引き出すはずである。

つまり、今回の件なら、船長を解放して、「中国が勝った」感をあたえてやるから、その替わり北朝鮮をなんとかしろ、

とか、一方的なこちらの譲歩では終わらない筈である。日本政府の外交筋も、もしかすると、裏取引で

何らかの「日本にとっていいこと」を約束させているかもしれない、と考えたいが、

全然、何も無くて、これが全てだとしたら、世界の笑いものになるであろう。

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