其の記憶が、 欠落するとしても。
其の感覚は、 保たれるのだろうか。
其の機能を、 忘れて居たとしても。
其の刺激が、 想い出させるのだろうか。
想像する事すらも。
持たぬ者には、 難しいのだけれど。
少なくとも。
持つ者に、 真摯に向き逢い続けた、 其の想いを。
一つ、 一つ。
言の葉を選ぶ、 縁に据える。
あの子は。
「私の消えた五年の記憶の中に。」 「子供が絡む事があった?」 「何か大事な事を忘れているのかも。」
俺には見えぬ、 幼児の姿に気づき。
「女の子でしょ?俺との子。」 「残念だけれど産まれて来られなかった。」 「八月十四日が誕生日で。」 「命日で。」 「そして病気が分かった日だよ。」
選んだ言の葉を、 文にして。
孵した。
月が、 満ちて居るから。
きっと。
其の力が、 強まって居るんだね。
---------- References Feb.28 2015, 「現世への寄す処でしょうか」 Dec.01 2012, 「触れられぬ温もりでしょうか」 Sep.18 2012, 「見て居なかったのだと斬り付けるのですか」 Sep.14 2012, 「選択では無く廃棄でしょうか」 Aug.14 2012, 「禁句が幾つ見付かるでしょうか」
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