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JIROの独断的日記
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2013年07月24日(水) 【音楽・映像】とっくに過ぎてしまいましたが、7月16日はカラヤン(1908-1989)の命日でした。

◆書きたかったのですが、参議院選挙直前で、書き損ねました。

選挙まで残り数日だというので、主にアンチ安倍政権記事を書いておりましたが、

本当は、音楽について書いた方が楽しいに決まっております。


政治家は何か(安倍首相ならば、憲法改正など)「どデカい」ことをして「歴史に名を残し」たい、

という、気持ちが、大変強いようですが、残したいと思っている人は、大したことないですね。


美しい音楽を書いたり、優れた演奏をした音楽家は、放っておいてもいつまでも、語り継がれます。

カラヤンは、あまりにも録音が多いので、「カネの亡者」のようにいう「アンチ」も多いですが、

優れた人には、ファンと同様、アンチが多いというものです。


◆「ドキュメント・カラヤン・イン・ザルツブルク」を薦めます。

カラヤンは、50年台から80年台に活躍した他のどの指揮者よりも、新しい物に興味を持ち、

オペラの映像を残すという発想は普通ですが、単なるオーケストラコンサートの映像が沢山があります。

後でそれはお見せしますが、あの人、目をつぶって指揮するのも一因でしょうが、どうも「ナルシスト」の誤解を

受けやすい。指揮姿だけを見ているとわかりません。


過去に弊ブログで何度も取り上げましたが、カラヤンのプライベートな映像も含む、DVD、

ドキュメント カラヤン・イン・ザルツブルク [DVD]

を、是非ご覧下さい。「帝王カラヤン」のイメージが一変します。

これは、まず、音楽とは全然関係ない。

こちらも一昨年、他界されましたが、SONYの大賀典雄(おおが のりお)氏(1930-2011)とカラヤンは、

音楽、音楽関連事業でも、プライベートでも気が合いました。とりわけ、二人とも自家用ジェット機を操縦し、

無類のクルマ好きでした。

これは、カラヤンが「最新モデルのポルシェを注文したよ」と大賀さんに嬉しそうに話す場面。

音楽家で有る以前に「男の子」としてのカラヤンの表情が微笑ましいです。


大賀さんとクルマ談義のカラヤン。






日本にいるときは、何だかいつも「デーン」と威張っていた(失礼!)大賀さんですが、流石にカラヤンには、

大賀さんなりに、ご機嫌取りをしているのが、可笑しいです。注文した、新型のボルシェは、

「停止状態から時速100キロに達するまで、わずか3秒だ」というカラヤンに、大賀さんが「3秒?3秒ですか?」と

大袈裟に驚いてみせるところですね。

余談ですが、大賀さんとカラヤンはしばしば顔を合わせていたので、カラヤンが心臓発作を起こして亡くなる

正にその一部始終を大賀さんは見ていて、あまりの非常事態に自分も血圧が上がったか、具合が悪くなり、しばらく、

カラヤン邸で横にならせて貰った話などを数ヶ月後、「文藝春秋」に書いていました。


◆声楽家の喉を気遣うカラヤン。

今や、韓国の大先生、ソプラノのスミ・ジョーですが、今の彼女がある原点というか、運が回ってきた、まさにその瞬間だとおもいます。

カラヤンの部屋を訪れ、ピアノ伴奏で、バッハ「ロ短調ミサ」のリハーサルをしていながら、カラヤンはすっかり

スミ・ジョーが気に入ります。次は何を演るんだ?とカラヤンに訊かれたスミ・ジョーが、モーツァルト「魔笛」の

「夜の女王」を歌うけれども、指揮者もオーケストラも何も知らないという。カラヤンは、呆れますが、

「今すぐ歌ってみろ」というのです(最もキツい第二幕「復讐の心は炎のように胸に燃え」ではなく、第一幕のアリア)。


BachMassHmoll.BWV 232






カラヤンが呆れたのは、魔笛の第二幕、有名なソプラノのアリア「復讐の心は炎のように胸に燃え」はソプラノの通常のレパートリーで最も

高いFを出すことを要求される。喉への負担が非常に大きいのに、スミ・ジョーに訊いたら、指揮者もオーケストラも知らない、

マネージャー任せだ、というので、「あれは、大変喉に負担を掛ける曲なのだから、歌うからには、自分でキチンと管理しないといけないよ?」ということ

だと思います。

今回は載せませんが同じDVDの中で、ジェシー・ノーマンという歌手が別の場所で本番を終えてリハーサルに来るのですが、

カラヤンは、ノーマンが、前のステージで喉を酷使して、疲れているのを一瞬で見抜き、「今日は見ているだけで、声は出さなくていい」という、

場面があります。ジェシー・ノーマンが喉を痛めないための配慮です。


◆ウィーン・フィルの「タンホイザー序曲」のリハ、ウィーンフィルでも、カラヤンが訊くと即座に「合っていない」と。

これは、1987年ザルツブルク音楽祭へ向けてのリハーサル。ワーグナー・ライヴ・イン・ザルツブルクに収録されたコンサートに向けてのリハーサルです。

タンホイザー序曲など、ウィーン・フィルなら「寝てても弾ける」のか、と思いきやとんでもない。

主旋律のウラで細かい動きをする弦楽器が、ピタリと合っていない、そのことをわずか6秒で、カラヤンは指摘します。


TannhauserOvertureRehearsal(1/2)





白状いたしますと、カラヤンの指摘箇所、私は最所、全くわかりませんでした。カラヤンの言葉をたよりに更に何度も聴いて、

漸く、そういえば、下降音型の最後の2つの音から少し、なんとなく合わないかな?と思える程度。


次は、タンホイザー序曲の終わり近く、盛りあがるところです。


TannhauserOvertureRehearsal(2/2)





これは、金管の主旋律と弦楽器の先ほど分奏練習で「合わない」と指摘したような所、カラヤンは多分で全部聞こえているのでしょうね。

こういう能力は、訓練も必要ですが、、かなりの部分は、天賦の才だとおもいます。誰もが、努力すればこのような指揮者になれるわけではない。


最後近くの和音で「ここで疲れてはダメだよ」というカラヤンですが、ここは、トロンボーンに混じって聞こえませんがトランペットも吹きます。

真ん中のドより6音ひくい「ミ」の音がで来るので、これは変ロ管しか、選択余地がありません。そこから、2オクターブ以上高いソのシャープまで

上がるので、なかなか馬力が大変です。

力で吹いてはだめですね。大勢が力を抜いて漸く美しい音になる。

これは、ウィーン・フィルですけど、音楽監督を長く務めたベルリンフィル。そのコンサートマスター安永徹さんが、

インタビューに答えて仰有っていましたが、カラヤンがベルリン・フィルを訓練した出来たことは、色々あるが、分かり易いのは、

ダイナミックレンジの広さだ、と。つまり最弱音から最強音までの音量の幅の広さだ、と、意外に単純なお話だったのですが、

こうしてみると、オーケストラではそれが如何に大事か、が何となく分かるように思います。


では最後に、その本番。ワーグナー・ライヴ・イン・ザルツブルクから。


ワーグナー:歌劇≪タンホイザー≫ 序曲


歌劇≪タンホイザー≫ 序曲


これも、毎年書くのですが、カラヤンは、やはり名マエストロだったと思います。

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