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2013年02月05日(火) |
NHK 時論公論「原発新安全基準 厳格に適用を」 水野倫之解説委員(1月31日(木)放送))文字起こし。 |
◆時論公論「原発新安全基準 厳格に適用を」 水野倫之解説委員 (1月31日放送)
(文字起こし開始)
こんばんは。
原子力規制委員会の専門家会合は福島第一原発事故を教訓に
過酷事故やテロ対策まで電力会社に新たに義務づける、原発の新しい安全基準の骨子をきょう、正式に決めました。
これとは別に地震と津波対策を強化した基準の骨子もまとめており、あわせて今後国民から意見を聞いた上で、7月に新基準として施行する方針です。
しかし、規制が厳しくなることに、再稼働を急ぎたい電力会社からは異論も出ており、一部の対策には猶予期間をもうけることも検討されています。
これで、地に墜ちた原子力の信頼回復につながるのか。今夜の時論公論は、新しい基準のポイントと、その課題を考えたいと思います。
福島第一原発の事故では、津波ですべての電源が失われて、燃料が溶け、
格納容器の圧力を下げるベントにも手間どって、容器が破損し、大量の放射性物質が放出される、
世界最悪レベルの事故となりました。
安全基準が破綻していたことが明らかになり、原子力規制委員会は、専門家による基準の見直しの議論をすすめ、
今日、その骨子を正式に決めました。
まず、通常の事故対策として、電源喪失に備えて、24時間以上保つバッテリーをおくことや、
火災対策として燃えにくいケーブルを使うこと、そして複数の空調設備を備えた免震重要棟を
そなえることなどを義務づけています。
そして今回はこれにとどまらず、これまで義務づけられていなかった
「過酷事故対策」や「テロ対策」を初めて義務づけているのが最大の特徴です。
まずは、格納容器の圧力を下げるベント装置です。
これに放射性物質を取り除くフィルターを付け、福島第一原発と同じ沸騰水型では、二系統を設置することを義務づけます。
また、テロなどによる航空機の衝突で、原子炉建屋が大規模に壊れた場合にも、原子炉を冷却したり状態を監視できる、
「特定安全施設」と呼ばれる施設の設置ももとめています。
このうち、ベント装置については、格納容器が小さい沸騰水型の原発の多くは電力会社が自主的に取り付けていて、
東京電力も今回の事故で作動させています。
しかし、フィルターがついておらず、住民の被曝を避けるため、避難の確認をする作業に手間取ったこともあり、
結局、格納容器の蓋が破損し、大量の放射性物質の放出や、水素爆発につながりました。
ベントのフィルターは、大型のタンクの中に入った大量の水や砂などで放射性物質を濾過する仕組みです。
放射能濃度は1000分の1以下となって周辺住民の被曝をおさえることができ、ベントを素早く開始して格納容器を守り、
放射性物質の大量放出を防ぐことが期待できます。
チェルノブイリ型事故の後、ヨーロッパ各国では義務づけられましたが、
日本では電力会社が採用しようとしませんでした。今回、ようやく世界標準にたどりついたともいえますが、
信頼性を高めるために、沸騰水型で二系統設置を義務づけ、多重性を確保している点は、評価できると思います。
また、特定安全施設は、原子炉建屋にある冷却装置などとは別に、新たに建屋の外に設置する安全施設で、
メルトダウンで格納容器などに落ちた燃料に注水できるポンプや、非常用電源などを備え、
緊急冷却できるようにします。
また、中央制御室が使えなくなった場合に備え、原子炉を監視できる第二制御室の設置も求めています。
施設は航空機が墜落しても壊れないことが条件で、壁を頑丈にしたり、建屋から100メートルほど離して設置しなければなりません。
こちらもすでにヨーロッパの一部の原発には導入済みの設備で、規制委員会の要求は、全般的には妥当だと思います。
しかし、電力会社からは「厳しすぎる」として、異論が噴出しています。
特定安全施設は、配管が長くなると水漏れのリスクもあり、100メートルも離す必要はない、としたり、
フィルター付ベントも、信頼性が高く一基あれば十分であると。
また免震重要棟にはマスクもあることから、放射性物質を除去する空調は複数必要無いなどと主張しています。
新基準に適合するためには、大規模な工事が必要となり、電力会社は多額のコスト負担を迫られるだけでなく、
再稼働の時期にも影響するからです。
さらに電力会社は、規制委員会が今週まとめた、地震と津波の新しい基準にも対応しなければなりません。
原発ごとに、海底地形などから、起こり得る最大の津波を計算して防潮堤などの設置を義務づけているほか、
活断層もこれまでよりも年代を拡げ、活動の時期を40万年前までさかのぼって調べることを求めています。
防潮堤の設置にはかなり時間がかかり、敷地の活断層調査も容易ではありません。
規制委員会の安全審査も一基あたり半年はかかるとみられ、このまま基準が厳格に適用されれば、
夏以降、日本が再び原発稼働ゼロになるのは確実と思われます。
電力会社としては、火力発電にかかる燃料代を抑えるためにも、少しでも早く原発を再稼働させたいわけで、
一部の設備について設置まで猶予期間を求める声も上がっており、規制委員会も今後検討する方針を示しています。
ただ、今回の基準の骨子は、日本の原発が、過酷事故に対する備えがなく
事故の拡大を防げなかったことを反省してつくられたわけです。
新基準で求められる設備は、事故を起こした日本の原発に必要不可欠なもの、と捉えるべきだと思います。
電力会社は、この基準以上に独自の安全対策を考えていって然るべきで、
事故を経ても、いまだに意識は変わりきっていないようにも見えます。
ここで重要なのは、去年の大飯原発の再稼働のときのように、重要な施設を先送りしたままの再稼働判断をしてはならない、
ということです。当時の野田政権は、免震重要棟や防潮堤などは、時間がかかるとして、
計画を示すだけで再稼働を認める政治判断をし、国民の批判も招きました。
現在の安倍政権は、原発の依存度を下げていくとしながらも、野田政権の「原発ゼロ」の方針を見直すことを表明し、
3年で全ての原発の再稼働に結論を出すとしています。
ただ、規制委員会は独自性の高い組織で、政権の方針や電力会社の経営に左右されることなく、
科学的・技術的に判断していくことが求められます。
前回と同じように例外を多く認めてしまえば、せっかくの基準が骨抜きとなってしまい、
信頼回復にはつながらない、と思います。
規制委員会は、新しい基準を厳格に適用して安全を確保していくべきだと思います。
そして、そのためにも、規制委員会の体制を強化していくことが必要です。新基準によって、
新しい設備の検査が増えるほか、活断層の有無など、難しい判断が迫られます。
しかし去年、各地の原発の放射性物質の拡散予測図の策定にあたって、規制委員会は、
電力会社から提供された自らチェックしようとせず、作業を所管の法人にほぼ丸投げし、ミスを連発するなど、
体制が弱いことが露呈しました。 また、大飯原発の活断層調査も長期化しています。
規制機関の職員は、電力会社の技術者と同等か、それ以上の知識がないと、問題点を指摘することが出来ません。
今後、設備の検査や、活断層に関して多くの専門的知識が必要となるわけで、
検査官に資格制度を設けたり、外部から専門性をもった職員を新たに採用するなど、
組織全体のレベルを高めていくことを検討する必要があると思います。
そして電力会社が今回の新しい基準をきちんと守っているかどうか、厳しく審査して安全性を判断し、
基準自体を実効性のあるものにしていって欲しいと思います。
(文字起こし終わり)
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