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2012年10月21日(日) |
明日(2012年10月22日)はフランツ・リスト、生誕201年です。 |
◆1810年前後というのは天才が大勢生まれておりまして・・・。
よく言われることですが、世の中不思議なもので、偉大な才能が出てくる時代には、
どういう偶然かワッと大勢の天才が一度にこの世にあらわれるのですが、同じ時期に生まれるわけですから、
寿命の差はありますけれども、亡くなるときには、また一斉にいなくなってしまい、その後数十年、
謂わば「凡人の時代」が続くのが、歴史の皮肉です。
明日が、ハンガリーのピアノの巨人、フランツ・リスト(1811〜1886)の誕生日ですが、
1810年頃というのは、メンデルスゾーン(1809年)、ショパン(1810年)、シューマン(1810年)も生まれています。
7歳年上(1803年)生まれにベルリオーズがいて、彼らは皆、友だちでした。
ものすごい「仲間」ですね。タイム・トリップできるものなら、この頃、皆、パリにいたのですけど、
どういう人達で、何を話していたのが、見てみたいものです。
本日の主題から話が逸れますが、ショパンなど、なんとなく悲惨なイメージがありますし、残っている写真を見ると
如何にも気難しそうですが、実は、案外面白い人で、モノマネが得意で、よく、リストやシューマンに
おい、お前、あいつの真似、やってみろよ。
などといわれていたそうです。彼はは紛れもなく、天才作曲家ですが、天才といえども、人間であります。
◆リストは、パガニーニの演奏を聴いて、プロの音楽家になる決心をしました。
御存知の通り、今や、リストの作品の中で最もよく知られている曲のひとつ、
「ラ・カンパネッラ」は、実は4回書いてます(3度書き直しているということです)。
今演奏される場合「ラ・カンパネラ」といえば、
『パガニーニによる大練習曲』第3番 嬰ト短調
を指しますが、題名から明らかなとおり、主題はパガニーニのヴァイオリン協奏曲第2番 ロ短調 Op.7 第三楽章から取っています。
解説によっては、パガニーニのこの曲を聴いて「感動した」リストが、主題を取り入れた、と書いてありますが、
フランツ・リストが音楽家になる決心をしたのは、パガニーニの演奏を聴いたからであります。
自分の人生を変えるほどの影響を受けたパガニーニの作品から、主題を取る。非常に自然です。
フランツ・リスト特集ですが、まず、パガニーニの原曲を聴いて頂きます。
音源は、パガニーニ:ヴァイオリン協奏曲第1番, 第2番 イリヤ・カーラー (Ilya Kaler)です。
パガニーニ:ヴァイオリン協奏曲第2番 ロ短調 第三楽章
Paganini Violin Concerto No. 2 in B minor, Op. 7, MS 48 III. Rondo a la clochette, " La campanella"
ヴァイオリンで表現される「鐘」が、透明で、実に美しいですね。
それでは、リストによる、ピアノ版です。
演奏は金子三勇士さんです。
Miyuji plays Liszt リスト:ピアノ曲集
『パガニーニによる大練習曲』第3番 嬰ト短調
La Campanella
この曲の何処がどのように難しいのか?をこれはNHKでしょうか。
専門家が解説しております。映像自体の埋め込みは不可なので、よろしければ、リンク先をご覧下さい。
(解説)La Campanella
◆目が回るほど、難しそうな曲(そんなのばっかりですけど)
リストの超絶技巧練習曲は、「これでもか、これでもか」というほど難しくて、
聴いているだけで、ときどき気が遠きなりそうですが、私が聴いた中で強烈だったのは、
グレゴリオ聖歌の「怒りの日」を題材とした、リストのピアノ独奏曲「死の舞踏」です。
まず、おおもとの、グレゴリオ聖歌「怒りの日」の最初をお聴き下さい。
グレゴリオ聖歌「怒りの日」より。
Dies irae
「怒りの日」は色々な作曲家が主題に使っていますが一番有名なのは、
ベルリオーズが「幻想交響曲」の終楽章(第五楽章)で、使う、最初にテューバが吹く、これです。
「怒りの日」(を元にした「幻想交響曲」終楽章の始めの方)
Symphonie fantastique Finale Excerpt
これをリストがピアノ曲にしてますが、これも何度か書き直しています。(大抵、最初のが難し過ぎて、少し易しくしているらしいのですが、
私が聴くと、一体どこが「易しい」のか、全く分かりません)。
これは、Naxosさんから出てます。
リスト:ピアノ曲全集 1 「サンサーンス:死の舞踏Op. 40(リスト編曲)」/「ユグノー教徒の回想」/死の舞踏(ピアノ独奏用編曲版)」/他
リスト:「死の舞踏」(S525 ピアノ独奏版)
LisztTotentanz S525
これ、「独奏用」って書いたでしょ? 私、この曲を生で聴いたことがありますが、
何だか人間業とは思えないです。でも、日本では音高生ぐらいで弾ける人が大勢いるそうです。
世の中、とてつもない才能の持ち主がいる所には、大勢いるようです。
◆ちょっと休憩というか。
リストの功績で見落とされがちなのは、19世紀ですからレコードなんかないわけで、楽譜は皆読めるし、ある程度、
音を鳴らすことが出来る。音楽家というのはそういう訓練をうけているわけです。
それでもやはり、実際に音として鳴ったものを聴くと違います。管弦楽曲を、いちいちオーケストラを雇って
弾かせて聴くのは、ものすごい大金持ちは別として無理ですから、リストがずいぶんピアノ独奏や連弾用に編曲したので
皆さん、助かったそうです。これは、博学の方から教わった、完全な「受け売りです。そういうので有名なのは、
リストがベートーヴェンの交響曲全曲をピアノ用に編曲したのがありますが、それはあまりにも有名なので、
これもNaxosさんで見つけて、レコード見つけるのが当時は大変でした。
海外から取り寄せるか(WEBER: Overtures (Piano Arrangement))
日本のAmazonで買えます。ウェーバー:ピアノ作品全集(5)- 序曲集(4手のためのピアノ編曲)
ウェーバーの序曲を4手(連弾)用に編曲したものです。
リスト編曲:ウェーバー:「アブ・ハッサン」序曲
リスト編曲:ウェーバー:「アブ・ハッサン」序曲
因みにこれは原曲はこういう感じです。
サヴァリッシュ=フィルハーモニア「ウェーバー序曲集」より。
ウェーバー:「アブ・ハッサン」序曲(原曲)
Abu Hassan(Original)
フランツ・リストから話が逸れますが、「アブ・ハッサン」序曲、いいでしょ?
ウェーバーの序曲の中では、「魔弾の射手」や「オベロン」が有名で、これは意外にしられていないのですが、
実は、演奏時間は一番短いのですが、楽器編成はティンパニ以外の打楽器を沢山使っていて、賑やかで楽しい曲です。
リストに話を戻りますが、他にもワーグナの「ニュルンベルグのマイスタージンガー前奏曲」などかなり色々な曲をピアノ用に
編曲してます。リスト:ピアノ作品全集 第33集 ワーグナー&ウェーバー・トランスクリプション集というCDがあります。
◆最後はピアノの有名曲。「ハンガリー狂詩曲第2番」です。
冒頭に紹介した、金子三勇士氏の演奏を生で聴いてから、私のリストのイメージは大きく変わりました。
どんな作曲家の作品でもそうでしょうけれども、一度はきちんと上手い人が弾くのを生で聴かないと作品の真価は
分からないのでしょう。
Miyuji plays Liszt リスト:ピアノ曲集が発売になったのが
2年前の10月1日で、CD発売記念リサイタルがトッパンホールで行われたのが、その月末、2010年10月31日だったのです。
時の経つのは、誠にはやい。もう2年ですが、とにかくこのときの凄まじい迫力のハンガリアン・ラプソディは、今でも鮮明に
記憶しています。金子三勇士氏の演奏で、
リスト:ハンガリー狂詩曲第2番 嬰ハ短調
Hungarian Rhapsody No.2
リストのおかげでピアノの表現力の可能性が格段に広がったのですね。
名曲の名演だと思います。
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2011年10月21日(金) 「日米首脳会談 首相、対米5公約表明へ」←言語道断。
2010年10月21日(木) 【音楽】ブラームス:ピアノ協奏曲第2番と、ショスタコーヴィッチ交響曲第10番より。
2009年10月21日(水) 「郵政人事「小沢氏への配慮」=野党、官僚OB起用を批判」←岩國哲人さんに内閣総理大臣になって頂きたかった。
2008年10月21日(火) 「金融危機悪化は回避へ=欧州の対応評価−IMF」←人間に例えるなら、ICUから一般病棟に移ってすらいない、と思います
2007年10月21日(日) ここ数日、音楽家の誕生日、命日が続いていたのです。
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2002年10月21日(月) クラシック音楽二題:アシュケナージ、N響指揮者に。ピアニスト、梯剛之(かけはしたけし)氏、カーネギーデヴュー。