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JIROの独断的日記
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2012年09月13日(木) 「アコーディオン奏者の横森良造さん死去」←9年前に拙日記で横森さんのことを書かせて頂きました。

◆記事:アコーディオン奏者の横森良造さん死去 (朝日新聞 2012年9月13日0時40分)

アコーディオン奏者の横森良造(よこもり・りょうぞう)さんが死去した。

関係者によると、8月27日に東京都の自宅で心不全で亡くなり、葬儀は既に営まれたという。79歳だった。

「スター誕生!」などのテレビ番組に出演し、人気を博していた。

歌う人に合わせて転調したりテンポを変えたりして自由自在に即興できる、

日本のアコーディオン奏者の第一人者だった。


◆コメント:9年前に「世間は必ずしも人を正しく評価できない。アコーディオンの横森良造さんに思う。」と書きました。

私の世代以上の方は覚えておられると思いますが、

横森良造さんは、いつもニコニコしてテレビでタレントさんの歌の伴奏をやっておられました。

一般には、何だか人のよさそうな、アコーディオンのおじさん、と思われていたかもしれません。

しかし、横森良造さんは、アコーディオンの第一人者ということもありますけれど、

本当に音楽を勉強なさった「伴奏者」でした。それは世間の99%は分かっていないと思いました。

9年前に、

2003年07月04日(金) 世間は必ずしも人を正しく評価できない。アコーディオンの横森良造さんに思う。

という記事を書きましたが、ここに改めて載せます。
2003年07月04日(金) 世間は必ずしも人を正しく評価できない。アコーディオンの横森良造さんに思う。


世間には、地道に研鑚を積み、優れた技術と経験をもちながら、正当な評価を得られない人が沢山いる。

小学校の前を通ったら、ひさしぶりにアコーディオンの音が聞こえた。アコーディオンは子供が弾いていると

幼稚な楽器に聞こえてしまうが、cobaこと小林靖宏氏が20年前に登場して以来、この楽器に対する認識は随分変わった。

coba氏が登場する前はアコーディオンといえば横森良造さんだった。

ところが、横森さんは主に素人ののど自慢の伴奏とか、歌手のオーディションの伴奏とか、

お笑い番組での芸人の下手な歌の伴奏とか、そういう扱いしか受けなかった。

一般の人は横森さんといえば、「バラエティ番組でニコニコ笑いながら、歌謡曲の伴奏をしている地味なおじさん」、

という印象を抱いている事だろう。


しかし、多少なりとも音楽の素養がある人ならば、横森さんがただものではないことに、気がつく。

レパートリーが5000曲というのも無論すごいのだが、本質はそういうことではない。

横森さんは、どんな歌の伴奏をするときでも、歌っている人間にとって、

その曲の調性が合っていなければ(キーが高すぎるとか、低すぎるとかいうでしょう)、

即座にその人が一番歌いやすい調性に替える、つまり、移調をすることが出来る。

例えば、ニ長調の歌がちょっと高い、というときに、半音下げて嬰ハ長調にしたりするのである。

ニ長調ならば♯2個だが、嬰ハ長になれば、♯7個となり、一挙に指使いが難しくなる。

それでも、横森さんは決して間違えない。

そして、アコーディオンの左手はハーモニーを奏する為のボタンが100数十個もついているわけで、

ある調性の曲のある部分に適したコードに応じて、瞬間的にそれを選択しなければならない。

横森さんは移調をしたときに、このようなハーモニーの移調も完璧にこなしている。

ようするに、横森さんは西洋音楽を構成する24種類すべての音階と

それに付帯する和音群が完璧に身体に沁み込んでいるのである。

楽器をやった人なら分かるだろうが、これは、本当に真面目に音楽を勉強した人でなければ出来ない技術だ。

そして、常に練習をしていなければ、ダメになってしまうのが楽器の演奏技術というものである。

横森良造さんは、愚かなテレビ局の連中や一般大衆が考えているよりもはるかにすごい技術を有している、

それだけの研鑚を積んだ本当の音楽家なのである。

私は、横森さんがバラエティーでにこやかに笑いながら演奏をしているのをみると、いつも、口惜しくなる。

世の中は、なかなか、優れた人に、正当な評価を下せないのである。

冒頭の朝日新聞の記事にしても、あまりよく分かっていない記者が書いたことは明らかですね。
歌う人に合わせて転調したりテンポを変えたりして自由自在に即興できる

「転調」とは
曲の途中で,ある調(先行調)から別の調(後続調)に調が変わること。

であって演奏者の裁量ではなく、作曲又は編曲の作業において楽譜上で指定されていることですが、

横森さんのように、例えば、伴奏をしていて、歌う人の声域に合わせるのは、「移調」というのですね。
移調とは、
ある曲を,各音の相対的な音程関係は変えることなく,そっくり別の調に移すこと。

であって、完全に演奏者の技術です。

また、テンポを変えるのは、伴奏なら当然です。そして移調したりテンポを変化させることを「即興」とはいいません。


記事の重箱の隅をつつく(結果的にそうなってますが)ことが目的ではなく、

お悔やみ記事まで、横森さんの実力を正確に表現していないのが残念なのです。

横森良造さんは、あまりにも自然に移調をしておられたので、多少なりとも楽器を習った人じゃないと、

その凄さは分からない。

高度な技術を会得した、極めて優れた伴奏者でありながら、自分でその凄さを誇示することなく、

常に「伴奏者」に徹しておられました。本当のプロだったと思います。

謹んで、お悔やみ申しあげます。

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