DiaryINDEX|past|will
2012年06月03日(日) |
「公正な世界の信念」という「錯覚」 |
◆「公正な世界の信念」という、タチの悪い錯覚。
これに関しては、5年前に一度書いたことがある。
2007.08.30 「涙こらえ、最後の別れ 女性拉致・殺害磯谷さん葬儀に130人」←葬儀の様子などテレビで映さなくても良かろう。
メディアは、犯罪の被害者について、本人は死んでしまって反論ができないのに、
例えば、レイプされた挙げ句殺された女性に関して「日頃から素行が悪かったらしい」
などとひどいことを書く。また、なんと被害者の遺族の自宅には、全然見ず知らずの人間から
「お前の娘は日頃から男関係がだらしなかったのだろう」と嫌がらせの電話がくるそうだ。
心理学者や社会学者によれば、人間には「公平な世界の信念」という(私に言わせれば)「錯覚」があるそうだ。
つまり、
世の中は正しく動いている。努力すれば報われる。貧困な人、社会的弱者は努力が足りないのだ。
また、正しく生きれば、犯罪の被害者になることはない。殺された人間はそれ相応の、だらしのない
生き方をした報いを受けたのだ。
と、「信じたい」のだ。そうでなければ、
自分がまじめに働き、生きていても、社会的弱者に転落する可能性があり、理由もなく殺されるかも知れない。
ことを認めなければならない。本当はそれが真実なのだが、認めるのが、怖くて仕方が無いのである。
「公平な世界の信念」が強い人ほど、社会的弱者に冷酷で、
犯罪被害者やその遺族に残酷なことをいうのである。
◆世界は不公平である。
公平な世界の信念をいくら信じようとしても311を見れば、如何に間違っているか、
よほど、バカでは無い限りわかるだろう。
地震と津波で亡くなったり、行方不明のままの方は2万人である。
震災犠牲者が「日頃、悪い事をしていたから、報い(天罰)を受けたのだ」と
本気で信じている人がいるならば、精神科の診察を受けた方が良いかも知れない。
◆殆どの努力は、報われない。
何だか、景気の悪い話だが、これをはっきり認識すると不必要に落ちこむことが
なくなるか、少なくなるので、敢えて書く。
世の中は理不尽に出来ている。いや、理不尽のかたまり、といっていい。
今年8月下旬から、ロンドン・オリンピックが開催される。
各競技で、世界中の何万、何十万という選手が皆、金メダルを夢見る。
そのために、あらゆる苦しい練習に耐えている。
しかし、実際に金メダルを手に入れることが出来るのは、1人だけだ。
残酷だが、圧倒的大多数の人間の努力は、報われない。
一生懸命やれば上手くいく。努力すれば報われる「公平性の原理」は存在しない。
私の好きな分野、音楽も同じだ。
音楽は、本来勝ち負けとか点数で評価されることではないが、
分かり易いので、コンクールを例に取る。
昨年、第80回日本音楽コンクール(通称、毎コン)のピアノ部門をみると、
第1予選を受けたのは、236人。そのうち第2予選に進むことができたのは、48人。
第3予選に進んだのは、その中の9人。本選に出場出来るのは4人。
本選で(1位無しという場合もあるが)1位になるのは、勿論、ただ1人だ。
音楽コンクールにおいても、このとおり。殆どの努力は報われないのである。
◆結論:「公平な世界な信念」の存在を意識すること。
前段までに説明した「公平な世界の信念」の存在を人々が知っていることが肝要である。
そうすれば、むしょうに人を攻撃したくなったときには、自分がその「錯覚」に陥っていないか、
少し冷静に考えることにより、徒に他人の心を傷付けなくて済む可能性が格段に高まる。
また、逆に、自分が訳も分からず周囲から攻撃をされている、「嫌われている」と感じたとき、
それは自分が「悪いから」ではなく、自分が「悪いからだ、と思い込もうとしている人間の心理」を
想定すると、不必要に自己を過小評価したり、挙げ句に抑うつ状態に陥らずに済む。
実は、それ以外にも、他人の行動が妙に腹立たしく感じられるとき、
あなたは、無意識下に抑圧して考えないようにしている自分の短所を
他人に見ている場合がある。これをフロイトは「投影」と呼んだ。
逆もありうる。他人はその人が誤魔化そうとしている本人の嫌なところを
あなたに見出し、あなたを攻撃して、なんとか自我のバランスを保とうとしている可能性がある。
これについても詳しく書くと長くなるので、「投影」という概念だけ調べると良い。
偉そうな文章になってしまったが、長い間、そういうことでクヨクヨしてきたのが
この私であり、その原因を探って得た知識の一つを受け売りしているだけ、である。
【読者の皆様にお願い】
是非、エンピツの投票ボタンをクリックして下さい。皆さまの投票の多さが、次の執筆の原動力になります。画面の右下にボタンがあります。よろしく御願いいたします。
2011年06月03日(金) 「被災地にバイオリンの調べ=ユネスコ大使、88歳奏者−宮城・石巻」←ギトリス氏です。
2010年06月03日(木) 【音楽】今まで何故か取りあげたことが無い、バッハ入門、「インヴェンションとシンフォニア」
2009年06月03日(水) 「<タミフル>異常行動との因果関係不明 厚労省研究班」←4月18日の「最終報告書」は「タミフルと異常行動「因果関係否定できぬ」
2008年06月03日(火) 「普賢岳 3日午後も各地で追悼行事 発生から17年」←マスコミの犠牲になった消防団員・警察官など。
2007年06月03日(日) 「訃報 羽田健太郎さん58歳=ピアニスト」←毎コンで三位に入賞するということはものすごいことなのです。
2006年06月03日(土) 「自殺 8年連続3万人超 40代以下増加顕著」秋田県が10年連続「自殺率全国一」である原因に関する仮説
2005年06月03日(金) 小泉内閣の郵政民営化プランには、緊急性、必然性が認められない。
2004年06月03日(木) 子供にネットや携帯は不要である。(殺人事件とは別の話)
2003年06月03日(火) 医療観察法案を強行採決 委員会可決、今国会成立へ