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2006年06月03日(土) |
「自殺 8年連続3万人超 40代以下増加顕著」秋田県が10年連続「自殺率全国一」である原因に関する仮説 |
◆記事1:自殺 8年連続3万人超 40代以下増加顕著
昨年1年間に日本国内で自殺した人は前年比0・7%増の3万2552人で、8年連続して3万人を超えたことが1日、警察庁のまとめで分かった。
50代以上が半数以上を占めるものの前年より減少。一方で、40代以下が各年代で増加。改善する兆しのない深刻な自殺の実態があらためて浮き彫りになった。
まとめによると、全体のうち男性が2万3540人で7割以上。女性は9012人。
年齢別にみると、60歳以上が最も多く、前年比0・9%減の1万894人。50代が2・4%減の7586人、
40代が2・1%増の5208人で、30代が6・3%増の4606人、20代が5・0%増の3409人と続く。
原因・動機別では「健康問題」が1・5%増の1万5014人で半分近くを占め、次いで「経済・生活問題」が2・4%減の7756人、「家庭問題」が0・9%増の3019人だった。
遺書のあった場合をみると、20代、30代は「健康問題」が、40代、50代は「経済・生活問題」がそれぞれ最も多い。
職業別では無職者が0・3%減の1万5409人で半数近くに上った。被雇用者が5・3%増の8312人で、自営者は4・1%減の3700人。
学生・生徒が9・8%増の861人で、統計を取り始めた昭和53年以降で2番目に多かった。
このうち小学生は7人、中学生は66人で高校生は215人。大学生が半数以上の433人だった。
自殺者数は53年以降、2万人台で推移していたが、平成10年に急増して3万人を超え、高止まりの状態が続いている。
(産経新聞) - 6月2日3時6分更新
◆記事2:秋田県の自殺予防対策 (2006年3月14日(火) 東奥日報)
秋田県は人口10万人当たりの自殺率が10年連続で全国1位。県が2000年度から予算を組み、秋田大や民間団体と協力して自殺予防事業を展開。
01年度からは、県内6町を順次、自殺予防のモデル地区に指定し、うつ病の可能性が高い人には専門家が面接するなどした結果、自殺者数がほぼ半減する効果が出ている。
自殺やうつへの理解を深めようと、シンポジウムの開催やリーフレットの全戸配布をしたほか、自殺予防に取り組む民間団体に助成している。
◆コメント:秋田県の自殺率が高いのは農薬が原因ではないか?というAERAの記事があった。
自殺者数が毎年3万人を超える「先進国」(先進国というと曖昧だから、G10に限っても)は日本だけであるが、
記事2にあるとおり、秋田県の自殺率が10年連続で全国一高いのである。秋田県の自殺率が高いと言うことは漠然と知っていたが、まさか10年連続とは知らなかった。
これを単純に「秋田県人が精神力が弱いのだ」と決めつける奴がいたら余程の馬鹿で、
何らかの環境的要因があるのではないかということは、素人でも思いつく。
「環境」といって、すぐに連想できるのは気候である。冬の日本海側の気候は一般的に太平洋側の人間には想像もつかないほど、陰鬱である。
しかし、秋田県の自殺率の高さは気候が原因でないことは、日本海側の他県の自殺率を見ればほぼ明らかである。
そこまでで、私の思考は先に進まず、特に考えもしなかったのだが、AERA 2月13日号に「10年連続「自殺率日本一」秋田とは何か」という記事が載っていて、意外な話の展開に驚いた(私の仕事は「農薬」に縁が全くないから、そういう発想が無かったのである)。
要約すると、秋田県だけではないが、秋田県でで特に大量に用いられている有機リン農薬が、脳内神経伝達物質のひとつであるセロトニン系に影響し、
セロトニンが減ると抑うつ状態、ひいてはうつ病になり、これが自殺率が高い原因である可能性がある、という「仮説」を紹介したものである。
◆ケープタウン大学教授の論文もある。(仮説だけどね。)
上のアエラの記事はあくまでも、仮説(しかも厳密に科学的な論文ではなく一般人が読む雑誌)であるけれども、
この記事の執筆者(日本人)が、勝手にいっているわけではなく、南アフリカ共和国ケープタウン大学のL.ロンドン教授
(ややこしいから、間違えないでください。「ケープタウン大学」の「ロンドン教授」です。「ロンドン大学の教授」ではありません)が
American Journal of Industrial Medicineの2005年3月17日号で、“Suicide and exposure to organophosphate insecticides”
(自殺と有機リン化合物:原因若しくは影響?)と題する論文を発表しているのだ。但し、これも「仮説」である。要約すると、
- 疫学研究によれば、農業従事者の自殺による死亡率は通常より高い
- 動物実験では、有機リン化合物に触れることにより、中枢神経系におけるセロトニン分泌が妨害されることがしられている。
- 人の研究ではセロトニンが減ると、うつ病になりやすく、うつ病患者の自殺率が高いことも知られている。
- だから、農業従事者の自殺が多いのは有機リン農薬曝露によって惹起されたセロトニン分泌障害に起因して発症したうつ病が原因である。
という主旨だが、素人が考えても、論理に飛躍があるのがわかる。
有機リン被爆によるセロトニン障害がうつ病を引き起こすのであれば、農業従事者だけではなく、他にも有機リン化合物に接する機会が多い職業はあるわけで、
例えば農薬製造会社の職員にも同様の傾向が認められるはずだが、そのことには言及していないし、有機リンは農薬にだけ使われているわけではない。
それはそうなのだが、ロンドン教授が、「農薬を大量使用する国では、農業従事者の自殺が多い」と主張するのを完全に無視して良いとは思えない。
日本の米に使われている農薬の量はかなりのレベルであるらしいからだ。
◆新聞がこのごろやたら「有機リン」の記事を載せているのですよ。
つい先日も(上のAERAの記事を忘れかけていた頃に)、日経が、次のような記事を載せた。
◆記事:有機リン系農薬、慢性毒性の懸念――専門家ら神経・精神への影響指摘。 (2006/ 05/ 29日本経済新聞 朝刊p.1)
空中散布 自粛要請も
農薬などに使われる有機リン化合物の慢性毒性を懸念する声が出てきている。
人体への悪影響が明確になったわけではないが、散布された農薬を吸い込んで神経や精神に異常をきたしたとする例が報告されている。
日用品のプラスチックの一部にも別種の有機リンが含まれており、影響がある可能性がある。
専門家は規制を強めるよう求めており、農薬空中散布の自粛を求める自治体も現れた。
群馬県では有機リン系農薬の空中散布地域に住む十一歳、十三歳、十八歳の未成年が相次いで不登校、うつ、引きこもりになった。
同時に有機リン慢性中毒に見られる瞳孔機能の異常が見られたため、有機リン中毒の治療を施した結果、うつなどが治ったという。
治療にあたった青山内科小児科医院(前橋市)の青山美子院長は「農業地区と住宅地区が混在する地域で患者が多い」と話す。
神経や精神症状は原因を突き止めるのが難しいため、有機リンの慢性毒性についてはこれまでよくわかっていなかった。
だが近年になって診断技術の向上などにより慢性毒性の可能性が明らかになりつつある。
この分野に詳しい石川哲・北里大学名誉教授は「有機リン化合物が精神を制御する脳内物質を狂わせ、脳機能の一部を変調させる可能性は高い」と指摘する。
石川名誉教授は昨年三月に厚生労働省の研究班で、有機リン化合物が神経や免疫、内分泌に障害をもたらし、
特に小児への影響は未来に重大な問題を引き起こす可能性があると結論付けた報告書をまとめている。
政府も危険性を認めている。
参院予算委員会で今年三月十八日、加藤修一参院議員が有機リン中毒について質問。厚生労働省の中島正治健康局長は
「有機リンは急性中毒のほか情動や精神活動など高度な脳機能に慢性的な障害を引き起こす恐れがある」と答え、慢性中毒の存在を認めた。
同省は二十九日から農薬の新しい規制を導入し、農産物について、これまで残留農薬基準値が設定されていなかった農薬も一律に濃度〇・〇一PPM(PPMは百万分の一)以下とする規制をかける。
これは様々な農薬を対象としたものだが、有機リン系農薬も含まれる。
ただ、人体が環境から化学物質を取り込むのは約八割が肺からで、食物からは一割に満たないといわれる。
食品としての農産物の規制だけでなく「住宅地での散布や室内使用も規制すべきだ」と石川名誉教授は警告する。
群馬県は全国に先駆けてラジコンヘリコプターを使った有機リン系農薬の空中散布の自粛を求めることを決めた。
プラスチックに含まれる有機リン化合物も少しずつ漏れ出すと考えられており、今後対策が求められる可能性もある。
▼有機リン化合物
リンを含む有機物の総称だが、もともと生体内にある安全なものから毒性の強いものまで様々な種類がある。
工業的につくられたもので代表的なのが農薬で、世界中で広く使用されている。
第二次世界大戦のころ、殺虫剤としてドイツで開発された。神経ガスの研究をもとにつくられたといわれ、サリンも有機リン化合物の一種。
プラスチックなどの添加剤として利用されるのは、農薬とは別種の有機リン化合物。
◆偶然は重なるもので・・・。
アエラと日経に載ったからと言って、直ちに有機リン→自殺と結論づけるのは短絡である。
そういうわけではないが、偶然は重なるものだ。
いつも読ませていただいている、ある方のWeb日記で(その方は有機リンうんぬんには全く触れていないのだが)、
最近無農薬食品を食べるようにしているが、数ヶ月たってふと気が付いたのは、それまで、頻繁に抑うつ状態になっていたのだが、
無農薬食品を食べるようになってからは、全然抑うつ状態にならないことだ、と書いておられるのを読んで、私は「あっ」と思った。
無論、これも、この方が日記に書いていないだけで、気分が好転した他の要因があるかも知れず、「農薬と抑うつの因果関係」の証拠たり得ない。
ただ、ちょっと引っかかった(私の意識に、)ということだ。
◆証明はされていないが、知っておいても良いのではないかということです。
分かっているのは、
秋田県の自殺率10年連続で全国一だということ、
そこでは有機リン農薬が使われていること。
「有機リン化合物の曝露が自殺の原因ではないか」という「仮説」をたてている学者が少なくとも一人はいて、権威ある科学雑誌にその論文が掲載された
ということだけだ。
だが、ノーベル賞受賞者の小柴教授が講義で述べられている。
科学ってのは、大体、最初ゼロから全部説明するなんてことは無いわけね?
必ず、こういう「仮定」から出発して「じゃ、こういうことが説明できるか?」という論法になるわけです。
ということなのだそうだ。
仮説に文句を付けるのは簡単だが、じゃあ貴方は他の仮説を立てられるのかと言われたら、科学的思考の訓練を受けていない我々一般大衆には何も出来ない。
「仮説」を「定説」(証明されたこと)と混同してはならないが、
このような「仮説がある」ということは知っておいても良かろう。
◆自殺を精神論だけで片付けるなということだ。
自殺者を悪く言う人は多い。
鳥インフルエンザで浅田農産の会長が自殺したときに、
「いや、責任を感じるなら死んではいけない」などと書いている人がいた。
浅田農産に限らず、「自殺した人間はくず」だ、という異常に感情的な表現を用いる人が多いが、
死んだ人間に「いけない」と言ったって、どうしようもないじゃないか。
相手は反論できないのだから、死者を罵倒するのは、卑怯だ。
そうではなくて、一般論として、「自殺されるとまわりが迷惑だから止めましょう」、と書けばよいのだ。
しかし、「自殺は止めましょう」「自殺は現実逃避で卑怯だ」という主張があることぐらい、馬鹿でも知っている。
それでも年間3万人が自殺しているのが日本だ。「止めましょう」一点張りでは能がなさ過ぎる。
無論、「農薬が自殺者3万の原因だ!」ということはあり得ないが、化学物質その他環境的要因や、
食生活の変化による摂取栄養素の偏りの問題(ビタミンB群、アミノ酸のトリプトファン、チロシン、ミネラルや微量元素、つまりマグネシウム、亜鉛、etc.
などが不足すると、抑うつ的になることが知られている)の可能性を考えることは必要だろう。
2005年06月03日(金) 小泉内閣の郵政民営化プランには、緊急性、必然性が認められない。
2004年06月03日(木) 子供にネットや携帯は不要である。(殺人事件とは別の話)
2003年06月03日(火) 医療観察法案を強行採決 委員会可決、今国会成立へ