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JIROの独断的日記
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2011年10月19日(水) 【音楽】エミール・ギレリス(1916-1985)のベートーヴェン「悲愴」

◆10月19日は旧ソ連のピアニスト、エミールギレリス(1816-1985)の誕生日。

10月19日は、夭逝した英国の天才チェリスト、ジャクリーヌ・デュ・プレの命日でもありますが、

今まで何度か紹介しかけて中途半端だった、旧ソ連のピアニスト、エミールギレリスの演奏で、

ベートーヴェン3大ピアノソナタのひとつ、「悲愴」(Pathetique)をご紹介します。

ベートーヴェンというのは、細かいことを言うと、古典派。クラシックってのは、狭義では、

この「古典派」を指すんですね。ハイドン、モーツァルト、ベートヴェンが代表格です。

ショパンとか、シューマンとか、ブラームスとか、ラフマニノフとか、かなりの人は

ロマン派といいます。


そんなの覚えなくて良いですけど、ベートヴェンというのは、なんというか

どっしり古典派とうっとりロマン派の両方の要素がある感じがします。


ベートーベン(に限りませんけど)のピアノ・ソナタは、無論、乱暴に弾いては

ダメですけど、誤解を恐れずに書くならば、ある程度の野卑さ、というか、

泥臭さが、含まれます。「ここぞ」というところでは、「ズシン」というフォルティッシモが

必要です。ピアノの鍵盤を「グワッ」と「掴む」感じというか。

ここで、フニャフニャ中途半端なフォルテで弾くと、ベートヴェンに聞こえません。


◆「鋼鉄のタッチ」のピアニスト。

エミールギレリスは、旧ソ連のピアニストで、初めて西側に自由に演奏旅行に

行くことを許された人です。20世紀を代表するピアニストです。

ギレリスは「鋼鉄の(タッチの)ピアニスト」と言われます。

本気のフォルテの迫力がすごいのです。


まさに、ベートーヴェンの「グワッ」という所にぴったりなのです。

言うまでもありませんが、いつもでかい音を出している訳ではありません。

繊細なタッチも勿論使い分ける。要するに、大名人ですよ。


◆ベートーヴェン:ピアノソナタ第8番ハ短調作品13「悲愴」

ゴタクは、なるべく止めておきます。

音楽ってのは不思議なもんで、ただ明るければ良いというものではなくて、

ベートヴェンで言ったら、この曲や交響曲第3番「英雄」第二楽章の葬送行進曲とか

交響曲第7番の第二楽章も明らかに葬送行進曲ですが、

悲壮感のもたらす美しさ、があります。


ベートーヴェン:ピアノソナタ第8番「悲愴」第一楽章



Piano Sonata No. 8 in C Minor, Op. 13, "Pathetique": I. Grave - Allegro Di Molto E Con Brio



冒頭から、「ガーン」と鳴りますね。ああいう所で出来上がった音がバーンと出せないと

ベートーヴェンっぽくないのです。


打って変わって第二楽章は、あたかも「祈りの音楽」で、あまりの美しさに、

ポップスの坊やとかお嬢ちゃんが何だか、勝手に歌詞をつけて歌謡曲にしてますが

この楽章のように完璧な音楽に歌詞は不要です。


ベートーヴェン:ピアノソナタ第8番「悲愴」第二楽章



Piano Sonata No. 8 in C Minor, Op. 13, "Pathetique": II. Adagio cantabile



難しく無さそうにきこえますが、実はむずかしくて、あの美しい旋律は、

右手の5の指(小指)が弾いていて、右手の残りの指と左手はそれを伴奏する

形になってます。それにしても綺麗な音楽です。

ベートーヴェン先生、おっかない顔をした絵を日本中の小学校の音楽室に貼られて

あのイメージが強く迫りますが、ものすごくロマンチストだと思います。


ベートーヴェン:ピアノソナタ第8番「悲愴」第三楽章



Piano Sonata No. 8 in C Minor, Op. 13, "Pathetique": III. Rondo: Allegro



ロマンチストでも、色々な工夫が施されています。この第三楽章再生開始後1分50秒あたり

第二楽章のあの綺麗な旋律の音の順番を入れ替えて使っているのがわかりますか。

先生、交響曲などになると、そういう計算がものすごく緻密に行われています。

まあ、そういうことはともかく。

ギレリスの三大ソナタのCDがリマスターですかね。11月2日に出るそうで、HMVに

ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ《悲愴》《月光》《熱情》エミール・ギレリスとあります。

ギレリスは、ベートーヴェンピアノソナタ全集の録音を1972年から開始したのですが、

残念ながら、85年に亡くなり、全集は未完なのです。

しかし、かなりの曲を録音済みです。

とにかく、ギレリスのベートーヴェンは定評が確立してますから、

聴いておくと、耳が肥えることでしょう。

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