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JIROの独断的日記
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2011年07月26日(火) 【翻訳】「日本で、核に関するベストセラーが新しい議論を反映している。(ワシントンポスト 7月19日)

◆(原題)In Japan, nuclear bestsellers reflect new debate(The Washington Post 19 July)

http://www.washingtonpost.com/world/asia-pacific/in-japan-nuclear-bestsellers-reflect-new-debate/2011/07/16/gIQATh5QNI_story.html



数週間前、40年もの長きにわたり、人知れず、しかし極めて活動的な姿勢を保ち続けた、1人の日本人の原子力研究を専攻する学者が

関西国際空港構内を歩きつつ、書店のベストセラーのコーナーをちらりと見おろした。

そこに平積みになっていたのは、彼が書いた最新の本、「原発のウソ」であった。

本のカバーには彼の顔写真が映っている。


この学者、小出裕章氏にとってそれは、(原子力に対する)微かな関心が

今や世の中の関心の中心に、変化しつつあることを、確認した瞬間だった。

この四ヶ月は、過去四半世紀において、最も深刻な原子力事故に発展し、

その間、原子力政策を監督する官僚と電力会社の経営陣との、激しい確執があった。


その結果、少なくとも一つの産業は、大規模な変化を競い合った。

つまり、出版業界である。

出版業界のウェブサイトによると、各出版社が競い、少なくとも1日に1冊、

原子力に関する新刊が発売されたという。そして、かつては、

「どうして、自分の本がこれほど売れないのだろう」と訝しがっていた専門家を

拝み倒して、書き下ろしを依頼しているほどなのだ。


とにかく、原子力に関して書かれた本は、日本全体の議論を呼び起こしている。

それは、世論調査を見ても明らかで、4対1で原子力推進反対派が優勢である。

原子力に関して書かれた本のうち、あるものは、統計を示し、冷静に感情的にならずに

脱原発を説いているが、あるものは、怒りに、またあるものは後悔の念に満ちている。

いずれにせよ、これは日本の社会が国家が提供する情報を、ますます信頼出来ない、と

考えている状況を端的に示している。


著者のリストは実に広範に及ぶ。様々な分野の学者、ジャーナリスト、産業界の専門家、

もと、株のインサイダー取引により起訴された人、反逆的官僚などである。

元・福島県知事、佐藤栄佐久は、福島原発の真実を、

福島原発建設に携わった元GE技術者・菊地洋一は、「原発をつくった私が、原発に反対する理由」を著した。

また、経産省の現役幹部が実名で「日本中枢の崩壊」と題する

内部告発本を発表した。

この本は1ヶ月でベストセラーになり、著者である古賀茂明は経済産業大臣から、辞職届を提出するように勧告を受けたが、これを拒否した。

3月11日以降に出版された、核(原子力)関連全書籍のはっきりとしたリストは無いが、

Amazon Japanによると、直近の30日だけでも約100冊の新刊が出ているという。

東京の法政大学教授、川村湊は何とか遅れを取らないように、

最近刊行された150冊(100冊の過去の書籍の復刻版を含む)を購入した。

そのコストは2,500ドル(引用者注:1ドル=80円とすると、日本円で20万円)に達している。


川村の核問題に関する専門的知識は、福島原発の事故が起きた直後の15日間について、

彼自身が日記スタイルの著作を執筆してから、著しい進歩を見せたが、

原発事故が起きた当時、かれは、戦時中における日本の満州支配に関する原稿を書いていたのである。

川村は、「編集者に電話をして、執筆中の本のテーマを変更してもいいか?」と訊ねたそうだ。


核の専門家によると、それまで日本の出版会は、中央官庁が喧伝する、原子力推進の意向に、

寄り添うような本ばかりを出していたのだ。



日本原子力研究所の元研究員、館野淳は

「『核に関連する本は売れない。』と言われていたのです。」と述懐する。

実際、館野は2003年に各関連の本を書いて出版したものの、ほとんど売れなかったという。


この分野(原子力)の学者、特に、反原子力の立場を取る人々は、世間に知られないことを

甘受するしか、選択肢はほとんど無かった、と小出裕章京都大学原子炉実験所助教は語る。


彼は、自分のキャリアを、原発関連訴訟をサポートしたり、少人数の市民団体の集まりで、

講演をすることに費やしてきた。

この間、彼は自分の講演を本にして出版した。その最初の本、1992年発行の「放射能汚染の現実を超えて」は、

3,000部しか売れなかった、と、小出助教はいう。



3月11日の震災により、世間は急速に小出助教の専門的な知識を必要とするようになった。

今では、彼の講演には1,000人もの人が集まり、メディアからの電話インタビューを求める

電話が、毎日平均2本は架かってくる。テレビにも出る。しかし、それは彼にとって満足ではなく、

後悔を感じさせる結果になっていることを認識している。


「私はこの本(「放射能汚染の現実を超えて 」)が多く売れていると聞きましたが、複雑な心境です。」

小出助教が新しく書き下ろした本は20万部も売れているが、それについて、彼は「事故が起きたから、

本が売れているのです。私は40年間、この分野で事故が起きないようにと願って活動してきたのです。

ところが今や、現実に事故が起きてしまった。だから本が売れているのです」と述べた。


インタビューの中で、また、彼の著書の中で、小出助教はしきりに責任について言及している。

原発事故そのものに関して、小出氏は政府と東京電力双方に責任があるという。しかし、彼は傍観者にも

責任があるという。それは、即ち、原発は安全だと信じて疑わなかった、多くの国民である。

騙されていた人々には、騙され続けていたことに対する責任がある。

と彼は、自著に記している。


過去に比べると、小出助教の声に耳を傾ける人はますます増えている。

彼は「人々は原子力の危険性に気づき始めた。今こそ社会の方向を大きく変える決断を下す時だと思う」と

著書の始めに書いた。

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