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JIROの独断的日記
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2010年03月10日(水) 山田洋次監督作品。「おとうと」所感。

◆皆さんご多忙の折、恐縮乍ら、映画を観てきました。

先日書いたが、皆さん(社会人)は期末でご多忙のところ誠に恐縮乍ら、

今週私は、勤続25年休暇を取得していて休みである。

生来怠惰な私にとって、「休み」とは、本来「何もしないこと」であり、あちこち出かけることを好まない。

が、余りにも1週間亭主が家にいては、家内も面倒臭いだけで、何も楽しい事が無いだろう。

それは気の毒だし、私自身、山田洋次監督の映画作品は、「寅さん」シリーズをはじめ、それ以降も大変好きなものばかりで、

1月末に劇場公開された「おとうと」も、こういう時でもないと映画館で見ることは出来ないので、

渋谷シネパレスで、今日(3月11日)、これを観てきた。

以下、所感を書く。


◆非常に真摯に作られた名画である。

まだ、この作品をご覧になっていない方もおられるだろうから、出来るだけ「ネタバレ」に

ならないように、注意する。但し、映画「おとうと」公式サイト「作品情報」にも、

作品導入部に関して、ある程度ストーリーが呈示されているので、この範囲に付いては書くことをご容赦頂きたい。


あまり、1人の映画監督の作品を類型化して述べるべきではないかも知れないが、

私が山田洋次監督作品を観ると、殆ど全て感動するのは、

人間の良心、人間の本性が持つ善良な、明るい側面に光をあてる。

からである。それは、「おとうと」に関しても全く同様である。

出来の良い姉、吟子(吉永小百合)と、定職を持たず、だらしのない出来の悪い弟、鉄郎(笑福亭鶴瓶)の対比は、

年齢が逆転するが、寅さんシリーズにおける、しっかり者の妹、さくら(倍賞千恵子)と、風来坊の兄、寅次郎(渥美清)

のコントラストを、想起させる。


吟子が女手一つで育て上げた娘・小春(蒼井優)の結婚披露宴に、招待していないのに突如現れた鉄郎は、

自分が酒乱であることを自覚し、周囲からも決して酒を飲むな、と厳命されていたにもかかわらず、

つい、一杯やってしまったが最後、止まらなくなり泥酔し、披露宴で大暴れして、これを台無しにする。

立腹しながらも、弟を庇う吟子だが、もう一度、迷惑をかけられ、さすがに激怒して鉄郎と絶縁する。


これ以上書くとまずい。最後はホロリとさせられる。

山田監督は、映画を撮るときには全て順撮り(台本に描かれたストーリー通りの順に撮影すること)だそうで、

テレビドラマや、他の映画作品では、極端な場合最初にラストシーンを撮ったり、撮影順が前後することは普通だが

山田洋次監督は、「それでは役者が本当に感情移入出来ない」から、絶対に順撮りなのだそうだ。

映画の流れが如何にも自然な要素の一つは、そこにもあるだろう。


◆一般的にはお薦めだが、個人的には、残念ながら、今一つ。

誤解を招くといけないので、もう一度強調するが、「おとうと」は間違いなく、名画である。

以下は、あくまで私の個人的な「感情」であり、作品の評価を貶める意図は全く存在せず、またそんなことは不可能である。


私もラストシーンでは、知らぬ間に涙をこぼした。

しかし、観た後、映画館を出て、今一つ釈然としない違和感を覚えたので、自己分析した。

理由は簡単である。


  1. 私が、ご本人には申し訳ないが、笑福亭鶴瓶というタレント(のキャラクター)をあまり好まないこと。

  2. 私は、酔っ払いが死ぬほど嫌いであること。

による。1.はどうしようもない。私の為に作られた映画ではない。多くの人にとって、笑福亭鶴瓶氏は好ましい存在なのであろう。

この辺りが映画の難しいというか、困ったところで、音楽ならば、
ある同じ作品(曲)を、演奏家Aが弾いたのは好まないがBが弾いたのは良い。

ということがあり得るが、映画においては、役柄と役者が一体化し、映像として固定されており、

他をもとめることが不可能である。だから、書いても仕方がないのだが、あくまでも「個人的な感情」である。

2、に関して、私が酔っ払いが大嫌いになった背景がある。

それはかつて、日記ココログ)に書いた。

リンク先の文中、「私が酒飲みから受けたトラウマ」という部分である。


つまり、映画「おとうと」は間違い無く名作だが、私が残念ながら完全には感情移入出来なかったのは、

「笑福亭鶴瓶という私が好まないタレント」が「私が非常に嫌悪する酔っ払い」になって、劇中、姪の結婚披露宴を台無しにした、

という時点で、私の中に
こんな野郎、勝手に野垂れ死にすりゃ、いいじゃねえか。

という「憎悪」の感情が形成されてしまった事による。

風来坊で、身内に迷惑をかけたのは「寅さん」も同じで、妹・さくらのお見合いをぶちこわしたこともあるし、

義理の弟・博(さくらの夫。前田吟)の母親の法事で、余計なことをして、ヒンシュクを買ったこともあるが、

車寅次郎が酒を飲んで酔態を晒し、或いは酒で他人に迷惑をかけたことは、無い筈である(シリーズ48作全てを

観ていないと思うし、観た作品を全て記憶しているわけではないので、断言はできないが)。

そして、渥美清という俳優の、ここが天才的なところ(というか、もって生まれたキャラクター)で、

「それでも、どこか、憎めない」のだが、笑福亭鶴瓶だと私の場合、同列に扱えない。


何度も繰り返すが、これは私の「感情」であり、

映画作品としての「おとうと」そのものは、大変に美しい。


ご覧になっていない方には、是非お薦めしたい。

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