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JIROの独断的日記
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2010年01月18日(月) NHK教育テレビ ETV特集「なまえをかいた」試聴後雑感。

◆差別が原因で小学校に通えず、60歳までエンピツをもったことが無い人がいる。

世界に誇る低い文盲率といわれる日本だが、その陰には、差別やそれに起因する貧困が原因で、

今でも字が読めない、書けない人が100万人以上いるだろう、という話で、驚いた。

1月17日(日)22時からNHK教育テレビで放送された、

なまえをかいた 吉田一子 84歳

を見て、義憤と感動を覚えた。

現在、大阪の南河内富田林市に住む吉田一子さん(84)は、60歳になるまで字を書いたことが無かった。

はっきり書くと(ご本人は何も悪いことをしたのでもなんでもないからだ)被差別部落に生まれ、戸籍さえ作られなかったので、

小学校にすら行けなかったのである。部落解放云々は、私の本論ではないので、ここではこれ以上述べない。


ただあまりにも理不尽である。

日本には実は、この世代の、特に女性で、文盲がいるのだ。同番組によると100万人以上だろうとのこと。


◆字をかけるようになり、吉田さんの人生は一変した。

「百聞は一見にしかず」なのだが、この番組の再放送の予定は無いとのことなので、

ネットのNHKオンデマンド ETV特集を出来れば是非ご覧頂きたい。

しかし、どうして私がそれほどまでにお奨めするか、不思議に思う方もおられるかもしれない。

理由は簡単で、良い番組だからである。

吉田一子さんが識字教室に通いはじめ、ようやく全てのひらがなを書けるようになるまでには、

随分時間がかかった。何しろ60歳を過ぎて初めて「鉛筆」というものを手に持ったのである。


最初はまず、鉛筆の持ち方すら分からなかった。棒を握るように、全ての指でむんずと鉛筆を握りしめたりした。

識字教室の講師は、元学校の教師だったような人達が教えている。

講師の辛抱強さも偉大である。マンツーマンで丁寧に教えて行く。

繰り返すが60を過ぎて初めて鉛筆持ち、文字を書くのだ。


しかし、吉田さんは週3回の識字学級がよいで、ひらがなを読み書き出来るようになった。

吉田一子さんの人生は一変した。今までの人生でいいたかったことは山のようにあるが、

何しろ、字を書けないから、不特定多数に向けてその思いを伝えることが出来ない。


2年前、一子さんを有名にする出来事があった。一子さんをモデルにした絵本が出版された。

ひらがなにっき


その中の一文。

きょうは はじめて ひとりで でんしゃにのりました。

とちゅう ラーメンをたべようとおもったけど かんじがわからないので たべないでかえってきました。

わたし、じィ(引用者注:吉田一子さんは「字」のことをしばしば「じィ」と表記する)をべんきょうしたら、

そのじ、にげんように って てにかいてね ぐっとにぎりしめていえにもってかえるんですわ。

えきで らくがきをみました。びっくりして はらたって なみだがでました。

なにかんがえてるんやろね。だいじなかわいいじィ つこて、ひとにわるぐちかいて

ばち あたりまっせ

絵本の絵を見ると、駅には、「バカ、きえろ、うざい」など若者が書いたと思える落書きがある。

一子さんにとって、字は(そういう語彙を一子さんは用いていないが)神聖な存在、自分が一生懸命覚えた

宝物である。その宝物を冒涜された気持がしたのであろう。

番組を見ていて、心を打たれた。字が書けるのが当たり前と思っている私たちは、

知らないうちに、大切な「文字」という言語媒体を粗末に扱っているのである。


◆例を挙げるとキリがないが・・・・。

「ひらがなにっき」には、こころあたたまる文章が沢山ある。

字が書けなかったのは一子さんの責任ではない。一子さんには、分かり易く自分の思いを表現する能力があった。

自分が勉強していたら、お孫さんが一種懸命、書き順を教えてくれたこと。

自分が使っていた、小学校二年生の国語の教科書を持ってきて、「これでべんきょうするといい」とすすめてくれたこと。

ひらがなの習得がおわり、漢字も勉強したが、非常に苦労したこと。

しかし、初めて漢字で自分のなまえを漢字で書いて、銀行預金を引き出せた時には(それまでは、家族に着いてきてもらっていた)、

嬉しくて嬉しくて涙が出たこと。胸が熱くなる。

21世紀の日本に吉田一子さんと同じような人が何と100万人以上もいること。

差別の理不尽さ。

が、一子さんは穏やかな人だ。今はあちこちの小学校で「ひらがなにっき」を教材として使っている。

一子さんは、その学校にしばしば呼ばれて、自分の体験を話す機会が増えた。

今時の、感性が摩耗してしまったような、ゲームばかりしている子供達ですら、さすがに一子さんが現れて

話をすると、真剣そのものの表情で聞いている。

一子さんは「講演」の終わりに子供達に、

私のようにならないで下さい。せんせいのいうことをよくきいて、いっしょうけんめい勉強して下さい。

と語りかける。子供達は神妙に聞いて、口々に有り難うございました、と一子さんに感謝していた。

最近、初めてのひ孫が一子さんに生まれた。

一子さんは、その子が成長し、一緒に字のれんしゅうをする日を楽しみにしている。

どうか、一子さんが元気で長生きしますように、と、日頃悪魔のように意地が悪い私だが、

今日ばかりは、こころからそう願った。

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2009年01月18日(日) 「センター試験終了」とりあえずご苦労さんでした。
2008年01月18日(金) 昨年3月、西本智実という指揮者はなかなか、いい、と書きましたが、やはり当たってるようです。お薦めDVD
2007年01月18日(木) 金正日、小沢征爾に平壌交響楽団の指揮を依頼していた」←金正日の行動に関する一考察。
2006年01月18日(水) 「存在価値が疑われる」 東証取引停止で金融相←何でも東証の責任にするのは正しくない。
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2004年01月18日(日) 「集団的自衛権行使へ解釈変更を=安倍自民幹事長」←図に乗るんじゃねえぞ、この野郎
2003年01月18日(土) 麻酔医に感謝。

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