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2007年01月18日(木) |
金正日、小沢征爾に平壌交響楽団の指揮を依頼していた」←金正日の行動に関する一考察。 |
◆記事:金正日、小沢征爾に平壌交響楽団の指揮を依頼していた(17日付中央日報)
北朝鮮の金正日(キム・ジョンイル)国防委員長が昨年、日本の世界的な指揮者小沢征爾(ウィーン国立歌劇場音楽監督)を
平壌(ピョンヤン)国立交響楽団の指揮者に招こうとしたが霧散していた事実が明らかになった。
日本のある消息筋によると金委員長は昨年5月ごろ持病で日本東京で療養中だった小澤氏に朝鮮総連関係者を送って
「あなたの指揮に胸を打たれた。是非平壌国立交響楽団の指揮者に来ていただきたい」というメッセージを伝えた。
これに小澤氏は「2009年までオーストリアウィーン国立歌劇場音楽監督として契約している」と丁寧に断ったが、
その後も金委員長は朝鮮総連幹部を通じて「両方で働いてもらっても構わない」と重ねて招へいしたい意を伝えていたというものだ。
大部分の音楽監督は特定楽団に専属されずに複数の仕事を引き受けることができる。
これに小澤氏が昨年8月ごろ朝鮮総連幹部に
「考えてみたが北朝鮮の政治的環境は音楽に集中することができる環境とはいえないようだ」
と拒絶の意を表して北朝鮮の『小澤氏招へい』は霧散したという。
小澤氏は生存している全世界指揮者のうち10本の指に入るマエストロ(巨匠)指揮者として評価を受けている。
昨年末にはタイムズ紙が「過去60年間のアジアの英雄」の1人に選んだ。 (以下略)
◆解説・コメント:ウィーン国立歌劇場音楽監督という地位。
ウィーンは古来、音楽の都と称されるけれども、全くその通りです。
モーツァルトも、ハイドンも、ベートーベンも、シューベルトも、ブラームスも、シューマンも、ブルックナーも、
マーラーも、そして、ニューイヤーコンサートでまとめて演奏されるシュトラウス一家も、
皆、この地で音楽を勉強したり、演奏を披露して名を広めたり、何か関係しています。
「音楽の都・ウィーン」の象徴的存在がヴィーナー シュターツオーパー。ウィーンのオペラハウスです。
これを日本語で「ウィーン国立歌劇場」といいます。
ヨーロッパで最高峰のオペラハウス、ということは、世界一の由緒と伝統を誇るオペラハウス(歌劇場)と言って良いです。
何しろ、モーツァルトの歌劇「ドン・ジョバンニ」でこけら落としをした歌劇場です。
この歌劇場のオーケストラ、ウィーン国立歌劇場管弦楽団の有志で結成されているのが、おなじみの
「ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団」です。彼らの本職はオペラの伴奏なのです。
しかし、オペラばかりだと常に、オーケストラピットにいて、スポットライトを浴びるのは専ら歌手です。
たまには、歌抜きで、シンフォニーなど、オーケストラだけの音楽を弾きたいということで、できたのです。
さて、それはさておき、ウィーン国立歌劇の音楽監督になる、ということは、正真正銘、世界の超一流ということです。
今は、日本人の小澤征爾さんが音楽監督です。目が眩むほどの名誉です。
◆音楽監督は指揮だけしていればよいというものではないのです
歌劇場の音楽監督になると言うことは、オーケストラの指揮をするのみならず、歌劇場の運営にも責任があります。
演目をきめること、オペラですから、キャスティング、つまり歌手を誰にするか決めること、
演出、大道具、照明、ありとあらゆる事に関わります。勿論独りで全部やるわけではないけれど、
「あらゆる事に口をだす権限がある」、ということです。ですから、とにかく、忙しい。
したがって、ウィーン国立歌劇場音楽監督に「うちのオーケストラの指揮者になってくれ」と頼むのは、非常識なのです。
小澤さんは、相手が金正日だろうが、誰だろうが、断ったと思います。
但し客演、つまり、ゲスト指揮者として、よそのオーケストラを指揮することはあります
(ウィーン国立歌劇場の全てのオペラを小澤さんが振るわけではないので。)
他のオケの常任指揮者とウィーン国立歌劇場音楽監督掛け持ちというのは、無理な相談です。
◆金正日が芸術好きだとしてもさほど不思議はありません。
金正日は「寅さん」シリーズが好きだと云うことはかなり有名な話です。
最近の若い人はあまり「寅さん」を見たことが無いようですが、見ることを薦めます。
コメディの要素もありますが、それは、あの映画の本質ではない。
一連の「寅さん」は、山田洋次という、東大法学部を出て松竹に入った監督が、
自分で全部脚本を書いているのです(勿論、アシスタントはいますが)。
東大法学部を出るほどのインテリが、よくぞ「寅さん」という現実には到底あり得ない、
しかし映画で見ると決して不自然ではないキャラクターを考えたと思います。
「寅さん」シリーズ40数作で描かれていることは何でしょうか。
非常に単純化するならば、「人間の善意を信じる」という山田洋次監督の理想だと思います。
◆フロイトがいうところの、自我の防衛機制の一種、反動形成ではないかと思います。
金正日が芸術を好むとしたら、意外と狂っていない証拠ではないか、と思います。
寅さんと音楽は、一見、関係無いようですが、
いずれも人間の精神の美しい面が表出している、という点において共通しています。
ちょっと考えると、悪の権化で、他国国民を拉致したり、覚醒剤を密輸して外貨を得たり、
国内ですこしでも自分に逆らいそうな奴を強制収容所に入れてしまったり、悪魔のようなことをする金正日が、
人間の善意を描いた映画や、美しい音楽を愛好するのは矛盾しています。
ところがそうではないのです。
金正日までひどくなくても、我々の周囲でも日常、学校や職場では意地悪だったり、部下を散々いじめている人が、
プライベートでは毎週教会で祈りを捧げたり、ボランティアをしている、という例はそれほど珍しくありません。
◆防衛機制
精神分析ということを始めたのはフロイトですが、フロイトの説によると、
人間には自分が持っている、意識したくない邪悪な面を「無意識」という領域に「抑圧」する傾向があります。
抑圧の過程自体も無意識的に行われます。こういう作用を自我の「防衛機制」といいます。
抑圧されても、邪悪な心は消えることはなく、無意識から意識に戻ろうとします。
これを何とか誤魔化さなければなりません。防衛機制とはこの「誤魔化し方」の様々な形態です。
「抑圧」が防御規制の基本ですが、他にも色々あります。
自分が意識したくない自分の感情や衝動が意識に戻ってきそうなとき、
それを他人のものであるかのように感じるのを「投影」といいます。
例えば、自分が「浮気をしたい」という衝動を持っている人が、
これは自分で容認しがたいので、配偶者に押しつけて、相手に「浮気しているだろう」などというわけです。
◆結論
全部の防衛機制を説明していると、きりがないので、ここで、結論に持っていきます。
他の「防衛機制」の一つに「反動形成」があります。
例えばAさんがBさんにやたらと親切なのは、実は、AさんがBさんが嫌いで、
Bさんに対する攻撃心を持っており、これを何とか誤魔化すため、という場合です。
金正日が意外と正気だろうと書いたのは、こういうことです。
彼は自分がしていることが、極悪非道であることを知っていますが、認めたくないので無意識下に抑圧しています。
それでも、自分に対するマイナスの評価は無意識の領域で常にくすぶっています。
そこで、金正日は全くの逆の傾向を持つもの、即ち「善意の象徴」寅さんを見てアハハ、と笑ったり、
「美しい音楽」を聴いて感動する自分を見いだし、「自分は実は、『いい人』で、美しいものに感動する心を持った人間なのだ」
と感ずることによって、自我を保っているのではないかと思われます。
私は、精神科医でも心理学者でもない素人ですから、全然見当違いかも知れませんが、
以上が私の金正日の「矛盾的行動」に関して立てた「仮説」です。
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