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JIROの独断的日記
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2009年08月26日(水) 【音楽】指揮者:ヴォルフガング・サヴァリッシュ(1923-)先生の誕生日です。

◆過去に載せた画像もありますが、ご容赦。

以前の日記・ブログに何回も書いているのですが、私はこのドイツの指揮者、全盛期には毎年来日して、

N響を振って下さった、ヴォルフガング・サヴァリッシュ氏を小学生の頃から勝手に尊敬し続けています。

理由を説明しろ、と言われても難しいのですが、子供心に初めてサヴァリッシュ氏が指揮する姿を見て、

「この人こそ、本当の音楽家だ。これが本当の『音楽』なのだ」

と、殆ど「確信し」ました。何も音楽の事など分かっていないクセに。

しかし、「サヴァリッシュ先生」が指揮するN響のコンサートが放送される度に、

私はテレビにかじりつくように見ていた、と今も健在な母が、よく言うのです。
「あんた、ホントに小学生のころからずーっと『サヴァリッシュ先生』っていって尊敬しているわね」

と。サヴァリッシュ先生の経歴その他に関しては、ウィキペディアに詳しい記述があります。


◆華麗なバトン・テクニック。

指揮者にとって、棒の振り方がカッコイイか否か、は本質ではありません。

一見無器用でも、素晴らしい音をオーケストラから引き出す指揮者は沢山います。

逆に、カッコばかりで、音楽は大したことがない、という人もいます。


サヴァリシュ氏のバトン・テクニック(棒の振り方)は、圧倒的で、

これほど美しい棒は他の指揮者で、未だかつて見たことがありません。

そして、それが徒にカッコイイのではなく、サヴァリッシュ氏の音楽性が主体的に現実の動作となっている。

稀な例だと思います。


まず、エロルド:歌劇ザンパ序曲<

1988年の演奏です。オーケストラはNHK交響楽団(サヴァリッシュ先生が指揮した日本のオーケストラは、N響だけです)。


Sawallisch Conducts Zampa Overture (Herold)







カッコイイでしょ? 先生にしては、珍しく演奏直後に指揮棒を落としてしまい、

そのまま振っていますが、そんなのはどうでも良いんです。



この時のコンサーを、良く覚えていますが、サヴァリッシュ先生のコンサートとしては例外的に、

ポピュラー名曲集なんです。(因みにこの日は、他に「天国と地獄」序曲とか、「売られた花嫁」序曲などを演奏しています)。

2曲目。フェラーリ「マドンナの宝石」間奏曲。

フェラーリは色々オペラを書いてはいるのですが、今では、この「マドンナの宝石」間奏曲がもっぱらコンサートで単独で演奏されます。

これも、サヴァリッシュ先生の棒の美しさをよくご覧下さい。棒の動きだけから音楽が聞こえてくるようです。


Sawallisch Conducts Intermezzo from I Gioielli della Madonna






私、この曲、この演奏しか聴きたくないです。


◆ピアニストとしてのサヴァリッシュ先生。

サヴァリッシュ先生の経歴を読んでいただくと分かるとおり、幼い頃からピアノを学び、大変上手です。


ドイツの指揮者の常道で、最初は歌劇場で、歌手に歌の稽古を付ける所から指揮者のキャリアが始まるので、

初見で何でもサラッと弾けるんです。


残念ながら、映像を見つけられませんでしたが、来日時、しばしば、モーツァルトのピアノ協奏曲の弾き振りを

しました。余裕で弾いてました。それがまた、カッコイイんですけどね。ご紹介出来なくて残念。

ただ、N響のメンバー(既に故人のチェリスト、徳永兼一郎氏も弾いています)との室内楽(これもよく演ったんです)

の映像がありました。

有名なシューベルトのピアノ五重奏曲「ます」の第四楽章です。余裕で弾いておられます。


残念ながら、「リクエストにより、埋め込み不可」なので、リンク先をご覧下さい。



シューベルト:ピアノ五重奏曲「鱒」第四楽章。


◆ベートーヴェン:交響曲第7番 第四楽章。全盛期(1988年)とN響との最後の演奏。


サヴァリッシュ先生は、元来オペラの指揮者ですが、コンサート・オーケストラの指揮をするときには、

モーツァルト、ベートーヴェン、ブラームス、ブルックナー、など、オーソドックスな作品を取りあげることが多かった。

最後に先生の最も円熟した、1988年の演奏をご覧得下さい。ダイナミックな音楽です。


ベートーヴェン:交響曲第7番イ長調作品92より、第四楽章






ティンパニ奏者がガイジンさんですが、この当時、N響のティンパニ奏者がドイツだかウィーンだかに留学していたので、

その間(1年間だったと思います)、天下の「シュターツカペレ・ドレスデン=ドレスデン歌劇場管弦楽団」の元首席ティンパニ奏者、

ペーター・ゾンダーマン(Peter Sondermann)さんに、N響で演奏していただいたのです。ドイツの一流オーケストラのティンパニ特有の、

「ズシン」と肚に響くような立派な音、最適な音量、タイミング。サヴァリッシュ先生にゾンダーマン氏。実に贅沢です。


そして、それから16年後。

サヴァリッシュ先生は心臓を患い、すっかり弱ってしまわれました。往年のエネルギッシュな姿を知っている私は、

椅子に座り、ほんの少ししか指揮棒を振れないサヴァリッシュ先生を見て、言葉にならないほどショックでした。

しかし、N響はコンマスの篠崎さんは勿論、全員が、サヴァリッシュ先生の意図を汲み取って、全力で演奏しています。

ご覧下さい。サヴァリッシュ先生がN響を指揮した最後の音楽です。


ベートーヴェン:交響曲第7番イ長調作品92より、第四楽章(2004年)






最後の音が鳴り終えた後の、サヴァリッシュ先生の表情を見て下さい。

「終わった。これが最後だ。」

という、先生の寂しげなお顔を拝見して、私は涙が止まらなかった(念のため。先生はまだご存命です)。

私は、この10年ほど、海外から帰国してうつ病になったりして、自分は不幸だ、と思っていましたが、

大事なことを忘れていました。


この映像を見て、自分が4歳の時にサヴァリッシュ先生が初めてN響を指揮して、後に私が音楽を好きになっていく間、

ずっとサヴァリッシュ先生を始めとするN響の名指揮者の全盛期の演奏を聴くことが出来た幸運を有り難い、と思います。

サヴァリッシュ先生とは関係ないけど、安永徹さんがコンサート・マスターを務めるベルリン・フィルも聴けた。

これも、大変幸福なことです。

私は、サヴァリシュ先生を、今だに勝手に師と仰いでいます。

私は、幸せでした。

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