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2009年08月27日(木) |
【差替】【翻訳】「日本の新しい道」(鳩山由紀夫氏が27日付ニューヨークタイムズに寄稿した論文) |
◆【お知らせ】訳文、飛ばしていた部分を追補しました。
言い訳がましいのですが、この翻訳は、先週金曜日の夜12時過ぎから、眠気をこらえながら作業を行ったため、
注意力散漫で、2パラグラフほど、飛ばしてしまいました。下の訳文で色文字の部分が本日(9月1日)、追補した部分です。
失礼しました。ご容赦のほど。
◆記事:東アジアで通貨統合、安保協力=民主・鳩山氏が米紙に寄稿(8月27日10時45分配信 時事通信)
民主党の鳩山由紀夫代表は27日付の米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)に「日本の新たな道」と題する論文を寄稿、
東アジア地域で通貨統合や恒久的な安全保障の枠組みづくりを目指す考えを示した。
鳩山氏は「イラク戦争の失敗と経済危機により、米国主導のグローバリズムの時代は終焉し、多極化の時代に向かっている」と指摘。
その上で、持論の「友愛」精神から導かれる国家目標として「東アジア共同体」創設を提唱した。
◆翻訳:A New Path for Japan--By YUKIO HATOYAMA (The New York Times:August 26, 2009)(日本の新しい道--鳩山由紀夫)
http://www.nytimes.com/2009/08/27/opinion/27iht-edhatoyama.html
戦後、所謂冷戦時代においては、日本は常に、アメリカが主導する市場原理主義
(今では「グローバリゼーション」と称するのが一般的だが)に揺すぶられてきた。
市場原理主義者達が追及した資本主義社会において、人間は「目的」ではなく、
「手段」として扱われた。結果的に人間の尊厳が失われた。
今や抑制の効かない、モラルや中庸さが欠落する市場原理主義、金融資本主義経済において、
如何にすれば、我々は人間を「目的」の地位に戻す、即ち国民の財産や生活を守ることができるのであろうか?
それが現在、我々が直面する問題である。
今こそ、我々はフランス革命のスローガン「自由・平等・博愛」の精神、「友愛」の精神に回帰すべきである。
それは自由主義に付随する危険を緩和する為に有効である。
友愛の精神は、行き過ぎた、現在のグローバルな資本主義を伝統的に育まれてきた、
ローカルな経済活動に適合するよう調整する為の原則と言って良い。
最近の経済危機は、アメリカスタイルの自由市場経済こそ理想的、普遍的な経済体制であり、世界中の国や地域が、
「アメリカ式」を世界標準として、自分達の経済体制を「アメリカ式」に合うように修正するべきだ、という思想がもたらしたものだ。
日本では、これに対して意見が分かれた。
ある人々はグローバリズムの信奉者となり、全てをマーケットに委ねれば万事上手くゆくと力説した。
一方、もっと穏やかなアプローチが好ましいと考え、セーフティネットを拡大し、
我々の伝統的な経済のあり方を守るために努力するべきだ、と主張する人々がいた。
小泉純一郎政権(2001年〜2006年)以来、自民党は前者、我々民主党は、後者だった。
如何なる国でも、その国の経済秩序は、長い年月を経て、その社会の伝統的なライフスタイルや社会的慣習の影響を反映して醸成され、
成り立っている。しかし、グローバリズムは、経済に直接結びつかない価値観、環境的な要素、
それぞれの国が持つ資源的制約などを完全に無視して突き進んだ。
冷戦構造終焉後の日本社会の変化を振り返ると、グローバリズムが、伝統的な経済活動、
地域社会を破壊し続けた、と言っても過言ではない、と私は考えている。
市場理論において、人間は単なる「人件費」として見なされる。
しかし、現実の社会では、人間が地域社会構造を支え、生活様式、伝統、文化を具現化する主体である。
個人はそれぞれの地域社会での労働を経て、各々の職務を遂行し、家族の生活を支えるが故に、尊敬されるのである。
友愛を行動原則に据えることにより、我々はグローバリズムの犠牲となった、農業、環境、医療など、
人々の生命と安全に関わるような分野、を見捨てるような政治を行うことは不可能となる。
政治家として、我々には、このような、グローバリズムで見捨てられた「非経済的な価値」に再度光を当てる責任がある。
我々は、人と人との絆を再び強め、自然や環境をより重視し、社会福祉や医療制度を再構築し、
よりよい教育環境を整え、子育てを支援し、経済的格差を是正するような政策を取らねばならない。
友愛の精神から生ずる、もう一つの我が国の目標は、東アジア諸国のコミュニティを構築することである。
勿論、日米安全保障条約は日本国の外国政策の要(かなめ)であり続けることは間違いない。
しかし、同時に、我々はアジアに於ける一国家である、というアイデンティティを忘れてはならないのである。
加速度的に活気づく東アジアこそ、日本の存在の基礎として認識されるべきなのだ。
従って、我々は、アジアにおける安定した経済協力やこの地域の安全保障に関しての枠組みを構築し続ける必要がある。
今回の金融危機は、多くの人々に米国の一国主義時代の終焉を、感じさせ、米ドルの基軸通貨としての恒久性にも疑問が生じた。
私は、更に、イラク戦争の失敗や、金融危機を見るにつれ、米国主導型のグローバリズムが最早、終わりに近づいており、
国際社会は多極化の時代に向かいつつある、と感じる。
現時点では、アメリカにとってかわり、世界を支配できる国家は他に存在せず、米ドルの代わりに、世界の基軸通貨として通用する通貨も存在しない。
米国の影響力は低下しつつあるが、それでもこの先20〜30年は、世界最大の軍事・経済大国で有り続けるだろう。
近年、中国の台頭が顕著で、世界有数の経済大国であり、、軍事力の拡大もめざましい。
中国の経済規模が日本を追い越すまでに、さほど時間はかかるまい。
日本は、世界の中心で有り続けようとするアメリカと、アメリカに取って代わろうと必死な中国との板挟みとなったら、
如何にして政治的・経済的独立を保てばよいのだろうか。
これは、日本だけではなく、多くの小・中規模のアジア諸国も抱いている懸念である。
いずれの国も、アメリカにはアジアの安全保障に関与して欲しい。
しかし、政治的・経済的な「内政干渉」は、止めて貰いたい。と言うところだ。
アジア中小諸国は中国な軍事力の巨大化にも脅威を感じている。
しかし、中国経済は秩序正しく発展しているので市場としては、無視できない。
これらの状況がアジアの地域統合を推進する原動力となっている。
今日、マルキシズムの超大国も、グローバリズムの超大国の政治的・経済的影響力はいずれも良きにつけ悪しきにつけ
弱まっている。このため、色々な国でナショナリズムが復活・台頭し始めた。
我々は 新しい国際協力の為の体制を構築したいと希望しているのであるから、過度のナショナリズム(国粋主義、民族主義)
の表出は抑制するべきであり、ルールに基づいた経済・安全保障体制を作る為に協力し合うべきなのだ。
ヨーロッパと異なり、アジアのこの地域は、それぞれ、規模も、発展段階も、政治体制も大きく異なるので、
経済的な統合には時間がかかるであろう。しかし、我々はそれでも通貨統合を目指すべきである。
それは、いち早く経済発展を遂げた日本と、それに続いた韓国、台湾、香港、ASEAN諸国と中国にとって、
自然な流れである。そして統合通貨の基礎となる、恒久的な安全保障体制を構築する為の努力を惜しむべきではない。
アジアの通貨統一には、10年以上を要するであろう。また、政治的統合には、さらに長い時間がかかるだろう。
今や、ASEAN、日本、中国(香港を含む)、韓国、台湾のGDPを合計すると全世界の1/4を占める。
東アジアの経済力と相互依存関係は、一層広く、かつ深くなりつつある。この地域経済ブロックを構築する前提的な状況は、
既に整っているということが出来る。
また、東アジアには、歴史的、文化的確執と相互に対立する安全保障上の利害が存在するため、解決すべき多くの政治的な課題が
存在することは、認識されなければならない。また、増大しつつある軍事化と領土問題は二国間--例えば日本と韓国、又は日本と中国--
の交渉で解決することは出来ない。これらの問題を二国間で解決しようとすればするほど、より一層、その二国間の感情的な対立と、
それぞれのナショナリズムを刺激することになるであろう。
一見逆説的だが、だからこそ、私は、これらの問題は、より大きな地域的な統合を通じてこそ解決しうる、と考えるのである。
EUが成立した過程をみれば、地域的統合が領土問題を沈静化する効果があることは明らかだ。
私は、東アジアの統合と集団的安全保障体制こそが、日本国憲法が理想とする平和主義と多国間の連帯を実現する為の道だと考える。
そして、それは、日本にとって、中国とアメリカの間に置かれながら、経済的・政治的独立を保持する為に有効である。
最後に、汎ヨーロッパ主義という概念を初めて提唱した、EUの父、クーデンホーフ=カレルギー伯爵の言葉で締めくくりたい。
85年前の著書「汎ヨーロッパ主義」(私の祖父、鳩山一郎がこれを日本語に翻訳したのである)より。
「あらゆる 偉大な歴史に残る思想は、ユートピアを目指す夢から始まり、現実社会で終わる。理想郷的な思想が夢のままで終わるか、
現実となるかどうかは、その夢の実現を信じ、実現の為に行動しようと努力する人の数の多さによって、決まる。」
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