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JIROの独断的日記
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2008年02月19日(火) 「イージス艦事故:「あたご」に回避義務」←事故の全容が分からない時点で当事者一方の責任を強調するべきではない。

◆記事:イージス艦事故:「あたご」に回避義務 レーダー役立たず

千葉県南房総市沖で海上自衛隊のイージス艦「あたご」と漁船「清徳丸」が衝突した事故で、

清徳丸を右舷側に見て航行していたあたごに海上衝突予防法に基づく回避義務があったことが分かった。

乗組員による目視が不十分だったため清徳丸に気付くのが遅れ、回避動作が間に合わなかった可能性が高い。

海上保安庁と海上自衛隊は行方不明の清徳丸船主、吉清治夫さん(58)と長男哲大さん(23)の捜索を続けると共に、

横須賀海上保安部が業務上過失往来危険容疑で艦内を家宅捜索、舩渡健艦長らから事情を聴いている。

石破茂防衛相の自民党部会での説明によると、あたごは19日午前4時5分ごろ、南房総市沖を北に向かって航行中、漁

船1隻が右前方から進路を横切った。そのころ、見張りの乗組員が右方向に緑の灯火を視認した。

実際は清徳丸の灯火だったが、この時点では漁船の灯火かどうか分からなかったという。

同6分ごろ、緑の灯火がスピードを上げて動いたため漁船と確認。全力の後進をかけて回避動作をした。

清徳丸は前方約100メートルで大きく面舵(おもかじ)(右舵)を切った。同7分に衝突。

レーダーに清徳丸が映っていたか、それを乗組員が認識していたかどうかは不明という。



海上衝突予防法では、清徳丸の場合、左舷に赤、右舷に緑、後部に白の灯火が義務づけられている。

あたごから見て清徳丸は右から左に航行していたとみられ、この場合は赤の灯火が見えることになり、

乗組員の証言とは矛盾する。漁労中はこれとは別に緑の灯火をつけることになっており、横須賀海保などは灯火状況についても詳しく調べている。

同法によると、2隻の船が進路を横切る場合、右舷側に他の船を見る船に避ける義務がある。

やむを得ない場合を除き、相手の船首方向を横切ってはならない。

衝突を回避するには、停止、後進、面舵などの方法があり、あたごは全力後進をかけたが間に合わなかった。

横須賀海保などは、回避動作が後進だけで十分だったかについても調べる。

事故当時、あたごは当直態勢で夜間航行をしており、艦橋に10人程度の乗組員が目視などで洋上を監視。

さらに、前方の船舶を映す水上レーダーでチェックしていた。海自幹部によると、レーダーは近くなると役に立たず、

300〜400メートルからは乗組員による目視が頼りになるという。衝突が回避できなかったのは、目視が不十分だった可能性がある。

一方、海保と海自は24時間態勢で、護衛艦、ヘリコプターなどを出動させ、吉清さんらの捜索を続けている。

現場近くで吉清さんのジャンパーが見つかっている。分断された清徳丸の船体は、千葉県館山市沖にえい航されている。

(毎日新聞 2008年2月19日 21時57分)


◆コメント:とにかく、一刻も早く誰かを「悪者」にしたがるマスコミの悪弊。

今日の事故は、誠に悲惨であるが、どのメディアの報道を見ても、とにかく、

自衛隊の不注意によるものだ。

という結論にしたがっているのが、ありありと分かる。

しかしながら、事故当時の詳細な状況の全容は明らかになっていないのである。

従って、今の時点で、自衛隊が悪い、という先入観を読者、視聴者に与えるような報道は間違っている。



今日のマスコミ各社の報道に接し、2005年4月25日の福知山線脱線事故を思い出した。

あのときも、事故が起きたばかりで、一体何が原因で電車が脱線転覆したのか分からないのに、

マスコミ各社は、ものすごい高圧的な態度で、JR西日本の幹部を記者会見の席上で「吊し上げ」た。

事故の原因が分からなければ、責任の所在は分からない。福知山線脱線事故の事故調査報告書が完成したのは2年以上を経た、

2007年(昨年)6月だったのである。

今回の事故原因の解明にどれぐらいの時間がかかるか何とも言えないが、ただ一つ確かなことは、

今日、海上自衛隊のイージス艦「あたご」と、漁船「清徳丸」が海上で衝突し、清徳丸が真っ二つに割れ、

乗っていたお二方が、行方不明だ、ということだ。


◆毎日新聞が「あたご」に回避義務があったと、報ずる根拠。海上衝突予防法。

調べたところ、確かに、海上衝突予防法第十五条の文言は次の通りである。

(横切り船)

第十五条  二隻の動力船が互いに進路を横切る場合において衝突するおそれがあるときは、他の動力船を右げん側に見る動力船は、当該他の動力船の進路を避けなければならない。この場合において、他の動力船の進路を避けなければならない動力船は、やむを得ない場合を除き、当該他の動力船の船首方向を横切つてはならない。

2 前条第一項ただし書の規定は、前項に規定する二隻の動力船が互いに進路を横切る場合について準用する。

そして、衝突した二隻の船の航路は、このようになっている→ダウンロード 20080219crash.jpg (18.1K)

青が漁船。赤がイージス艦である。この図のとおりに、清徳丸とイージス艦「あたご」が航行していたとすると、

タイミングによっては、確かに、イージス艦から見て右舷前方に漁船が見えた、ということになるので、イージス艦が回避行動を取る義務がある。

この場合、相手の船(清徳丸)の船首方向を横切ってはならないから、記事に書いてあることが事実ならば、

イージス艦は、後進全速をかけて、面舵(右に曲がること)を切ったのであろう。

その操作に不十分な点があったのか、発見が遅かったのは、不注意によるのか、どうしようもない不可抗力だったのか。

そういうことを明らかにするのが先決である。

今一度繰り返すが、現段階で、「誰が悪かったのか」ということに関して、世間に先入観を与えるような報道は、間違っている。


◆【追加】随分口汚い人がいるものですなあ。

こちらの意見に反論するのは、いいけどね。こういう口汚い書き方しますかねえ。

いかにもしたリ顔で原因が分からない段階で自衛隊を責めるのは問題だと自分は良識の固まりかのようにボケこいているブログがあったりする


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