雲間の朝日に想うこと


< 掴んではならぬ腕ですか >


声が滞った。
言葉が留った。



 「会った時にゆっくりと話そうね。」



先延ばしと言う唯一の手段に縋り、
一時的にせよ、
事を収めるしか無かったのだろう。


其れ以外の手段は、
気体状の黒い浮遊物の儘であり、
言葉として形作られる工程までには、
至らなかったのだろう。









一度に去来した、
雑多で整合性の無い感情。


話すべき出来事の一つ一つに、
口に出そうとした出来事の全てに、
内包している感情は、
俺の前で勝手に弾けて乱雑に散って行った。


歓びに然り、
辛さに然り、
怒りに然り、
困惑に然り、
寂寥に然り、
混乱に然り、
諦めに然り。



 「出戻っちゃうかも。」



ようやっと眼前に出現した君の肉声は、
俺の行為が、
もしかして逆効果ではないかと主張する。


















必要以上に距離が縮まらぬ様に、
懸命に受話器の間に壁を築きながらも。


君が弱音を吐けば、
俺が弱音を受け止めれば、
君にくるりと背を向けさせて、
背中を軽く押し出せるかも知れないと言う希望が、
見え隠れして。

時折最深部まで手を伸ばして、
君を腕を掴みそうになった。











 「またメールして良い?」



君から発せられた最後の問いに、
俺は肯定以外の何を返せと言うんだよ。












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References
 Apr.18 2003, 「予感は正しいのですか」
 Apr.11 2003, 「歓べないのですか」
 Nov.12 2002, 「救いの神になれますか」


2003年04月30日(水)


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< 背後から包んで良いですか >


貴女の文面は、
きっと俺の声を求めた物なのだと、
判断出来たから。


 「小さな彼は実家だから。」
 「一人寂しく食事です。」


貴女が書いて寄越す時は、
何時も俺の声を聞かせて来たから。








長い沈黙。

貴女の声は一向に聞こえる気配すらなく、
呼び出し音だけが鳴り続ける。




疑問符。
疑問詞。
疑心暗鬼。

いや。

想定外の状態に、
頭の片隅に置いてもいない出来事に、
疑念自体の、
浮かび来る猶予も無かった。



来客は無い。
入浴も無い。
外出には長い。
雪隠でも長い。

電算機の様に、
考え得る状況を羅列しては消し、
袋小路に行き着いた時。










貴女の泣き声が聞こえた。



















人一倍甘えん坊の貴女。

懸命に一人で闘う時には、
相当の精神力を必要としているのだろう。


 「色々想い出してね。」
 「昔の事を反省してね。」
 「それでね。」
 「それでね。」


俺との出来事を想い返す時、
決まって貴女は、
不必要に物事を悪く捉えて、
不安定な状態に陥るから。










 「馬鹿。」


安堵感から生まれ出た、
音に成らない程の小さな声。



貴女を荒海に放り出す事など、
有り得ないのだから。

背後の備えは俺に任せて、
目の前の課題に真っ向勝負すれば良いさ。









貴女の魅力は「猪突猛進」だろう?


2003年04月29日(火)


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< 寂しく笑っているのでしょうか >


少しずつ少しずつ解けていた氷河の一端が、
大きく崩れ落ちる時の様に。

小窓の欠片を繋ぎ合わせて、
大きな一枚の絵が浮かび上がる時の様に。


全体像を掴み取った瞬間、
意図はただ単純な構造へと変化し、
行為はただ短絡的に為された物だと解釈される。












 「どうせ子供が出来ないんだから。」
 「幾ら小坊主とやっても平気平気!」



あの時あの子が口にした、
自暴自棄とも受け取れる言葉の数々。

普段の冷静さも、
目的意識も、
あの子の最大の魅力である活気すらにも霞がかかった、
言葉の数々。


疑問も不可思議も、
何時の間にか消え失せた。


















理解したが故に。
理解してしまったが故に。


余計に言葉が浮かばず、
力の無さを痛感する。

















 「また流産したんだよね。」
 「やっぱり子供出来ないのかなぁ・・・」




言葉の欠片を紡いで出来た、
言葉の塊を持て余して。

ただ漠然と事実を理解した時点で、
俺は機能は停止して。



力の源と成るべき何かを、
返せなかった。












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References

 Jan.31 2002, 「思い通りに動いてますか」


2003年04月27日(日)


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History
2002年04月27日(土) 時間は解決の手段になりますか



< 本当に同じ国に居るのでしょうか >


一枚の写真が有る。

年の初めに昇る太陽の光が、
一面の雪に反射して、
厳かに輝いている風景を撮した写真だ。



貴女が撮した写真だ。














 「葉書届いたよ!」
 「ありがとう!」


貴女から届いた、
御礼の言葉。



 「いつか一緒に見ようね。」


貴女に届けた葉書には、
確かにそう書いたけれど。








違うんだよ。


















貴女に届けた葉書には、
南国の風景が描かれているけれど。





俺はあの、
北国の朝日を。

凍て付く大地に昇る
北国の朝日を。


何時か一緒に見たいと願って、
葉書を贈ったんだ。


2003年04月25日(金)


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< お腹を撫でても良いですか >


この言葉の意味を、
貴女は何処まで理解したんだろうか。


 「だったらこの話はおしまい。」


敢えて話題を打ち切った俺の、
口調の厳しさから、
貴女は何も感じ取れずに居るのだろうか。





俺の多忙を理解して、
自分は我慢をしているなどと、
そんな勘違いを本気で思っているならば。


初めから俺に、
何も聞かなければ良い。

初めから俺に、
時間など消費させなければ良い。














何時にも増して、
俺から文の届かぬ状態を。

貴女は勘違いしたまま過ごしているのか。



いや。



貴女に限って。

常に動物的な本能を駆使して、
雰囲気を読む事に非常に長けた貴女に限って、
そんな筈は無い。



俺の想いなど、
遙か昔に感じ取ったに違いないのだ。












 「えへへ」
 「二日酔い?」



何時でも、
何処でも、
何が起きても。

敢えて貴女は、
まるで仔猫の様な甘え方を選択する。








何時でも、
何処でも、
何が起きても。

そして何故だか俺は、
貴女を膝の上に招き入れてしまうんだよな。


2003年04月24日(木)


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< 求めなければ良いと思いませんか >


自力で物事を解決出来そうに無い時。

自力で解決策を生み出せず、
又はその方策に迷いが存在する時。


人は「相談」と言う手段を用いて、
事の収拾を図る。



己の世界観も、
己の思考も、
己の信念や己の閾値も、
全てに蓋をして。


自身を他人に委ねる様に、
耳を傾ける筈なのに。













貴女の言葉に不安を覚えた。

突然だと前置きをしたとは言え、
貴女の言葉は、
充分に俺の胸に衝撃を加えた。


 「アバラにヒビが入っているとしたら・・・」
 「苦しいのかな?」


傷付き易く、
案外脆く、
そして面倒な箇所。


俺は貴女の質問に、
誠意で答えた。

痛みの度合いを考えて、
解答を伝えた。










 「医者に行きな。」
 「でも、咳をした時だけだよ?」

 「写真撮ってもらいな。」
 「でも、痛いのは咳をした時だけだよ?」

 「良いから行きな。」
 「でも・・・」











自分の考え以外を排除する気なら、
初めから俺に、
答えなど求めなければ良い。


下手な甘えや下手な依存心まで、
一緒くたにするならば。

自分のみで判断して、
自分のみで責任を持てば良い。





俺の言葉なんて、
初めから要らないよね。


2003年04月23日(水)


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< 赤児の様でしたか >


形振り構わず突進し、
泣き喚き、
それでも足りないと判断すれば、
我が身を傷付ける。

注意を惹く為の手段に、
限度は無い。




空腹で啼き、
眠いと啼き、
それでも危ないと判断すれば、
腹癒せで啼く。

独占を貫く為の行為に、
際限は無い。










二人の甥が繰り広げる不可思議な行為は、
母性を得る為の、
本能的な闘いに違いない。



常識的には赤児とは呼ばない年齢の子が、
まるで乳飲み児の様に振る舞い、
駄々を捏ねる。

嫉妬心が、
対抗心が、
人の心を幼児化させる。













ああ。
そうか。





 「もう小学校だろ。」
 「何で乳なんか触らせるんだよ。」











小さな彼に対する俺の嫉妬は、
甥っ子同士の争いと全く同じ行為なのか。


独占欲が、
俺を赤児にしているだけか。


2003年04月21日(月)


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2002年04月21日(日) 望みを隠せませんか



< 本当は何が詰まった文ですか >


年に一度きりの事であれば、
お互い冷静で居られると言う事なのだろうか。

年に一度限りの関係であれば、
お互い昔を懐かしむだけで、
何の蟠りも生まれないと言う事なのだろうか。







 「元気にしてますか?」



今年もまた、
俺はこの地に降り立っている。

そして今年もまた、
アイツからの文が携帯に届く。







 「今年も最後まで頑張って。」
 「そして楽しんできてね。」



有り触れた言葉。

一年と言う時の流れが、
アイツの心に変化を与えた事は、
間違いの無い事実。



在り来たりの言葉。

そして一年と言う時の流れは、
俺の心にも、
確かに存在する筈なのに。




















南国は、
時の流れが緩いのか。

この地は、
時の歩みが鈍いのか。



俺は未だに、
この言葉を受け入れられない。

俺は未だに、
この言葉へ直面出来て居ない。






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References

 Apr.21 2002, 「望みを隠せませんか」


2003年04月19日(土)


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2001年04月19日(木) 沈黙に気持ちを乗せているのですか



< 予感は正しいのですか >


君に宛てた誕生日の御祝いを、
メールに乗せて贈った。

きっと君は、
其の言葉を想う余裕すら無く、
ただただ深い悩みに囚われ、
雁字搦めに陥って居るに違いないけれど。













込み上げる無念の心。

君から届いた文に、
予想通りの言葉が並ぶ。



 「今実家にいます。」
 「一生もう帰らないかも。」



込み上げる無念の心。

予想通りの言葉が並ぶ事など、
俺は望んでやしないのに。




 「ふー意味深。」



君は何時もの様に、
吐き捨てた。











最後に吐き捨てた君の言葉が、
今迄と同じく、
前へ気持ちを向ける為の愚痴であって欲しいと、
そう願いながら。



突然浮かんだ、
別の予感が打ち消せずに。


俺の携帯に表示され始めた君の電話番号を、
途中で停めた。


2003年04月18日(金)


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< 説教したのは間違いですか >


未だ生活感に乏しい部屋。

山積みになった箱。
真新しい部屋の匂い。


手を入れた直後であろう部屋の壁は、
白く明るく、
カーテンやカーペットのパステル蛍光色が、
良く映えていた。










大小様々な大きさの皿が、
所狭しと並ぶ食卓机。

揃いの箸すら無い住処に、
二人分の食事が用意されている。




 「念願の一人暮らしを始めました。」
 「初めてです。」



確かにこの事実を聞いてはいたけれど。



 「ドライブするには良い季節になりましたね。」
 「夜桜を見に行きませんか?」



この言葉からは、
彼女の部屋に足を踏み入れる事になるなど、
連想すら出来なかった。














着々と整備される、
彼女の城。

築城作業の一端を手助けし、
単に石垣を積み上げるだけの俺だけれど。



彼女の相手より先に、
俺の親友より先に、
俺はこの地に侵入してしまった。





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References

 Nov.10 2001, 「黙っておくべきでしたか」


2003年04月16日(水)


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< 夜桜は切ないですか >


俺の元には、
既に届いている物。

けれども未だ、
貴女の元には届いていない物。




独り占めをする時も、
誰かと共に味わう時も。



貴女が隣に居た事は、
今迄一度たりとも無い。









貴女との距離的な差を感じる時に、
必ずコイツが横に居る。


毎年毎年飽く事も無く、
俺の方が先に手に入れ続けるであろう桜。

毎年毎年飽く事も無く、
貴女の住処を先に訪れ続けるであろう雪。




貴女との距離的な差を感じる時に、
必ずコイツが浮かび上がる。


毎年毎年飽く事も無く、
俺の住処に現れる灼熱の夏。

毎年毎年飽く事も無く、
貴女の住処に届く涼やかな夏。












季節の風物詩。
雪洞に映える吉野桜。


これ程切ない物は無い。


2003年04月15日(火)


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< 対抗心だけでしょうか >


長い髪が好きだと、
そう伝えた事が有る。

短い髪に向かって、
そう伝えた事が有る。


ただ嗜好の問題だけでは無く、
あの男への対抗心と、
今を壊したいと言う願望が、

あれだけ強い想いを俺に齎した事は、
疑い様が無い事実だ。










小さな彼の勘違い。

幼気で素直で悪気の無い、
容赦も無い言葉。


 「年下なのに呼び捨てしてる〜!」


貴女と共に呑んでいた同い年の友達は、
皆貴女より年下に見えると、
小さな彼は呟いた。






貴女の苦しさは、
俺が一番理解出来ていると想っている。

子供の素直な眼が、
例え貴女が同い年より年上だと主張しても、
俺の奥底が揺れる筈も無い。




けれども貴女は、
髪を切る道を選択した。


 「きっとみんな髪短いからだよね。」
 「美容院行って来る!」










寂寥感と嫉妬心、
そして何より敗北感。


貴女の近くに存在するのは、
俺では無く、
どうしても小さな彼なんだ。
















女であろうとする貴女の気持ちは、
理解しているつもりだけれど。



 「髪を切ったからって変わらないよ。」
 「どっちかと言うと長い方が良かった。」



そう冷たく言い放った小さな彼の言葉は。

もしかしたら、
俺が一番言いたかった言葉かも知れない。


2003年04月14日(月)


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2002年04月14日(日) お互いが道化師でしょうか



< 貴女に逢いたかったのか >


春の日差しに溢れた暖かな公園で、
仔犬と戯れる。


 「ヨシヨシ。」


仰向けに腹を出して、
満足気に目を細めた子を見ていると、
何故微笑みではなく、
苦笑いしか出来ないのだろうか。












貴女のお願いは、
俺への注文は、
兎角変わった物では無かったのに。



 「今度逢った時は思いっ切り撫でてね。」

 「うん。」








貴女のお強請りが、
俺への要求が、
脳裏に貼り付いて接がれない。



 「ムツゴロウさんの様に撫でて欲しいの。」

 「貴女は犬かっつーの。」














懸命に尻尾を振って、
懸命に腹を出して、
懸命に甘える犬の姿が。


今日は何度見ても、
貴女の姿にしか見えない。


2003年04月13日(日)


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< 歓べないのですか >


君の体調が悪い。

人伝に聞いた言葉で、
君の旦那から聞いた一言で、
俺の中にほぼ確信に似た予感が芽生えた事を、
この胸の拍動が気付かせてくれた。






其処まで強い確信を持ちながらも、
想いを心配と称する方便で包み隠して、
携帯を握り締めた。



 「大丈夫。」
 「何が?」

 「今居ないから。」
 「まったく・・・」

 「だって・・・」
 「止めろって言ってるじゃん。」



何故隠すのかと、
何度と無く繰り返して来た忠告も、
何ら変化を齎していない事。

俺の親友である筈の旦那から、
俺に対する猜疑心も敵対心も不安感も、
決して消えていない事。


結局聞こえて来た君の声は、
今迄と全く変わらぬ二つの事を、
俺に教えるに留まった。
















解決すべき事柄をその儘に、
遂に柵を振り出しに戻せない時が来てしまった。




即ち其れは。


致命傷を抱えても、
柵を絶つ事が出来ない状態に、
君が陥らぬ様に。

ただ俺の元に、
そう願う事しか出来ない時が来た事を、
暗に意味する瞬間でもあるのだ。








其の事実を知ってか、
それとも知らないからか。



 「出来ちゃったんだよね。」
 「やっぱりそうか。」



全く弾まぬ君の声が、
鼓膜の裏でぶるぶると震え続けて消えない。


2003年04月11日(金)


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2002年04月11日(木) 見えない道を歩けるか
2001年04月11日(水) 不安を消してはくれませんか



< 想いは守護神に成り得ますか >


二人の想いが確固たる物であれば、
必ず疑問は氷解し、
きっと誤りは正される筈だけれど。



其処に費やす時間と労力に、
余裕が無い時。



確固たる絆が、
簡単に捻じ切れてしまうのは、
何故なのだろうか。

何が足りないのだろうか。





起き抜けに届く貴女の定時便は、
何時にも増して、
底抜けに明るかった。

一つの誤解を解き、
一つの疑問を解決して、
空の曇りを吹き飛ばすかの様な勢いだった。



 「『予知夢』ってあるけれど。」
 「私の場合『願望夢』だよね・・・。」

 「やっと気付いたの?」














素敵な事だ。








貴女の願望夢を、
予知夢と想い続けて来たとすれば。

願望が予知と勘違い出来る現実が、
其処に有ったとすれば。


其れは貴女の願望が予知に変わっていた証拠であり、
貴女の想いが実現して来た証拠だから。
















一つの間違った過去に、
一つの誤った記憶に、
どれだけの期間、
貴女は縛られ続けて来たのだろうか。


費やす時間と労力に余裕が無い中、
絆を必死に護り続けたのは、
きっと貴女の想いの強さなんだよ。


2003年04月09日(水)


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History
2002年04月09日(火) 望んだ未来が怖いのか



< 無理強いしていますか >


貴女との繋がりを、
自ら遮断する時が在る。
俺は貴女に、
音信不通を強要する時が在る。

例え貴女が、
俺にとって別格の存在であっても。
例えどんなに、
お互いの絆が堅く太い物であっても。


嫉妬。
疑念。
不安。

次から次へと浮かんでは肥大する要素が、
幾らでも想い付くだろうに。












一時的であれ、
貴女より優先するべき人が、
目の前に居る事が在る。

決して想いの対象としてで無くとも、
貴女より優先するべき事柄が、
存在し得る。


携帯の振動を無視し、
携帯の音源を遮断し、
貴女からの文に触れる事も無く、
貴女への想いを送る事も無く、
一日が過ぎた時。



想いの閾値を超えた激情を、
貴女は何度も、
俺に叩き付けて来たというのに。


















 「一呼吸置いてみたの。」
 「ぐっと我慢をして一晩寝てみたの。」



何故。
どうして。

還らぬ想いに、
還らぬ反応に、
怒りと寂しさと不安と疑念と様々に湧き上がる想いを抱え、
そして貴女は飲み込んだ。


畏敬の念を覚える程、
素直に、
そして単純に。





貴女の明快な行動と、
俺の発する言葉を決して逃さず記憶する能力には、
何時もながら舌を巻く。











俺は「忙しい」と言う一言で、
貴女に無理を強要し、
俺への信頼を強要したのだ。

精一杯の我慢には足りないかも知れないけれど、
俺なりのお返しを贈ろう。


 「えらいね。」
 「ヨチヨチ。」


素直に。
単純に。

そして精一杯の褒め言葉。


2003年04月07日(月)


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< 同じ贈り物が欲しいですか >


どんなに拘るまいと想い願っても、
囚われの心に締められた縄を、
決して解けない時が在る。

どんな言葉で飾っても、
生理的欲求は「独占」の二文字を求め、
生物的本能は「優位」の二文字を得ようとする。



 「贈り物がね・・・」


また一つ、
貴女の心に過去の敵が巣食った。







確かに同じ行動は、
単純に物事を比較し易い。

自分に対する今の想いが、
過去に対する想いの強度より強い事を、
同じ物差しで比較出来るから。




唯一の条件として、
行動に込める中身を犠牲にすれば。
















過去と同じ行動が、
当時と同じ想いや重さや強さや意図を含む行為である保証は、
何処にも存在しない。



緩々と伸縮する二人の距離、
刻々と変化する二人の情況、
そして何より、
想う相手の違い。

一生には二度として、
全く同じ時が無いのだから。





例え同じ行動であっても、
込める想いが異なるとすれば、
其れは異なる行為。

例え同じ行動であっても、
意図が伴わなければ、
全く意味を持たない行為と変化する。



決して無には成り得ない過去と闘うよりも、
現在の考え得る選択肢の中から、
最高最上最良の解答を選択する事。


其れが俺にとって、
確固たる行為であり愛情表現と呼べる物なのだ。










だから貴女に対して、
俺は同じ行動など見せやしない。

同じ位の想い、
いやそれ以上の想いを込めた行為で、
貴女に表現をするんだ。



貴女が上なんだと、
貴女に届くまで。


2003年04月05日(土)


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< 元気の源は何ですか >


貴女は素直過ぎるから。
貴女は周囲の環境に影響を受け易い人だから。



ほら。

声が弾んでる。
声が跳ねてる。














 「怒ってない?」


不安そうな貴女に、
ふと可笑しさを覚えた。





今日位は許すから。

やっと帰って来た宝物でしょう?
やっと帰って来た宝物は、
きっと特別甘えん坊なんでしょう?


今日だけは嫉妬しないから。

小さな彼と一緒にお風呂に入った位で、
俺は目くじら立てやしないから。


飛っ切り悔しいけれど。

俺ではきっと、
其の笑顔を貴女に贈る事は出来ないから。









だから其の踊った声を、
明日も聞かせて。


2003年04月03日(木)


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2002年04月03日(水) 最後の糸を切れませんか



< 覚え終わりましたか >


下からじっくりと観察をする。

全精力を傾けて、
まるで獲物を狩るかの様に。


揺れる動きを捉えて、
放たれる音を逃さず、
一つ残らず脳裏に叩き込む為に。




其の作業を、
着々と続けて来たからこそ。

其の作業を、
黙々とこなして来たからこそ。


例え受話器越しであっても、
俺は貴女を、
目の前に浮かび上がらせて抱けるんだ。














貴女は夢で、
俺の姿を追えるから。


想いを形にして、
俺の姿を感じられるから。



 「私、小坊主に乗ってる夢見ちゃった。」
 「小坊主が言ってたでしょう。」



けれども俺には、
その能力が備わっていないから。


だから目の前に貴女が居る時に、
手で触れて、
足で触れて、
目で触れて、
身体で触れて、
一挙手一投足を身体に覚え込ませておく。



 「貴女が俺の上で動いてるよ。」
 「名前の最初と真ん中にアクセントが来るんだよね。」















貴女が夢中になっている間でも、
俺が恍惚に埋もれる前に、
終わらせて仕舞わなければならない。


波長を合わせ、
色彩を合わせ、
形を合わせ、
貴女を残らず脳裏に設置するのだ。



意外と必死に。


2003年04月01日(火)


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2001年04月01日(日) 主な人





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